27話 嫌な目立ち方ばかりしたくないんだけどなぁ
ミシェーラ様と無事仲良くなり、それからの教室は不思議なものを見るように、私は注目を集めてしまいました。
特にルビー様方三人は、面白くなさそうにこちらを見ています。
「何よアレどういうこと?」
「きっときまぐれですよ? 考えるだけ無駄ですルビー様」
「オリーブ様の言う通りです、どうせ遊ばれているんです」
三人はひそひそとこちらに向かってよくないことを言っていますが、私にはミシェーラ様が…………
「いや、貴女の問題でしょ?」
「ですよね」
正直、一人だと怖いので頼る気満々でした。ミシェーラ様からしたら、貴族として相応しくない限りは口出ししないそうです。
彼女からすれば、こないだのごみのまき散らしはダメですけど、今のような陰口は言わせておくものみたいです。
「ううっ。ルビー様方が視界に入るたびにおなかが痛くなります」
「貴女ね、この程度のことであの人の隣にいられないわよ。覚悟することよ。上の地位に立つということは、そういうこと」
ミシェーラ様のお言葉は、私にはよくわかりません。それもそのはず、私は上の立場に立つ側じゃないから、実感がないんですよね。
さらに言えば、下から上の方々を妬んだこともありません。
午後になり、史学の授業が始まりました。講師はエミリア様です。学園理事もやりつつ、講義もいくつか受け持っていてお忙しそうです。
公国の歴史を学ぶことになり、私達の年代では近年の戦争や発明。文化の変化などを細かく学びます。
戦争と言えば、約十年前の麻薬戦争にて、ミシェーラ様のお兄様や、その周囲の方々が主に活躍し、コースフェルト家はと言いますと、呑気に兵糧を作っていました。
あまり記憶にありませんが、戦時中って私普通に生きていたんですよね。
公国の東側にあるコースフェルト領も戦場になったようですが、家族は私にそれを教えずに、早い段階で西側に逃がしてくださったんですよね。
そういえば当時、戦火に包まれたのは、コースフェルト領、ナダル領、それから…………ボイド領。メリッサ様のご実家の領地でしたね。あとは旧ベルトラーゾ領ですね。今は一時的に王領になっています。
当時の麻薬戦争では、次々と反乱分子となる貴族が爵位を剥奪され、公爵家まで取り潰しになり、現在はほとんどが王領になりつつあるそうです。
そのせいで、何か功績を上げれば爵位と領地を頂けるくらいには余っているそうですが、ここ数年は平和も平和。そのような方は特にいらっしゃいませんでした。
前の戦争が約十年前として、その前が約五十年前。次の戦争がいつ来るかなんてわかりません。
このままこの国が平和なままで、それでいてあの人の隣にいられたらどれだけ幸せと言えるのでしょうか。
できれば自分の子供たちも、更にその子供たちも、平和に過ごして貰いたいものです。
「マリー? マリー?」
「へ?」
私の肩を揺らすミシェーラ様。何かあったのでしょうか。今は授業中ですよ?
そして正面に気配を感じ、不意に目線を上げると、ニッコリと笑っているエミリア様。
「マリーちゃんはあとで補講しましょうか?」
「え? え? うそぉ!?」
どうやら私は考えこんでいて、エミリア様に指名されていたにも関わず、無視してしまっていたみたいです。
周囲からはクスクスという笑い声。うわ恥ずかしすぎる。窓から飛び降りたい。だめだ怖い。一階の窓にしよう。
「ではマリーちゃん? 抜き打ちテストです。公国史において、もっとも脅威と言われた隣国のジバジデオ王国と和解した際、王国の現女王が、公国と友好の証にとして何をしましたか?」
急に抜き打ちテストだなんて言い出すから、どんな問題が出るかと思いましたが、簡単な問題でほっとしました。
「それでしたら、両国の関係が良好であることを周囲にアピールするため、毎年王家主催の最初の夜会に出席し、王妃様が短剣を持ち、女王様が戦棍を持って、互いの武器をカチンと当てます」
「それの意味は?」
意味!? そういえば全くわかりません。あれは何をしているんだろうといつも思っていました。
「わかりませんか? それではミシェーラちゃんは?」
「今年の争いはこれでお終い。と、いう意味ですわ。互いの武器をぶつけたら、その年は絶対に両国は争わないという誓いです」
「正解。よくできました」
その後の授業は、終戦後の公国について。戦争がどのような影響を公国に与えたかなど、事細かに説明されて行きました。うへぇ、補講確定コースです。
午後の授業も一通り終わり、私はこれから彼の待つビップルームに向かうんだと考えます。
急に授業中に考えていた未来のことを思い出し、恥ずかしさのあまり、ぎこちない足取りで彼の元に向かうことになりました。
どちらかと言えば羞恥回?
今回もありがとうございました。




