表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

さよなら俺の先生とさよなら高校生の俺~彼女の涙に弱い俺はそのままで~

作者: 来留美

俺が好きになった人は誰にも言えない人。

俺が好きになった人は俺を子供と思っている人。

俺が好きになった人は年上の人。

俺の好きな人は国語を教えてくれる先生。

俺は先生を好きになった。

俺が好きになったのは先生の弱い所を見たからだ。

あれは一年前だ。


◇◇◇◇


俺は理科準備室で道具を探していた。

すると人が入って来てドアの鍵をかけた。

俺、いるんだけど。


「待ってよ。忙しいの。嫌だよ。ねぇ、待って」


入って来た相手は電話をしているみたいだ。


「何で? 私が何をしたっていうのよ」


そう呟いて泣き出した。

俺は誰が泣いているのか見たくなった。

少しだけ、と思い顔を少し出すとバッチリ目が合ってしまった。

涙目で俺に驚いている相手は国語の先生だった。

先生の涙を見るのは気まずい。


「あっ、すぐ出ていくのでその後は泣くなり怒るなりして下さい」

「えっ」

「それじゃあ俺は出ますね」

「待って」

「はい。何か?」

「聞いた?」

「何をですか?」

「さっきの電話よ」

「内容は分からなかったですが、いい話ではなかったみたいですね」

「フラれたの」

「何故、俺にそんなことを言うんですか?」

「君がいたから。話したくなったの」

「俺はあなたの生徒ですよ?」

「そうだけど同じ人間でしょう?」

「先生みたいな綺麗な方だったらすぐに新しい人が現れますよ」

「君はお世辞が上手ね」

「お世辞じゃなくて本当に思ってますよ」

「えっ」


先生の顔は赤くなった。

照れているみたいだ。

俺より年上の大人な先生も顔を赤くして照れるんだな。


「何か先生、可愛い」

「大人をからかわないの」

「それなら俺を子供扱いしないでよ」

「あっ、そうだよね。高校生は大人だよね」


その日から俺と先生はこの準備室で話すようになった。

教室で会うときは仲が良いようには見せない。

俺達のルールだ。

先生と生徒が仲良くなると色んな誤解を招くからって、先生が決めたルール。


「ねえ、君は彼女を作らないの? イケメンなのに」

「俺がイケメンだったら今頃、彼女いるから」

「えっ、君はイケメンだよ」

「そんなことを言うのは先生だけじゃないかなあ?」

「そんなことないよ。一年生の女の子とか君を見て格好いいって言ってるの聞いたことあるよ」

「俺は興味ないかな」

「もったいない。私が君と同級生だったら絶対、好きになってるよ」


先生は笑って普通に俺に言った。

先生には何でもない言葉なのかもしれないけれど俺には嬉しい言葉であり、先生が俺を恋愛対象として見ていないことが分かる。

俺は先生の生徒でしかない。


「あっ、そうだ。これあげる」

「何これ?」

「映画のチケットだよ」

「何で俺に?」

「友達と見るはずだったんだけど友達が仕事になっちゃって行けなくなったから君にあげる」

「えっ、でも二枚あるんだけど?」

「一人では見れないから君にあげる。この映画を見て彼女でも作りなさい」

「この映画って恋愛映画だよね?」

「うん。だから女の子を誘って一緒に見たらいいでしょう?」

「俺にそんな女子いないから」

「君が誘えば来てくれる女の子いっぱいいるわよ」

「それなら先生が来てくれる?」

「私? 無理だよ。私は先生だよ。生徒と一緒には行けないよ」

「それなら偶然会ったことにすれば? ただ一緒に映画見るだけだし、何も悪いことしてないじゃん」

「そうだけど、私達のルールがあるじゃない?」

「それは教室だけのルールでしょう?」

「もう、君はずるい」

「いいじゃん。先生もこの映画、見たかったんでしょう?」

「分かったわよ。それなら映画館の中の席で待ち合わせよ」

「うん」


そして俺と先生は映画館デートをすることになった。

先生はデートなんて思っていないと思うけど。


映画館デートの日は待ち合わせの時間まで俺はソワソワしていた。

時間が過ぎるのが遅い。

早く先生に会いたくて仕方ない。

先生はどんな服装で来るのか楽しみだ。

先生は若いし、可愛いから俺の想像は膨らんだ。


俺は先生と約束した席へ向かう。

もう先生は来ているようだ。

スカーフを頭に巻いている先生は目立っている。

これはまずい。

俺は先生の横に座り先生の耳元で言う。


「そのスカーフは逆に目立ってるから外して」

「えっ」


先生は驚いた後にすぐ、スカーフをとった。

学校で見る先生とはやっぱり違った。

もう、先生なんて呼べないほど彼女は可愛いく、町を歩いている普通の若者と変わらない。


「先生、可愛い」


俺はまた耳元で先生に言う。


「もう、耳元で言うのやめてくれる?」

「だってあなたが可愛いから」

「また大人をからかうの?」

「だから、俺も大人だって」

「私からすればまだまだ子供よ」


彼女は照れながら言っている。

照れ隠しで言っているのがバレバレだ。


そして映画は始まった。

その映画は泣ける映画だ。

彼女は隣で涙をハンカチで拭いている。

そんな彼女の顔を俺は見たくなった。

そっと彼女を見ると一年前に見たあの涙がそこにはあった。

彼女の涙は俺の鼓動を早くする。

俺は彼女の涙に弱いみたいだ。

彼女を守りたいと思ってしまう。

だから、俺はしてはいけないことをしてしまった。

そう、彼女の手を握ってしまった。

彼女の膝の上にある手を握ってしまったんだ。

彼女は驚いて俺を見ている。

やってしまったと思ったが俺は彼女を見つめて手を離さなかった。


「映画を見てよ」


彼女はそれだけ言ってまた映画に視線を向ける。

ん?

俺の手を払わない?

何で?

嫌じゃないってこと?

俺も映画に視線を向けたが彼女がどう思っているのか気になり映画なんて頭に入ってこなかった。

俺は彼女の手を握った手に力を込めると彼女もそれにこたえてくれた気がした。

映画が終わると俺達は別々に帰った。

映画を一緒に見ただけだったが、俺にはそれでも良かった。

彼女が俺を嫌がらなかったからだ。

もしかして彼女は俺のことを好きなのではないのかと思った。

もしかしたら彼女は俺の恋人になってくれるんじゃないかと思った。


しかし、次の日に俺はどん底へと落ちていく。


俺はいつものように準備室へ向かう。

ドアを開けようとしても開かない。


「あれ?」

「準備室に用事か?」


俺は理科の先生に声をかけられた。


「何で鍵がかかってるんですか?」

「最近、ここで授業をサボる生徒がいるって聞いたから鍵をするようになったんだよ」

「そうなんですね」


俺は教室へと戻った。

次の授業は国語の授業だ。

先生が教室へ入ってくる。

ん?

先生の何かが違う気がした。

なんだろう?

違和感があるが、それが何なのか俺には分からない。

いつものように授業が進む。

いつも通り俺達は普通の生徒と先生。

その日は、準備室の前で先生を来るのを待ったが先生は来なかった。

どんなに忙しくても先生は来てくれていたのに、今日は来なかった。

昨日の俺が悪かったのか?

もしかして先生は嫌だったのか?

俺は色々考えた。

家に帰っても考えた。

それから先生と話すことがなくなった。

そんなことが我慢できずに一度、先生の小テストに小さく薄くメッセージを書いた。


『何で来てくれないの?』


俺達のルール違反だが、俺はこのまま先生と話さなくなるのが嫌だった。


帰って来た小テストには俺の書いた小さく薄い字は消えていた。

そして先生の返事もなかった。

俺は悲しいを通り越して怒りが沸き上がった。

それが先生への授業を受けないことに繋がった。

俺はもうすぐ卒業だから進路も決まり、授業は自由参加だった。

だから先生の国語の授業だけ受けなかった。

先生の顔なんて見たくなかった。

本当はそんなの嘘だ。

たまに廊下を歩いている先生を見ると抱き締めたくなるほどまだ好きなんだ。

卒業をすれば先生のことなんて忘れられると思っていた。


◇◇


卒業式当日


俺は卒業式が終わってあの準備室へ向かう。

これが最後だと思って向かった。

ドキドキしながらドアを開ける。

今日は鍵がかかっていないようだ。

俺は中に入り、窓から外を見た。

懐かしい景色が広がる。


「懐かしい」


『ガタッ』


俺が言った後に物音が棚の奥から聞こえた。


「誰?」


俺は物音の方へ向かう。

そこにいたのは涙を瞳にいっぱい溜めた先生がいた。


「なっ、何でいるの?」

「君が来るかなって思って待ってたの」

「何で泣いてるの?」

「君に会えたのが嬉しくて」

「何で隠れてるの?」

「君に嫌われていたらどうしようって心配になっちゃって」

「何でそんなに可愛いの?」

「えっ」


彼女はいつものように顔を赤くして照れている。

俺の弱い彼女の涙を目にたくさん溜めて。

俺は先生を抱き締めた。


「ごめんね」


彼女は小さな声で言った。

彼女が何に謝っているのかを俺は分かっていた。

俺が卒業するのを彼女は待っていたんだって。

それなのに俺はそんな彼女の気持ちを知らないで子供みたいなことをしていた。


「俺もごめん」


俺達は分かっている。

互いに思い合っていることを。


そして俺は彼女から体を離し、見つめる。

彼女は恥ずかしそうに目を逸らす。


「逸らさないで」


俺はそう言って彼女の顎を上げる。


「恥ずかしい」

「それなら目を閉じれば?」

「本当に君って意地悪」

「先生がそうさせるんだよ?」

「もう先生じゃないよ」

「そうだね。恋人だ」

「うん」

「目を閉じて。キスしたいから」

「もう」


彼女はそう言って目を閉じた。

彼女とのキスは大人のキスだった。



俺は高校生からさよならをした。

彼女は俺の先生からさよならをした。

そして俺達は恋人として始まる。


「ねぇ、いい加減連絡先を教えてくれる?」

「あっ、そうだよね。待って、携帯出すから」


俺は彼女に言うと彼女はポケットから携帯を出して画面が明るくなったとき、俺はその画面に釘付けになった。


「な、何これ?」

「あっ、これは君の小テスト」

「これって俺が書いたやつだよね? でも、その下に字が書いてるんだけど? 俺のは消されてたはず」

「うん。消す前に写真に撮ったの。ちゃんと残しておきたくて」

「何それ。そのまま渡せば俺、あんなことしなかったのに」

「いいの。先生と生徒はあれで良かったの」

「あなたは強い人だね」

「君がいたからだよ」

「本当に大好きだ」

「私も大好きよ」


彼女は俺に可愛い笑顔を見せてくれた。


あっ、携帯の画面の写真の小テストに何が書いていたかって?

それは、


『何で来てくれないの?』

『君が大好きだから』


って書いてあったんだ。

家に帰ってその小テストをよく見るとうっすらと書いた後があった。

その次の日に俺が彼女を抱き締めたのは言うまでもない。

読んで頂きありがとうございます。

読んで良かったと思って頂けるストーリーだったら嬉しいです。

朝の6時頃に短編投稿します。

次はまた違った話です。

気になった方は朝の6時に読みに来て下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ