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021 金策とグラフ



 私はお祖父様に「勉強の成果を見たいから」とお願いして執務に参加させてもらうことになった。


 流石に王宮仕事をさせるわけにはいかないのでベルドリクス領についてになる、と言われるが「ちょうどベルドリクス領内のお勉強もしましたの」と笑顔で頷いた。


 ギルヴィードおじ様が訝しむような目でコッチを見てきた。おいバレんだろ!




 ベルドリクス領はカーグランド隣接国の中で一番手強く好戦的な強国、ザッグベルに面した軍が最も力を入れている領だ。


 大きな国境線の外壁と、そこに面した街は女でも自衛手段を習う。


 県で言う県庁、ベルドリクス領主館がある街が県で言う県庁所在地となるがそれは内側の安全な場所に建てられている。領の基幹だからね。



 名産品は……敢えて言うならば、小麦? どちらかというと他国に面した前線基地って意味合いで憶えられているようだ。


 あと外交。国境線で今はピリピリはしてるけど交易がないわけではないので関税……通行料がとれる。ウマー



 通行料は馬鹿にならない。国に挟まれまくってるのに比較的安全な印象があるカーグランド国は、通行や交易拠点にもってこいなのだ。


 交易は儲かる。地の利は活かしていかないと。



 ベルドリクス領は前線だけど軍備がしっかりしてると評判なので、街に居着いてくれる人も多い。税金的には人口増加は有難い。



 ウーーーーン、カーグランドの売りは交易で、ベルドリクス領としてはやっぱ軍事が売りなのかなあ。


 一応麻とか果物とか野菜とか色々作ってはいるんだけど。


 どこも同じ様なもんだからパッとしないんだろうな……



 今の安全な世で軍事推しって国に支援もらえるの? って思うし、なにより軍って金食い虫なんだよね。


 国からちゃんと軍費もらってる?


 どこの国でも、コスト削減は目に付かない、今は使わないものから。気になり始めた私はその手の資料を漁り始めた。



 この世界は戦国時代的な世界観だから、戦争して勝ったら賠償金と戦利品で丸儲けって設定だけど(現代とかだと兵器が強くなりすぎて勝っても負けても大損だったり、中立国が漁夫の利を得たりするよね)、動かないとただ食わせてるだけだもんな。


 ゼルガリオン人形をベルドリクス領で作らせて名産にすれば良かったのか?


 でもそしたらゼルガリオンはベルドリクス領の冒険者ギルドにいないとおかしいし、何よりほぼバレてるカーグランドの王子だ。


 下手したら王子を私物化して傀儡にしていると思われる。無茶は良くない。




「あった」


 ――ベルドリクス領の収支みてるとやっぱり軍が金食ってる。



 しかもこれだんだん国からの軍費削られてんじゃん!


 こんなんで来たる戦争に勝てるの!?



「ウーーーン」


「マリア様、なにかわからないところでもあったかい?」


 家庭教師兼文官のヤード先生は優しく訪ねてくる。


 地味だけど優秀で使い勝手が良いからお祖父様もギルヴィードおじ様もこき使ってるけど、使い潰されないか心配だ。



「えーっと……」


 私はなんて説明したら良いのかなと悩んで「あっ そうだ」と新しい紙を取り出す。


 大きな四角を描き、下に年を、左に桁を書く


 年と軍費の混ざり合ったところに丸を付けて、定規で結んでいく。


 いわゆる折れ線グラフだ。



「これがね、うちの領に支給される軍費なんだけど、ドンドン減ってるの。ほら見て、五年前と比べただけでもこんなに違うの。いくら安全だとしても酷くない?」


「………………!! こ、これは、一目でわかるね……」


「ね? 図にするとインパクトが違うよね」


 プレゼンは出来るだけグラフを多用しろと言われる訳だ。


 数字を言われてもパッとこないが、グラフは馬鹿でも「下がってるな」ぐらいはわかる。



「マリア様は一体、こ、これをどこで?」


 びっくりされてるってことは無かったのか。この国の勉学レベルからするとあっていいようなものなんだけど、数学者とかはいないんだろうな。


 あとなにより世界観にグラフは合わない。


 設定でスチルの背景の書類に「グラフ入れますか?」って聞かれたら「ナシ」って答えるだろう。



 どう答えようか迷っていたら、私の後ろでずっと控えていたカムイが助け船を出してくれた。


「姫はラフィエル様のご加護をいただく聖女様なので、これくらいの事は当たり前かと」


「あ……うん。そうだね」


 シレッと真顔で言っているがカムイ。それ秘密事項だぞ。


 それにヤード先生、ドン引きしてる。



 でもカムイは嘘が下手なので、『身体強化が出来ると言って連れ帰り、本当に覚えさせたお嬢様に心酔している従者』として本当のこと言わせていた方が逆にバレないとの意見をいただき、そのままにしている。


 今度は私が『従者に心酔されるあまり持ち上げられまくってるお嬢様』と可哀想な目を向けられるんだろうが、贖罪だと思って諦めよう。




「とにかく凄いよ! 旦那様に御報告する為に他のも図にしてみましょう!」


 確か製図用の方眼を念写した紙が……とパッとみただけで方眼紙を用意してくれた。ヤード先生有能。


 数学に強い上に商家だったヤード先生には数字にインパクトを持たせる大事さがよくわかるのか、すすんで協力してくれた。



 日々二次元についてしか考えてない人間だったのでグラフの細かい説明とか出来ないんだけど、他にちょっと知ってるやつも書けそうだったら書いてみよう。


「ねえ……これ、お金になるかなあ……」


「さ、さぁ……しかし大発見なのは確かかと……」


 私はため息をついた。





 私とヤード先生とカムイの三人で昔の資料を引っ張り出してグラフを作りまくった。


 折れ線グラフで交易の収支、生産率の増減、各村ごと、生産物ごと、生産物の売れ行き…………



 別の村ごとの縦棒のグラフも作る。


 売上ノルマとかを個人別に載せるやつね。


 人口や生産数や出産数をセットにした縦棒グラフとかも。



 別のグラフでは%で見る丸いやつ。


 ベルドリクス領が何にお金を使ってるのか、交易してる割合は、あとなんだろう……



 何が必要か分からないけど、とりあえずお祖父様とギルヴィードおじ様が「使える」って思えるグラフプレゼンとしてみてもらえばいいやと諦めた。





「勉強の成果でどうしてこうなるのだ」


 お祖父様とギルヴィードおじ様は頭を抱えていた。



「本当にマリア様は才智に溢れ…………」


 ヤード先生も困惑の表情だ。



「見やすくて便利だと思うのです。導入したらどうかなと思って三人で作りました」


「三人というとそこに居るマリアとヤードとカムイで良いんだな」


「はい」


「お前たちに緘口令を敷く」



 ファ!?




 驚く私に、図を睨みながら未だに厳しい表情でギルヴィードおじ様が言う


「あのなマリア。数って言うのは時に幻術だ。なんとなくそれっぽい数字が書いてあると騙せることもある」


 なるほど。確かに今キレ者のベルドリクス家でも見て驚愕した図もあるだろう。軍費とか。



「これはかなりの武器になる」


 お祖父様がめちゃくちゃ悪い顔をして笑ってらっしゃる。



 ヤード先生とか青い顔だ。


『これは凄いよ! 旦那様に報告しよう!』ってノリから『やべーもんに関わっちまった…………』って顔に変わってるもん。



 カムイは相変わらずキリッと立っている。『なんかよくわかんないけど姫はすごいのでこうなっても当たり前』って忠犬の顔だ。


 身体強化を得てからとりあえず生きていける強さを持ったからか、精神面で強くなった気がする。動じなくなったというか…………。



「昔言っていた物流の不穏な動き、これに直せば新しいことが見えるかもしれん」


「ああ! 家族内でずっとモヤモヤ言ってましたもんね」


 私はさして動じていない。隠しやすい知識だ。


 聖女とか実は血が繋がってないとかいうヤバいものよりはずっとマシだろう。



 ヤード先生は倒れそうだが秘密を共有するもの同士これから仲良くやろうぜ、兄弟。





「それで、マリアはこの図を描いて何と見た?」


「それなんですけど!」


 私は軍費がどんどん引かれてるのに物申した。


『聖女勇者』は戦争ゲームなのだ。その主軸が減らされてるのは困る。



「しかしもう十数年争いも起きていない。辺境にただいるだけではどうしても減らされてしまう」


「でもカーグランドは小国ながらも安全で交易がしやすい国として売ってるんですよね。そしてその安全を担っているベルドリクスの軍の扱いがこんななんて酷いです。ベルドリクスの売りは強い軍なのに、これじゃ強くなれません」


 お祖父様も思うところがあるのか考えるように黙る。



 代わりにとギルヴィードおじ様が話し出す。


「だからといってウチで増強出来るにも限度がある。さしてめぼしい名産もねえし、群を抜いて裕福なわけでもねえ」



 あるとすれば…………もう



「お祖父様、


そろそろ私、動き出そうと思うんです」


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