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024 犯人召喚士捜し

 

 朝起きて元気になっている私にカムイは感激し「今度給料をラフィエル様を祀る教会に寄付しようと思います」と喜びを露わにしていた。


 忠誠心の厚い部下を持てて、幸せものだな。


 それに信心は大事だよね。本人は全く感知しないとは思うけど……。



 戦後処理も落ち着いてきたとのことで、今回の件について話し合うと聞いたので混ぜてもらうことにした。


「マリア、もう大丈夫なのか」


「はい。御心配おかけしました」


 お祖父様は私が聖女とわかっているからなのもあるんだろうけど、利用価値を差し置いても優しくしてくれてると思う。


 顔は怖いし分かりづらいけど。



 ギルヴィードおじ様といい逆にいつも笑顔のお祖母様といい、ベルドリクス家はわかりづらいけどかなり情が深いのではないだろうか。


 それを言ったらカムイやヤード先生には微妙な顔をされ、ギルヴィードおじ様には鼻で笑われた。


 いや! でも現にギルヴィードおじ様はゼルギウスさんの遺言でカーグランド守ってたからね!? 優しさは命取りになるから気をつけてほしい。



「なら丁度いい。マリア、お前が防音魔法を張れ」


 ギルヴィードおじ様はMPが回復しきっていないらしく、ちょっと疲れた表情だった。



 ギルヴィードおじ様の欠点として火力は大きいが燃費が悪く、MPがすぐ底を尽きるという点がある。

 序盤中盤のお助けキャラで長期戦には向かない。


 基本この世界ではMPは自然回復しかない。


 MP薬も作れるが原料が希少でとても高価。



『聖女勇者』ではゆとり仕様なのでイージー、ノーマルモードでは即回復、ハードモードでも回復ポイントがセーブポイントと連動しており、すぐそこかしこで回復出来たが……今はそうではない。


 ギルヴィードおじ様があまり戦わずいつも温存していたのはそれが原因だろう。




「それで、今回の件の犯人はわかりそうなのか?」


 お祖父様の前に集まっているのは私の秘密の関係で私とギルヴィードおじ様とカムイだ。



「外か内か……カーグランドにあんな量の魔物召喚が出来る召喚士を所有しているところは、隠していねえのならいねえな」


「うむ。九分九厘 内は無い。カーグランドで私に目を付けられずそんな用意をする政敵がおったなら握手したいところだ。」



 今回のMVPカムイは三人分のお茶を淹れ、会話には参加しない心算の様だ。私の従者だし立場からしたら当たり前か。


 カムイは兵の中で英雄扱いらしく色々聞かれていたようだが、「姫の護衛であり姫の願いを聞いて参戦した」と一貫して軍とは関係ないと主張し、私をみんなの視線から外す為ヘイトスキルに関しては自分が持っていると嘘を付いたと謝ってきた。出来た従者だよ全く……



「そうしたら外か……」


 難しい顔でお爺様は言う。


 私がギルヴィードおじ様を見ると説明してくれた。



「カーグランドは軍部に力を入れてねえことからわかる通り密偵が育っていねえ。しかも内部が二つに割れてる状態で情報戦の真っ最中だ。外に出す暇なんかねえ」


「なので外の現状は交易商人や社交界からどことなく聞くしかなく朧げにしかわからない。安全な交易国カーグランドと言い張ってる割には随分ハリボテだ」


 自嘲気味にお祖父様はいう。



「だから犯人探しは憶測でしかない話になるな」


「自由な討論会ってことでいいんですね」


「まずベルドリクス領の中心グリムロールが狙われる意味がわからねえ。国境線の城壁都市ゼイベスなら隣国かと勘ぐれるんだが」


「確かに一番あり得るのは隣接しているザッグベル国だ。だが、あそこの国は強国であることを自負している。わざわざ内密に魔物をけしかけるような真似をするとは思えん」


 確かにザッグベルは脳筋というか……体育会系というか……とにかく気持ちが良いスポーツマンシップのある国だ。あんなことやる気はしない。




「ならベルドリクス伯爵家がどこかから恨まれてる可能性だが……」


「あるんですか?」


「なんの名産もない小国の軍だけが取り柄の伯爵領だぞ? 隣国と内側じゃないならこっちが聞きたいくらいだ」


 お祖父様とお祖母様は二人ともカーグランド出身だし、家格も最適、政略結婚で泥沼修羅場もなし……ギルヴィードおじ様に関してはゼルギウスさん以外とむしろ関わってるの? ってレベルだ。


 お近づきになりたい婦女子は多そうだし社交界にも出てるみたいだが私はそんな話を一切聞いたことない。



「だが……なにやら領内に他国の者が頻繁に来ているのは聞き及んでいる」


「ウチに? 何故?」


「わからん。が、何かを探すような素振りをしているらしい」


 なんだろう? カーグランドに亡命する攻略キャラとか居ないぞ?



「父上、どの国なんだ? そいつは」


「それが、見つけているだけでも五本の指を越える」


「えぇ……」


 そんなの普通じゃない。



「……そいつぁ……なんかあるな」


「うむ。そうとしか思えん。なんなのか調べさせてはいるが、まだわかってはいない」


「今回の件と関係はありそうだが……複数っつうことは絞り込みも難しいな」


 二人が考え込み、静かになったところで私も発言する。




「自由な憶測の場であるのなら……」


 私はおずおずと自分の考えを出した。召喚士の攻略キャラクターのいる国。



「魔人連邦ガノンの可能性はないでしょうか……」



 魔人連邦ガノン国とは魔族と人とが共存し、ハーフなどが多い多種族国家が特徴で、「魔王様側」みたいなちょっとダークな世界観が好きな乙女に向けた国になる。


 悪の組織みたいな城にゴシック調の服を着たキャラが多い。


 ちょっと危ないところや尖ったところが熱狂的なファンが多く、特に若い層からの一番人気だった。



 因みに宗教大国クレルモンフェランとはすこぶる仲が悪く時々小競り合いをしている。



 そこの攻略キャラの召喚士が件の犯人なんじゃないかって睨んでるんだけど……


 元は他国、宗教大国クレルモンフェランの人間だったが、宗教の解釈により迫害され、ガノンに亡命してきた。


 哀しみや怨みは強く「もう人間ではいたくない」と悪魔に魂を売り魔物を召喚する召喚士として覚醒する。ので悪魔のツノを付けた青年だ。いいよね。悪魔ツノ。


 最初に超怖いガノンの中で暗い過去があるとは微塵も見せず明るく接してくれるムードメーカーだが、実は人間嫌いのくせ者。


『聖女勇者』の中でもキャラ人気が高い一人だ。


 仕掛けてきた理由はわからないが、理由があればやらないキャラではない。




「確かにガノンならあれほど大量の魔物を出す召喚士を用意出来るかもしれないが、ガノンとはカーグランドですら隣接もしていないし一切関わりがないぞ」


 そう、カーグランドとガノンは遠い。


 ガノンは地図上で端のほうにあるので隣接してる国が少ない。


 交易くらいしか関わりがないのだ。



「正直私もあんなたくさんの魔物が召喚できるのは魔人連邦かなって思っただけなので……完全に憶測です」


 一人でアレなら彼確定だが大量の召喚士を用意していたなら話は違う。



 話はやはりまとまらないままだが、あの大量の魔物を退けた、ハリボテの『カーグランドは安全な国』を守り抜いた功績は大きく、『強い軍もいてカーグランドは安心』というハリボテの謳い文句を掲げることにも成功し、交易の拠点に選ぶ者も増え、人口も税収も増えた。国としては万々歳だ。軍費寄越せ。


 なんとかもう少し、内部の揉め事に時間が割けそうだ。


 しかしモノリス国の発明家といい、ガノンの召喚士といい、なんで仲間にしたい攻略キャラが攻撃してくるんだ~~!!






 ◇





「ああ〜〜追い払われちゃった。カーグランドってあんな強かったんだ?」


 ははっと鼻で笑うように悪魔のツノをつけた青年は軽快にテーブルにあるマカロンを食べる。


「よくそんなものが食べれるのう」


 人工的な色をしたその食べ物に眉を顰めるのは、口調の印象とはまるで違う秀麗なエルフ。



「糖分も少しはとらないと栄養偏るぞ〜?エスちゃん」


「我が種族は自然の恵みに感謝していきておる。素材に近しいものほど素晴らしい」


「あーー素材そのままの味ってやつ? 俺は調味料とかあった方が好きだけどね~」


 悪魔のツノを付けた青年は軽い調子でマカロンを放り投げ、口でキャッチをした。


 品の良いエルフの彼はそれを見て更に額の皺を深くする。




「おぬしが狙ったのはカーグランドで一番軍に力を入れている領……そこの中心を狙ったら抵抗されるに決まっておる。もっと考えて行動せえ」


「カーグランドは軍に力を入れてるそぶりは一切無かったし、イケると思ったんだけどなあ〜」


 はあ〜と大きいため息をつきながら悪魔のツノを付けた青年はテーブルに伏せる。



「もーMPカラッカラ。身体もダルいし。今襲われたらグレンちゃん死んじゃう。エスちゃん守ってね」


「自業自得じゃ」


「酷い!」



「そもそも二回目の召喚は悪手であった。アレでは何者かの仕業と知られたかもしれん、アレが一人の仕業と分かったら確実におぬしに辿り着く者は出てこよう」


「えっ? なに? 心配してくれてんの? やっさしー」


 エスカトーレは一つため息を吐き出し、「話にならんの」とお茶を飲んだ。



 当の本人のグレンは「そんな奴カーグランドにいるなら魔人連邦ガノンに引き抜きたいくらいだね」とカラカラと笑った。


 そんな軽口をきいてもグレンは人間が嫌いだ。ひとかけらもそんなことは思っていなかった。



「カーグランドは内部で揉めている故……かの存在に未だに気付いておらぬ。その中でも一番の軍事領に逃げ込むとは……またなかなか上手いところに隠れたのう」


「ホーント! 他の国も秘密裏にガンガン狙ってるじゃん。ウチも結構邪魔されてるみたいよ? 魔族としては取られる前になんとか『保護』してあげたいよねえ……」


 ニヤリと人の悪い顔を浮かべる悪魔グレン



()()にも人間にも追われて憐れに思うが……奪われたら事。アレは隷属させてでも連れ帰らなければ」


『同族』という言葉に気を良くしたのかグレンは上機嫌だ。


「そーそー! そーだよ! クレルモンフェランなんて魔族嫌いの癖に捕まえる気らしいぜ? 地下の奥深くに幽閉されて一生……お綺麗ぶってるくせに反吐が出る」



「ウチがいーっちばん優しく『飼って』あげるのにな〜〜」


「どうだか」


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