第25話 暗黒騎士パーティー10:幻視の攻撃(スレッグ視点)
「ミレイア、炎を止めろ」
ミレイアの放った炎の魔法で、森が燃えはじめちまった。
今のうちに消さないと……。
このまま広がれば、俺たちも巻きこまれる。
「と、止めるな……あいつらを灰にするんだ」
「あいつらって、誰だ。森の中には俺たち以外に誰もいないぞ」
「私には見える。昔、私を裏切ったやつらが……」
ミレイアが見ているほうにふたたび視線を向ける。
炎があがって明るくなってはいるが、そこに人はいない。
「い、今さらあの時のことを謝られても、遅いんだよ」
ミレイアは誰もいない森をにらみつけている。
ひとり言を言っているように見えるが、本当にそこにいる誰かと話しいてるようにしか見えなかった。
「周りから避けられている中、唯一、あんたたちと心を通わせられる仲だと思っていたのにな。
……
知るか。もう過ぎ去った時間は戻らない。でも、こうして、また私の前に出てきたのなら、今までの恨みを晴らせられる。
……
後悔したって、もう遅いんだよ」
苦しそうに顔をゆがめつつも、ロッドをまた森に向ける。
「おっ、おい……ミレイア、何を? やめろって……」
「窮・暗黒大火球弾」
赤く燃えた炎が黒い炎にとってかわり、延焼範囲をさらに広げた。
「バカが。暗黒魔法をこんなところで使いやがって。あとのことを考えろ……くそ、聞く耳すら持っていないのか」
「アハハハハハ……苦しんでる苦しんでる」
発光体の女の声が甲高く響いた。
「お前、いったい何をした?」
「ふふふ……だから、私はなにもしてない。ここにいるのは、私だけじゃないって言わなかった?」
「お前以外の発光体か……」
辺りを見回せば、女の発光体以外にも、いくつもの発光体が現れては消えている。
このままでは森が大炎上しちまう。
そうしたら、俺たちも前に進めなくなる。
「アシル、ミレイアの炎を消せ」
「え、うん……でも、どうやって……」
「延焼を食い止めろ。木をなぎ倒すなり、風を起こせ。早くしろ」
「わっ、わかった」
アシルは大剣を振りまわして、風を起こしたり、木を切り倒していく。
「フィリオ」
「なに? 俺にも火を消せって言われても無理だぜ。弓矢じゃなにもできない」
「そんなことくらいわかってる。ムダだと思われるかもしれないが、見える発光体に矢を射ろ」
「はっ? 発光体には矢はきかないだろ?」
「わかってるっていただろ。それでも、いいからやれ」
吠えるように言った。
もう1度、同じことを言いたくはなかった。
「わっ、わかったよ。そんなに怒らないでくれよ……」
すぐにいくつもの矢が、いたる所に現れる発光体を射る。
少しでもミレイアの幻に干渉できれば……。
矢は発光体をすり抜けるだけか……。
「ミレイア、気をしっかり持て」
「……私の苦しみを知ったような口をききやがってぇ……そんなに私の気持ちを知っているなら、一緒に苦しんでみろよ」
「おい、ミレイア」
パーン
ミレイアの頬をひっぱたいた。
「はっ……」
ミレイアは、何が起きたのかと目を丸くして俺を見てきた。
「あれ、私はいったい……」
「幻を見せられていたんじゃないのか?」
「幻……えっ、こっ、これは……」
辺りの惨状にミレイアは驚いていた。
「見ての通り、お前の魔法だ」
「私は……あっ、そうか……グレンツェント魔法学院のあの3人が現れて……」
「それは幻だ。この森の声がお前に見せたんだ」
「あぁ、そうだな。裏切りの3人がこんなところに来るはずないもんな……」
「よし。ここにとどまるのは危険だ。お前ら、いっきに走り抜けるぞ」
火はアシルが落ち着かせていた。
周囲の発光体を気にすることなく、道を走っていく。
「あらあら……慌てちゃって……ねぇ、今度こそ、私を生命の泉に連れてってね」
無視だ無視。
1つ目の分かれ道。
迷うことなく、左へ進む。
周りを見ることなく、とにかく走りつづける。
「ミレイア、大丈夫か?」
「えぇ、大丈夫。幻にとわられたことで、逆に冷静になったところよ」
「なら、このまま先を急ぐぞ」
「えぇ」
ミレイアの乱心があったことで、パーティーがひとつになったな。
「そうやって、ひとつ山を越えたような気持ちになるのよね、ここは」
無視だ……無視だ……。
「でもね、それが繰りかえされる場所。そういう巣窟なの」
ふん。もう、幻から脱する方法はわかった。
仮にかかったヤツがまた出ても、もう問題はない。
「おっ。2つ目の分かれ道だ。案外早かったな……」
この分かれ道も左だ。
「スレッグ。左には行くな。右の道に入って迂回しろ」
男の声……誰だ?
「誰か、俺を呼んだか?」
「いや、誰も呼んでいない」
すぐ後ろのミレイアが答えた。
「そうか」
気のせいか。
「スレッグ。左の道は危険だ。右へ行くんだ」
この声は……キール!
ガサッと、分かれ道の前にキールが現れた。
やせこけた頬に、全身の肉がただれて、腐り落ちている。
ところどころ白い骨も見えていた。
――そうか。お前は死んだんだな。こんなところで、俺たちを恨んでも止められんぞ。
「キール! キールじゃないか。もしかして、俺たちを追ってきてくれたの?」
アシルがキールに声をかけた。
「そうだ。お前らが心配でな。ようやく追いついたぜ。右へ行けば、遠回りだがもっと安全に進める」
「バカが。そいつはキールじゃない。腐った体をしてるだろ? 幻だ。無視して行くぞ」
「えっ、腐ってなんかないよ。ちゃんとしたキールだよ。キールは右に行けって……左は危ないって言ってる」
クソッ。アシルは別の幻を見せられているのか。
「ちょっと、なに? キールが現れたの?」
ミレイアには見えていないのか?
「も、もう、みんな冷静になってよぉ〜〜〜」
フィリオが頭を抱えてその場にしゃがみこんでしまった。
俺は冷静だ。
「アイツは島流しの途中で死んだんだ。ここに来られるはずがない」
「キールはずっと僕たちのことを心配してくれたんだよ。だから、追いかけてきてくれたんだよ」
「アシル、お前……」
キールに笑顔を向けるアシル。
「まったくバカなことをしてれたもんだよ。まぁ、俺にかかれば樽から逃げることくらいたやすいもんだ」
キールの声が響きわたる。
「なにっ? 私の拘束魔法から抜けたって言いたいのか?」
「お、おい。ミレイア、声に耳を傾けるんじゃね。これは幻だ……」
「私がミスったとでも? それならもう1度、拘束してやるよ」
「バカが。やめろ」
「窮・暗黒拘束」
ミレイアのロッドが俺に向けられていた。
「グヌッ」
全身が固まったように身動きが取れなくなって、そのまま倒れた。
バカが……くそっ声も目も動かせないのか。
「どうだ、キール。今度こそ動けないだろ?」
「ウガァ」
ミレイアが俺の顔を足で踏みつぶしてきた。
仮面をかぶっているから、たいして痛みはない。
だが、拘束魔法がここまでしびれるとは……。
「も、もう、みんな目を覚ましてよ〜」
フィリオが一人一人に矢を放った。
鎧のすき間に入りこんで、脇腹に一点の痛みが走る。
ミレイアとアシルの腕にも矢が浅く刺さる。
「痛っ」
フィリオの矢の痛みで、全員が目を覚ました。
すぐにミレイアも拘束魔法を解いた。
しかし、手が勝手に震えている。
「す、すまない。また、私も幻に飲みこまれて……」
「あっ、あぁ……それは仕方ない」
しばらく軽いしびれがつづきそうだな。
ムダな体力を使わされる。
分かれ道に立っていたキールの姿は、いつの間にか消えていた。
「とにかくここは左の道へ行く」
生命の泉に向かって、またゆっくり歩きはじめた。
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