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030 派閥作業と婚約処理

 


 家に帰ってきて最初に驚いたのは、ギルヴィードおじ様の部屋がヤード先生のカンヅメ部屋になってたこと。



 留守中ヤード先生は屋敷の留守番組の中では一人だけが知っている秘密の『グラフ』の図をひたすらに作り続ける任務を命令されたようだ。


 極秘任務なので、魔導具により他より少しはガードが出来るギルヴィードおじ様の執務室で作業するようにと。


「給料は跳ね上がったけど逆に『絶対に逃がさない』って恐ろしくも感じたよ……」


 と語るヤード先生だが、確かに機密事項を握ってしまったので逃げられたら困るし逃げたら多分フィンスターに消される。気を付けてほしい。



 機密文書に近い国家的な数字の書いてあるものもあり、クラクラしながら作業していたせいか平民のヤード先生はかなり顔色が悪い。


 私はヤード先生が死なないようにそっとバレないように疲労回復魔法をかけた。



 勿論グラフを作る為に大量の資料が置かれた部屋はもはや物置小屋となっており「これはもう使えねえな」とギルヴィードおじ様は部屋を移る宣言をした。


 今の部屋は今後もヤード先生だけが入れる用のカンヅメ部屋となるようである。頑張れ! ヤード先生!




 鮮やかに部屋替えを宣言したおじ様は前は機能性を重視して小さめだったのを前よりも広い、執務室に何故か豪華で大人数人は寝れる天蓋付きベッドまで完備した執務室 兼 寝室となった。


 理由は


「あっ! マリア~~!」


 そのベッドで楽しそうに手を振るサキュバスのせいである。


「待ってね、今部屋内を動けるようになるバリア張るから」


 バリアを張り終わると小さい羽でパタパタと飛んできて「マリア!」と私に抱き着いた。


 うう~~~ん。柔らかい



 サキュバスとしての種族ゆえなのか、人好きなのか、リルムはボディタッチが好きなようで、すぐ人にベタベタとしてくる。


 女同士ということで私は一番の標的にされていた。


 フェロモンというのか、甘い匂いに抱きしめられると幸福感すら感じる。



「姫」


 どこかにいっていた思考はカムイに呼び戻された。


「ハッ!!」


 これがサキュバスの魅了の力か……!!





 リルムは公表するにはやっぱりまだその時ではなく、匿わねばならない。


 それで、匿うと言ったら私の部屋のようにメイドさんが入ってこない、従者にフィンスターがいるギルヴィードおじ様しかない。


 ということでギルヴィードおじ様のお部屋は寝室兼執務室という様相になったわけだ。




「フィン~この本の続きあんのか~?」


 人間の村で擬態して過ごしていた期間があり、リルムは少し文字が読める。


 そこから難しい文字はフィンスターに教えてもらったりして、今では立派な読書家になっていた。



「リルムちゃんそれ気に入ったの? それじゃあ今外に出てる僕に買わせておくね」


 フィンスターは影からの連絡は受け取れないが、本物は影に命令伝達が出来るらしい。



 リルムは案外ロマンチックらしく、ロマンス小説を好んで読んでいた。


 私にもよくおすすめの本を貸してくれる。


 リルムにもオタクのケが!? と思ったが、薦められる本を読むとどうやら違うようだ。



「すげえよなあ、普通の人間はこうやって人のこと好きになって、両想いになるのか」



 リルムは長い間人間の中に擬態して暮らし、だからこそ感性も人間に近い。


 男性制作陣が「人間としての羞恥があるサキュバス! 最高!」という観点で作った設定だったのだが、今のリルムは人として育った故か、恋したりするのに憧れる普通の女の子のようで、なんだか胸が苦しかった。



 この世界には漫画もある。


 最近出てきた文化らしいが、画期的で面白いと大衆の流行になっているらしい。


 勿論貴族内でも流行っており、本の種類ごとに同好会のようなグループも出来てるとか。



 そんなわけでリルムの引きこもりライフは順調のようでよかった。


 元々は外に出て遊びまわるようなタイプだったんだろうけど、潜伏期間が長かったので息を潜めるのは慣れているのだろう。


 暇を潰せるものがある今がすごく楽しいらしい。





「しかしフィンスターを見たあとだと、ここの防衛ラインのバリアが心許なく感じますね」


「アイツが規格外なのはわかってるが、気持ちはわかる」


 ギルヴィードおじ様はバリア系の魔法は趣味程度だそうだ。


 趣味程度でこれだけできるのも凄いことだけど……


 嗚呼……有能な魔導具が欲しい。



 有能な発明家の攻略キャラ、シャルル=カルーセルが敵陣営に取られてしまっていることが無念でならない……。


 どうにか引き込みたいものだけど……。




 ギルヴィードおじ様のお部屋には醸造台も設備された。


 ポーション作りの為のものである。


 リルムには自分の『体液』なので恥ずかしいと反対されたらしいが、リルムの傍には誰かが居ないと危ないのだ。我慢してほしい。



 サキュバスの体液が主な原料で、サキュバスの満足が大きければ大きいほど下級、中級、上級と上がる。


 配合によってHP回復になるかMP回復になるか変わるようだ。



 ちなみにスピンオフ作品設定ではサキュバス本人に『癒して』もらうのも同じくサキュバスが満足すると全回復するらしい。


 リルム情報だと、捕まったサキュバスは媚薬や幻術などのクスリをつかっていい気分にさせて効率的に搾取するんだそうだが、そんなのサキュバスの寿命がなくなるだけだ。


 説明していたリルムも悲しそうだった。


 普通ならwin-winの関係が築けそうなモンなのに、なんでこんなことになってしまったんだろう。





 ポーションを作ってわかったが、これ、結構才能がいる。


 とりあえず作れるは作れるが、人によって上級の配合で作っても下級が出来たり、中級で作っても上級が出来たりする。


 カムイは適性がないのか散々な出来栄えになり大変恐縮していた。いいよいいよ。戦闘特化だからねカムイは。




 やっぱり魔導具も含めて、調合も攻城兵器も魔物解析も出来る天才のシャルル=カルーセルは欲しいなあ~……戦争になったら知識は宝だよね。


 しかしシャルルは天才故なのか、急になにをやらかすかわからないトラブルメーカー。


 正直仲間にするのはちょっと怖いところがある。


 なんとかあんまり関わらない方向で仲間にすることは出来ないのだろうか……。



 とりあえず彼は貢がないと始まらないのでまた手紙を懲りずに送った。


『シャルルさんに是非作ってもらいたいものがあるのですが――……』


 とりあえずシャルルが仲間にならなくても今はリルムの為にも質の良いバリアの魔導具が欲しい。金は出すから。








 怒涛の忙しさだったが、これでまだ一か月くらいしか経っていない。


 しかし国の内情はちょくちょく変わっているらしい。



「急務ということでまずこれを調べました」


 フィンスターは報告と同時に詳細をまとめた紙の束を持ち出してきた。


 ちらっと見せてもらうと、貴族家ごとに紙が分かれており、お家関係、金回りや弱味、能力など事細かに詳細が書かれていた。



「こ、これって……」


 加入してからまだ一ヵ月の密偵がこなせる量ではない。


 フィンスターはなんでもないことのように私に微笑んだ。


「ええ。ギルヴィードさんが希望していたカーグランド貴族の詳細な情報になります。個別能力がありそうな者はギルヴィードさんが言ったものをクリアしているか見込みがありそうな者――家が敵派閥、内情黒でも入れてあります」


 貴族一家で一枚岩になっているものと貴族内でもひっそりと二分していたり、数人だけ内通者がいたりするようだ。売国奴や中立、様々いる。



「引き込みづらそうとかは一切関知の中に入れていないので、厳しい人もいるかもしれませんが……」


 ギルヴィードおじ様はフィンスターから紙の束を受け取り目を通して向き直る。


「いや、敵陣営でも有能な奴は把握しておきたい。助かった」



 フィンスターは毎日ニコニコとリルムの横で掃除したりマッサージしたりお茶入れたりしているイメージしかなかったんだけど、いつの間に調べたの……。あっ、影か。


 流石は『人々を見守る神獣』フィンスターといったところか。


 こんな短期間でカーグランド中の貴族の能力や内通者を調べるとは……思った通りのぶっ壊れスパイ能力。


 味方に出来て良かったと心から安堵した。





 早速心強い攻略キャラのぶっ壊れ性能を味わった後、夕食にてお祖母様が大量のお手紙を持ってきた。


「これ、マリアとギルヴィードに全部。ウチのを婚約者にどうかですって」


 私は困惑、ギルヴィードおじ様も横目で見たら難しい顔をしていた。



 ギルヴィードおじ様は結婚適齢期より若干上の年齢だ。


 嫡男、世継ぎとして結婚を決めてほしい気持ちはあるだろう――……と思っていたが、シルメリアお祖母様を見ている限り困っているようだ。



「ゼルの王太子の件が片付くまではヘタな縁を作る気はねえ」


「だと思ったのよ」


 息子の性格をよくわかっている。



「ゼルガリオンの経済効果に王の暗殺阻止、領に表れた強力な魔物を打倒した軍に……最近ベルドリクス家の評判が上がりすぎているの」


 確かに色々起きてた気がする。



「しかも王位継承はないと言われていた第二王子がまさかの大逆転、未来の王太子と言われるゼルギウス様の無二の親友で国にまたといない凄腕の魔導士よ?」


 確かにそう聞くとギルヴィードおじ様はかなりのお買い得物件だ。


「ちょっと歳いってますけどイケメンですしね」


「そうそう、まだギリギリいけるって令嬢もいるのね」


「おい」


 好き勝手言われてギルヴィードおじ様は若干居心地が悪そうだ。



「やんわりと何度も王太子が決まるまでは……と断っているんだけど、全然なくならない上にどうにかお見合いをセッティングするだけでもとか粘られちゃって」


「そんな馬鹿なことを言う使えない女に足を引っ張られたくねえな」


「そうなのよ。ここだけの話、相手の内情を考えずに申し込んできてる時点でちょっと頭がよろしくないわ」


 ベルドリクス領が大量の魔物に襲われてまだ日も浅く混乱しているというのに、社交界へのお誘いがたくさん来るというこの実情……。


 まともな貴族たちはワンクッションとしてベルドリクス領のお見舞いのお手紙を送ってきているらしい。


 社交でのし上がる貴族という職業向いてないんじゃないか?


 相当お祖母様に負担がいっていたようだ。珍しく毒を吐いている。




「っていうか、わ、私も……ですか。私、孫の交流会くらいしか行ったことないですよ」


 この世界は大人向けゲームにする手前、日本基準なので18~20歳が成人とみなされるラインで、30代でも子供が産める。


 なので(親同士の許嫁など10代で婚約者などが決まっている場合もあるが)それを除けば私に求婚してくるのはかなり早いと言えよう。


「マリアのことは見たこともない人が殆どだから、この前の支援魔法でほしいところが増えたって感じね」


「女は嫁に入ればそっちの家のモノになるからな。相当モテるだろう」


 ぎえ~~~全く嬉しくないモテ方!



「……そんな見え見えの求婚って却って相手に印象悪くさせませんか」


 嫌そうな顔でギルヴィードおじ様に聞くと素っ気なく返された。


「親がメリットを感じて繋がりたいと思ったら婚約させるからな。営業みたいなモンだ」


 は~~~~っ! 令嬢の人権!! 戦国時代はいつの世もこうなる。



「ウチで確保する為に迎え入れたような子を嫁に出す気はないからそっちも断りたいんだけどこっちもしつこいのよ」


 はぁとため息をつくお祖母様。



「フィンスター、馬鹿を全部まとめてリストアップしておいてくれ」


「かしこまりました」


 馬鹿発見器になったな。とギルヴィードおじ様は鼻で笑った。



「とりあえずわたくしの方からも頑張ってみるけれど、いつまで抑え込めるのか……変な人に言質とられないようにだけは注意してちょうだい」


「ああ、そういう口だけが上手い貴族はたくさんいる」


 吐き捨てるかのようにギルヴィードおじ様が言う。



 私はそういう貴族に辟易してやさぐれた態度になってしまう。


「縁談で家を強くしたり口を上手く転がして失言を引き出すのは戦争で役立つんでしょうか……」


「説得はまず胆力がないと無理だ」


「……貴方たち、最近考え方が物騒よ」




 確かに貴族の関係は凄く大事だし、お金を借り合ったり支援してもらったり情報を交換し合ったり、大切なことはたくさんある。


 こういうめんどくさいことも貴族の義務なんだと思う。


 その上で私は理不尽に怒りたい!



 こちとらテメェらの為に戦争の準備しとんじゃい!!!!!



 ゼルギウスさんを王にして死亡ルートを無くしたいし、


 リルムの状況をもっと改善できないかと思ってるし、


 金策のポーションを売る手立ても考えないといけないし、


 そもそもそのポーションも作る人材を探さねばならないし、


 軍ももっと強化してみんなが生き残れるようにしたいし、


 仲間だってもっと集めておきたいし、



 も~~~~っ! やることいっぱいなんだから邪魔しないでよ!



 今日はラフィちゃんの翼をもふもふして寝よう。


 そう据わった目で夕食を食べる私なのであった。

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