第24話 暗黒騎士パーティー9:生命の泉へ(スレッグ視点)
老婆から聞いた生命の泉へ向かうと決めた。
「スレッグ、本当に生命の泉に行くの?」
ミレイアが慎重に聞いてきた。
「あぁ」
「これは完全に予定にない工程だ。もう、数日遅れはじめている。本来の目的は……」
「それはわかっている。とはいえ、そこまで急ぐほどの旅でもない。生命の泉で不死身になって森を抜ける。抜けた先で、また道を探せばいい。そして最終的に、闇の指輪を地獄の谷に捨てられればいいだけだ」
「まぁ、そうなんだけどさ……疲れた」
ミレイアは、ベッドにそのまま後ろに倒れて、仰向けになった。
普段はそんな無防備な姿を見せることはないミレイア。
倒れた勢いで、胸が揺れていた。
普段からあまり気にすることはなかったが、意外にあるのか……。
あっ、俺はこんなときに何を考えているんだ。
「なんか、いままでが順調だっただけに、予定外のことばかり起こると、疲れるし調子狂うよね」
フィリオが軽々しく言ってきた。
「この森に入って、狂いはじめたのはどこのどいつだ。お前が言える立場じゃねー」
「だ、だって、だって、怖かったんだよぉ」
子供か、お前は。
「暗黒騎士パーティーとして、もとい暗黒使いとして、その怯え方はどうかと思うがな。お前の暗黒素質を疑いはじめるからな」
「ちょっとスレッグ、俺はそんなことない。キールなんかと一緒にしないでくれよ」
「だったら、暗黒使いとしてのふるまいをしかと取ってくれよ。この暗黒騎士パーティーの品位にも関わってくるからな」
「もちろん、わかってるよ」
フィリオは背中を立たすように、ベッドに座り直した。
まぁ、さっきよりはしっかり意識を強く持つようになったか……。
「キール……」
アシルがボソッとささやいた。
だれもがチラッとアシルに視線を送ったのがわかった。
「ふん。今さら、アイツのことを話してもどうにもならない。いないやつのことなんて考えるな」
部屋が静まり返った。
もし、キールがこの場にいたとしたら、生命の泉まで偵察に行かせていただろうがな。
ハッ。
いまさらキールを頼ろうとは思わない。
「もう、今日はやることはない。しっかり休んで明日へ備えろ」
「そうね……」
「うぃー」
「うん」
疲れのにじんだ返事が部屋に重く響いた。
翌日。
たいして日の光も入らないため、時間の経過が定かではなかった。
思ったより、静かにぐっすり眠れた。
宿のカウンターに向かうと、老婆はそこでただずんでいた。
「もう行くのかい?」
「あぁ」
このままココにいたらいたで、またカネを奪われそうだ。
「生命の泉までは気をつけることだ」
「発光体以外にも、なにか出るのか?」
「女の声には気をつけな」
女の声か、ふん。
「すでに絡まれたよ」
「だったら、なにもかかわらず進みな。かかわるだけムダだよ。他のやつらにもね」
「そうかい。ばぁさんは、この辺に詳しいのか?」
「詳しいもなにも、森がこんなになる前からずっとここに住んでおるからな」
そうだったのか。
この森はもともとこんなじゃなかったのか……。
「実は、俺らは地獄の谷に行くんだが。地獄の谷につながる道を知っているか?」
「地獄の谷ぃ?」
「あぁ」
「ここからだと遠いぞ」
「いや、それでも行ければいいんだ」
「だったら、1つ目の分かれ道を右へ行けば、地獄の谷方面だ。そこから先は知らんがな」
「いや、助かったよ。世話になった」
「あぁ……」
ぼったくられたが、ここから先へ進む道もわかった。
ある意味、ムダガネではないだろう。
やはり、俺には運というものがある。
遠回りと思っていたものが、実は最強への近道だったという……ふははは。
宿を出て、どんどん暗くなっていく森の道を進む。
宿からの道が合流して、生命の泉へ向かう。
「またどこかへ行くの?」
早速、女の声が聞こえてきた。
女の発光体が俺たちをからかうように浮遊する。
「うわっ、早速出たぁ」
「フィリオ、気にするな。まっすぐ歩くだけでいいんだ」
「あっ、あぁ……まっすぐまっすぐ」
フィリオはサッと顔を伏せて、下を見つめて歩く。
「この森からは出られないよ。あんたたちはこのまま野垂れ死にだぁ」
女の声がこだまするように森に響く。
なにを話しかけられようとも、俺たちは無視して歩き進む。
「それとも、また、あの老婆のもとへ戻る?」
死声のくせにいろいろ知ってるじゃないか。
「老婆は元気してた?」
なんで老婆の心配をしているんだ、コイツ。
俺たちの気を緩めようとしているのか。
その手には乗るか。
「あっ。もしかして、生命の泉に行くのかしら?」
あぁ、そうだよ。だから、なんなんだ。
昨日もそうだったが、コイツらは、直接なにか危害をくわえてくるわけじゃない。
ただ、精神に訴えかけて狂わせてくるだけだ。
1度ビビっちまったフィリオくらいにしか、もう効かないだろう。
「だったら、私も連れていってくれない?」
なにを言っているんだ。
「ねぇねぇ……なんで連れていってくれないの?」
行きたければ、勝手に行けばいい。
わざわざ俺たちと来なくても、1人で行けよ。
それだけ自由に動けるんだからな。
「せっかく一緒にここまで歩いてきた仲でしょ? だったら、最後まで私も連れていってよ。1人にさせないでよ」
「うるさい、うるさい……」
フィリオのぶつぶつ声が徐々に聞こえてきた。
普段だったら、いますぐ黙れと言いそうだが、今に限っては女の声から気をそらすことができる。
「私にも泉の水を飲ませて……そしたら、私も生き返るのよ」
ふん、デッドウィスパーがなにを言う。
実体のないヤツが、生き返るとでも言うのか。
もし、生き返るのなら、なぜ自分でそうしていない。
「うるさいうるさい……」
またフィリオかと思ったら、すぐ後ろを歩くミレイアの声だった。
あまりミレイアを機嫌悪くさせないでほしいぜ。
あとあとなだめるのが面倒だ。
「うるさいうるさい……もうっ、ホントに……」
「おい、ミレイア。女の声を気にするな」
「なんなんだよ、お前ら……今さら、そんなことを言って来やがって」
「ミレイア、しっかりしろ」
「ふははは……」
女の声が森一帯に広がった。
「ここにいるのが私だけの声だと思って?」
「は? どういうことだ?」
ふり返って、ミレイアを見た。
「ミ、ミレイア」
ミレイアは頭を抱えて、苦しそうに顔をゆがめて涙をこぼしていた。
「おっ、おい、ミレイア、どうした?」
「あんたたち、こんなところまで追いかけてきて、わざわざそんなことを言いに来たのかよぉおおお」
俺の手を振り払って、ロッドを横に向けた。
「急・遊蛇炎」
森に向かって伸びた長い炎が、まるで生きているかのように舞う。
こんなに取り乱すミレイアを初めて見た。
いったい、どうしたっていうんだ。
「暗黒騎士パーティーはどうなる?」
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