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第21話 ドラゴンのうろこ

 おいおい、家の庭……こんなに広いのかよ。


 翌朝、あくびと背伸びしながら、日の光を浴びた。


 包んであった布を広げて、折れた黒い剣を見つめた。


 直るといいんだがな。


「おはよ〜ございます」


 目をこすりながら、エレナとアルスが起きてきた。


「おぉ、起きたか」


「なに見てるの?」


 エレナが顔を出してきた。


「折れた剣だ」


「こんな硬い剣が折れちゃうなんて……」


「ううっ……本当に申し訳ございません……わたしがなにも知らずに硬質化させてしまったせいで……」


 朝一からアルスは泣きそうな沈んだ顔になってしまった。


「それだけアルスの腕が良かったってことだ」


「……」


 その腕を持ったアルスをクビにする職場や大人は見る目がないな。


「褒めてるんだけどな……直せそうか? もちろん修理費はちゃんと払う」


「あ、い、いえ、そんな……なにもかもお世話になりっぱなしで、修理費なんて……」


「で、どうだ?」


「そ、そうですね……」


 アルスは折れた剣を念いりに見つめる。


 その目は、自分を認められない少女のものではなく、魔道具師として物と向き合う目をしていた。


「剣の材質からすると、いくつか材料が必要です」


「材料?」


「だいたいのものは町でそろえられるとは思うんですが、ドラゴンのうろこがないと、折れた部分が完璧に接合できないかもしれません」


「ドラゴンのうろこね……城に飛竜がいるけどな」


 と、エレナに視線を送った。


「うん、いるね」


「あっ、どのドラゴンのうろこでもいいわけではなくて、おそらくブラックドラゴンと呼ばれるドラゴンのうろこじゃないと……」


「ブラックドラゴン……すごい強そうな名前のドラゴンね……城にはいないよ」


「町で売ってたりしないのか?」


「ど、どうでしょうか……」


「ひとまず町にあるか聞いて回ってみるか。それと、アルスの職探しもしないとな」


「あ、はい……本当になにからなにまでご迷惑おかけして申し訳っ……」


 ピタッ


 と、頭を下げようとするアルスのおでこに手で当てて止めた。


「うっ」


「いちいち謝るな。何度も謝られると、ここぞってときにその態度が半減する」


「は、はい……で、では、こういうときはなんて言えば……」


「ありがとう、でいいんじゃないか?」


 アルスの顔がパッと明るくなった。


「はい、ありがとうございます」


 寝ぐせのついた水色の髪を振り乱すように、勢いよく頭を下げた。




 ドラゴンのうろこがあるか、町の道具屋に向かった。


「ドラゴンのうろこねぇ。なかなか出回らない代物だよ」


 店主の男は、あごに手をやって答えた。


「もし、売っていたとしても、高額な値段か」


「そうだなぁ。ドラゴンのうろこを採取するにしたって、命がけになるしな。そんな高額なものは、うちのような普通の道具屋には扱えないけどな」


「そうか。話は変わるんだが、コイツを雇ってくれたりしないか?」


「な、なんだい、急に……」


 店主は少し困惑した。


「コイツ、魔道具師なんだが、カネがなくて働き口を探している」


「お嬢ちゃん、魔道具師か。うちではその手の仕事はないな。すまんな」


「いや、別のところを当たるよ」


 そもそも魔道具師ってのは、どういうところで働くものなのかね。

 そういうギルドでもあれば、手っ取り早いんだが。


 町の店をいろいろ回ってみたが、ドラゴンのうろこはなかった。


 14才の少女を雇ってくれるところは、残念ながらどこにもなかった。

 

「キール。ドラゴンのうろこもわたしの職場探しも成果がなくて、もうしわっ――」


 ピタッ


 またアルスのおでこに手を当てる。


「どこにもないんなら、取りにいくか」


「えっ?」


 キョトンとした目のアルスに見つめられた?




 情報を得るならと、パブへ向かった。


「いらっしゃい。ははっ、賞金稼ぎ仲良し3人組」


 店に入って早々、マスターうからかわれた。


「アドルフ、その呼び方はやめてくれ」


「どんどん増えていったりしてな」


「そうなったら、いくら稼いでも足らなくなるぜ」


 誰も座っていないカウンター席に座った。


「それで、今日もうちの店を繁盛させに来てくれたのか?」


「バカを言え。もうここには、こねぇぞ」


「そんなこと言わないでよ、キール。昨日はすごく楽しくて、お料理おいしかったんだよ。私、またここのお料理食べたいの」


 本気にとらえたエレナが、泣きついてくるようにして俺の胸元から見あげてくる。


 ――なんで姫さんがそんなに必死なんだよ。


 エレナの口をわしづかみするように、頬を指でつかむ。


「むぎゅ」


 エレナの唇がとがって、アヒル口になった。


「エレナ姫。昨日は、どの口のせいで全テーブルの会計を払うことになったと思う?」


「ふぇ、ふぁふひほへへほふへ……」


「ハハハ……本当に仲がいいね。で、次の賞金首かい?」


 アドルフが笑顔で聞いてきた。


 俺はエレナの口から手をはなしてやった。


「それもあるが、ドラゴンのうろこが必要でな。どこかにないか?」


「ドラゴンのうろこ? それはまた大変なものに手を出すね……そうだな」


 アドルフは少し思考をめぐらせてから続けた。


「ドラゴンの類いは、そうそう出回らないからな。あるとしたら、ドラゴンのいるドラゴンの谷だ」


「ドラゴンの谷……直接、取りに行ったほうが早いってことか」


「王都から北西にいくつか山を越えるとドラゴンの谷はある。だがな……」


 アドルフの表情がくもった。


「なんだ?」


「ドラゴンの谷にはドラゴンハンターがよく出没している。ドラゴンを密猟している」


「ドラゴンハンター?」


「ドラゴンを殺して、うろこや牙、爪、珠、血肉を売っているやつらさ。どれも高額で売り買いされてるって話だ。ドラゴンを殺してしまうくらいだ。相当、極悪だよ。密猟集団の首謀者がコイツと言われている」


 アドルフが手配書をカウンターに置いてつづけた。


「賞金700万のA級。ドラゴンハンターのオーディス・フォン・ベル」


「額があがったな」


「これはリフレリアだけの問題じゃない。大陸側にもモノが流されているからな」


「わざわざリフレリアに来て、ドラゴン狩りをしているのか」


「世界にはドラゴンの住み処がいくつもあるらしい。でも、守りが手薄で、住み処に入りやすいのがリフレリアだ」


 なるほど。

 リフレリア国の状況を考えると、そこまで見守っている余裕はないだろうな。


「ふん、ちょうどいい。ドラゴンのうろこを取るついでに、賞金首も獲ってくるか」


 ドラゴンの谷か……あわよくば……。


「おいおい、どっちもついで(・・・)になるレベルじゃないぞ」


「ドラゴンの谷かぁ。面白そうなところ」


「あぁ、そうだな」


「お、おい。簡単に言うが、ドラゴンの谷は遠いぞ。歩いていくにしても数日はかかる」


 アドルフが焦って言った。


「じゃあ、ドラゴンで行こうよ。お父さまに貸してもらえるか聞いてみるよ」


「おう、それなら早く着けそうだな。頼む、エレナ姫」


「うん!」


 アドルフは俺たちの行動を止めることは無理だと言うように、ため息をついていた。


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

「そろそろ暗黒騎士パーティーの行方も気になる!」


と思ったら


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