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第17話 無詠唱魔法で賞金首を倒す

 翌朝、エレナと一緒に朝食をとってから、コルトと落ち合った。


「おはようございます、キールの旦那ぁ。ちゃんと用意しておきやした」


「ちゃんと言うことを守ってくれたようだ」


「もちろんですよ。テオの旦那にも、谷を通る連絡鳩も飛ばしておきやした」


 馬と荷車が用意されていた。

 荷車には木箱が積まれていて、全体に布がかぶさっていた。


「本当に俺も行くんですかい? キールの旦那ぁ」


「行くんだよ。誰が馬のたずなを握る?」


「お、俺っすよね……」


「あぁ」


 俺とエレナは、荷車に乗り、箱の陰に隠れた。

 コルトがもう一度、布がちゃんとかぶっさっているか確認する。


「もし、テオが現れたら、身を隠していろ。もし裏切ってどこかに逃げても、その暗黒印が体の自由を奪ってくれるから安心しろ」


「そんなの安心できないっすよ〜。イヤっすよ、痛くて苦しいのは〜、旦那ぁ」


「出してくれ」


「へいへい……」


 コルトはローブのフードをかぶって、馬に乗って荷車を引く。

 ロマッサの町から谷へ向かう。




「谷に入りまっせ」


 コルトの小いさな声が聞こえてきた。


「そのまま進め」

「へ、へい……」


 コルトの声は震えて、怯えているのがわかった。


 谷の真ん中辺りに来たときだった。


 ヒヒーンと突然、馬が鳴いて、荷車が止まった。


「死にたくなかったら、荷車をおいて逃げろ。5秒以内だ。5、4……」


 コルトとは別の男の声が谷に響いた。


 荷車のすき間から、辺りを見回す。

 崖の上に短剣を持った男が1人立っていた。


 ――アイツが山賊のテオ・リュッカーか。


「ひぃっ」


 コルトは、慌てて馬から下りた。

 逃げ出す際に足がもつれてコケた。

 パサッと、かぶっていたローブがめくれた。


 荷車からもそのドジったコルトの姿を確認できた。


「コルトか? 貴様、なんのつもりだ」


「へっ? あっ」


 頭を触ると、フードがなく焦っていた。


「あ、こっ、これは……」


 テオは、崖の上から軽々と飛び降りて、コルトの前に着地した。


「テオの旦那。これは違うんだ」


「お前が今日の連絡をよこして、なぜ、お前が荷物を運んでいる?」


「そ、それは……いや、ほんとに何も企んじゃいない」


「コルト、貴様、なにか企んでいるな」


「そ、そんなことは……お、俺はこれで用が済んだんで」


 逃げようとするコルト。

 ふたたびコケる。


「用済みなのは、お前のほうだ。コルト」


 テオは、短剣をかまえてコルトに飛びかかった。


「いや〜、勘弁してくれ」


「おっと、そこまでだ」


 キールは荷台から飛び出して、コルトの前に立った。


「お前の所業もここまでだ」


「誰だ? コルト、コイツに頼まれたのか?」


 コルトは勢い良く首を縦に振っている。


 ――わかっていたが、コイツは誰にでもシッポを振るな。


「俺は賞金稼ぎだ。テオ・リュッカー、お前をつかまえに来たんだよ」


「なにを企んでいたのかと思えば……俺をおびき出したと思ってるんなら大間違いだ。このままお前らはここで殺されるんだっ」


 テオは短剣を振りかぶって、地を蹴ってかけ走ってきた。


 剣をかまえつつ、テオの剣をかわしていく。


 思ったより速い。

 だが、よけてばかりじゃ面白くない。


 俺も剣を振りかざす。


 しかし、よけられてしまう。


「チィ」


「賞金稼ぎ、少しはやれるようだな」


「ふん」


「次は、さっきのようにいかないぞ」


 テオは短剣をさらにすばやく振り回してきた。


 剣で防ぐ。


 バキーーーン


 谷一帯に、剣の折れる音が鳴り響いた。


 なにっ!


 おいおい、この剣だって相当硬いはずだぜ。

 それを砕き折ったあの短剣……。


「へぇー、たいした硬質化だ。普通の短剣がここまで硬くなるとはな。へへっ」


 その短剣を向けてくるテオ。


「殺されたくなければ、5秒で逃げるんだな。5……4……3……」


 仕方ない。剣なしでやるか。

 ダガーもあるが、剣を折るほどじゃ、ダガーも同じ目に合う。


 折れた剣を地面に投げ捨てた。


「まさか素手で、この俺様とやろうって……いや、コイツ……」


 突然、テオの表情が青ざめたように変わった。


 そして、背中を向けてかけ出して飛びあがり、林の中へ逃げていく。


「逃がすか。お前らはそこにいろよ」


「へ、へい」


 コルトの返事は聞こえたが、エレナの声はなかった。


 だが、なにがあっても荷車から降りるなと言ってあるから平気だろう。


 俺もテオを追って、林の中に入る。


 テオの姿はないが、気配を感じる。


 木の陰から、矢が飛んでくる。


 サッと、体を少しだけずらして簡単によける。


 全方位から一斉に弓が放たれる。


 ――そんな小細工程度で、俺には当てられないぜ。


 弓を寸前で跳びよけた。


「そろそろ逃げ回るのも疲れただろ?」


 わざと、テオが隠れている木陰とは逆に向いて言った。


「お前、ただの賞金稼ぎじゃないな? どうして俺の仕掛けた罠にかからない?」


「俺くらいになれば、そんなもの見ればわかるんだよ」


「バカな……」


 ガサッと、わずかにテオ以外の足音がした。


「キール? どこー?」


 ――なぜ、山に入ってきた。罠があることも知っているはずなのに。まったくじっとしていられないお姫さんは……。


 ガサガサッと、テオの移動した音がする。


「チィ」


 当然か。

 エレナを狙う気か。

 ヤツのほうが速いか。


 それなら――。


 ――急・閃鋭風針キュー・エッジドウィンドショット


 サッと、テオに向かって手を振りかざした。


 光の矢のごとく、空気の針が高速に真っすぐ発射される。


「ぐわぁぁぁ……あっあああああ……」


 テオの太ももをなんの抵抗もなく貫いた。

 その先にあった太い木の幹にも丸い穴を空けてしまう。


 テオは、バランスを崩して落ち葉を舞いあげて転がった。


「骨は外しておいた。あまり大けがさせちまうと、賞金を差し引かれちまうんでね」


 痛みに絶えて冷や汗をかくテオの服から、隠し持つ武器を全部奪った。

 そして、罠のロープでテオを縛った。


 痛みでそう簡単には逃げられないだろうがな。


「ハァハァ……おまえ……いったい、何者だ……」


「ただの賞金稼ぎだ」


「ウソだ。罠を見抜く観察眼。それに俺の足を貫いた魔法は、無詠唱で魔法が発動するはずない」


「そうだったかな? 俺はただの賞金稼ぎだぜ」


 血が出ているぽっかり空いた穴の少し上をロープで縛る。止血する。


「このまま死なれても困るんでね。っと」


 テオを無理矢理立たせた。


「キール。良かった、いた」


 エレナが息を切らしてやってきた。


「なんで来たんだよ。荷車に隠れて待っていろって言っただろ」


「だって、剣が折れちゃったみたいだし、キールが心配だったの」


「その程度で心配されるほど、やわじゃないぜ。姫さん」


「えっ、アンタは――っ」


 テオはエレナの顔を見て、誰なのか気づいたようだった。


「あんた、本当にいったい何者なんだよ……」


「テオの旦那……」


 そして、コルトもあとをつけてやってきた。


「コルト……」


 テオとコルトは、それから口をきくことはなかった。


「さて、お前の住み処に案内してもらおうか。奪った金品も回収させてもらう」


「くそ……」


 テオを支えながら、テオの住み処へ向かった。


「おもしろかった!」

「続きが気になる、読みたい!」

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