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020 金策と謎の少年

 あれから夜になって寝ようとするとラフィちゃんが現れるようになった。


 一緒に寝るのが気に入ったらしい。



 気に入るものが出来るなんて感性が生まれて私は嬉しいよ……よしよし


 ということで私のベッドには毎朝創造主ラフィエル様がいることになった。


 カムイは「姫という止まり木で翼を休める天使様のようで、これを絵画に出来ないのがとても残念でなりません」といつもの様子で慣れ、いつも通り支度を整えるようになってきた。





 今日も今日とて保護者(ギルヴィード)同伴の三人パーティでカムイレベル上げツアーである。


 転移で色んなところに飛んではご当地モンスターを倒して知見を広げている。


 ギルヴィードおじ様も遠い地方で生では初めて見るモンスターが多いらしく色々調べていた。



 カムイの鎧は結構重装備なので重かったが身体強化を身に付けたのでスキルを発動したら


「凄い……全く気になりません。身体が羽根のようです」


 と大事無い様で何よりだった。


 スキルはMP使わない継続発動技なのでとても便利だ。どんどんスキルレベルもあげてこうね。



「しかしながらこの魔龍一文字、俺も見知っては居るのですが……」


 あまり強くはない……という言葉をカムイは飲み込んでいるのだろうけど


「これ身体強化に目覚めると共鳴して強武器になるんだよ」


「えっ!?」


 ふふふ……制作者ならではの隠し強武器がわかってるのは有難い。



 乙女ゲームの『聖女勇者』は二周目三周目プレイを前提にして作ってるから初見殺しや隠しお助けグッズを沢山作ってる。


 周回のし易さは人気に直結するからな〜〜。


 女性向けなら特に。



 試しに身体強化して共鳴させて近くの木を切ってみると紙のようにスッ……と切れ、大きな音を立てて木は倒れた。


「さすが姫……武器の見立てまで出来るとは……」



「あれでおめえをおかしいと思わねえアイツも相当イってんな」


 私が外の世界から来たことを知っているギルヴィードおじ様は私を称えてキラキラした目をしながら刀をみているカムイを引いた目で眺める。


 な、なんかもうカムイは言い訳とかも面倒だし良いかなって……。




 気を取り直して。


「今まで戦ってもらってたし今後も戦ってはもらうつもりだけど、私はカムイに防御特化になってほしいんだよね」


「防御……成る程、だからこの様な鎧を俺に」


 左肩が特に大きく変形して腕が盾になるようなデザインがカムイの特徴なのだ。



「今は一応防御の薄い支援と魔導師が後衛にいるからね。他にもメンバーは増やしたいけど防御心許ない子が続きそうだから」


「はい! お任せください!」


 他の防御特化の騎士は寝返り条件厳しいから本当カムイが見つかって良かったよ……主を殺さず降伏させてその主に仲間になるよう説得するとか現実世界で出来るの?



「成る程。敵の攻撃を一身に引き受けてパーティが敵から受ける総ダメージを減少させる役割っつうことか」


 さすがギルヴィードおじ様、理解がお早い。


 ヒーラーの私がMP回復無しでフル稼働出来るからあんまりダメージ効率考えなくてもいけるのかもだけど、リアル戦闘になると何が起きるかわからないしタンクはやっぱ一人は欲しいよね。




 ギルヴィードおじ様は少しずつ熟考しながら見解を示していく。


「今よりも集団戦で輝く役回りだろうな。おめえ一人いるだけで兵の生存率もあがる。ダメージ計算すンなら率いる側になったほうが良いだろう。ちゃんと兵法も勉強しろよ」


 あともう一人くらい硬いのいれて交換しつつ回したいところだなとぶつぶつ言うギルヴィードおじ様にカムイと私は真っ青だ。


 カムイはもう従者教育と私に付き合って教養授業と今のようなレベリングもしていてスケジュールはみちみちだ。


 そこから更に兵法や役割勉強も入ってくるとなるとカムイのタイムスケジュールが完全にブラック企業のソレになってしまう。



「今でも大変なのにこれ以上カムイに詰め込ませる気ですか……!!」


「い、いえ、姫。お心遣い感謝致しますが、俺は姫のお力になるなら粉骨砕身努力するつもりです」


 ひえ~~~忠犬が社畜だよ〜〜!!







 11歳になった。


 省いていたが今までもちゃんとお誕生日は祝ってもらっている。



 お祖父様とお祖母様からは毎年山のようなプレゼントを貰う。


 オススメしてくれる方々が多いのはわかるんだけどさ、全部買わなくてもいいんだよ? って心配したら「こういうのは付き合いが大事なんだ」と返された。ほえー。お疲れ様です。



 ソフィア嬢もキチンとお祝いに来てくれる。


 ゼルギウスさんにとってのギルヴィードおじ様、ベルドリクス家の大切さををとても理解しているんだろう。


 王太子騒ぎが落ち着くまで結婚は出来ないだろうけど、こんなにゼルギウスさんを想ってるんだから早く結婚してあげてほしい。



「お誕生日おめでとうマリア!」


 笑顔で綺麗な花束を持ってきてくれる。


 うち必要最低限な飾りしかないから花瓶に出来る瓶ないんだよ。蔵とかにないかな。



 ソフィア嬢の関心は自分の未来がかかってるから当たり前だけど、王位争奪戦についてのこと。


 優秀な若手の人材がシグルド派からゼルギウス派に多く移ったと功績を褒められた。


 今後を考えるなら若手育成が一番大事だからね。あと純粋に古風なシグルド派閥より革新的なゼルギウス派閥に若い人間は引き込みやすかった。



「マリアの家庭教師で才覚を見極めるなんてベルドリクス伯爵家も粋な事をしますわ」


「本当にお祖父様は仕事がお出来になるの」


「その通りね! ゼルギウス様の味方で心強いわ」


 ソフィア嬢はニコニコと上機嫌みたいだ。



「シグルド陣営は今は結構堅実ね……王妃様が流石に心配して昔からの世話係だった爺を呼び戻したみたいですの」


 堅実にされるのが一番嫌な手ではある。平民人気が高かろうが結局決めるのは貴族だ。


 貴族を多く取り込んでいるシグルド派閥が馬鹿をやらかさないとこちらとしては攻め手がない。



(そう思うと、ゲームのシグルドやシグルド派閥の貴族たちが馬鹿っていう設定は有難かったな)


 馬鹿じゃなかったらこんなことする手間もなかったんだけど……というツッコミは野暮だ。



「あと――シグルド陣営からのスパイかもしれないって方が、使える方なのに宙ぶらりんにされてて可哀想でしたわ」


「まあかわいそう……」


 やはり証拠や情報がないと逆派閥は厳しいですよね……。


 なんとも膠着状態が続いてそうだ。


 堅実になってからは情報も出回らなくなったし、決め手に欠けるよなあ。



 それからソフィア嬢とはゼルギウス陣営の動きやゼルギウスさんの惚気話を聞いて終わった。







 王太子問題もあるけど


「まだ余裕はありますけど、そろそろ自由に出来るお金がなくなってきました」


「誰かさんがパーっと散財してたからな」


「全部必要経費です!」



 カムイはお茶やお菓子のお代わりを持って来ていて留守だ。聞いたら恐縮してしまうだろう。


「普通あんな豪勢に家庭教師代使うヤツいねえよ」


 と言いつつもその姪の家庭教師代で人材確保してたのはおじ様じゃないですか。



 カムイ確保代とカムイの装備と若手を引き込む為の家庭教師による選別……全部明日への投資でありお金には代えられない有益なものだ。



「まあ……アレは破格でしたね……」


 苦笑するのはヤード先生。



 魔法考古学が好きなヤード先生はギルヴィードおじ様の研究の助手を任されていた。


 自分にはサッパリわからないが私の力を調べていて興味深い点が色々出てきたらしい。



 最近出来る部下が増えて暇が増えたギルヴィードおじ様は私の魔法の解析に力を入れているようだ。


 誰とは言わず『レアな魔法のデータが出てきた』と、ヤード先生に見せていいところだけ助手として使っているらしい。




「そろそろ金策も考えたいんですけどね〜」


 今のところ一番売れそうなのはヤード先生始め先生方が才血注ぎ込んで作った45分授業の教材。


 塾などでよくある先生が授業をするだけの録画映像のDVD的なものである。


 貴族や富裕層の平民にはバカ売れすると思うんだ。家庭教師代浮くし。



「ただ記録媒体の魔導具をコストを抑えて作れるような人が……」


「記録媒体はかなり貴重だからな。そんなんできたらそっちの方が儲かるぞ」




 魔導具や魔法薬のスペシャリストは知ってる。


 攻略キャラクターに戦争兵器を作る工作兵ポジションの人がいるのだ。


(でもその人をシグルド派閥に取られちゃってるんだよね~~~~!!)



 家庭教師の先生兼、優秀な文官の調べにより今いるところをつきとめてもらい、引き込めないかちょっと粉をかけてみた。


 そしたらやっぱりと言うか「貴女の依頼を受けるのになんのメリットも感じませんネ」と返ってきて、くそお〜〜って感じである。




 彼の名前はシャルル=カルーセル。


 モノリスという国にいる奇人で奇才の発明家だ。



 彼を仲間にするにはとにかく貢ぐ。


 レアアイテムとか、珍しいものとか、素材になりそうなものとか。


 好感度が高くなると「貴女といるともっと珍しいものが見れそうデス❤︎」と仲間になってくれる。



 トリッキーな奇人変人なので、どこにスイッチがあるかわからなくて「今イメージが貴女から降りてきまシタ」とか言い出して襲ってきたり、「貴女のタメに作りまシタ❤︎」とか言って大人のオモチャや媚薬などオンパレードで出してくる危ないキャラだ。


 正直防ぎ方がわからないからあんまり仲間にしたくないんだけど、攻城兵器はめちゃコスパがいい。



 RPGパーティの方では完全に賑やかしでフルオートでは何をするかわからない。


 ランダム要素の強いネタキャラだ。


 だからパーティとしては使い物にはならなそうだけど、唯一無二の個性を持った汎用性に富んだ逸材である。


 現実いたら猫型ロボット並のお役立ちなんだろうけど、デメリットが大きすぎる……。




 あと年表的にそろそろフリーになるはずの攻略キャラもお金が必要……無い無い尽くしで悲しくなるよ……。


 金……金策かあ……聖女の力を使わずにと言われたら私なんかただの幼女だ。


 今「金策を考えろ!」言われてもまるででてこない。




 この世界はヒロインが不自由なく暮らせるよう快適に作られてる。


 シャンプーやコンディショナー、美容品も充実しているし、大人の女性向けゲームの世界はいつでもおっ始められるように女性特有のモノがこない。


 なので出血の貧血やホルモンバランスの乱れによるメンタル疲れもない。


 それだけでかなり快適だ。



 それに加えて、衣食住は充実している。争いや小競り合い、王の崩御などはたまにあるが、それで生活水準が下がるほどのことは起きていない。


 新しい料理やお菓子も出尽くしている。


 識字率も高く、女性に人気の王子様との夢物語本もあったりして、女性の殆どは物語の聖女が憧れでヒロインはこの国の女性の羨望そのものというヒロインに優しい世界。


 王子様との恋、玉の輿が憧れの的という固定概念も存在している。


 感覚をだいぶ日本の乙女オタクに寄せている。



 戦争ゲームといえど、乙女ゲームは乙女の為にある世界であるべきなのだ。





(だいぶ本気で万策尽きてるから、もう一回一万で治癒とか無免医師でもやりたい気分……)


 万が一情報が漏れたら大陸中が大パニックになる。


 そこまでして金を稼がなきゃいけないわけでもない。


(ギリギリ使ってる人がいるまだなんとか安全な魔法は、バフデバフ、バリアにヘイト操作……)



 ……


 …………


 ……ゼルガリオンが当たって本当に良かった……



 お祖父様からプレゼントを貰うのも、


 カムイを買い取るのも、装備代も


 家庭教師のお金だって全部ゼルガリオンが買ってくれたようなもんだ。


 私はゼルガリオンに貢がれていた……



 ありがとう、ゼルガリオン……!








 金のタネが見つからないなら探すしかないよね!



「私、ベルドリクス領って行ったことないんですけど、どんなところなんですか?」


「なんだ次は領を荒らす気か?」


「人聞きの悪いこと言わないでください!」



 ベルドリクス領は一応私のホームグラウンドになる。


 知っておくに越したことはないだろう。


 内政でなにか金になるものが見つかるかもしれないし!





 日本だって小さい国と言われてるけど(山がいっぱいのせいで住めるところが少ないから小さいっていう話だけど)47も都道府県がある。


 なのでカーグランドも42も貴族家があるのだ。(土地無し名誉貴族も含む)


 それに親族が入るので更にややこしい。



 今現在必要とされてる地理の勉強は、日本でいうと天皇陛下と住んでる首都と都道府県と都道府県知事、県庁所在地とその親族とついでに名産を覚えるみたいな感じだ。


 全大陸で数千……下手したら万の貴族家が居て42は少ない方なんだろう。



 自分の県なら更に市や市長、地名やどんな土地かなども覚えたりしなければ政務が出来ない。


 そう考えると日本は高等教育だなあ。


 まあベルドリクス家は42の内の一貴族であり、県知事にあたる領主はブリザベイト=ベルドリクスお祖父様。ベルドリクス領、そのおよそ37町村。







「ベルドリクス領といえばブリザベイト伯爵様の命でこの前視察に行ったよ」


 そんなこともしてんのかヤード先生。



「色んな町や村を覗いて報告する役目だったんだけどね、一つなんだか不思議な町があって……」


「不思議な町?」


「グリッセンっていう北部の町なんだけど、最近町長が変わったらしくてね、町民がえらくその新しい町長を褒めているんだ」


「えっ? 良いことじゃないですか」


「でもなんだか、不気味なんだよ。なにかに操られているみたいにみんな幸せそうに町長を褒めるんだ」



 なにそれこわい


「なんか怪談めいてきたからやめてもらって良いですか」


 私はホラー系はてんで駄目なのだ。


「前の町長も喜んで補佐をしているらしくて、とても幸せそうだったんだ」



 私がやめてといってるのにヤード先生は気にせず続けた。


「そしたらいつのまにか僕の隣に黒髪で、眼帯をした金色の目の男の子が立っていて」


「えっ その話死なない!? 死なないですよね!?」



「いや僕今普通に生きてるから!!」


 怯える私を面白そうに笑うヤード先生


 君は変なところで怖がるねというが、ホラーは苦手なんだよ!



「その男の子は『お兄さんはこの町のこと報告するの?』って聞いてきて」


「ひえぇええええ」


「怖い話じゃないから!『そうだよ。それが仕事だからね』って返したら笑って去ってったんだけど、なんか妙に印象に残って……」



 怯えている私の横でギルヴィードおじ様が考え込むような仕草をしていた。


「……妙に求心力の強え町長か。ヘンな気起こさねえヤツなら良いが」



 黒髪に金目の眼帯少年か……そんなキャラは作らなかった……っていうかこのゲーム最初は大人向けだったからショタは作れなかったんだよね。


 ソシャゲになってキャラの層を増やすって事で何人か案が出てたけどその中にもそんなショタ居なかった。



 ……なんか怖くなってきた……



 ………………今日もラフィちゃん、来てくれるかな。一緒に寝てほしい。


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