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049 教育を行き届かせた聖女

 


「ぜ、ゼルギウスさん!?」



 知らせないでおこうって言ってたのに、援軍連れてきちゃった!!?



「馬鹿野郎!! 未来の国王候補がこんなとこにしゃしゃり出てくんじゃねえ!!」


 ギルヴィードおじ様はガチ切れのようでお怒りの言葉を部屋に常備してあった拡声魔導具を使って届ける。



 敵も困惑しているようだ。そりゃそうだよ。


 思いっきり大将首ですって自己紹介してきたらびっくりするって



「友の為に命が張れずして国が守れるか!!」


 ゼルギウスさんらしいけど、困った。


「駄目だアイツ。……おいマリア。アイツに支援かけてくれ。アレやるぞ」



 アレ……というと。



「わかりました」


「?」


 よくわからずに見守っているリルムの横でゼルギウスさんに支援を送る。



 支援魔法をかけると力が漲るらしいのでこれでゼルギウスさんにも伝わるだろう。


 ゼルギウスの張り切るような声が響いた。


「いくぞ!」


 ゼルギウスさんは支援魔法効果と身体強化も使って高く跳び、敵陣にむかって剣を突き立てる。



「ゼルガリオン・クラーッシュ!!!!!!」



 拡声器で良く通ったそのセリフと共にギルヴィードおじ様はゼルギウスさんの周りに強めのサンダーストームを落とす。


「ぜ、ゼルガリオンだ……」

「本物だ……!」

「本物のゼルガリオン……!」


 敵も味方も援軍もざわついている中、ゼルギウスさんだけが堂々と


「突撃ーーーー!!!!!」


 と号令した。






 ゼルガリオン効果か敵は援軍に一目散に逃げ、今日の戦争は終わった。


 明日どう出てくるかはわからないが、今日は快勝と言ってもいいだろう。



 なんでもザッグベルは正義とかヒーローとかが大好きなお国柄らしく、ゼルガリオンが大流行りしたらしい。


 憧れてたヒーローが敵の総大将としてやってきたら、そりゃあ士気もだだ下がるだろう。



 舞台裏を知っているゼルガリオンを知らないリルムは「なあなんであんな大きな声だして攻撃すんだ? 技名か? なんでギルの魔法をみんなあっちがやったって思ってんだ??」と不思議そうに聞いてきた。


 男の子のロマンなんです……。






「てめえなんて無茶しやがる!!」


「でもなんとかなったろ?」


 そう言い切るのは正義のヒーロー・ゼルガリオンことゼルギウスさんだ。



「ヴィードならなんとかしてくれると思ってたんだよな」


 ギルヴィードおじ様が甘やかすからこんな風に育ってしまったんだと思う。


 実際、今回もなんとかさせちゃったし。



 この場には、はぁ……とため息をするギルヴィードおじ様の他に父のお祖父様がいる


「ゼルギウス殿下、この度は我が軍へのご助力大変ありがとうございました。」


「いや、俺が好きでやっただけだ。ヴィードには怒られちまったがな」


 お祖父様とゼルギウスさんは和やかに話した後、今の状態を聞いていた。



「数と状態を聞いてやべえと思って来てみたけど、結構余裕そうだな」


 籠城の悲壮感も全くない。とゼルギウスさんは褒めてくれた。



 戦好きの慣れた強国5000に攻められる3000の弱小国。


 ちまちまとした嫌がらせへのみせしめとしてあっちはゼイベスくらいは取ろうと思って攻めていただろう。



「まあ、主にマリアの功績だな」


 ギルヴィードおじ様はクイッと顎を私に向けた。



「兵の強化、そして広範囲バリア。アレを攻略すんのはあっちも骨が折れるだろう」


 MP切れを狙うにしても私MP使いたい放題だからね。



「籠城戦だが魔導士戦でかなり有利に運べたのもあって相手はかなり削れたな」


 削れた……いやいや敵だ。考えないでおこう。


 能力低下無しのやる気満々ギルヴィードおじ様はやっぱり砲台として強すぎる。


 リルムのおかげでMP切れも気にせず打てるのもでかい。



「今後もこれで押していければなんとかなるとは思うが、兵の損害は増えるだろうな」


 お祖父様の言葉に私は顔を渋らせる。



 今回だけで18人もの戦士が亡くなったという。これでもかなり少ないほうだとはいうが、そういう問題じゃあない。


「早くこの戦を終結させる方法はないのでしょうか……」


「あるにはあるぜ」


 ゼルギウスさんは堂々と言い放つ。


「本当ですか!?」



「……またおめえ、無茶する気じゃねえだろうな」


「その辺はヴィードと話して詰めようや」


 ギルヴィードおじ様の睨みも慣れたものでサラリとかわしていた。


 わいわいと話している中にふと違和感を感じた。



 ……? あれ?


 今この部屋に居るのはお祖父様、ゼルギウスさん、ギルヴィードおじ様。フィンスターとリルムはこの場に入られる身分ではないと言われ、別室で待っているところだが。


 ここにいてもおかしくない者がいない。


「………………カムイは?」


 みんなシンッ……と静まり返る。



「……あの、カムイは?」


「命に別状はない」


 ……つまり、私に見せられない怪我をしているということだ。


 私はまた外の惨状を一目も見ずにこの部屋に通されていた。



「っ! カムイの手当てを!!」


「ダメだ!! カムイの怪我はみんな良く見ている」


 誤魔化して治せる怪我じゃないほど大きな怪我ということだ。


「支援効果もつけてある。もうお前に出来ることはない」


「……回復魔法は……」

「ダメだ。未だ危険すぎる」

「………………」


「……せめて、安否を確認したいので、カムイに合わせてください」


「怪我人を見るのはマリアに良くない」


「とりあえず今日は寝ろ」


「気分転換に散歩でもしようぜ、な?」



「いいからカムイに会わせて!!!!」



 静かになる室内に「なら自分で探しに行きます」と部屋を出ると慌ててゼルギウスさんに止められる。


「……カムイは会いたくないと言っていたぞ」


「でも私は会いたい。カムイと私の言葉はどちらの方が強いとお思いですか」


 権力をかさにして振り切った。



 部屋を出て外に出ると手当待ちの兵達が止血に布だけ巻かれ横たわっていた。


 ……ひどい。



 私はカムイは何処と医療班に聞き、カムイのいるとする病室へ向かった。


 わかっていたのかギルヴィードおじ様とゼルギウスさんも待機していた。



 カムイは、他の大量の手当ての終わったのだろう兵たちと共にいた。


「っ!! 姫!!」


 骨折したのだろう、左腕や足、見えないが内臓付近も


 そして、カムイの目は一つ包帯で巻かれていた。



「ち、「ダメです!!」


 カムイは小声で言う。


「俺の負傷は多くの兵がみています。完全に隠せるものじゃありません」


 今も領主の孫が来たからか、みんながこちらを注目している。


 元護衛でお気に入りのカムイがこんなことになって、さぞ胸を痛めているだろうと皆の顔も暗い。



「でもこれは、私が命令して……っ!」


「カムイ隊長は俺たちを守ってくれました」


「隊長がいなければ、この辺りにいるものは死んだものばかりです」


「姫、俺のことは気にせず。ここはお身体に障ります。一旦外へ……」



 この子はいつも私の事ばかり考えて、自分を犠牲にしてばかりで、


 生き方が下手で、貧乏くじばかりで……



「いやです」



 私ははっきりと声に出してカムイを怒った。


 これをすることでカーグランドが狙われるから禁止をされた。



 でもそのせいで仲間が、自分に力があるのに治せないなんて、そんなのは嫌だ。


 カーグランドを危機に陥れたくはない。


 でもカムイの傷は治したい。



 私の天秤はどうしてもカムイに傾いた。



 どうしても


 駄目だってわかってるのに


 わかってるけど



 私の心はぐるぐるとしたまま、堪え切れない私の弱さは全兵士達の傷が癒えるのを祈ってしまった。



 力を持っていたら使わずには居られない。


 方向は違うがそんな人の気持ちが理解出来てしまった。



「こ、これは……」

「傷がなくなってく……!」


 辺りがざわざわとざわめき始める。


「姫……ッ!!」


 耐えきれず回復してしまった私にカムイが辛い表情をして頭を下げる。



「どういうことだ?」


「まさかマリア様が……?」


「回復魔法が使えたのか……?」


 一気にざわめく室内は皆一点に私を見ていた。



 回復魔法は異世界から呼ばれた聖女にしか与えられたことのない稀有な存在。


 それを一介の伯爵令嬢が使った。


 このことを隠していたと、この後問い詰められることだろう。


 もしかしたら回復魔法の使い手として人権無く馬車馬のように働かされることになるかもしれない。



 それでも、カムイを治したかった。



 全てが完治したはずのカムイの瞳は涙に濡れて、綺麗な雫が落ちる。


「姫……っ!」




「ど、どういうことなんですか! マリア様!」



 混乱した周囲が私の肩を掴もうとした瞬間――私の周りを光が覆った。




『触るな』



 私の上に天から光が降りてきた。


 とても暖かい。毎日夜にやってくる光。



『マリア。お前の人を癒したいという祈り、俺が聞き叶えた』


 いつもよりかなり神々しく降りてきた『創造主ラフィエル様』



「ラフィちゃん……!」


 どうしてここに……!?


 周囲の人々も天から続く光に教会にある創造主像と瓜二つの姿があらわれ目を白黒させていた。



『マリア。お前の気持ちを病ませていた者たちは俺が全て治した』


「え……っ」


『だからもう悲しまないでほしい』


 私の悲しい顔を映すように痛ましげな顔をするラフィちゃんは、最初に会った彫刻のような存在ではなくなっていた。



『この者――マリア=ベルドリクスに人を癒す力を与えた』



 場がどよっとざわめいた。創造主が聖女を創った瞬間である。


 ……いや、元々使えてたんだけどね。



 ――回復魔法が使えることは人に言うと危ないから言えないけれど、人を治したい――


 いつも私が言っていたことをラフィちゃんなりに考えてくれていたんだろう。


 天から降りてきたラフィちゃんは私の頬を撫でて、大丈夫だと言ってくれた。



『マリア。いつもお前を見ている』


 来た時のように光の筋を通って天へ昇っていった。




 これが教育の賜物というものなのか……と、私は呆然とラフィちゃんがいなくなった天を見続けていた。


 不意に涙がこぼれたのは安心か、喜びか。自分でもよくわからない。



 今日の夜ラフィちゃんはよしよしをねだってくるだろうな……とまで考える程には、心が真っ白になっていた。




『まるで寝物語で聞かされる絵本の挿絵のように』天の光を引っ提げてド派手に降臨したラフィちゃんは全世界を震撼させた。


 何百年振りかの皆がいる前での神の降臨である。



 ……私が回復魔法使えるようになったって言うのとラフィちゃんが降りてくるの、どっちの方がマシだったんだろう。

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