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第22話 暗黒騎士パーティー7:動揺(スレッグ視点)

 死霊の山を迂回する道で出会った女が、森の中で消えた。


 それもこつ然と。


 今々まで、俺のすぐ後ろを歩いていたはずだった。


「どうして女が消えた? どこかに行ったか?」


 驚くミレイアを見た。


「道は1本だ。脇にそれたら、私だってわかる。私の前を歩いていたんだぞ」


 ミレイアが口早に言った。


「それじゃあ、上か?」


 上を見あげたが、木の枝が重なりあって、深い緑の葉が光を遮っていて暗い。


 女が隠れている様子はない。


 それどころか、幽霊のような、妖精のような発光体が、明滅を繰りかえしている。


 不気味な声も近づいては遠ざかる。


「この森はいったいなんなんだよ。こんな森があるなんて言ってなかったぞ」


 怒声を張るようにフィリオが叫んだ。


 確かに、道具屋のじじぃは何も言ってなかったが……もし、知っていれば言ってただろう。


 考えていてもムダだ。


「とにかくこの森を抜ける。道は1本道なんだ。このまま進めばいい」


 俺は冷静に言った。


 リーダーである俺が焦っていては、パーティーをさらに動揺させてしまう。


「ん? ちょっと待って……」


「どうした、アシル?」


「いや、この荷物が急に変わったような」


「どういうことだ」


 アシルは肩に引っかけていた女の荷物を地面に降ろした。

 そして、女の荷物を開けた。


「エッ!」


 普段、あまり感情を表に出すことのないアシルが驚いた声をあげた。


「どうした、アシル?」


「うげっ。なにコレ……あの女、こんなの背負ってたわけ?」


 フィリオが荷物の中身を見て、表情をくもらせた。


 ミレイアと俺も女の荷物をのぞく。


 そこには、人骨がつめこまれていた。


「気持ち悪い……本当に村へ行く帰りだったの?」


「どういうことだ?」


 ミレイアに聞き返した。


「死霊の山の迂回路を私たちより先に歩いてた。日の出前の私たちよりも早く、明かりも持たずに暗い中を?」


「慣れた道だったのか、夜目のきく女だったのか……ミレイア、まさか」


「そうね。あの女も死霊だった」


「それだったら、知性を持った死霊か。ふざけてる」


「そのふざけてる女よ……」


 森全体に女の声が響きわたった。


 ゾクッと、背筋が伸びた。


 辺りを見回すと、俺の背後に女の発光体が立っていた。


「もうこんなわけのわからない状況は散々だ」


 フィリオが弓をかまえた。

 矢の先がこっちを向いている。


「バカッ、なにをッ?」


 目が血走っているフィリオは、俺ではなく、俺の背後にいる女を狙っていた。


 一直線上にいるミレイアと俺の姿が見えていないのかっ。


「ミレイア、ふせろ」


 サッと、ミレイアと俺がふせた瞬間に、フィリオの手から矢が放たれた。


 ヒュッ、と一瞬で矢が通りすぎた。


 倒したのか?


 ふり返って確認する。


 女の発光体は静かに光を失っていく。


 完全に光がなくなったと思ったら、また発光しはじめた。


 ――やっぱり、コイツにも攻撃はきかないか。


「もうイヤだぁ〜よぉ……オレ、もう戻る……」


 泣きそうなのか、泣いてるのか?


 フィリオは、泣き言を言い放って、来た道を走り逃げてしまう。


「バカが。戻ってどうする。進むなら、前に進め……クソッ、聞いてねぇのか」


「スレッグ、どうするの?」


 ミレイアが聞いてきた。


「いったんフィリオを追いかけて止める。パニックになったヤツを1人にさせるわけにはいかない」


「うん」


 実際は、そんな気はさらさらない。

 フィリオのやつが町に戻られると困るんだよ、俺が。


「これ、どうする?」


 アシルが骨の入った荷物を指差した。


「そんなもの、捨て置け。しょうもないものをつかまされたぜ」


 すぐさまフィリオを追いかける。


 ――このまま町に戻られて、フィリオがこのことを言いふらしたら、また俺の評判が落ちてしまう。


 クソッ、あいつはどこまで戻ったんだ?

 これじゃあ、森を抜けちまうぞ。


 少し先にフィリオが突っ立っているのが見えた。


「いた。おい、フィリオ」


 フィリオがゆっくりと青ざめた顔をこちらに向けた。


「ぜんぜん森を抜けられない……道がずっと……」


 涙目のフィリオを無視して、先の道を眺めた。


 道がずっと奥までどこまでもつづいているように見えた。


 ただただ真っ暗な森がつづている。


「死霊の山の迂回路すらない」


「まさか、迷った?」


 アシルがぼそっと言った。


「そんなことあるわけないでしょ? ここまでずっと1本道だったんだ。迷うはずがない」


 ミレイアがアシルに言い返す。


 その通りだ。


 しかし、まるで道が伸びているかのように、森の出口がない。


「あなたたちもずっとここにいれば、わたしのようになれるわ」


 女の発光体が、太い木をすり抜けて現れた。


「ギャァァァァ、もうコイツ、なんなんだよぉ〜」


 取り乱したフィリオが、矢を3本取って、放つ。


 ガガガッっと、女の発光体を貫くが、矢が木に刺さるだけだった。


「肉体に縛られることなく、自由に動けるのよ。ふふふ……」


 女の発光体が消える。


「うっ、うわぁぁぁぁ」


 フィリオが腰を抜かした。


「ど、どうした?」


「き、木に、ひ、人の顔が……」


 矢の刺さった木をフィリオが指差した。


 木の表面に人間の顔が浮かびあがっている。


 まるで、顔が木と同化しているようだった。


 苦しんでいる顔だ。女なのか男なのかはわからない。


「ここにずっといれば、こいつのように取りこまれるってか」


「もっ、もうーイヤだよ〜」


 情けない声をあげたフィリオが、また逃げ出す。


 今度は道を前に進むように走り去る。


「おい、フィリオ。勝手な行動をするな。バラバラになったら、この森の思うツボだ。クソッ、俺の話を聞けっての。追うぞ」


 今度はすぐに追いついた。


「おい、フィリオ、落ち着け!」


 と、肩をつかんだ。


「ギャァァァァ〜〜〜」


 ふり返って俺の顔を見るなり叫ぶ。


 俺の頭上に女の発光体があった。


 もうそれに恐怖することはなくなった。だんだん慣れてきた。


 一瞬、目をそらしたすきに、フィリオがまた走り去る。


「クソッ」


 フィリオを追いかけていると、フィリオの走る方向に一点の光が見えた。


 それは、発光体ではなかった。


 常時、光っているなにか。


 その光にだんだん近づいてて大きくなっていく。


 フィリオの走りが止まった。


「家……か?」


 森の中に突如、現れた小さな家。


 そこだけぽっかりと、空いたよう空間だった。


 発光体が現れることはなく、不気味な声も聞こえてこない。


「森を抜けたのか?」


 ミレイアが周囲を見回した。


「どうだろうな。人がいそうな気配はするが、まともな人だといいがな」


 俺はその家のドアに手をかけた。


「暗黒騎士パーティーはどうなる?」

「おもしろかった!」

「続きが気になる!」


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