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054 創造主のマジギレ

 


 ラフィちゃんは最近旅人に変装し、色々なところを散策した話を聞かせてくれた。


 その中で、色々なことを考え、色々なことをするようになった。



 白うさぎのモーフィが好きになったり、自分の出てくる聖典よりも成長冒険物語が好きだったり。


 私が嬉しそうなら微笑んでくれたり、悲しい話をしたら少し寂しそうな顔をするようにと。


 微々たるものだったが、ゆっくりゆっくりと表情が出てくるようになった。



 それが



「マリアの悲しむ声が聞こえた」


 眉間に皺を寄せ、明らかに怒りを露わにするラフィちゃんは今まででどんな表情よりも激しかった。



 さっきまで天気だった空は、雨が降り雷が鳴っている、嵐だ。


 雷が落ちた建物からは穴により雨が降り注ぎパーティ会場は水浸しとなった。


 その穴の下にいる筈のラフィちゃんだけは一切濡れておらず、雨が避けるように降り注いでいた。



 ラフィちゃんの感情は確かに育っていた。



 いや、育っている途中なのだ。


「なにが起きた」



 カーグランド王は怯え、腰を抜かすとラフィちゃんはそちらへ目線を動かす。


「貴様か……」


「ひいい!!」



 愛国心溢れる騎士が


「陛下! お守り致します!」


 とカーグランド王の一歩前にでたらラフィちゃんが手を向けた瞬間に灰となってサラサラと消え塵は飛んでいった。



 神々しくも恐ろしい光景に、一同は時が止まった様に固まる。


「……『怒り』……これがマリアの言っていた『怒り』というものか……」


 ラフィちゃんはいつもより冷たい顔で、初めての感情に振り回されている。


 私は今、とんでもないことに気付いた。




 創造主の感情ひとつで世界が崩壊する!!





 私は慌てて


「さ、さっきの騎士さんは悪くないよ! け、消すのは可哀想だよ!」


 とラフィちゃんに言い募る。



「昔……マリアは『それを許す寛大さが必要』と言っていた……」


「そ、そう!!」


 創造主がキレやすい子に育ったら大変!!



「……そうか」


 とまた手を向けて塵を集め再形成するように騎士を創り直した。


 つ、創り直せるんだ……。



「?? ????」


 騎士は自分の身に何があったのかわからないままポカンとしていた。





「そ、創造主様……」


「創造主様だ……」


 人々はそれぞれに言い淀む。




「マリア。マリアが泣いていた」



 ラフィちゃんが話すたびに雷が落ちる。


 まずい。ラフィちゃん、感情のコントロールが出来てない。




 世界があぶない!




「何故泣かすようなことが起きた」


 また建物に雷が落ち、シャンデリアが落ち派手な音を立ててガラスが飛び散る。


 建物も半壊だ。



 空が世界の終わりみたいになってる。



 皆声が出せない中、ギルヴィードおじ様は「おめえが説明したほうがいいだろう」とハンカチを渡してきた。


 ギルヴィードおじ様、ハンカチもってるんだ……。


 貴族としては当たり前なんだろうけど、なんか意外……。



「あ、あの……ラフィちゃん……」


 少し、ラフィちゃんの顔の険しさがなくなる。


 ラフィちゃんは私の涙を手で拭い、訊ねる。



「マリアが困っていたことはなんなのだ」


 流石にここでなんでもないよとは言えない。


「え、えっと……一緒に居たくない人と……結婚させられそうになって……」


 ラフィちゃんの力欲しさに私を利用しようとしてるとは言えず当たり障りのない言葉を使う。



「マリアはずっと一緒にいたくない者と、共にいさせられることになったのか」


 ラフィちゃんの雷がまた落ちる。メチャクチャ近い。


 怒りが止まらないらしいラフィちゃんの心は大荒れだ。


 ご婦人の高い音で叫ぶ声が聞こえる。



「ら、ラフィちゃんが来てくれたから、まだ、だけど……」


 いつかは誰かとしなくちゃいけない……と言うとラフィちゃんは考えたように


「マリアは『こんやく』したい者はいるのか」


 と聞いてくる。


 周りが思いっきり見ている中で答えていい話なんだろうか……


「い、いない……」


 ラフィちゃんは困った様に言う。



「マリアはどうしたいのだ?」


 ど、どうしたいかと聞かれると……



「婚約は……その、お互い好きな者同士がするべきだと思ってて……私はそういうの、興味ない……」


 恋愛を否定するつもりは一切ないが、私には結婚や婚約だけが女の幸せとは思えない。


 そんな考えも嫌いだったし……でも概念としての、二次元のキラキラした恋愛は見ていて楽しかった。



 ラフィちゃんは真顔のまま


「と、マリアは言っている」



 そのままだよ!!!



 ラフィちゃんに適応力を期待するのも可哀想か……とがっくりする私にラフィちゃんは続けて言う。



「俺はマリアの幸せを望んでいる。マリアが幸せでないのなら俺が認めない」


 ラフィちゃん、今結構めちゃくちゃなことを言ってるけど。


「ははーっ!!!」


 会場にいた貴族たちは雨でぬれた場内にも関わらず平伏した。




 いいんだ……。




 創造主のちから、すごい……。


 ラフィちゃんはうむと頷くと次第に空が晴れていった。





 やっと硬直が解けた者たちは『創造主に愛された娘』をいい様に扱おうとしたカーグランド王を責めた。


 創造主が断罪した王をひたすらに罵倒する。


 まるで無礼講だ。



「どう考えても王太子はゼルギウスしかいないのにそれを利用して無理矢理婚約を迫るなど恥を知れ!」


「都合の良い孫の話しか聞かない王など王ではない!」


「創造主を怒らせたカーグランド王に対しクレルモンフェランは敵対を宣言する!」


「いたずらに国を荒らすだけ荒らしてラフィエル様まで怒らせやがって! カーグランドの恥だ!!」



「ジェラルドからはマリアとかなり親密で良好な関係を築いていると聞いた!」


 孫可愛さに言葉を鵜呑みにしなければ、こんなことをしなかった。とカーグランド王は言い逃れを始めた。



「ジェラルドを牢に入れよ!! 顔も見たくない!!」


「お、お祖父様……!?」


 我が身可愛さに孫を売る祖父に裏切られたかのような顔をしたジェラルドだが、虚偽は本当である。



 創造主が絶対的な世界で創造主に嫌われるというのはこの世界の追放に近い。


 それを今まざまざと見せられている。



 どうしよう、と私は青い顔をしてラフィちゃんを見たが、ラフィちゃんは涼しい顔をしていた。止めるつもりはないのか……


 やはりラフィちゃんはまだ私と私の周りにしか興味がないらしく、他の者たちが騒いでいるのは雑音程度にしか見えないらしい。



 さっきまで私の言質をとろうと同じようなことをしていた貴族たちが責めているのも見ているのも見ていて辛くて私は口論に割ってはいろうとする。



「……みなさん! 争いはやめてください……!」


 意を決して叫んだ私の一言でしんとする。


 それほどまでに創造主に愛された娘という効果は大きいのか……。



 完全に意気消沈して一気に老け込んだカーグランド王に代わり、ゼルギウスさんが謝罪を入れる。


「みな、騒がせてしまってすまなかった。父もカーグランドの為に必死だったのだと思うが些か無理を押しすぎていた。この責は父とよく話し、決めたいと思う」



「いや」


 カーグランド王はゼルギウスさんの横に立ち


「王太子をゼルギウスとし、儂は家督を全て譲ったのち、すぐに退位する……」


 敬愛する創造主ラフィエル様に直々で怒られたのが余りにも効いたのか、なんとも弱々しい声だった。










 事態が収集した、ありがとうと言ったらラフィちゃんは満足していた。


 うう~~ん、大変ありがたいけれど、中途半端に情緒が育ったラフィちゃんは大変危険だ……。


 私の一存だけで世界が滅ぼせてしまうようなものだ。って、元からそうだった……。


 ベルドリクス家の家族たちを見て「マリアを頼む」と視線で送り、空へ帰っていく。








「人間、力があって目先の欲をみると暴走しがちだからな」


 帰りの馬車の中ギルヴィードおじ様はポツリと言う。


 陛下のことだろう。



 あの後ゼルギウスの戴冠はまたのちにやるとして、発表はしたからと建物もボロボロだしすぐに閉会となった。


「私はカーグランドにいるつもりだったのに、なんで相談してくれなかったんでしょう」


「そういう頭がなかったんだろ」


「ギルヴィード、陛下に失礼であろう」


 しかしお祖父様の声にも力はない。



「……昔からあの方は慣例を良しとされていてあまりものもみようとせず、新しい政策などもしない方だった。今回のようなイレギュラーに対応できなかったのだろう」


 それって王として良いの? とは思ったけど言葉にはしなかった。


 あと、この世界は乙女ゲームなだけあって『女は男の後ろに隠れてろ!』って感じだから女が物扱いされやすいというか、そういう世界観なんだよね。


 そういう世界のほうがヒロインに大人な行為を迫りやすいというか、まあ色々な都合もある。



「と、とにかく、思ったよりすぐにゼルギウスさんが王になれそうですね!」


 予定よりは早いが王太子を一足飛ばしで王様である。


「これからが大変だろうがな」


 最初からそのつもりで色々計画はしていたが、事前準備(王太子)もなく王になるのだからゼルギウス陣営は大騒ぎだろう。



 しかしシルメリアお祖母様は豪胆にいつものペースを崩さなかった。


「戴冠式までにあの会場直らないだろうし、どこでやるのかしら?」


 私お祖母様のそういうところ、結構好きだよ。













 戴冠式まではバタバタと過ぎていった。


 今回覚えられなかった出席者の名前や新しいドレス。


 バタバタしていたら13歳になってしまった。デビュタントも考え始めないといけない。



「貴族って大変なんだな〜」


 私が忙しなく動いている横でフィンスターに髪をブラッシングしてもらいながらゴロゴロしているリルム、最近金持ちに飼われてるペットみたいになってるぞ。羨ましいな。




「勉強はしておかないと付け込まれるし、大変なのよ」


 私が軽くそういうと、リルムはふーん……と言いながら指遊びを始める。


「……オレも、勉強したら、ギルの役に立てるかな」


「え?」



「オレ、頭わりぃけどよ、そういうのしたら、ちょっとは出来るようになんのかなって……」


 学がないことを恥ずかしそうにモジモジしながらリルムは言った。



「……リルムは最初、文字も読めなかったのに今では立派に本が読めるじゃない。大丈夫よ。フィンスターに教えてもらうといいわ」


 私が笑うとフィンスターも「任せて!」と微笑んだ。


「後の為にも勉強しとくに越したことはないよ!」


 フィンスターは今後なにかあったときのリルムについても考えているんだろう。



 ぱぁっと笑顔になったリルムは「頑張る」と笑った。


 リルムは確かにサキュバスで恋愛脳かもしれないけど、今確かにギルヴィードおじ様の為に何かしようと必死に恋をしていて。


 それを否定する気にはどうしてもなれない。



 まあ……私がギルヴィードおじ様だったら確かに一瞬で心変わりする子を好きになるとか、怖いと思う。


 ……本気になったのに寝取られて心変われたら結構心にクるだろうな。





 カーグランド王のせいでケチがついてしまったので、ゼルギウスさんの戴冠式を祝ってくれるようにラフィちゃんにお願いした。


 何度もラフィちゃんを呼び出すのは神格的にどうなんだ? とは思うけど、安売りしてでも売っていかないといけないときはある。



 マネーロンダリングのついでに始めたアイドルブロマイド稼業も結構好評で、そこそこお金が貯まってくるようになってきた。


 ゼルギウス陣営への投資とベルドリクス軍への出資で結構消えてるけど、リルム大先生が稼いでくれてるおかげでそこそこには私が自由に使えるお金も出来たので、これが終わったらそろそろドーンとお金を使って仲間を雇いに行きたい。




 ドレスはいつも通り御用達商人のゲルベルグさんに頼むので、採寸やら詳細を受け取りに来たときにちょっと話した。


「ゲルベルグさん、今度お金が貯まったらラッセンブルグに行こうかと思ってるんですけど……」


「私も出資致します!! 今すぐ行きましょう!!」


 ガタッ! と立つゲルベルグさん。そう来ると思った。



『モブおじ』さん最推しキャラはシャルルだが他キャラもBLカップリングとしてよく描いていた。


「な、生レヴィン×リーベが……!! 見れるかもしれないと……!?」


 ゲルベルグさんは興奮気味だった。



 そう、今現在仲間にできる攻略キャラはラッセンブルグにいる雇われ傭兵レヴィン。


 ラッセンブルグの隣国であるヴァンデミーアになにやら不穏な動きがあるのなら、早めに手に入れた方がいいと思ったのだ。



 傭兵の隊長をやってるだけあって戦争フェイズの統率力も高いしパーティでも攻守優れたバランス型の頼れるワイルドな兄貴キャラだ。


 ギルヴィードおじ様が知略面で頼れるおじ様だとしたら武力面で頼れるのがこのアニキ。



 しかもこのキャラをゲットすることで、あとからイベントを起こすともう一人、別国の攻略キャラが仲間になる。


 それがいわゆるゲルベルグさんの推しカップリングの一つだった。


「設定ではもうラッセンブルグで傭兵をやってる筈なんです」


「さすが神! 私の知らない設定まで把握してらっしゃる!」



『聖女勇者』の、いくら大人向け乙女ゲームであっても伯爵令嬢になってる私にいきなりの破廉恥行為は雇われ傭兵は出来ないだろう。


 これが権力の力ってやつである。対策はバッチリだ。



 しかしこの世界『聖女勇者』と違って魔物がお金を落とさないし生活費もあるので結構金欠になりやすい(代わりに肉がとれるけど)


 なのでゲルベルグさんにもちょっと出資してもらおうという計画である。



 雇うお金をつくるのも結構大変だ……しかも雇うのは攻略キャラの傭兵隊全員……なので高額。


「お前だけくれよ!!」って人も何人かいただろうな。


 しかも現実だとその傭兵団を食わせるお金も必要になってくるだろう。た、足りるかな……。



 ちなみにラッセンブルグスタートだと無料で仲間になってくれる。


 対象国スタートだと基本的にそこの国の攻略キャラが初期のチュートリアルメンバーだ。


 カーグランドスタートだとレベル60で能力半減のやる気ないおじ様とだけど。



「マリア神も13歳ですし、戴冠式が終わったあとは直近の問題はデビュタントと仲間集めですな」


「そうだね」


 にこにこするゲルベルグさんに私はそう返したが、『創造主が後見人の娘』という肩書きの娘を欲しがる国は必ず出てくるだろうとギルヴィードおじ様から注意をされていた。


 ゼルギウスさんは用意もなく王になってすぐに私の存在という負担を背負わされることになって大変申し訳ないが、私も出来る限り協力していくので頑張ってほしい。



 グルグルと陰謀の渦に巻き込まれていくような不安も抱えながらも、前向きに進めていこうと気合を入れた。


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