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第1話 暗黒騎士パーティー追放

「キール・ハインド。暗黒騎士パーティーにふさわしくないお前には、今をもってパーティーから離れてもらう」


 リーダーのスレッグから、俺は突然の追放宣告を受けた。


「は? 今、みんなで死霊の山の偵察から帰ってきたばかりで何を言っている? 冗談だろ?」

「本気だ」


 黒い兜の隙間から俺を見るスレッグの目は、冷たかった。


「パーティーを追い出される理由がわからない。今日だって、俺は一人先にルートの偵察してマップを広げた。パーティーに貢献している」


「キール。20才過ぎのお前をパーティーに加えて2年と少しか。お前に暗黒を扱う素養がないことにもっと早く気づくべきだったよ」


「いや、待てよ、スレッグ! 俺だって暗黒は使ってきたし、パーティー技にだって暗黒を放出してるだろっ」


 俺はギルドのテーブルを叩くようにして立ちあがった。


「お前がもっと強大な暗黒の力を制御しうる者だと思っていた。しかし、待てど暮せど、たいして暗黒の力を増やして自分を追いこまない。それでは真の暗黒使いにはなれない。期待していた俺が悪かった」


「何を言っている……」


 哀れんでいるようだが、遠回しに俺が悪いと言っているようにしか聞こえない。


「そんな貧弱な精神しかないお前は、俺が率いる暗黒騎士パーティーにはふさわしくないんだよ。俺たちはこれから死霊の山を越え、王からの使命を果たしに地獄の谷へ行く。そして、その役目を完遂した時、試練の山に挑戦して俺は聖騎士(パラディン)になるんだよ」


「そのために俺も一翼をになってるだろ――っ」


「もう黙れっ 窮・暗黒拘束キュー・ダークホールド


 暗黒魔法使いの女・ミレイアに俺は魔法をかけられて、全身が動かなくなった。


 俺は、その場に倒れていく。


 黒いローブをまとい、黒いレースのアイマスクで顔を隠したミレイアのスラッとした生足が目に入る。


 くそっ――。

 あっ、くっ、舌も体もしびれていく……。

 コイツの拘束魔法、俺のマナの発動すらも縛るとは……。


「スレッグが消えろって言ってるんだ。さっさとその指示に従えばいいんだよ」


「ミレイア。他にも人がいるんだから、静かに」


 がたいが大きなもう一人のダークナイト・アシルがおっとりとした声でなだめる。


「ああ? コイツだって、スレッグに大声で楯突いてただろ?」


「まぁまぁ……」


「口を閉じてれば、かわいいのに。それだから、冷血魔女って言われるんだよ!」


 つぶやいたのは、黒いアイマスクをした暗黒弓使いのフィリオだった。


「ああ? フィリオも何か言ったか。お前もコイツと同じように体も口もきけないようにしてやろうか?」


「んいや、なーんも言ってませんよ」


 ざわざわと周囲のパーティーから視線を浴びていた。


「あのパーティーは……」

「暗黒騎士、だよな……」

「ここにいるってことは、やっぱり……」

「あぁ、行くんだよ。地獄の谷に……」

「ってことは、闇の指輪を持ってる?」

「そうだな。近づけば、簡単に俺らも闇に飲まれちまう」

「闇に飲まれずにいるってことは、さすが暗黒騎士だ」


 ギルドにいた面々は、小声で暗黒騎士についてささやき合っていた。


「いやー、驚かせてしまってすまない。メンバーのちょっとしたいざこざだ。もう終わるところだ。さぁ、うちらのことは気にせず、続けてくれ」


 スレッグが立ちあがって周囲を落ち着かせるように言った。

 そして、スレッグは俺の前にかがんだ。


 しかし、俺は眼球をスレッグの顔に向けようとしたが、眼球も動かすことができなかった。


「どうだ、身内の魔法にかかる気分は……そうか、気持ちのイイものだろ」


 クソッー。

 まったく体が動かせない。ミレイアの暗黒魔法がここまでとは……。

 まだ言いたいことはあるってのに。


「いいか。もうお前は俺のパーティーには必要ないんだ。お前がいると、これからパラディンになる暗黒騎士パーティーの質が落ちるんだよ。お前が出て行かないって言うなら、追い出すまでだ」


 はぁ? なにをする気だ?

 俺がどうするか言ってない、いや言えないんだよ。

 コイツ、わかってのんか?


「おい、フィリオ。樽を探してこい」


「えっ、なんで?」


「いいから、そこそこ大きい樽を持ってこい」


「へいへい……」


「パーティーに加入してから、新しく手に入れたものは返してもらう。アシル、キールからアイテムと金を没収しろ。あ、剣と投擲(とうてき)ナイフは取ってやるな」


 アシルは静かに俺に近づいてきて、兜や鎧の類い、マント、アイテムポーチ、金を奪っていく。


 俺自身は魔法で動けないのに、アシルは俺の体を動かせるって……。

 俺に触れているのに、ミレイアの魔法にかからないのかよ。


「あぁ、そういえば、そんな顔をしていたな、キール。昔と少し雰囲気が変わったか? 髪が短くなったからか……だが、今日限りでその顔を二度と見ることはない」


 スレッグの兜の隙間から見える口元は、嬉しそうに笑っていた。


 この暗黒騎士パーティーは、ずっと兜や仮面をつけて素顔をさらすことはなかった。


 だから、俺はメンバーの素顔知らない。

 唯一、スレッグは俺の顔を知っていた。

 パーティーに加入するとき以来だ。


「初めて顔を見たからって、同情なんてひとかけらもない。いっそこのまま絞め殺してやってもいいくらいだ」


 ミレイアは俺に手をかざしたまま恨みでもあるのような言い草だった。


「アシル、キールを運び出してくれ」


 俺は、スレッグの指示に従うアシルに担がれて、ギルドを出て行く。




 日の沈んだ浜辺。

 フィリオが持ってきた樽に俺は入れられた。


「キール、自分の命は自分で決めろ。運が良ければ、どこかにたどり着くだろうが、いつになるか。もともと持っていたお前の武器だけは残してやった。苦しくなったら、そいつでひと思いに自分を楽にしてやれ」


「スレッグ、あんた面白いこと考えるな」


 ひょうひょうとしたフィリオが、樽のフタをした。

 樽の中は、さらに真っ暗になった。


「嵐にのまれるか、海獣に食われるか、もっとはやくにみずから海の藻くずになるか」


 ところどころ穴や隙間があり、わずかに外が見える。スレッグの声が聞こえた。


「ミレイア、拘束魔法はしばらく解くなよ」


「スレッグ、私を誰だと思って? ここから少し離れたくらいじゃ私の魔法の効力は落ちないから」


「あいかわらず頼もしいやつだ。アシル、樽を投げ捨てろ」


 ガクンと、樽の中の俺は頭や肩、体のあちこちをぶつける。


 ヒューヒューと樽の隙間から風を切る音が聞こえてきた。


 バシャーンと、大きな衝撃を受けた。海の上に落ちたようだった。


 樽の隙間から海水が、チョピチョピと入りこんできていた。


 クソッたれ。


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