49話 手紙を出したら返事じゃなくて両親が来ちゃいました
私は領地にいる両親に手紙を出すことになり、それらの文面に悩まされていました。
現在私室には、私とリアの二人きり。机に向かっている私とその脇に立って見守っているリア。
バルツァー公爵家の人。それも次期公爵とお付き合いしていますなんて、どう説明すればいいのだろうか。
一応、定期的に両親から婚約はどうするかなどの手紙が来ていました。
ギルとの関係ははっきりしている今、下手に婚約者は作らない方が良いでしょうし、両親に恋人がいることくらいは伝えた方が良いと思いのことですが、そのまま書くにも信じて貰えるかどうか。
「どうしましょうかリア」
「私に言われましても。バルツァー様とご相談したらどうでしょうか?」
隣で控えているリアに声をかけましたが、リアもいい考えがないようです。
「ギルと相談。もういっそのことギルと婚約して両親を黙らせたい」
「お嬢様、ご自分のことくらいはちゃんと両親にお話してください。そんな様子ではバルツァー様に呆れられますよ」
「よし、やろう。もうこの際信じて貰えなくても事実を書きましょう」
そして手紙の用意ができ、それが実家に届くまで約三日。両親から返事が来るとしたら更に四日後くらいと考えると、返事が来るのは七日くらいですかね。
そんなに風に考えていたのですが、四日後の夜。学校から帰ってきた私とギルを待っていたのは私の両親でした。
「あれ? お父様。お母様。なぜ?」
両親はギルを見てさらに驚く。父がギルに本当にギルベルト・ハウクル・バルツァーで間違いないのかと確認すると、ギルは返事をし、制服の裏側につけてあるバッジを見せる。
「この紋章はバルツァー公爵家の者で間違いない。本当だというのか」
どうやら手紙を見てすぐにこちらに来たようです。馬車で来たら三日はかかる道のり。両親は馬に跨ってきたということでしょうか。そんな一大事じゃありませんのに。
「君はマリーと結婚する気はあるのかね?」
「まだ両親を説得できていませんが、必ず説得します」
そんな様子を見せられた私と母。エントランスでいつまで立ち話をしているかわかりませんが、父にとっても、ギルにとっても大事なお話で一刻も早く確認したかったのでしょう。
そのままいつも通りうちで夕飯を食べるギルと私。両親はもう何も突っ込んでこない。
しいて言うなら、父がずっとギルに質問攻めをしているという感じでしょうか。
うちの両親は、ギルがどういう人間かだけ確認でき、安心してくれたようで会話は穏やかなものになっていきました。
となりますと、私とギルの婚約の障害となるのは、残すところギルの両親だけと言うことになりますね。
元々、うちの両親ならすぐに了承を貰えると思っていましたので、そこまで心配していなかったですけどね。
夕食を終え、エントランスでギルをお見送りする際、ギルが私の耳元で囁きます。
「良い両親だな。マリーが産まれてきたのも納得できる」
「へっ!? あいや、その……そうですかね? 私が産まれてきた云々はわかりませんが、自慢の両親です」
私がそういうと、ギルは優しい表情になり呟きました。
「君の父上は、君のことを自慢の娘と言っていた。自慢の両親の言葉なんだから、自信を持つといい」
「はい」
自慢の娘。そんなこと、言われたことなかったな。思えば、父は私が誰と結婚しても構わないと思っていると考えていましたが、馬に乗って直接来るくらいには気にしてくれていたんだな。
「それではギル。また明日の朝もよろしくお願いします」
「ああ、君が何も言わなくても」
そう言ったギルは、すぐに両親の方に向き、軽く挨拶をしてから帰られました。
両親と私は、ギルが見えなくなるまで屋敷の前に立っていました。
「マリー。婚約が決まったら教えてくれたまえ」
「ええ、お願いね」
そう言って両親は揃って寝室に向かい、私も私室に戻りました。
ギルの両親に納得してもらえるような令嬢にならなければいけませんね。ですが、どうすれば公爵夫人になれるのでしょうか。
そうだ、エミリア様に相談しましょう。私はそう考えながらベッドに潜り込み、深い眠りにつきました。
祝10万字突破。
今回もありがとうございました。




