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069 開戦

 

 カムイを迎えに行く為ザックベルへ飛んだら、ザックベル王が待っていた。


「内容はウチも掴んでる。カーグランドがやられたら次はこっちだ。志願兵2000、一緒に持っていけ」


 エリウッドが「俺が率いるから。よろしくね」とウィンクしてきた。


 攻略キャラの中でも高火力を持つエリウッドの参戦……っ!


「ありがとうございます……!!」


「うむ」



 流石自ら強国を自負するザックベル王。器が半端ない。


 脳筋だけど味方にすると心強い典型だ。



「じゃあ全員転移で持っていきます」


 私は練習場の場所を空けて置いてと伝書鳩を送った。



「ヒュー! これ全員一気にいけちゃうの?」


「た、多分……」


 MP無限チートなんで余裕です。



「エリウッド」


 カムイは私に近付いてきたエリウッドを呼び止め、止める。


「そうだった。まだ勝敗決まってないんだった」


 両手をあげて私から離れる。



「まだ勝敗決まってないんですか?」


 正規通りに攻略してしまっていて私に興味のあるエリウッドはカムイが『姫と話したくば俺を倒してからにしろ』とガードをしてくれていた。


「そうなんだよ。ボコボコにしても「まだだ!」って起き上がってきちゃって」


「だから話すなと言っているだろう!」


 カムイが私とエリウッドの間に入ってくる。同じ同年代の男の子らしく、わいわいとしているカムイになんだか嬉しくもなった。


 しかしながら戦いは防御特化と攻撃特化だとなかなかホコタテみたいだ。




 話している間に魔法伝書鳩から合図が来て私は転移の準備に入る。


「ザックベル王。友好を有難うございます」


「なに。実はな、欠損兵もいるんだ。聖女殿は欠損も治せるんだろう? 返す時は全員治して返してくれよ」


 がっはっはっと笑う王に「戦う前に治します」と私も笑った。



 魔方陣を形成し転移を発動させると一瞬にしてカーグランドについたことに驚くザックベル兵士たち


 その前に、今まとまってる時に一気に治してしまおう。


「先程怪我をしている兵もいると聞きました。怪我をしている人はここに集まってください」


 と集まらせてエリアヒーリングで治す。



「な、治ってる!」


「俺なんて生まれた時からの欠損が治ってるぞ!!」


 わあわあと喜び合うザックベル兵士たちに私は再び姿勢を正し


「この度は我がカーグランドの為に戦って下さるとのことで、有難うございます」


 と聖女らしくお礼を言った。


「勇猛と名高いザックベルの皆さまですが、戻ってきたらこうやって私が治せます。なので絶対に死なないでください」


 そう言うと奇跡を見たばかりのザックベルの兵たちは「おおおおお!!!」と雄叫びを上げた。


 それをみたエリウッドは感心していた。


「一気に士気を上げちゃったね~さすがだねぇ姫様は」


()()()姫だ」


「ははっ! ハイハイ」


 原作のエリウッドは「姫様」なんて呼び方しなかったんだけど、カムイの影響なのかな?




 カムイがザックベル兵たちの兵舎などを案内するとのことで、私はカムイと別れ、家に帰った。


 そしたら家がド修羅場になっていた。



「あのなあ、狙われてるのに戦場に飛び込む馬鹿がどこにいんだ」


「嫌だ! オレもギルと一緒に戦う!」


 元はと言えばオレのせいだし……というリルムに、そう思うなら大人しくしとけというギルヴィードおじ様。


 フィンスターはメルフィアちゃんを抱えて「というわけなんです」と省略してきた。


 ギルヴィードおじ様の言い分も良くわかる……が、激甘フィルターを搭載してしまうと「心配だから安全な場所に居てほしい」という本音が透けて見えてしまう。


 つまり痴話げんかだ。


 だからフィンスターも放っておいてるんだろう。



「私もギルヴィードおじ様も不在のココにフィンスターと二人でいるのも危ないですし、ギルヴィードおじ様の補佐として二人は優秀ですから側にいさせた方が良いんじゃないですか?」


 私は至極まっとうな正論を言った。


 のにチッと舌打ちをされた。ひどい


 だからといって今回は舐めプで勝てる敵ではないのだ。



「せめてマリアと居ろ」


 私ならバリアが張れるから安全というわけなんだろう。



「いや私の方が零番隊がいる方だし危ないですって」


 正直零番隊の方が完全に危ない。そっちは数の暴力だけどこっちは力の暴力なのだ。


 リルムは意を決したようにギルヴィードおじ様に目線を合わせ、強い目で訴えた。



「連れてってほしい」とジーっとみてくるリルムに折れたのか「勝手にしろ」と呟いた。


 勝者リルムは嬉しそうにギルヴィードおじ様の腕に抱き着いていた。











 ヴァンデミーアは着々と進軍した。


 降伏した国は貴族全てを平民にして取り込み。


 拒んだ国は貴族を根絶やしにして取り込み進んでいった。



「モノリスの貴族は全員、殺されたようデスね……」


 モノリスを恨んでいたシャルルとしても複雑なのだろう。


 なんだかんだ言いつつ家族もいるし故郷だ。


 弟子二人も顔が暗い。



「私もモノリスを拠点にしてた時期が長い故、複雑ですが……こうなる前に強引にでもシャルルたんたちをカーグランドに連れて来れて良かったと思っております」


 ゲルベルグさんはモノリスよりシャルルなのだろう。


「ベルグさん……」


 弟子のビスタくんは感動して涙を溜めていた。


 ……本当はあんまり感動できるような連れてきた内容じゃないんだ。ごめんな……。



「マリア神、シャルルたんのこと。頼みましたぞ」


 ゲルベルグさんは私の肩をがしっと掴む。


 シャルルは研究ばかりさせていた為、レベルは初期レベルより低い3。ただの民間人と同レベルの強さだ。


 なのでシャルルたちは向こうの戦いには参加させず、私の方で防衛兵器を取り扱うのを担当する。



 ゲルベルグさんはレヴィンの元傭兵団のメンバーと輜重隊をして兵糧を運ぶらしい。


 中身が女の子のはずなのに、たくましいよね。ゲルベルグさん……。





 意外にもラフィちゃんの顔も暗かった。


「モノリス国やアリアーナ国には馴染みの店があったのだが、そこが全部潰れていた」


 モノリスやアリアーナの平民は略奪をされ、難民になり他国に逃げ惑っているらしい。



「……ラフィちゃんがその店主さんたちを覚えてるなら、私がカーグランドでお店を開く手伝いをしてあげるから連れてきていいよ」


 今の私は人一人の人生を変えるような大きな事を、気まぐれに決められるようになってしまった。


 これも金の力あればこそ……。



「連れてくる」


 喜んだのかラフィちゃんはすぐさま光になり消えた。


 人間は光になって移動とかしないから気を付けてね。ラフィちゃん。









 ゼルギウス陛下は私の策に乗り、クレルモンフェランと魔人連邦ガノンの救援の提案を突っぱねた。


 ここでザックベルみたく兵を貸すなどと言ってこないあたりで内心負けろと思っているんだろう。


 そんな奴らに助けられるなんてごめんだ。




「マリアの言った通り貴族軍と平民軍で軍が分かれている。二分して攻めてくるようだな」


 このルートだとモノリス国側に貴族軍、アリアーナ国側に零番隊が布陣する予定だと思う。



「全軍モノリス国側のミレージュ国境街へ進軍してください。私はロレンツ領の国境街、セントーラに行きます」


 前に挨拶回りに行った効果か、両領主共に全権こちらに譲ってくれると受諾してくれている。




 ミレージュ国境戦はゼルギウス陛下を総大将としたカーグランド総力部隊だ。


 これで勝てなきゃ終わる。


 ブリザベルトお祖父様指揮官の一大隊

 ギルヴィードおじ様指揮官のリルム副官にフィンスターの一大隊

 カムイ隊長の一中隊

 レヴィン隊長の一小隊などなど……

 友軍ザックベルのエリウッド指揮官の一大隊

 輜重隊としてゲルベルグさん率いる元レヴィン傭兵団

 合計約3万の軍、錚々たる顔ぶれの攻略メンバーたちだ。



 セントーラ国境戦は私、マリアが指揮官。


 殆ど避難民扱いだけど工作兵としてシャルル、弟子のビスタとロクト。


 そして雑用や兵器の為の、ミレージュに行ったら足手まといになるであろう老兵や子供兵、農民兵など。



 零番隊とは誰とも戦わせない!!


 あんな鬼つよ集団と戦ったら私の仲間たちが死んじゃう!!


 なので



「絶対に私が守ります!」



 セントーラは街も兼ねているので、心配そうに私を見ていた。


 敵がすぐそこに近付いているのにこっちにきたのは聖女と弱そうな兵たち数十名。



 そりゃあ心配にもなる。


 私はお祭りの時などに使うのであろう台の上に陣取って、長い杖をどんと立てて構えた。


 いつでも来なさい!








 ◇







「おかしいな……」


「どうした、ノア」


 セントーラ国境街付近に布陣した零番隊のノアストティはセントーラの様子に首を捻った。



「ジークさん。いえ、こっちの街の警備が随分と手薄なんです」


 軍の殆どはミレージュ方面に行ったという。


「こっちは捨てたか、少ない平民の兵と侮っているのか……」



「我らの目的はサキュバス。先にいるであろう首都にたどり着けるのは悪くない話ではありますが……」


 どうも解せない……ノアストティは眉間の皺を更に強めた。


「カーグランドの新王はウチと違って実力主義を取り入れています。零番隊と侮るなどとは考え辛い……」



 そう話していたらスッと城門の上に人影が出てきた。


 拡声魔導具を使っているのか、その少女の声は良く通った。



「私はマリア=ベルドリクス。侵略者にこのカーグランドの地は踏ませはしません!」


「マリア……あれが噂の聖女か……!」


 ざわりと騒めく零番隊。


 聖女自らがこちらを守るということは、絶対に捨て駒などありえない。


 むしろここが本丸とすら言える。



「あの娘を捕らえられたら大出世だぞ……!」


「ということは兵は隠れて潜伏しているのか」


「いや、ミレージュの軍の数を見る限りあれがカーグランドの限界な筈です!」



 聖女が兵も率いず単独でセントーラへ!?


「ありえないが……とにかく落とすぞ! 魔導士隊! 用意!」


 魔導士たちが外門を崩そうと魔法を展開し始める。


「撃てーっ!!」




「バリア展開!!」



 マリアはセントーラと零番隊を大きく阻む壁のようなバリアを展開させた。


 魔導師たちの攻撃はバリアに阻まれポシュンと音を立て消えていく。


「ジーク隊長! 一切届きません!!」


「くっ! なら直接壊す、外門に張り付け!」



 そう号令を受け突撃した兵たちは一定の場所で透明な厚い壁にぶつかったような衝撃を受けた。


「ぐあ!」


「ぐえ! 押すな押すな!!」


 進もうと突撃するがマリアの貼った、セントーラ全面を包むバリアの位置にくると零番隊兵は一切入れなかった。




 透明な壁にぎゅうぎゅうになった零番隊兵へ向けてカーグランド軍は今までかけてあった布を取り去り、大砲や投石兵器などが登場する。


「皆さん! よーく狙ってくださいネ!」


 シャルルが指揮を執り、一斉に弾幕が展開された。


「そっちからの攻撃は通るなんて反則だ!」




「当たり前です! ゲームマスター(チート)ですから!」


 そう良くわからない言葉を返す聖女を見てジークとノアストティは「まさか……」と呟いた。




「聖女のバリアだけでセントーラ戦を乗り切るつもりか……!!」





「これぞ、空城の計、マリアエディションです!!」





 ◇






 ――この戦が始まる前の会議にて。


「あっちでの戦いで私はいなくなりますが、備蓄していた大量のポーションもあります。この作戦なら私一人で犠牲者がかなり減らせるはずです」


 カーグランドはここ数年十分に強化をしてきた。


 攻略キャラだって充実している。


 ヴァンデミーアのモブ貴族兵なんかには負けないはずだ。



「しかも名目上の狙いである私が囮になることで、敵は空城とわかっていても攻めなくてはいけません」


 私がいるのに見過ごしたとなったら、零番隊は上の貴族から大目玉だろう。



「私のバリアならどんな敵でも防ぎきれますし、MPも無限……戦いは出来ませんがそちらが貴族軍を壊滅させるまで私が足止めをします」


「理屈はわかるが、マリア……。めちゃくちゃだ……」


 ゼルギウス陛下は信じられないような目で私を見てくる。



 でもそれしかもう方法がないんだもん!



「………………」


 お祖父様とギルヴィードおじ様は考えたような顔をしていたが、すぐに私に問題点を突き付けてきた。


「確かにマリアのバリアはかなり強力だ。今思いつく中では一番勝率の高い作戦だろう」


「しかしそのバリアをいつまで持続していられるかというのが問題になる。流石に寝ながらバリアは張れまい。敵もそれをわかって波状攻撃を仕掛けてくるはずだ」



 私のバリアが切れたら終わる。諸刃の剣の作戦である。


「皆さんには出来るだけ早く戦いを終わらせて貴族軍を潰走させてもらう必要があります……が、私はこれに賭けるしかないと思っています」


 出来る限り犠牲は出したくない。そうなるともうこれしか思いつかない。


「大丈夫です! これでも修羅場の時は3徹くらい余裕で耐えました!」


 クリエイターの締め切り前を舐めてはいけない。


 火事場の馬鹿力だって出せてしまうのだ。



「それに私は殺されません。もしセントーラが崩されても私だけの損害で数日は足止めが出来るんです」


 それで貴族軍が打ち破れたらカーグランドは勝利となる。


 本戦はそちらで私の方はやべー副隊の足止めでしかない。




 ギルヴィードおじ様とお祖父様がゼルギウス陛下の指示を仰ぐ為にそちらを三人で見つめるとゼルギウス陛下は大きく息を吐いた。


「こんなハチャメチャな策がカーグランドの存亡に関わるのか……」


 ハチャメチャとは失礼な。



「いいだろう。ここまで来たらクレルモンフェランやガノンにも頼りたくはねえよな。俺たちで最善を尽くそう」


「はっ!」








 そう軽く策を提示したわけだけど、実際見ると超怖い!


 パフォーマンスの為に外門に上ってバリアを張ったけど、もう矢面で視線バシバシ受けるのは怖すぎるので外門から降りて儀式台の上に戻ってきた。


「皆さん、私は死力を尽くし、このセントーラを守るつもりではありますが、力及ばず攻め入られる場合もあります。逃げてくださっても構いません」


 むしろ逃げて! 危ないから。


「いいえ聖女様! 私たちの故郷を聖女様がお守りして下さるというのに我々が逃げるわけにはまいりません!」


 セントーラの領主、ロレンツ公爵が震えながらもしっかりと答えてくれた。



 逃げる人はかなり少数になってしまったみたいだ。


 私が気を失えばこの人達は殺される。


 ズシリと重いものが肩に乗っかった。




「……絶対に守りますから!」




 私は杖を握る手を強くした。


 

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