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2話 見つかりたくなかったんだけどなぁ

 入学式が終え、適当な説明が各クラスで行われますと、ベンチで休憩をしていると、どなたかの足音が聞こえてきましたので、私はとっさにベンチ脇のごみ箱の裏に屈みました。


 どなたでしょうか。こっそり覗き込むと、男子生徒と女子生徒が二人でやってきました。こんな人の毛ない場所に二人で来ると言うことは、もしかして告白?


 あまり近づきすぎるといけないので、容姿まではよく確認できないまま、物陰で丸まります。


 声だけだと判別しにくいですが、どちらも今日聞いた声。おそらくバルツァー様とミシェーラ様で間違いない。怖い、関わりたくない。隠れていよう。


「ギルベルト様、本日もお疲れ様です」


「ああ、ベッケンシュタイン嬢。こんなところに呼び出して何の用だ?」


「何の用かなんてギルベルト様。お互い婚約者のいない公爵家の男女が二人きり。察してくださると、喜ばしいのですが?」


 何やら、絶対に出てきてはいけない雰囲気を感じます。バレたらミシェーラ様に怒られてしまう。同じクラスですし、避けるなんてできません。


 早くどこかに行ってくれないかな。私はそう思いながら、二人の声がやむのを待ちました。


「察する? よその公爵家である君に、恥をかかせたくないからこうして人気ない場所で話をきいてやろうとしているが、ベッケンシュタイン嬢からのアプローチは何度も断ったはずだ。察するべきなのは君の方だろう」


 うわ。これ本当に聞いていることもまずい奴じゃないですか。私は絶対にバレてはいけないと思い、つい呼吸を止めてしまいました。


「もう五年もこうしているのですよ? 今更私が諦めるとでも?」


 ミシェーラ様は今十三歳ですから、八歳からアプローチされているのですね。それもう諦めた方が良いのではないでしょうか。


 八歳の頃なんて私何していましたっけ?


 怖くてビクビクして泣いていた記憶しかないような。そんなことを考えていてあることに気付きます。呼吸ができない。そうだ、ばれない様にと思って呼吸を止めていたんでした。苦しい。でも、今呼吸をしたらゼェハァ音を立ててしまうかもしれない。


 私は慎重に呼吸するようにゆっくりと口を開こうとすると、思いっきりゴミ箱に足を当ててしまい、ゴンッという音を立ててしまいました。


「誰かそこにいるのか?」


 バルツァー様とミシェーラ様がゴミ箱の方に注目します。まずい。これはバレる。私は意を決して声を出しました。


「にゃ、にゃーーお」


 数秒の沈黙が続き、ぽつりとミシェーラ様が呟きます。


「下手すぎです」


 バルツァー様がゴミ箱の裏を覗き込んでしまいました。観念して出てきた私を見たミシェーラ様が、私に気付き声を上げます。


「マリー・コースフェルト! あなたなんでこのようなところにお一人でいらっしゃるのですか?」


「え? それはですね、そのとにかくごめんなさい!!」


 私は急いで走り去っていくと、昨日と違い、ギルベルト様が追いかけてくるようなことはありませんでした。ありませんでしたが、ミシェーラ様の表情が怖くて見ることができません。それにこの後は新入生の歓迎会があります。


 歓迎会に向かうはずですのに、断頭台に向かっている気分です。バルツァーさまどころか、ミシェーラ様とお会いするのも怖いです。


 今までなるべく関わり合いにならないようにしていましたが、もう限界です。私の危機察知能力が告げています。ああ、お父様。許されるなら退学したいです。


 しかし、そんなことを願っても無駄なので、仕方なく悪目立ちしない様に端っこから動かないことにしましょう。教室に戻りますと、ミシェーラ様が私の方をじーっと見ています。


 私は愛想笑いをし、会釈だけして自席に座り込みました。ミシェーラ様がこちらの様子を伺う様子はおやめになる気配がありません。


 大丈夫ですよね。あとで呼出し食らって恐る恐る向かった私の前にミシェーラ様とよくわからない怖い人たちがたくさんいるとかそう言うことはないですよね。


 そんなことを考えながら、ぶるぶると震えている私には、いつ時間が過ぎたかわからず、歓迎会直前になってしまいました。女子生徒は、持参したドレスやレンタルしたドレスに袖を通し、男子生徒も似たような感じで持参されたものかレンタルの洋服を着て会場に向かいます。


 私は当然持参したドレスに袖を通しています。なぜかって?


 レンタル品に何かあったら怖いじゃないですか。素朴なデザインに目立たないドレスを着た私は、時々侍女に間違われそうになりながらも、壁の花。いえ、おこがましい。壁のシミになっていたところ、私の方に真っすぐ歩いてきた方がいらっしゃいます。


「御機嫌ようマリー・コースフェルト」


「ミシェーラ様! あ、あのあのあのあああああのああさきほどのはですね! その私が一人になりたくてあそこにいただけで!」


「あの時、あなたがあそこにいた理由はもうどうでも良いです! ですが、それとこれとは別! 良いですか、歓迎会が終わりましたら一目散に私の所に来なさい?」


「畏まりました!」


 ミシェーラ様の所、行きたくありませんが、行かなければもっと怖い眼にあう気がします。どうして私はあの時人気のない場所でゆっくりしようだなんて馬鹿なことをしてしまったのでしょうか。


 歓迎会は一応新入生の視の為、バルツァー様と遭遇することはありませんが、ミシェーラ様からの接触は逃れることができませんでした。

引き続きの閲覧ありがとうございます。


楽しんで頂けたのなら、幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ミシェーラ様、怖い((( ;゜Д゜))) 一人称を書くのがうまくて羨ましいです!
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