第20話 宴とお風呂と……
宴の会場は、パブ兼賞金稼ぎギルドだ。
「いらっしゃい。お、キール、A級ランクの賞金首を獲ったな」
パブに入ると、マスターのアドルフが口早に言って、酒を運んでいる。
「あぁ。今日はその宴だ。注文するからじゃんじゃん頼むわ」
空いているテーブルに着いた。
「リフレリアに来て早々に、2人の首を獲っちまうとは驚きだ。またお仲間が増えたのか?」
アドルフがアルスを見て言ってきた。
「魔道具師のアルスだ。なかなか言い腕を持っている」
「いえ、わたしなんか全然……褒めてもらえるような働きはできておりません」
アルスはしょんぼりとしてしまう。
「俺の剣を砕くほど、山賊の短剣を硬質化させただろ」
「えっ? キールの剣、あの黒い剣を折っちゃったんですか」
アドルフは驚いてアルスを見つめた。
「あぁ」
「ほ、ほんと申し訳ないことをしてしまいました。脱いでお詫びいたしま――」
「いや、脱がなくていい」
服を脱ごうとするアルスの動きを止めた。
この思考、どうにかならないもんか。
「しかし、キールの大切な剣。賞金稼ぎの商売道具をわたしはなんていうことを……わたしが、山賊の短剣を硬質化してしまったから」
今にも泣きそうなアルス。
「あれは、山賊に捕まってさせられていたことだ。自分を責めなくていい」
「は、はい……」
「そんなことは忘れろ。それよりも、さぁ、食って飲んで楽しめ。今日は俺のおごりだ。好きに食え」
「みんなー、今日はキールのおごりだって〜」
エレナが席を立って、店中に言いふらす。
「あっ、おい! みんなじゃねぇよ。このテーブルだけだよ」
俺はテーブルを叩いた。しかし、遅かった。
「おおー!」
「さすが、稼ぐ賞金稼ぎはちがうねー」
「気前がいいね」
「マスター、もう1杯」
「こっちも〜」
店内のあちこちから声があがり、店内は盛りあがってしまう。
「なに言ってんだよ? 全員におごるなんて言ってねぇよ」
くそっ。俺の声なんて聞いてやしない。
嬉しそうに飲み食いしやがって……。
「エレナ姫さんよ。あんたが勘違いして言っちまうから……」
「そうケチケチするなよ、稼ぐ賞金稼ぎさんよ。俺は嬉しいよ」
「あぁ?」
俺はアドルフをにらんだ。
「キール。みんな、あんたには感謝してるんだ」
「アドルフ。だったら、おかしいだろ。この場合、逆だろ」
「みんなを祝ってやってくれよ。キールがこのリフレリアに来なきゃ、こんな日は来なかったんだ」
マスターの嬉しそうな顔に俺は返す言葉がなかった。
「チィ。たく、繁盛してさぞいいだろうよ」
「賞金首の情報は、いろいろあるから次も頼むよ」
「たく、調子がいいぜ、マスター」
しばらくして注文した料理が、たくさん運ばれてきた。
テーブルの上はあっという間においしそうな料理でいっぱいになった。
俺は仕事終わりの1杯のジョッキを勢い良く傾けた。
「いい仕事したあとの酒はうまいぜ」
「はい、こんなおいしいお料理ははじめてですぅ〜」
笑顔と涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、アルスは食べていた。
「このリフレリアにもこんなおいしいものがあったなんて知らなかった」
エレナは城での食事作法を忘れてしまったかのように、ガツガツと料理を口に運んでいた。
エレナにしろ、アルスにしろ、どんな環境にいたんだよ。
「そうだ、アルス」
「ふぁい」
口にものが入ったまま顔を向けてきた。
「剣の補修を頼みたい。さっき話した折れた剣だ。修理はできるのか?」
「はい、もちろんです。もう本当になんて言ったらいいのか……」
「だから、もう折ったことは忘れろ。新しい剣を探してもいいんだが、折れた剣も悪い剣じゃない。直して使えるなら使いつづけたいんだ」
「は、はい……」
「明日にでもみてもらたい」
「わかりました」
こうして、注文がされていくたびに、俺の賞金が減っていった。
とはいっても、今回の額はそこそこある。痛手にはならなかった。
パブを出て、家のある城のほうへ向かう。
エレナを送るためでもあるのだが。
「あ〜、おなかいっぱい〜。おいしかったね、キール」
エレナが、さも当然のように俺の腕にしがみついて言ってくる。
「そうだな。思ったよりマスターの腕がいいようだな」
「こんなにたくさん食べたのもはじめてですぅ」
「そうだ、アルス。今夜は俺の家に泊まれ」
「そ、そんな……わたしは、その辺で寝るので大丈夫です」
アルスは建物の裏手を指差した。
「なにが大丈夫だ? 子供をその辺に寝かすわけにはいかねぇよ」
「しかし、食事もいただいて、寝る場所まで……」
アルスは申し訳なさそうな顔をしていた。
「ずっと仕事を探しつづけて歩きづめだったんだろ? しばらくうちを使えばいい。広いから、1人増えたところで問題ない」
「じゃあ、私もキールの家に泊まる」
さらにがっちり腕を捕まれてしまう。
「城に帰る気がないのか、姫さん」
「うん。ない!」
「きっぱりいいやがった」
「キールと一緒がいいんだもん」
王女の自覚はないのかね、まったく……。
エレナとアルスを家に連れてきた。
姫の行く宛てがわかっていれば問題ないだろう。
エレナとアルスを風呂に入れた。
風呂場からは、2人の楽しそうな声が響いてきていた。
最初こそ、風呂の広さに驚いていたアルス。
湯の温かさにリラックスして静かになった。
「キールもどうぞ」
「あぁ」
肌をピンク色にほてらせた2人が戻ってきた。
「一緒に入ってあげようか?」
「なんでだよ。いま、出たばかりだろ? もうやることはないんだ。アルスと一緒に寝てくれ」
「私はキールとなら、また一緒に入ってあげるよ〜」
「いいよ。ゆっくりさせてくれ」
「じゃあ、背中流してあげようか?」
「自分でやるからいい」
「遠慮しなくいいよ」
バカまじめに見つめてくるエレナに手を振って部屋を出た。
体を洗っているときだった。
ドアが開いた。
「背中、流しに来たよ」
「呼んでない」
一応、タオルは巻いているか。
少なからず恥じらいはあるのか。
「いいからいいから」
そう言いながら泡のタオルを俺から奪い取って、背中を上下にこすりはじめた。
「大きな背中だね」
「そりゃ、どうも」
タオルの動きがいつの間に止まり、もっと柔らかなもので背中がこすられていた。
こすれているというより、もっとスベスベしたもの……。
ふっと、背後を見ると、エレナの顔がすぐそこにあり、全身が上下に動いている。
「姫さん、なにしてる?」
背中とエレナの間にあるのは、泡とその泡に包まれた柔らかな胸だった。
「私ので、キールの背中を洗ってるの? どう気持ちいい?」
「あぁ、悪くはないよ……そんなこと、どこで覚えた?」
「ん? ジルが教えてくれた。おっぱいは好きな人への武器だって」
――ジルさんよ。一国の姫にナニを教えている?
しばらく2人で風呂につかった。
エレナは俺から体を離すことはなかった。
2度目の風呂だというのに、よくのぼせないものだ。
風呂からあがると、アルスはウトウトして首を落としかけていた。
部屋に連れて行き、ベッドに寝かす。
しかし、アルスに腕をつかまれた。
「なんだ」
「あの、1人だと寝られないので、隣で寝てくれませんか?」
「はっ?」
「職場では、みんなで雑魚寝で……必ず隣には誰かいたのが普通だったので」
「じゃあ、3人で寝よう、キール」
――なんで、そうなる。
結局、俺を真ん中にして、エレナとアルスに挟まれて寝ることになってしまった。
「こうして引っついていると安心します。これでぐっすり眠れそうですぅ……」
「わたしもキールの温もりを感じながら寝ると安心するのぉ……」
――せまい。
窮屈さを感じながら、眠りにつくのだった。
「おもしろかった!」
「良かった!」
「そろそろ暗黒騎士パーティーが気になるかも!」
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