世界一いらないお友達
どうゆう原理なのかは分からないが、視界に広がっていたリビングから視点が変わり、自宅の風呂場が視界に映る。
どうやらこの世界は何でもありらしい。
そこには少女のいたいけな裸体が、湯気に隠れながらうっすらと見える。
湯気!そこをどけ!
水の粒子にいくら愚痴を言ってもどけてくれる様子はない。
どうせなら、湯気になりたいと願うべきだったな。
失態だ、この失敗を次に生かさねば。
失敗を悔やんだ刹那。
悲鳴が家中を響かせた。
ま、まさかバレたのだろうか。
その後、彼女が体にタオルを巻いて出てきて正面から拳が飛来してきたのは言うまでもない、いい右ストレートだった。
あの一件から数分もしないうちに俺は1人で商店街を歩いている。
というのも、彼女の着替えを調達している訳で、風邪をひかないうちに家に帰らなければならない。
家を出ていく際、俺を見る彼女の目はまるでミジンコのフンを見ているような目をしていたな。
早くも前科持ちになった訳だが、一体なぜ見えていたのだろうか。ただ単に石の性能が悪かったのだろうか。そうなれば、改善の余地がありそうだな。
その後、知り合いが経営しているいいとも言えない悪いとも言えないよくわからん洋服店に入って彼女に似合いそうな服を手当り次第手に取る。
そういえば彼女の名前を聞いていないし、俺の名前も言っていない。
今思えば、名前も知らない女性の入浴シーンを見ようとしていた俺という自分の屈強な精神力はまさに称えるに等しい。
購入しようと店員に持っていこうとしたらなんと、そこにはショウの姿があった。
今日はやけに会うな、こいつの本業はストーカーに違いない。
しかし、ショウは制服の姿だ。
「やぁ、また会ったな。実は俺ここで働いてるんだよ」
錬金術師としての才能があるくせに何故ここに働いているのだろうか。
「ショウ、お前の本業の錬金術師はどうしたんだ?」
「?、あぁ、あれね、やめた」
流石に言葉を失った。
こいつの脳内はどうなっているのだろうか、俺以上に頭がぶっ飛んでやがる。
こいつはチャラいくせに何でもこなせるので相当むかつく。
俺の拳でお前の顔を物理的に整形してやろうか?お前顔ならいくらでも殴っていられる。
まあ、茶番はさせおいて。さっさと買って家に帰ろう。
「これ、会計してくれ。」
「OK、ん?これって女物じゃねえか、いつから新品の下着を嗅ぐ性癖スキルなんて習得したんだ?」
殴っていいよな。いいですよね!
「まぁ、お前は昔からこんなんだから驚きはしないが、まぁ、納得したわ」
納得すんなよ。俺はお前みたいにパンツを頭からかぶりながら街を散策する程の度胸は持ち合わせてない。
「いいから、会計してくれ」
服を買うだけでこんなに長くなるなんて、もう疲労困憊な状態だ。このまま無事に家に付けばいいのだが。
ひとつ、ため息をつきながら外に出た。
掲示板に何やら人だかりができていた。
一体、なんなんだ、もう勘弁してくれ。放置されて腐ってしまったイワシのような目をして、その掲示板に足を運ばせた。
放置されて腐ったイワシの脅威を君たちは知らんだろう。アレはやばい。
しかし、その掲示板の内容に目の腐敗が、驚異的に進むことになる。
掲示物の見出しにこう書かれてあった。
「衝撃!イカれた錬金術師、ついに少女に手を出す。ショウ氏の証言により発覚!!!」
手の荷物が、床に落ちた。
お父さん、お母さん。
僕、この街で知らない人はいないほどの知名度を得ることができました。