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084 使用人と反乱軍

 

 私の仲間の中でもダントツにヤベー二人を良い人認定したお花畑に住むリーベは、確かに幸運王子と言われるほどに幸運値が高いのだろう。



「信用のおける使用人も探さないといけないな……」


「使用人のリーベに(かしず)いてる家主(レヴィン)を内密にしてくれるような使用人って凄く難しくないかな」


「僕はここでは使用人という立場なのだから、使用人として扱ってくれて構わないのだけれど……」


「そういうわけにはいきません」


 使用人という生活がわからないからそんなことが言えるのだ。と、レヴィンは頭を抱え、リーベに説明していた。



 レヴィンとリーベが話している横で、目が血走っているゲルベルグさんに小声で話しかけられた。


「待ってマリア神! リーベが使用人ってどういうことですか!」


「いや、秘密留学だからレヴィンの家に置くなら使用人っていうのが一番問題ないでしょう。ただの美少年住まわせてたらかなり怪しいじゃない」



 レヴィンにあらぬ噂が立ってしまったら可哀想だし……と思ったけど、使用人って言われても美少年なだけで危ういものがあるか。


 フィンスターの影がギルヴィードおじ様に仕えていた時の使用人の姿は特徴のない成人男性だったし、私に仕えていた影は違和感のない女性だった。


 リルムに付いていたフィンスターはそのままの美少年だったけど、主従というよりは姉弟だ。



 主人と違和感のない使用人と考えると、元ゴロツキの厳ついレヴィンと、ヴァンデミーアのキラキラ貴族であるリーベは明らかに……使用人だと言っても愛玩観賞用にしか見えないだろう。



 どうしようもねえなコレ。



「しゅ、主従が一瞬だけ逆に……っ! そんな、美味しすぎますぞ……!!」


 ハアハアと息を荒く上げたゲルベルグさんの暴走も止まらない。


 公式美少年って設定が、こんなに面倒なものだとは初めて知った。




 狂った場を咳払いで整え、全員を話に戻させた。


「ゲルベルグさん、使用人に何処かあてはあったりしますか?」


「ゴホンッ……最終手段として奴隷契約の使用人というのが闇市場で売られたりしております。それでしたら契約で絶対に口外は出来ませんし、国を跨いでの機密でしたらそれが一番かもしれませんな」


 奴隷、と聞いてリーベは顔を曇らせた。


「同じ人間に、そんな酷いことを……」


 初めて聞く闇の世界にリーベは痛ましそうに嘆く。



 社会の一つの側面として存在してしまっていることだ。平和でもない世にこの制度を無くせなど活動することは限りなく難しい。


 でも私の仲間が闇市に流れたりしたら全力で潰しにいくと思うけど。


 それは身内びいきというか……私も一人の人間として情が移った人間には弱いのだ。



「リーベ達が雇った人は酷い目に合わなくて済む……くらいに今は考えられないかしら」


「……そう、だね。ありがとうマリア」


 闇市場での使用人調達はレヴィンとゲルベルグさんに任せるとしてまとまり、一旦の生活基盤確保は出来そうだ。




 どんな使用人を雇うか二人が相談しているところに、少し顔色を悪くしたリーベの気を紛らわすために話しかけた。


 今日一日でリーベの留学生活の基盤を作った。



「リーベはカーグランドでやりたいこととかはあるかしら?」


 街を巡ったりショッピングとか買い食いとか、あんまりしたことがなさそうだ。


「やりたいことか……」


 あっ。全くもって遊びとかいう雰囲気じゃない。


「カーグランドじゃなくてもいいの。なにか指針みたいなものがあれば」



 慌ててフォローを入れた私を察したのか、リーベは私に向けて微笑んでから、すぐ腕を組み「そうだな……」と考え始める。


『気を遣ってくれてありがとう』そう言っているかの様な、表情一つで感情を伝えられるリーベは生粋の人たらしだな……。


(私だけが今のリーベの気持ちを解ってあげた! みたいな気持ちになる女の子も出てくるぞ、こんなの)



 ゲームでは最年少な事もあり人気が伸び悩んだリーベだが、現実では一番モテそうだ。


 実際「結婚したいキャラランキング」では人気キャラを抑え一位を取っていた。



 そんなリーベはマーカチス侯爵家の邪魔にならぬよう私の元に預けられた形だが、「強くなりたい」と言っていた。


「僕は、今まで沢山の人に大切に育ててもらった。だから、その家族や知人……国に恩返しが出来るよう、力を付けたいと思ったんだ」


 僕もヴァンデミーアの貴族だから。と自分に言い聞かせるように呟くリーベは家の負担になっていることに歯痒さを感じているようだった。


 本質は足手まといどころか愛されているが故の被害者なのだが、恵まれ過ぎているというのも考えものである。



「…………」


 私は今頭を悩ませている問題の一つを頭の隅に浮かべつつ、リーベの真剣な表情を見つめていた。












「今日も色々やったな〜」


 夜、自分におつかれと労いながら楽な格好で布団に転がった。


 自分の部屋でくつろいでいるところで、私はヴァンデミーアの問題に向き直った。



 貴族の殺し合いも悲惨だけれども、民たちの反乱軍が本格的に動いてしまったらどうしたらいいのか。


 今は敵国であるヴァンデミーアのことなのだが、自分が作った国の一つ。やはり気になってしまう。



(それに、万が一反乱が成功しちゃったら零番隊もマーカチス家の立場も危ういんだよなあ……)




 考えていたら部屋の中が明るくなり、光が一点に集まっていく。


 その光は徐々に人の形を成していく。


 こんな現象を私の部屋で引き起こせるのは一人しかいない。



「マリア」


「ラフィちゃん! おかえり」


 今日帰ると聞いていたラフィちゃんだ。



 神出鬼没であるラフィちゃんに通信機を持たせ、帰る時は連絡するようにと義務付けていた。


 ラフィちゃんは通信機など持たなくても念話出来るのだが、光が天から降りてきて再生されるというご神託という雰囲気そのままで規模が違いすぎた。


 国全域にも、大陸全域にも発信出来る最強の連絡ツールだが、完全に一大事だ。



 創造主ラフィちゃん様はいつものテンションで一応デビュタントもしてレディとなった私の部屋に不法侵入をしてくる。


「ただいま。これはお土産にと貰った」


 沢山物が入る魔法のバックから、机に置けば重量のある音がする袋が出てくる。



「た、大量だね……」


「これでもかなり減った」


 ラフィちゃんは各地を回り気に入った料理職人を見つけてはスカウトするということをしていたら、料理人の中ですっかり噂が広まり『ラフィエル様に料理を認めていただけることが料理人の誉』と呼ばれるようになっていた。


 創造主がウロついてスカウトなんてしていたら当たり前ではある……。


 おかげさまで私の所有する不動産通りは盛況で、ほぼ全ての店舗が私への借金を返し終えている。




「ヴァンデミーアにはやはりまともな料理はないな」


「ヴァンデミーアにも行ったの?」


「ああ。土産を分けに行った」


 テーブルマナーも覚え、B級グルメからフルコースまで食べれるようになったラフィちゃんはすっかりグルメの口ぶりである。


「まともな料理がないのは仕方がないよ。内乱中でまともな商人は逃げてるだろうし……」



 反乱軍の商人は秘密裏に武器を買い揃えていると武器を取り扱う――死の商人『モブおじ商会』の支配人ゲルベルグさんより聞き及んでいた。


 料理よりも買えるだけ武器を買って早く貴族と戦う心積もりなのだろう。




「また反乱軍に行ってたの?」


「ああ。あそこにはそもそも食料もない」


 各地を回り貰ったお土産を反乱軍の民達に寄付しているらしい。



「だからお土産が少ないのね」


 魔法の袋に入っているから腐りはしなかったけど、今までもらっていたお土産が多すぎて食べきれなかったから助かった。



 ゲルベルグさんに調べてもらった反乱軍は聞いた感じ、資金繰りが厳しそうだ。


 元々は選民思想のヴァンデミーアで抑圧されていた平民たち。武器も買うお金もなく、鍬などの農具で戦うつもりの者もいるらしい。


 いくら貴族がグダグダでも、そんな状態の民達が暴れたらいたずらに命が消えてしまうかもしれない。



 一番辛いのは飢餓だ。


 飢えて死ぬ前に一矢報いようとする者も多い。


 ラフィちゃんの全国から貰ったお土産によって少しはお腹が膨れ、民の暴動が先延ばし出来ている気がした。



「そう言えば、ラフィちゃんの顔をみて「創造主様」ってヴァンデミーア民たちは騒がなかったの?」


「言われなかった」


 暴動が起きるような街中の創造主像は薄汚れたり欠けたりと顔が判別出来ず、創造主の顔がわからないだけのようだった。


 ヴァンデミーア、信仰心が足りなすぎだ。



「どちらかというとヴァンデミーア貴族と疑われた」


 ああ……ラフィちゃん顔が良いから……。



「なんて返したの?」


「いつもと同じく、『よく言われる』と返したら、納得してもらえた」



 それ「創造主ラフィエル様ですか?」への返し用の台詞だよね?


 顔に自信満々な人みたいになってるよラフィちゃん……。




「しっかし……そうねえ……。ヴァンデミーアの反乱軍をどうするかは問題だわ」


 ベッドの上、あと寝るだけの寝間着姿でくつろぎつつも、考えていることは重大だった。



「あの者たちをどうにかしなくてはならないのか」


「そのままだとその人達が戦って死んでしまう可能性もあるの」


「それは……困る。いや、俺は困りはしないのだが……」


 困るという感情で良いのかと、思いを巡らせながらラフィちゃんは答える。



「いつもお土産をあげている人たちがいなくなるのは悲しいよね」


「悲しい。そう悲しい」


 感情を噛みしめるように頷いた後「どこを消せば良い?」と聞いてくるのでまたしっかりと説教をする。



「この世界を作った存在のラフィちゃんがホイホイと大きく干渉すると逆に争いが増えて悲しいことが起きてしまうのよ」


「そうなのか」


「ラフィちゃんに甘えまくりな私が言うのもなんだけどね」


 ラフィちゃんが私を助けてくれるのは私が『神に愛された聖女だから』という大義名分がギリ通用するという一点のみでバランスを取っているだけだ。



「ふむ、ならマリアの為なら助けてもいいのか」


「いやいや、私が神様にお願いしまくって好き勝手やったら目を付けられてまた荒れるよ」


 世界の為に何かしたいと思うラフィちゃんには歯痒い思いをさせるが、ラフィちゃんの力は人間レベルの行動をさせちゃいけないのだ。


 心を持たせたが故にラフィちゃんには難しい立場にさせてしまった。



 マリア、どうにか出来ないのか。と聞いてくる万能神、創造主ラフィエル様はすっかり人間の心に寄り添えていた。



 私はラフィちゃんに話すと同時に自分の考えを整理しようと順序立てて話す。


「貴族軍と戦いになったら掃討に駆り出されるのは同じ平民の零番隊になっちゃうよね」


 そんな戦い悲しすぎる。


「でも私たちカーグランドの者は手出し出来ない……」


 難しい現実に力を持ちすぎている私とラフィちゃんは頭を悩ますのだった。

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