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017 薄い本と面倒な貴族社会

 

 カムイの防具を作る為、お祖父様御用達の工房に来ていた。どんどんお金が無くなるよ!


 ゼルガリオンを生み出したお嬢様がまた変なオーダメイドをもってきたと話題になっているらしいが、残念ながら護衛(仮)の防具なだけなので過度な期待はしないでほしい。


 武者鎧に似せた作りだから本場に頼んだ方が良いか聞いたんだけど、本場とはちょっと変わるが作らせて欲しいと言われ、任せて見ることにした。



 ゼルガリオンは半年くらい前から活動を停止したけれど、根強いファンがおり、まだ主力商品と言って差し障りなかった。


 確かにゼルガリオンは正義に溢れる裕福な男と支援魔法が出来る聖女、派手なアクション効果を演出してくれる凄腕魔導士が協力しないと出来ないので、実質もう代わりは現れないだろう。つまり原点にして頂点。レジェンドだ。



 なんかお伽話のようなものや、英雄譚みたいなものなど、私のあずかり知らぬところで沢山出ていた。


 私は近所の本屋を覘き、一棚は軽くあるだろうか……ゼルガリオン関連の書籍をざっと見て回った。


(しかもほぼバレてるけど自国の王子なんて言ったら盛り上がるのも無理は……ん?)



 これは………………



 私は一冊の薄い本を手に取った。


 見覚えがあるサイズの本を見ていると書店員のおねえさんが笑顔で声をかけてきた。


「お嬢ちゃん向けのご本はこっちにあるわよ〜」


 と、ササッと隠した。



 幼女には見せたくない本ということだ。


 まさか、アレはど……どう……同人誌……ファンが趣味で作るファンアート本という類のものでは……?



(えっ、ゼルガリオンがゼルギウスさんってバレてるし、ゼルギウスさんと言ったら仲良しの……)


 アッ これはこれ以上考えたらヤバイやつだ。



「はい。ありがとうございます」


 私はお姉さんに誘導されるまま児童書ゼルガリオンコーナーに向かい、そして店を出た。



 あんなものまで出回ってきているのか……凄い世界を知ってしまった。



 私は全ての創作物に向き不向きはあるが嫌悪意識はない。


 美少女も大好きだし! 二次元エロも大好きだし! 乙女ゲームも大好きだし! BLも大好きだ!


 もちろん百合だって大好きだ。総てを慈愛に満ちた目でみれる。YesロリータNoタッチ!



 グロやホラーがダメなのが本当に悔やまれる……。


 ホラー作品は良く練られたシナリオが多いのであらすじだけ聞いては何故見れないのかと悔しんだ。


 どうしても見たくて試しにと映画を観たら5分もしないで映画館を出た。しかし未だにその5分がトラウマだ。






 我が社にも結構腐女子はいた。


 ゲーム会社〈スターズソフト〉は比較的自由な会社なので実は別ブランドで試しにBLゲーも作ったこともある。BLはカップリングが難しくてどうにも売上はイマイチだったけど……。


(主人公受に特化するのが一番固いけどそうすると他のユーザーは去ってくし、だからと言ってリバありの総カップリングとかやると固定派が一切買わなくなりマニアックな層しか買ってくれない……難しい)



『聖女勇者』に火が付いた原因も、とあるカップリングの腐女子人気だったりするので、私は有難い存在だと思っている。(自社作品の同人誌とか、会社にもよるがウチは結構みんな喜んで買って読んだりしてた)


 ただ……ゼルギウスさんとギルヴィードおじ様の波が来てるとは思わなかったな。



(それにしても、誰が作り始めたんだろう?)



 乙女の趣味は全国共通、世界をも越え愛されるのだな……。








 話は逸れたがカムイの刀も用意してあげたい。


 使用人にヒューガまでお使いを頼む。



「……カムイに刀……ですか?」


 使用人は怪訝そうな顔で私を見た。



「そうなの。今持ってるのはかなり安いなまくら刀だし、買ってあげないとちゃんとしたの使わなそうだから」


 身体強化出来た褒美として一式渡そうと思うの。と私が嬉しそうに話していると使用人は更に困惑した表情を濃くしながらも「かしこまりました」と引き受けてくれた。



 原作で一番性能良い刀は確か〜……〈魔龍一文字〉そうそうコレコレ。


「これをお願いします。これお金ね、余ったお金はチップとしてあげるわ」


「はぁ……」


 私はニコニコと満足して送り出した。











 家庭教師がついてマナーが多様化してきた。


 カムイがいるのでダンスの練習はカムイと組まされるんだけど、最初はリズムに合わせて回るだけだったのがドンドン足のステップも付いてきてこんがらがってくる。


 あとそもそもダンスの習慣がないヒューガのカムイが「ひ、姫とダンスなど……」ってカチコチで害意無く足を踏むのでバリアが適用されずとても痛いのだがそのたび真っ青になるので大丈夫だよと笑うしかない。


 チートも万能じゃないんだなあ……。



 カムイは他に使用人特訓もしてるらしく、私にお茶を淹れられるようになったり、徐々に成果を出していた。


 私が「ヒューガの緑茶も好きなの」と言うと嬉しそうにそっちも淹れてくれた。



『聖女勇者』でカムイというと純和風なヒューガ国出身で捕まえて仲間にしても私服も和服だったので和服というイメージしかない。


 ので、洋風の使用人服は新鮮だった。まだ見習いなので執事服は着れないけど、似合うんだろうなあ。



 そんな想像をして笑顔でいた私をお茶で喜んでいると勘違いし


「姫が好きなら他のヒューガ茶も淹れられる様に頑張ります」


 と言ってくれて、頭を撫でたい気持ちを抑えるのが大変だった。



 カムイの方が4歳くらい年上なわけだけど実年齢カムイより全然上だから母性が刺激されて頭を撫でまわしたくなる。おばちゃん化しないように気を付けないと……。


 勉強に使用人に戦闘に……ホント頑張ってるねぇ……ホロリ。


 って早速近所のおばちゃんみたいなことを考えてしまった。



 笑顔でお茶のお代わりを用意しているカムイを眺めながら、本当にあのはした金でこんなに良い子がゲット出来たなんて……ヤマシロ領に感謝。潰れろ。



 取引でもらった米もカムイが料理してくれてる。


 あの家では貴族でも料理をしたらしい。


 まだ夕食に出せるレベルではないので使用人たちで吟味しているが、なかなか好評のようだ。


 お稽古に頑張る私にもおにぎりとか差し入れしてほしい~~。



 その後、マナーや教養は毎日の積み重ねだからと毎日ちょこちょこと練習がされていった。


 それと同じく文字書きや数学、貴族図や名前暗記などが始まった……



「とりあえず歳の近い子がこのリストで、仲良くしたほうがいい子と、しない方がいい子と……」


 私は指を折って覚えていくが、名前だけで顔も一致せずわかるわけはなかった。とにかく領名と家族構成、名前を詰め込んでいく。



「これはカーグランドの貴族だけですから、覚えられたら次は他国の主要な貴族を教えますね」


 貴族って面倒だなあ〜〜!!



 因みに文字はこの世界観に似合わず英語混じりの日本語だ。元の世界は日本の乙女ゲームなので当然だろう。


 それだけは感謝だが全部カタカナ名なので非常に覚えづらい。






 時々遊びにやってきてくださるゼルギウスさんの婚約者、ソフィア嬢がよく最近の王宮の様子を教えてくれる。


 ソフィア嬢、私が聖女だとも知らないのに、ただの何もない幼児の私を「ゼルギウスさんと仲良いから!」ってだけでよく遊びに来てくれるなんていい子だよな……。



「シグルド殿下ったら見苦しい真似はもうおよしになれば良いのに」


 苛烈だけど。



 シグルド派閥とゼルギウス派閥というのはやっぱりバチバチ始まってるそうだ。


 しかし宙ぶらりんな者も多く、まだ派閥が定まりきっていない。


 ケチがついたとはいえ元々決定していた表面上でもシグルドについていた者はかなり多い、もっと前ならまだしも今王太子から外されたこのタイミングで動くのはどっちの王子から見ても態勢が悪いとのことで、シグルド派から離れたくても離れられられないものもいる。


 ゼルギウスさんは別派閥の人間も許すだろうがシグルドは許さないだろう。


 万が一ゼルギウス派閥に行ってシグルドに勝たれたら終わりだ。



 ゼルギウスさんは今まで派閥に無頓着だったので、一からの派閥作り。


 しかし昔から応援していたゼルギウス信者が周りを固めている状態で、今入っても古参と新参の差は埋められないだろう。美味しい思いが出来るかはわからない。


 どっちにも可愛がられないと覚悟を決めて中立に動くものもいるらしいが、そういうところは切り捨てられない産業のある領を持ってるところだったりして、色んな人の思考が交差している。



 『聖女勇者』(原作ゲーム)と全っ然関係無いけどこの問題をどうにかしないといけないのか〜〜!!



 シグルド陣営って『王様呪い殺してゼルギウス毒殺してシグルドの下で甘い汁すするぜヒャッハー!!』みたいな世紀末な奴らばっかりなのに、なんでまだ後継者争いさせるんだろう。


 王様が見る目ないのか無能なのか、と私の中の王様の評価も下がった。



 いや〜〜しかし軽い御輿は担ぎやすいとはよく言ったものだけど、カーグランドはこれで戦争起きてアタフタと全員潰されるわけだな〜そりゃあ簡単に侵攻されて崩壊されちゃうよ……。


 自業自得というかなんというか……。



「どう考えてもシグルド殿下に王座を渡すわけには行きませんね……」


 シグルドも子供っぽすぎるけど、周りもクソすぎる……カーグランドを考えてる真面目な人がいるのだろうか。


「そう! なんですの!! マリア、貴方ならわかってくれると思いましたわ!」


 手を取りウルウルと見つめてくるソフィア嬢。


 可愛いのになあ……。いや、国母になる人はこれくらい強い方がいいのかもしれない。



「シグルド殿下はゼルギウス殿下のギルヴィードおじ様みたいな親友というか……シグルド殿下を思いやるような関係の方はいらっしゃらないのですか?」


 見ていてシグルド派閥はシグルドの真似っこ暴走を止める気配が見えない。


 全肯定してごますってる人しかいないんだろうか。



「それが、それを作る為にもう正妻もいるのに配下の娘4人が婚約者になったそうですわ。その兄や親族が周りを固め始めているようですね」


 もう王様気分かしら、と汚いものを見るかのように吐き捨てるソフィア嬢。



 婚約すれば、親族になるし裏切りは防げるよね。後で傀儡にされそうだけど……。


 多分だけど、『真似っこシグルド』はゼルギウスの婚約者として家まで説得して今もこうやって精力的にゼルギウスを応援するソフィア嬢みたいな婚約者を求めてるんだろう。いないよ……。




 攻略キャラ集めにばっかり目がいってたけど、カーグランドのモブ貴族の中でも使える文官や軍をまとめられる将軍を見繕わないといけない。


 ゼルギウス陣営にも日和見みたいな我が身可愛さで付いてるのもいるだろうし、どんな人格か、能力か、サッパリわからない。


 ゲームみたいにステータス能力でサッサっと仕分けできればいいけど現実それもできないし……階級もあるから無能でも役職につけないといけなかったり、有能でもシグルド陣営にいる場合も……でもそもそも私には配属を変える発言権もなくて…………



 あ"〜〜!!



 貴族の世界は本当にめんどくさいな。


 ギルヴィードおじ様がサンダー放ったらみんな死ぬのに……とか争い嫌いな私がそんな風にやさぐれるほど面倒くさい世界だった。



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