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7話 自宅は安住の地のはずなんだけどなぁ

謝罪

2020/04/16 二重投稿をしてしまい6話を二連続投稿してしまいました。誤りに気付き二重になった6話はすぐに削除しました。

ご迷惑をおかけしましたことを、ここに謝罪します。

 一歩、また一歩。間違いなく近づいてくる足音。私は周囲を見渡し、大きめのツボが飾ってある台の裏に身をかがめました。


「誰もいないのか…………」


 バルツァー様の呟きが聞こえます。どこかに行かれるまでここで静かにしていれば大丈夫でしょうか。


「コースフェルト嬢。そこに隠れられるのは、後ろ髪とスカートが短い小柄な男子生徒くらいだ」


「え?」


 嘘ですよね?


 私は自身のスカートと腰にギリギリ届かない後ろ髪を抑え込みました。しかし、私のことをしっかりと覗き込むバルツァー様と目があい、顔から一気に血の気が引いてしまいます。


 何か言わなければ。


「何故逃げる必要がある」


「え? あー…………趣味?」


「…………フッ。帰るぞ。送ってやる」


「ええ!? 大丈夫ですって!」


「そういえば、馬車の停留所にコースフェルト伯爵家の馬車が見当たらなかったが?」


 言えない。実は徒歩で帰ってますなんて言ったら最後。絶対にバルツァー公爵家の馬車に乗せられてしまいます。


 確かに我が家は伯爵家にしては裕福な方で、そこそこ良い馬車を所有していますが、伯爵家ごときがこんな馬車を使ってとかそういうのが怖くてひっそり徒歩派なのです。


 幸い、校舎は貴族街から歩いていくのに苦のない距離。むしろ、なぜわざわざ馬車で登下校するのか疑問なほどです。


 回避…………回避…………。


「け、健康の為に歩いて帰宅しているんですよぉ…………バルツァー様はどうぞ馬車でお帰りくださいな」


 完璧です。これなら、これならお貴族様方なら歩いて帰るなどあり得ないとなり、私は悠々自適に帰れます。


 更に、歩いて帰る頭のおかしい貴族令嬢などと逢いたくない招待状を返せまでの流れもあるのではないでしょうか。いける!


「よし、俺も歩いて帰ろう。王都にある別邸は貴族街か?」


「え? え? ええ? ええ」


「そうか。行くぞ」


 バルツァー様は私の腕をがっちりと掴み、校舎を出ていきます。途中、一度だけ馬車の停留所に向かい、バルツァー様が歩いて帰る旨を御者さんにお伝えしていました。


 バルツァー公爵家の馬車は、バルツァー様を乗せずに走り去ってしまいました。これは後戻りすらできませんね。できれば後は誰にも見つからないことを祈りましょう。


 唯一の救いは、ミシェーラ様の在宅されているベッケンシュタイン家のお屋敷は遠目にあることです。


「あの、この手は?」


「お前は趣味で物陰に隠れるからな」


「え? …………あ、お気遣いして頂き、ありがとうございます」


 だからと言って、こんな力いっぱい腕を掴まなくてもいいのではないでしょうか。めちゃくちゃ怖いですよ。


「コースフェルト嬢」


「はい!」


「いくら貴族街とはいえ、帰りは夜になる場合もある。まさか幼いうちからずっとこうしてきた訳ではないだろうな?」


「え? そのようなこことは、ことはございませんけど? ませんけど?」


 私はバルツァー様のお顔を見ることができず、思いっきり目を逸らしてしまいました。はい、白状すると初等部の初日から徒歩でした。


「もはやごまかし方が下手くそとかそういう次元じゃないぞお前」


「ひぃ……以前からその。ちょくちょく……あ、えとほぼほぼ? あはは」


 バルツァー様の視線が痛いです。超痛いです。逃げさせてください。あ、腕ががっちりロックされてます。


「明日からも送ろう」


「ええ!? そんなバルツァー様のお手を煩わせる訳にはいきません! 明日からは大丈夫です!」


「今まで無事なら今日も無事だと思うなよ。お前が馬車を使わないなら、俺が毎日送ってやる」


 どうしてこの人は私の意見を聞いてくださらないのでしょうか。私に構って何のメリットが?


 そしてコースフェルト家が王都に所有するお屋敷にたどり着きました。庭掃除をしていたメイドが、バルツァー様とご一緒の私を見て不思議そうにお出迎えしてくださりました。


「あの? どちら様でしょうか?」


 一人のメイドがバルツァー様にお声がけします。


「俺か? ギルベルト・ハウクル・バルツァーだ」


「え? えええええええええええ!? 失礼しました! すぐにあのお茶を!? え? どのようなご用件でしょうか!?」


 メイドさんも完全に混乱しています。バルツァー様は送っただけだと言いますが、公爵家の方と知ってしまった以上、何のお礼もしない訳にはいきません。


「礼か」


 我が家にあるつまらない物なんてお渡ししてもと思い、直接バルツァー様に伺うことにしますと、バルツァー様は顎に手をあてて考えこみました。


「よし、次の夜会。お前が付き合え」


「へ?」


 何を仰っているのですか。私は基本夜会に出ませんから大丈夫ですよね。ですよね?


 仮に参加するとしても、隅っこで壁と同化して花にさえならないように努力しているというのに。


 しかし、撤回させて頂けるわけもありません。その夜、私は当日どのような仮病を言い訳にしようか悩まされながらベッドに潜り込みました。

自宅は悩みながらベッドに潜り込む場所です!


今回もありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] バルツァー!強引なエスコート胸キュンキュンしちゃう! マリーのビビり具合もかわゆす! いーねぇ!ドキドキが止まりませんな!
[良い点] このお兄さん、強引系男子だ( *´艸`)
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