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011 ブリザベイト=ベルドリクス 

※ブリザベイトお祖父様側になります。

 ◇


「父上、失礼します」


 マリアからして祖父、ブリザベイト=ベルドリクスは息子のギルヴィードを執務室に呼び、報告を聞く。


 執務室に入った時からギルヴィードは音遮断のバリアを張ってきたので、ある程度は好きに話せる。


 親ながら使い勝手の良い息子に育ってくれた、と妻と共に誇りに思っている。



 カーグランド王とブリザベイトは大分歳が離れており、青年時代は王に近付ける隙がなかなか無かった。


 王族と歳が近いのはかなりのアドバンテージをもつ。


 王妃がご懐妊と聞けばその子供の側近にさせるために貴族の中でベビーラッシュが始まる。



 その争奪戦にはまだ年若かったブリザベイトとシルメリアも参戦した。


 生まれた王子と同じ男子が生まれ、シルメリアは子が生まれた喜びより「やりきった」というガッツポーズをしてみせた。


 その時が一番彼女と結婚して良かったと感じたと言う話はギルヴィードにはしてはいけないだろう。


 いや、案外「俺もそんな結婚がしたい」と言うかもしれない。




 シルメリアは子供嫌いながらも頑張ってギルヴィードを育てた。


 家風なのか、母は賢い子供が好きと理解したのか、大分大人びて育った。


 抑圧した背伸びをして歪まなかったのはゼルギウス殿下のおかげだろう。


 ギルヴィードは第二王子ではあるがゼルギウス殿下の一番のお気に入りとなり、ベルドリクス家の家格も上がり、ブリザベイトに対しての陛下の覚えも良くなった。



 ギルヴィードは慎重で、馬鹿はしないし巻き込まれない立ち回りも出来る。


 跡継ぎとしてなんの迷いもなく、むしろ予備を産むのは争いを産むだけ。シルメリアももう子供を育てたくないというのでもう子供は作らなかった。




 そんなギルヴィードが持ってきた幼児マリア。


 世界にまたとない能力を持ちながら未だに誰にも見つかっていないという。


 何かのスパイか何かか? とも思ったがこの小国の鉱山もない変哲もない土地しか持たぬ、どちらかというと軍人貴族で通っているベルドリクス家にくるメリットなど何一つない。



 手品や嘘を付いているのなら殺そうかと思っていたが、仕掛けも出来ない状況で本当に直してみせた。


 刺客でもなんでも囲う価値があると判断して伯爵家の人間にすることに決めた。



 職業柄、嘘や誤魔化しをしているものは目でわかる。


 しかしマリアは明らかに狼狽して、恐縮しきっていた。



 ギルヴィードからの報告によると異世界から飛ばされてこの世界に辿り着き、魔物に襲われていたところにギルヴィードと殿下が出くわしたらしい。


 異世界から聖女や勇者を召喚する儀は確かに伝わっている。確かカーグランドにもあったはずだ。


 しかしそう簡単に成功するものではない、教会は何度も試しているとは聞くが何百年と成功した話は聞かない。


 そもそもその場合祭壇から出てくると伝えられている。



 そんな聖女が野良で居ると分かったら……




 大戦争だ。




 全ての国が聖女を取り合う。




 カーグランドも唯では済まない。


 むしろこの聖女マリアをカーグランドが所有権を主張してもこの小国が守りきれるのか?



 これは国事になる。


 いつかこの大陸は荒れる。





 しかし今陛下の負担を増やすのは良くない。


 陛下のお身体が少しずつ悪くなってきている。


 そして今目下の火種は後継者だ。



 第一王子のシグルド王子でほぼ確定だったのだが、第二王子ゼルギウス王子の活躍が目覚しい。


 そしてドンと構えていれば王座が転がってくるはずのシグルド王子がゼルギウス王子に嫉妬で病的なほど執着し、株を下げまくっている。




 正直陛下も悩み始めている。


 しかし決定を変えるのも良くない。いっそシグルドを殺すか? とも思ったようだが、父としての情もあり決断ができないようだ。



 ブリザベイトが国王の立場だったら絶対にシグルドを殺している。


 つくづくギルヴィードが出来の良い息子で良かった。




 ギルヴィードはマリアの件もあってか


「シグルドではこれから戦火に巻き込まれるカーグランドを守れねえ」


 と親友を王に引きずり上げる覚悟を決めたようで、ブリザベイトに協力を求めた。


 確かに、もう平和なカーグランドでいられる保証は何も無くなった。それが最善手だろう。


 平和に王をゼルギウスにするにはカーグランド王には長生きしてもらわねばならない。




 そんなお家事情により聖女は我が家でひっそりと育て、数年後『カーグランドから生まれた奇跡の聖女』としてなんとか政敵を黙らせるつもりだ。


 回復魔法を交渉などにもつかえたら万々歳だ。





 そんな頭の痛いお荷物的な気持ちでしかマリアを見ていなかったのだが、共に暮らしてみるとなかなかに頭が良い。


 発言もまだまだ甘いが成人ほどの考えがある。


 ギルヴィードに習ったのか歴史も大まかには習復しており、貴族の関係には疎いが地理にも強く9歳児にしたら神童と言って障りない。




 シルメリアも孫という社交界の強みはできるものの最初は大分渋っていた。


 平民を貴族にするなど子供を相手にするより面倒だろう。


 しかし初めての夕食ではテーブルマナーも自然にこなし、ナイフとフォークも正しく使っていた。


 異世界でもそこそこの家の者だったのかもしれない。



 シルメリアはやる気になり貴族の振る舞いもどんどん要求をあげていっているがスイスイとついて行くのが楽しくて仕方がないらしい。


 なので『年相応の子供らしい振る舞いの場合』も一緒に教えているそうだ。



 マリアは察する能力が著しく高く、シルメリアが「こうしたいな」と思ったことに素早く合わせることが出来ると初めてのお茶会に二人で行ったときの様子を大喜びで語ってきた。


 しかし舌戦や貴族特有の言葉遊び(悪口の応酬)は一切才能がないとのことで、本人も酷く嫌がるらしく残念そうにしていた。


 シルメリアにはこの平民をうちの孫として育てるとしか言っていない。


 それだけで了承する妻との信頼関係が築けていることは有難いが、事が起きる前には説明するつもりだ。



 これから聖女になるマリアを考えると、舌戦ができる強そうな令嬢よりは慈愛溢れる聖女像を描いた方が良いだろう。


 そういう方向に育てる様シルメリアには指示を出した。




 淑女として育てながらも聖女としての能力を上げる為、事情の知っているギルヴィードとゼルギウスを使える様手を回したのだが


「名付けて『仮面ヒーロー・ゼルガリオン大作戦』です! 絶対流行る!」


 と意味のわからない提案をし出した。


 その意味のわからない提案は本当に流行り、人々に神や精霊よりもっと身近な憧れの対象、希望の象徴を作らせた。



 更にその偶像を助けられた皆が買い求め、男子達はその姿に憧れ、確かな社会現象になっていた。


 仮面を付けて正体を隠しているが明らかにゼルギウス殿下だとわかるソレはゼルギウス殿下への憧れへと直結した。


 ゼルギウス直下の騎士になりたいと名指しで願う青年平民が続出する異例の事態に軍部に詳しい貴族は特にゼルギウスへの見方が見直されている。



 細かいアレコレはギルヴィードが手伝ったらしいが、恐ろしい発想力だ。


 本人は一切を否定して正体を隠しているのに完全に国全体がゼルギウスムード、他国からも正体の噂を聞いた見物人がカーグランドに観光に来る始末。


 申し訳程度にあった名産物にゼルガリオンが追加され、それが大量に売れている。


 平和的にカーグランドを栄えさせながらゼルギウスを自然に王にしようとしている。



 これが聖女の力なのか。



 ゼルガリオンの人形や書籍などを作ったベルドリクス伯爵家の資産も軽く一代分は増えた。


「流石にこれを子供がやったというのは不味いしギルヴィードはゼルギウスと近すぎるのでお祖父様が仕掛け人としてほしい」と言われたときは驚いた。


 功名心など一切見せず、明らかに私を立てた選択をした。


 マリアの狙いは他にもあったのか?



 人の功績を取るのは本意ではないが確かにマリアが世に出るのは困る。


 ブリザベイトは選択肢無しに『冷徹な軍人貴族が孫のマリアを可愛がりオモチャを作ったら爆売れした』孫馬鹿お祖父様になってしまったのだ。


 それから孫が可愛い貴族の年配方に暖かい目で話しかけられるようになってしまった。


 しかし孫馬鹿というのは親交において非常に使い勝手が良い。


 まだ若い祖父に入るブリザベイトからみたら付き合う年齢層がグッと上がり、社交界で付き合うメンツのグレードが上がった。


「これが孫に人気でな、ブリザベイト殿も是非」


 と勧められたら興味を示したフリをして買わねばならない。








 執務室に入ってきたギルヴィードは耐えきれず質問をする。


「……父上、このプレゼントの山は」


 必要充分の機能美を至高とするブリザベイトの執務室に明らかに似合わない可愛らしいラッピングの数々。


「……名のある方々からの孫へのプレゼントのおすすめ品だ。マリアに渡しておけ」



 世間の目がある以上ブリザベイトはこれから一生「かわいい孫のマリア」を可愛がり守らねばならない。


 まさか、ブリザベイトは嵌められのか、とはっとした。






 夕食になり、マリアが見たことのない華やかな服を着てやってきた。


「お、お祖父様、たくさんのプレゼントありがとうございました。き、着てみたのですが……どうでしょう? 似合いますか?」


 目には企みもない嬉しさが混じった表情が映っている。



 これが計算でないとするならば




 ……これが聖女の力か。



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