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第15話 ロマッサの町

 夕方、ロマッサの町に到着した。

 荷物を載せた荷車が、行き交っていているにぎやかな町だった。


「王都の町とはぜんぜん雰囲気がちがうのね」


「そうだな。王都手前の町。各方面からの道がここで交差しているんだろう。いろんな物がいったん集まってくるみたいだな」


「へー。そうなんだ……」


 エレナはキョロキョロと目に映る物にひっきりなしに反応している。


「時間に余裕があれば、町を見て回ってやりたいところだが、我慢してくれ」


「う、うん。これはキールのお金を稼ぐお仕事だもんね」


 エレナは強く何度もうなずいた。

 自分に言い聞かせるように、必死に高まる興奮をおさえているようだった。


「町に来たけど、これからどうするの?」


 エレナが聞いてきた。


「まずはバウンティーハンターギルドに行く」

「うん」


 といっても、パブに向かう。


 たいていの賞金稼ぎギルドは、パブにあることが一般的だ。

 それもまともな運営をしているパブに。


 このロマッサの町ももれなくパブの中だ。

 3軒まわって、ギルドのあるパブを発見した。


「お客さんでいっぱいだね」


 パブに入ると、席のほとんどが客でうまっていた。


「商人の町だな」

「いらっしゃい」


 カウンターの2つだけ空いた席に座ると、店主が酒を注いでいた。

 エレナは周りに興味を持ちながら、静かにイスに座った。


「賞金首のテオ・リュッカーについて聞きたいんだが」


 折りたたんだ手配書を開いて見せた。


「賞金稼ぎかい?」


「あぁ」


 店主の男は少し驚いたように、一瞬俺を見つめていた。


 ちらっとエレナのことを見て、本当に賞金稼ぎなのか疑ったのだろう。


 エレナの格好だけ見れば、賞金稼ぎの仲間に見える。


「見ない顔だな。ちょっと待ってろ。コレを出してくるから」


 店主は酒を客のテーブルまで運んで戻ってくる。


「山賊のテオかい?」


「あぁ。どこにいるか、なにか情報はあるかい?」


「いやー、俺たちも……んや、この町のみんなも欲しいんだよ。ヤツに関する情報は……」


「姿が確認できていないのか?」


「あぁ。前にヤツがよく現れる谷周辺を山狩りしたんだが、まったく進めなかった」


「罠か?」


 店主はどうしてわかったんだというように驚いて、うなずいた。


「いたるところに罠があって、一歩も踏み入れることができなかったって聞いたよ。谷の周りの山にいることは確かなんだがな」


「探索してみないとダメか……」


 時間がかかりそうだな。俺は軽くため息を吐いた。


 あんまり時間をかけたくない。

 残りの所持金が心もとない。

 俺1人ならまだしも、エレナ姫もいるからなぁ……。


「コイツがテオとつながっているという話はある」


 店主はもう1枚、手配書をカウンターに出した。


「コイツは?」


「コルトっていうと男だ。コイツがテオに情報を流しているようだ」


「ん、なんだよ、この賞金額は?」


「そういうやつだよ」


「まぁ、どこにでもいるか」


 ヒョコッとエレナが体をくっつけてきて、コルトの手配書を覗きこんできた。


「3千……セピー? 3千万?」


 エレナが首をかしげた。


「3千だよ」


「すごく安いね。簡単につかまえられるね」


「つかまえるだけ損ってこともあるんだよ」


 だいたいこういうヤツは、いろいろ軽いんだよな。


「コルトならこの町のどこかをふらついている。一度、とっつかまえて吐かせるのもありかもな」


 店主は微笑んだ。


「ありがとう。ちょっと、コイツを当たってみるわ」


「少しでも早くテオをつかまえて欲しい」


「あぁ、やれるだけやってみるさ。行くぞ」


「うん」


 俺たちはコルトの手配書を手にして、パブを出た。


 バサッ


「うっ、なになに?」


 コルトの手配書をエレナの眼前に見せつけた。


「コイツの顔を覚えろ。コイツを見かけたら声をかけろ」


「う、うん」


 エレナは手配書を両手で持って、辺りを見回しながら何度も手配書に視線を落とす。


「うーん、ちがう。ちがう。ん? ちがう。この人もちがう。ちがう……」


「おーい、離れるなよ。はぐれちまうぞ」


「えっ、待ってよ、キール。おいていかないで」


 エレナは慌てて俺の姿を見つけて、追いかけてくる。


「先にいかないでよ。早いよ」


「歩きながら探せないのか」


「ひとりひとり確認しないとダメでしょ」


「そんなことしてたら、日が暮れるどころか朝になっちまうぞ。いいんだよ、適当に見てりゃ」


「見逃しちゃったら、どうするのよ」


「問題ない。俺も見てる」


「私だってキールのお手伝いがしたいの」


「それじゃあ、しっかり頼むよ」


「なによ、その適当な感じ」


 そうはいいながら口をとがらせつつも、歩きながらコルトの顔を探すエレナ。


 町の半分くらいをざっと歩いてみたが、コルトらしい男は見つからなかった。


 夕飯を探しに店通りを歩いているんじゃないかと思ったが……。


「ちょっと聞きたいんだが」


 通りがかったアイテム屋に入った。


「いらっしゃい。なんだい?」


 かっぷくがよく、明るい声の女店主がいた。


「コイツを見たことはないか?」


 俺がそういうと、エレナが持っていたコルトの手配書を店主に見せた。


「たまに見かけるね。この通りを歩いてるよ。やっすいね、ははは……」


「どこにいるか知らないか?」


「こういうおたずね者は、西の居住地辺りに集まってるよ。そこはそういう場所だ」


「そうか。助かった。ありがとう」


「あ、ちょっとあんたたち」


 女店主に店から出ていくの引き止められた。


「あんたたち、ここの町の者じゃないだろ?」


「そうだが。今日、王都から来た」


「だったら、少女と会わなかったかい? ちょっとボロ服着た14才の魔道具師の女の子」


 ――山で会った子か。魔道具師だったのか。


「あぁ、それっぽいのと会ったな」


 エレナと目が合ってうなずいた。


「そうかい。無事、谷を迂回できたようだね?」


「会ったの山の中だったけどな」


「それ、本当かい? あれだけ谷と山はあぶないから、海側を行きなって言ったのに」


「安全なところまで見送ったから、無事、山は降りられたと思うが」


「そうかいそうかい。助かったよ」


 女店主は胸をなでおろした。


「その子はどうして……」


「うちで働かせてくれって来てね」


 そういえば、働き口がどうとかって言ってたな。

 14才で働くって……。


「うちは間に合ってるから断ったんだ。ずいぶんこの町で頼みこんでたみたいだけどね。そしたら、王都へ行くって言うから、安全な道を教えたのさ」


「また王都に戻ったら、確認してみるよ」


「あぁ、そうしてくれると私も安心するよ。止めて悪かったね」


「情報をありがとう」


 アイテム屋を出て、西の居住地区へ向かった。


「魔道具師って、なに?」


 裏路地を歩きながら、エレナが聞いてきた。


「簡単に言えば、魔法で道具を作る人だ。人の力じゃできないことができたりする」


「へー。あの子、魔道具師なんだ」


 実力はどうかわからないがな。


 薄汚れた小さなパブの外テーブルに3人の男が酒を飲んでいた。

 その中に、コルトがいた。


「いたぞ」


「えっ?」


 エレナは手配書を慌てて確認して、男に目を向ける。


 コルトは俺と目が合うやいなや、ガタンとイスを押し倒して走り出す。


「ちっ、追いかけるぞ」


 ――だから、この手のヤツは……


「エッ、ちょっと待ってよ、キール」


 エレナも必死に走り着いてくる。


「キールたちは、どうなるのっ……!」

「おもしろかった!」

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