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[4]決意じみた約束

天界や地界で暮らすには、能力に依存する所が大きい。

その用途は仕事、食料調達、自己防衛など、多岐に渡る。能力がいい者ほど出世しやすい。能力が悪い者は冷遇され、反感を覚えて王や貴族を襲うこともあるが、結局は能力の差で大敗する。能力格差社会と言えよう。


その一方で武器が使われることは少ない。使うとすれば、能力が攻撃に不向きな人などであるが、そういった類いの能力持ちは珍しい。

大抵のお店は防具を豊富にして武器の取り扱いは少ないのだが、今から行く所は武器をメインに扱う稀有なお店だ。


「というわけで、そういうお店ならきっと優れた武器があると考えたのだ。あ、着いたのだ」

ドームの形をした真っ白な建物の扉の前に、『武器屋いなり』と書かれた立て看板が置いてある。


一行は扉を開けて店に入ると、筋肉質な男性が店の真ん中の広いスペースで煙草をふかしていた。

「らっしゃい…おや随分若いのが来たな」

「ほんとに武器ばっかりだなぁ、こんな所があったなんて」

勇樹は店に並んだ武器を見渡した。細く綺麗な装飾の剣が多く、次いで短剣、大剣と剣が大半を占めていた。


煙草を吸い終わった男性…店主が三人に近付くと、勇樹の顔を見て驚いた。

「…ん?勇樹様?!」

「知り合いなのだ?」

「いや嬢ちゃん勇樹様を知らないのか?この方は…」

真燐は店主の言葉を遮って話した。

「そこは今はおいといて…、能力が使えなくなったから武器が欲しいのですが」


店主は待ってましたと言わんばかりににやっとして答えた。

「そうだろうな。三人とも妖獣と契約してるみたいだし、武器は使い慣れていたりするかい?」

店主は翼のない三人を見て言ったようだった。


勇樹は辺りを見渡して返答した。

「時々は使いますけど、俺たちがよく使う武器はなさそうです」

「ほとんど剣だからな。今あるのはあと、槍と鞭と棍棒くらいかな。あとは能力重視で決めるかだが、それなら剣がオススメだ」


三人は互いを向き合った。

「軽いのがあるなら剣にしようかな。真燐どうする?」

「使いたいのも無いし、能力で決めようかな。ルイカは?」

「あたしは使い慣れたこの筆だけでも大丈夫なのだ。でもちょうどいいサイズの槍があれば使ってみたいのだ!ところで何で妖獣と契約すると…」

「訊かれると思ったけどあとでな」と真燐が素早くルイカを制した。



店主にすすめられた武器を中心に検討して、ルイカは断念し、あと二人は武器を決めた。


勇樹は刀身にオーラを纏った細身の剣を選んだ。纏ったオーラでも敵を斬ることができるため、軽量な割に広範囲を攻撃することができる。


真燐は短剣を両手に持つことにした。利き手である右手には誰でも自分の能力をその刀身に宿せる白い短剣を、左手には狭い範囲ではあるが霧状の障壁を作れる黒い短剣を持った。


「お嬢さんは本当にそれで良かったのか?今は能力が使えないからその短剣も効力を発揮できないぞ?」

右手に持った短剣を指差されて言われた真燐は、はいと言って頷いた。


「ところで支払いなんですが、ツケでも大丈夫ですか…?城の者に言っておきますので」

勇樹が申し訳なさそうにそう伝えると、店主は笑って返答した。

「ああ大丈夫ですよ。しかし能力使えるようになったら返品ってのはナシな」

「しませんよそんなこと!」

「冗談だよ。あ、でももし役に立ったなら中心都市の人たちに宣伝よろしく頼みますよ」





一行は店主に別れを告げて店を出た。


「この辺、他にはお店なさそうだしやっぱ中心都市で腹ごしらえしようか。しかしまぁ、何時か分かんないなこれ」


真燐が夕食時であるはずの今の天界を見上げると、青空が広がっていた。天界は一日中明るいままというのを過去に勇樹から聞いてはいたものの、実際に体感すると不思議な感じであった。日光らしきものが存在するのに太陽は見当たらず、空を見ても時間の検討がつかない。


「一応、光の射し込み方が変わるから、影で分かるようになってるんだ。中心都市があっちの方角にあるから…今は19時半くらいかな?」


「ねぇねぇ、進みながらでいいから、聞いてもいいのだ?お店にいる中で色々と気になることがあったのだ!」

ルイカは勇樹や真燐の周りをぴょんぴょん跳ねながら訊ねた。


「妖獣と契約しているから武器を使い慣れているか聞かれたこと、とか?」

「そう、一番はそれなのだ!」


ルイカは、翼がないから、契約している妖獣に翼を預けていると思われたことは理解できた。しかし、なぜ武器を使い慣れているか尋ねられたかが疑問だった。


「契約した妖獣は変化(へんげ)ができて、武器や防具に変わってくれるんだよ。天界や地界に住む人だと、能力だけでは戦うのが難しい人なんかが契約するんだ」

「大抵、武器を持つか妖獣と契約するかだが、天界や地界で住むには翼がないと不便だから、契約する人は稀だそうだがな」

「とは言え、中界に紛れて住むには翼を隠さないといけないし、変化した武器はかなり強力だから、最近は契約者も増えているんだって」と勇樹が補足した。


ルイカは「でもその変化した武器も今は使えないってことなのだよね」と小さく呟いた。


「え、何て?」聞き取れなかった勇樹が訊ねた。

「妖獣との契約、翼使えないし能力が封じられてしまうと足枷にしかならないのだなぁと思って。どうしてお二人は、自分たちで城へ乗り込もうと思ったのだ?せめて翼がある方々に任せた方がよかったのでは…」


真燐と勇樹は顔を見合わせた。

ルイカの疑問はもっともで、翼は飛ぶことはもちろん、頑丈なため身を守る時にも使えるので、翼があるとないとでは戦力に大きな差があるのだった。


勇樹が真燐から目を離し、ルイカを見て言った。

「普段から能力を使わない生活してるから、他の人よりは今起きてる現象に抵抗がないのかも。天界の皆は能力が当たり前の世界で生きていて、怖いはずだから。適材適所って言うのかな?怖くない、わけじゃないけど、動けるから動く」


勇樹は再び真燐を見て、答えるように促した。

それにつられてルイカも真燐を見た。


真燐は少し困った様子になりながら、

「どうでもいいだろ…誰かを助けることに理由なんて要るのか?」

と言った。


ルイカは真燐の顔をじっと見つめた。

「…なんだよ文句ある?」

「…いいえ。まりん様、ゆーき様、どうか世界をお救い下さいなのだ」

ルイカは悲しいような、微笑んでいるような、微妙な表情をして言った。


二人はなぜ急にそんなことを言われたか分からず戸惑いつつも、勇樹は頷き、真燐は「保証はしないが、やれる範囲のことはする」と答えた。


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