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050 聖女化と自我の目覚め

 


 創造主ラフィエルの降臨に、みな大混乱。


 私は全回復したカムイに守られながらその場を後にし、公の場で説明を余儀なくされた。


 説明の場を設けていたところにまた更に忙しい使者が飛ぶようにやってくる。



「一体どういうことだ!!」


 ザッグベルから使者が肩で息をしながらやってきたかと思えば


 なんでも、ザッグベルの負傷兵たちの傷も癒えたらしい。


「ザックベルの兵士も……!?」



 カーグランド陣営も驚いて全員が私を見やった。


「あーっと……」


 視線が痛い。私は観念したように口を開く。



「私が、全兵士の傷を願ったからだと……思います」


 ラフィちゃんは私に甘い。やさしい子に育って嬉しいけれども、私の事を心配してくれたのだろう。



 なんにも考えてなかったけど、確かに頭の中には敵の兵士たちの安否も気になっていた。


 流石に敵なので癒すのはヤバイとは思ってたんだけど、もしかしたらラフィちゃんがサービスしたのかもしれない。


 それかラフィちゃんの回復範囲がガバガバだったのかどっちかだ。



「敵まで癒すなど……あり得ない!」


 ですよね。


「だからこそ、創造主ラフィエルに気に入られ、叶えられたのであろう」


 そう返すのはゼルギウスさん。



「そ、それは……」


「ラフィエル様にとって我らは敵も味方もなく同義であろうからな」



 創造主ラフィエルに気に入られた少女が現れた。


 しかも自分たちまでその少女は回復してくれたのだ。



「これぞ、創造主の愛し子と呼ばずしてなんと呼ぼう」


 ザックベルの使者は膝から崩れ落ち、信じられないものを見るように私を見ていた。


 それだけであちらはよほどでない限り……もう攻撃はしてこれないだろう。




 お祖父様もギルヴィードおじ様もゼルギウスさんも最初はビックリしていたが


「お前の規格外にも慣れてきた」


 とすぐさま利用方法を考えていた。悪い大人だ……。




「こちらとしては、ザッグベルとは戦いたいと思っていない。今回は仕方ないことだと思うができたら講和が出来たらと思っている」


「なんだと?」


「私は、そちらの事件は本当に身に覚えがない。やったのが本当に我がカーグランドだったとしても、……恥ずかしい話、今ウチは二分していてな。こちらを貶める陰謀かもしれないのだ」



 カーグランドが二分していることは有名なのだろう。使者も頷いていた。


「ザッグベルでもゼルガリオン……いや、ゼルギウス殿の勇名は届いている。そのような者がこんなことをするとは思いたくない」


 使者ゼルガリオンファンか?



「しかしこちらの被害も甚大。何かしらの手立てはして頂きたい」


「それは勿論。我が名ゼルギウス=カーグランドに誓って、今回の件は白日の元に晒し、もし真実なら謝罪と幾ばくかの賠償を陛下にお願いするつもりでいる」


 王子自らの言質に使者も少し仕事が出来たとほっとする。



「その準備が出来るまでは停戦としよう。私たちもあの堅牢なカーグランド随一と言われるベルドリクス軍を相手にするのは骨が折れそうだ」


「お褒め頂きありがとうございます。こちらもザックベルの勇猛さに必死でした。そのお言葉有難く頂戴いたします」


 お祖父様は軍人伯爵に恥じない精鍛さで礼をする。



 私は聖女然でしずしずと座っている係だ。



「しかし『カーグランドの聖女』と名高いマリア殿が本当に創造主ラフィエル様に気に入られるとは……」


「わたくし、昔からラフィエル様のことをお慕いしておりまして、カーグランドの為に毎日祈ってまいりましたの。その祈りが届いたのかもしれませんわ」


 愛国心と信心深いアピールでなんとかやり過ごし、使者を返した。






「まさかラフィエル様が出てくるとはな」


 話には聞いていたが……と初めてみる面々は驚きだったようだ。


 今は先程のメンバーにフィンスターとリルム。そして全回復したカムイだ。


 カムイがちゃんと治ってにこにこしてしまう。


 目が合うたびカムイは嬉しいけど申し訳ないような、照れたような、複雑な顔をしてくれた。



「やっぱりエリウッドは強かったですか」


「はい。相当な強さでした。気に入られたのか目を付けられたのか、撤退の際はまたやろうと帰っていきました」


 カムイより若干レベルは高そうだったが、支援と防御特化でなんとか防いだようだ。


 気に入られて帰って行ったようで、一回目の攻略が成功してる。私、攻略キャラ正規に攻略するの初めてじゃない? 全然良くないけど。




「しかしもうマリアの『聖女化』は止めらんねえぞ」


 ギルヴィードおじ様は今後のことを考え始めていた。



「私が困っていたからたすけてくれたんだとは思いますが……あまりにも効果が大きすぎましたね」


「あぁ、これからが大変だ」


 お祖父様ははぁ……とため息をついた。



「でもラフィエル様に気に入られてる娘ってことで回復魔法が使えるのはおかしくなくなりますね!」


 もうラフィちゃんも回復魔法も盛大にバレたのだ。開き直っていくしかない。



「異世界召喚の聖女ではないけど、準聖女みたいな扱いになるんでしょうか?」


 フィンスターはうーんと私の立ち位置を考える。



「カーグランドの貴族だからな。下手によこせとは言えないだろうが……」


「クレルモンフェラン辺りはうるさいだろうな」


 宗教大国だからこそ崇める対象に気に入られた娘は手が出るほど欲しい筈だ。



「陛下もマリアをカーグランドの財産だと思っている。下手をしなければ大丈夫だとはおもうが……」


 現カーグランド国王は王様然とはしているのだがどうも行動が遅いというか……、事なかれ主義や自分に都合の良いことだけを信じて政策を推し進めている節がある。


「早くゼルギウスさん王様になってくださいよ」


「無茶言うなって!」



「今回のザッグベルとの講和はでかいんじゃないか。本当にシグルドたちのせいなら金さえ払えばなんとかなるだろう」


 お金はリルムから湯水のように出るしね。


 ベルドリクス家が金で国に恩を売れるチャンスだ。



「国税で支払うことになるから完全に民は荒れるだろうし、本当にシグルドがやったのならもうシグルドは無理だ。父上も決断するしかないだろう」



 政治の話は一旦置いておき、今回の戦の話になった。


「防衛に停戦に……今回のMVPはマリアだな」


 ゼルギウスさんに笑っていわれるが私は首を振る。



 回復魔法さえ怯えて使えなかった私に勇気をくれたカムイと、守ってくれたラフィちゃんだよ。







 戦争騒ぎもわずか一日で終結し、私たちとゼルギウスさんとで転移をした。


 援軍の軍は人数が多すぎるので一日つかって帰ってもらう。ごめんね。


 いきなりの転移魔法にカーグランド王宮は大騒ぎになったがすべてギルヴィードおじ様がやったことにしてベルドリクス家は転移魔法が使えるのが普通アピールをした。



 まずはザックベルの仲違いをさせた犯人捜しをゼルギウス陣営総出でやるとのこと。


 それから陛下に報告し、ゼルギウスさんが友軍を率いて敵を退かせた功績、停戦から講和に向けての流れに持っていった功績を褒められていた。



 そしてベルドリクス領付近で光の筋がカーグランドからでも目撃できたようで、ラフィエル様の降臨について話したらその後はそれはもう人が飛び交う大騒ぎとなった。


 陛下は私がラフィちゃんを呼べることを前もって知っていたので取り乱しはしなかったが、ラフィエル様の信者となっていた陛下は「もう一度お姿を見たかった…!」と悔しがっていたそうだ。


 そこじゃないだろ王様。




 ラフィエル様を呼び出したのはこのカーグランドの貴族、マリア=ベルドリクス。


 神に愛された少女を持つ国としてかなりのアドバンテージを得ることになる。


 そして他国からの圧力などもどんどん増えていくだろう。



 王の手腕が問われる問題だ。


「今後の件を話す機会を設ける」


 と陛下が仰ったので、これはそろそろ王太子が決定するのだろう。





 ベルドリクス家としては一難去ってまた一難というところだが、計画の想定内にはまだ収まっている……かな?


 本当はゼルギウスさんが王になって保障をもらってからバラす予定だったんだけども……。


 でもカムイをそのままにしておくなんて出来ないし、仕方ない。



 シルメリアお祖母様にも私が創造主に愛された聖女である説明をしたら


「なんとなくそれくらいは覚悟していたわ」


 と度胸のあるお言葉をいただいた。



 国の文官たちよりよっぽど胆が据わっている。




 ザッグベルの件が落ち着いたので一旦カムイはウチに帰ってくることになった。


 もう兵を率いる立場だし、名目上は騎士さまで奴隷でもないからお金も貰えてるんだけど「ベルドリクス家にご恩や家の担保を返せていない」と一定のお金を渡したいと言っている。


 ウチとしてはいい買い物したと思ってるし、このままカムイが居てもらえるならなにもいらないんだけどな。


 なら折角だからカムイが淹れたお茶が飲みたいとリクエストして今カムイに緑茶を入れてもらっていた。


 癒される……。



 そうやってのほほんとしていたら昼間と同じく光が集まってきた。今回は密やかに。


 カムイはスッと膝をつき、頭を下げた。従者時代の経験上、誰が現れるかわかっているのだろう。


「マリア」


 創造主ラフィエル様の降臨だ。


「ラフィちゃんさっきはありがとう」


「マリアは大丈夫か」


「うん。凄く嬉しかった。なによりラフィちゃんが考えて行動してくれたのが嬉しい」


 まるでママのような褒め方をして私は頭を撫でる。


 ラフィちゃんはちょっとうれしそうだ。



「ラフィエル様、先程は有難う存じます」


「マリアが悲しんでいたからな。お前もマリアを悲しませるな」


「はっ! 肝に銘じます」


 朝にカムイが起こしに来ていたのを覚えていたんだろう。


 私以外にも興味を持つようになったからかカムイにもこうやって声をかけてあげられるようになったり、とても良い傾向だ。このまますくすく育ってほしい。





 最近ラフィちゃんは自我が目覚めてきたのか好みの話や好みの人形などの、好みが出てきていた。


 その中でも白うさぎ型の動物モーフィのぬいぐるみを特に気に入っていて、よく抱きしめている。


 モーフィは温厚で攻撃することもない草食動物なので子供に近付けても大丈夫という観点からぬいぐるみにされ愛されているそうだ。


 子供はぬいぐるみの動物に愛着を持って危ないものでも近付いたりしちゃうからね。



 ちょっとデフォルメはされているけどモーフィだよと言ったら「あれか」といいながらもふもふ抱きしめていた。


 教会は神の使いの神獣像をフィンスターじゃなくて白うさぎにしてあげるべきだな。うん。





 カムイが退出し、ラフィちゃんと布団にもぐり私は今後を考える。


 次の陛下の集会というパーティで、多分王太子をゼルギウスさんにすることが決定するだろう。


 陛下もシグルドには諦めムードだったし、それは多分決定的。


 あとは問題のゼルギウスさん暗殺だ。



 もうギルヴィードおじ様が潰してくれていたのがそうならいいんだけど……。


 大荒れしていた内部揉めもなんとか収束が付きそうで私は安らかに眠りについた。

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