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033 回転木馬のモブおじさん

 

 王宮から帰るともう夕方になっていた。


 夕食を食べ、寝る時間までのんびりしているとカムイが手紙を持って入ってくる。


「姫、先の商人から是非お会いしたいと返信がきました」


「返信が早いね」



 面会は3日後と決まった。場所は我が家。


 私は身構える。魔物とかとは戦ってきたけど歴戦の商人などとは初めて会うのだ。



「……何があっても姫の御身は必ず御守り致します」


 カムイは意志を固めて私に言ってくれる。


 私、バリアあるんだけどね……でも悪意ない攻撃だと死ぬかもしれないし、有り難く受け取っておこう。


「有難うカムイ。頼りにしてるわ」


 カムイは嬉しそうにはにかんだ。くぅ~16歳の天使の笑顔!







 今日もラフィちゃんに今日起こった話や、最近リルムから聞いた寝物語を話したりして眠った。


「今日ね、『私の好みのタイプはラフィちゃんです』って言ってまわってたのよ」


 ふふふと笑いながらラフィちゃんに言う。



「好みのタイプ?」


「好きってことよ」


「好き、とは?」


「そうねえ……その人といると幸せな気分になったり、会いたくなったり、大切なものだったり、なくなると悲しかったり……」



「難しいのだな」


「あんまり難しくないのよ。好きはいっぱいあるだけなの」


「沢山あるのか」


「そうそう。小さなものから大きなものまで、好きって気持ちはたくさんあるの」


「ラフィちゃんにもね、たくさん好きを見つけてほしいな」


 今度は好きな気持ちを描いた情操絵本とかないか探してみよう。












 昔、フィンスターがグリムロールにサキュバスのリルムがいると偽装させた方法は情報操作だったのだが、今はサキュバス大捜索時代。そんな技を使って情報戦してる人などたくさんいるだろう。


 しかし一番確定的な情報になるのは私たちも恐れている『捜索魔法』である。



 それを逆手にとる作戦を私は考えた。



 まず、私がリルムをどこか遠い国に素面で転移を使って一緒に飛ぶ。


 大捜索時代の今は捜索魔法を連打していることだろう。絶対レーダーに引っかかる。


 そこですぐさまバリアをかけ直しウチに戻る。



 これで目線は別の国にいき、ちょっとはベルドリクス領、カーグランドも平和になるだろう。


 というわけでみんなの了承を得、やってみて2日。



「効果てきめんでしたね……。ベルドリクス領に居た密偵は今はもう人っ子一人いません」


 元々サキュバスを隠れて捜索出来る程の能力を持った国だったからか、去り際も最高に早い。



 因みに移動した場所はヒューガ国のヤマシロ領にしておいた。荒れろ。









 これでちょっとは安全にリルムと町を回ったり魔物を狩ったり出来るな。と思ったんだけどその前に倒しておかねばならないものがある……。



 そう、『死の商人ゲルベルグ』である。



 今日が面会日なんだよ~っ! はードキドキしてきた……貴族用語(?)は教わったが商人特有の遠回しなこと言われたら理解出来るだろうか。


 心配してくれてるのか付き添いにギルヴィードおじ様と従者のカムイとフィンスター(分身)がいてくれてる。フィンスター本体はリルムと待機だ。




「初めましてマリア様。この度はこちらの要望をお聞き届けくださり有難うございます」


 ゲルベルグはペコリと頭を下げる。


 ……あれ? 見た目は確かに恰幅の良いおじさんなんだけど、成金趣味というか、派手さが足りない。


 当たり前だけどゲームより若いし、普通の良い商人みたいだ。


 いや、そういう作戦なのかもしれない。油断せずにいこう。



 応接室にゲルベルグを通し、調度品や館の出来など商人らしく褒めちぎる。高圧的でもなんでもない。普通だ。


 揉み手でなにか買わせる気なのか、お祖父様溺愛の孫(という設定)の私のお気に入りになる気なのか……。


「ゲルベルグはわたくしになにやらお話したいことがあると聞きましたの。一体なにかしら?」


 怖いのですぐ終わらせよう。私は即本題に入る。



「はい、ご慧眼を持つと聞いたマリア様に我が家の開発した商品を見て感想をいただきたいと思い連絡をとった次第です」


 感想? モニターになってほしいってこと? 確かに今ベルドリクス家は右肩上がりだけど、私は社交界にそこまで影響力はないよ??



 良くわからず商品を出されるのを待っていると出てきた商品に、私は目を疑った。



「この紙は『漫画』を描く際の『原稿用紙』と申します」



 し、知ってる……。これ、現実の画材屋さんで見た……そのまんまだ。


 私は驚いていると更に商品を出してきた。



「こちらも『漫画』を描く際の『ペン先』と『インク』です。」


 Gペンと丸ペン!!!!!!?


 ど、どういうことなの……。こ、これって……


 ゲルベルグは恐縮そうに語り始める。



「手前みそながら恐縮なのですが『漫画』はこのゲルベルグ商会が開発し広めた文化でして、『漫画』というのはこういった本になります」


 と、ゲルベルグは一冊の本を出してきた。薄い。


 私はこの本を良く知っている。


 そして、このキャラクターは、設定や名前は変えてあるけれど、見た目はそのまま



『聖女勇者』の人気BLカップリングの二人



 おいおいおいおいおい!!! 外の世界では二次元だけどここではナマモノだぞ!


 こんなものバレたら不敬罪で捕まるのでは……?


 私は闇商人の恐ろしさの一端を見た。


 流石に年齢制限のあるBLをお嬢様に出すのはまずかったのか。全年齢オールキャラよりの同人誌がそこにあった。


 いや、しかし、私はこのイラストを知っている……。



『聖女勇者』の二次創作で活動する大人気BLサークルの……







「 サークル名『回転木馬』 の 『モブおじ』さん……? 」








 私とゲルベルグは長い時間見つめ合い、ゲルベルグはコクリと頷いた。


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