パズル
みなさん。おはようございますこんにちは、そしてこんばんは。
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す!
もう、何度も同じことを言ってるけど、ここは前書きでっす!
本編を読みたい人はサクッ、と飛ばしてね。
「エラーがやべぇ!」
いきなり変なこと言っててごめんね。これ間宮冬弥が買った
とあるゲームだんだけど、とにかくアプリケーションエラーでとまるとまる。
なので今は放置してるそうでっす! アップデートが来たら再開するとか言ったけど
近々新作ゲームを買うからしばらくは寝かすかもね、あははっ!
さて、今回で凪紗ちゃんのお話は終わりです。そうこれ、最終話なのです。
まぁ、終わりといってもまた執筆するかもないけどね。
では、最終話をお楽しみください。それではっ!
◆
「……受け取らないっていったら怒る?」
テーブルに置いたお金を前に刹那くんは言った。
「怒りませんけど、受け取ってもらうまでわたしは引き下がりません」
「……わかった。じゃあ受け取る。パイのお金だけ」
「刹那くん?」
少しだけ、凄みを聞かせた言葉の弾丸を刹那くんに放つ。
「……わかった」
観念したのか刹那くんはお札一枚と硬貨三枚を手に取りサイフにしまった。
(二つ折りの長財布なんだ。革かな?)
そんな事を思って刹那くんの財布を見てしまっていた。
「ん、もしかしてサイフに何か付いてる?」
「あ、いや……なんか様になってるなって思って」
「まあね。俺も二十歳を超えてるからね。いつまでもマジックテープのサイフや二つ折りのコンパクトサイフは使えないよ」
「あはは」
う〜ん、想像できないなぁ刹那くんがマジックテープのサイフを使ってるところは。そんなわたしは二つ折りのパステルカラーのコンパクトサイフ。
わたしも成人したら革の財布や長財布を持つのかな? 社会人のわたしって……どうなってるんだろうな?
「あ、意外とおいしいね。抹茶ラテって」
「ホントだ。なんか甘さすっきりでいい感じですね」
そんな会話をして、時間を過ごしていったのだった。
◆
「あの……刹那くん」
「ん? なに」
抹茶パイを食べ終わり、抹茶ラテもほどよく飲み、残り少なくなったときにわたしは刹那くんに切り出した。
「相談があるんですけど」
うつむき暖かいカップをぎゅっと握る。
「……相談。いいよ。なに」
声からして刹那くんの顔が引き締まったのがわかった。真剣に聞いてくれるモードに入ったんだ。
相談は昨日からとても思っている不安や心配事。自分にやれるのだろうかと思う心許ない苦悩。……これは『怖い』と言っても……ううん『恐怖』と言ってもいい。心が騒ぎ考えるとドキドキする。そしてその恐怖はもうすでに来週……ううん。明日の月曜日に迫っている。不安定な心がもっと安定しなくなる。心が重い。
「その……あの……えっと……」
「うん、ゆっくりでいいよ。自分のタイミングで」
「はい。ありがとうございます」
刹那くんの気遣いが暖かい……
「わたし、騎士長になるんです……あ、いや、なったんです。騎士長に」
「騎士長?」
「あ、すいません。その部活で言うところの部長なんですけど」
「ああ、なるほど部長さんか。でも遅くない? 普通なら六月か七月あたりに部長の交代とかするんじゃないの?」
「はいその、ホントならそうなんですけど、火燐先輩……あ、部長は早い時期で進路が決定してまして、それで……そのここまで待ってくれて……」
「なるほど……遅れてに遅れて、それで今の時期か」
「はい……それでその、部長ってひとを束ねる立場って言うんですか? そのわたしって、あまりそういう経験がなくて……その、うまくできるかとても不安で……あの」
カップが割れてしまうって思うくらいぎゅっと力強く握る。視線は視点隣ってテーブルを凝視してしまう。
「うん」
「その……あの、なんていうか」
「凪紗ちゃん」
「は、はい」
相談を遮り、刹那くんは真摯な顔で口を開いた。
「待ってくれてたって言ってたけど、それは凪紗ちゃんの返事」
「はい」
「無理矢理ってわけじゃなさそうだね」
「はい。断ろうと思えば断れました。でもわたしの返事を先延ばしにして……こんな時期まで先輩は待ってくれて……」
「いい先輩に出会ったね」
「はいとてもいい先輩です。誇れます。怖いけど」
「でも凪紗ちゃんは断らなかった。なんで? そんなに不安でできるかわからない事をなぜ自分から引き受けたの? 説得されたの?」
「あ……説得と言うほどの説得は無かったです。言われたのは私の代わりなんて思わなくていい。雪見さんが正しいと思うやり方で騎士道部を率いてくださいって言われました。それでずっと考えました。考えて考えて考え抜きました」
「考えたってなにを?」
刹那くんのカップが持ち上がり、すぐにテーブルに戻ってきた。
「わたしにできるのかどうかとか、しっかりしないと、とか、騎士道部のみんなの事とか。どうすれば長所を伸ばせるのかとか、短所をやんわりと伝える事とか。練習はどうしようとか……いっぱいそんな事をいっぱい考えました」
「なるほどね。あ、ちなみに副部長は決まってるの?」
「まだです。副長は騎士長が決めるので……」
「じゃあ、凪紗ちゃんが決めるんだ」
「はい」
「誰に就いてもらうかは決めてるの?」
「はい。ひとり。頼もうとしてる子がいます」
「……ふ〜ん」
「刹那くん……わたしできるかな……騎士長としてしっかりとできるかな?」
「どうだろうね」
「えっ?」
意外な応えにわたしは刹那くんに顔を向けた。
「俺には部長の経験はないからね。まぁ、部長になる前に武士道部がなくなっちゃったからね。あ、これは関係ないか」
「……」
なくなった……?
「凪紗ちゃんさ。もしも、俺が部長はやめた方がいいよって言ったらやめてた?」
「あ、それは……えっと……」
「俺が思うにきっと凪紗ちゃんは『ありがとうございます。わたしやってみます。がんばってみます』って言うよきっと」
「えっ……」
わたしが……そんな事を……でも
「なんでそう思うんですか?」
「なんで? そう思うことが答えだよ」
「えっ……どういう意味ですか?」
「気づいていないと思うけど、凪紗ちゃんはいっぱい考えたって言ってたけど『断る方法』は考えてないよね?」
「あ……」
そう言えば……不安と心配はしてたけど……断ろうなんて……思ってなかったかも……
「断ろうと思えば断れた。これって断る気がないってことなんだよね。いい例かはわからないけど、友達からなんかの誘いがあったときに『行けたら行く』って言う時があるけど、これってだいたいは行かないよね? 俺はだいたい行かないね。まあ、その後にちゃんと断りの連絡は入れるけど」
「……確かに……」
うん、そうだ。わたしもだいたい、行けたら行くって言うとほとんど行かない。
「だから、凪紗ちゃんは断る気がなかった。不安と心配で答えが先延ばしになっていただけ。それさえ解消できればあとはやるだけ」
「でも、じゃあ……」
「う〜ん答えはすごく簡単だよ。大丈夫。凪紗ちゃんならできるよ」
「え……」
なんだろう……なんだかすごく気持ちが軽くなった気がする……刹那くんに言われて、なんだかできそうな気がする……やれそうな気がする……
わたしって……単純なのかな? でも、悪い気はしない。
「誰かが凪紗ちゃんの背中を押せばよかったんだよ。後押しすればいい。あ、俺がその背中を押しちゃったけど……よかったかな? なんかごめん」
「あ、いえ、謝らないでください。相談に乗ってくれてありがとうございます」
やっぱり刹那くんに相談してよかった。
「でもやるからにはしっかりとしないとダメだよ。あ、他の部の部長さんとかと話はしたの?」
「いえ、まだです」
「なら聞いた方がいいね。色々と参考になるし、これからの事でも勉強にもなるから。誰か知り合いでいないの? 部長は」
「はい……あまり部長さんに知り合いがいなくって……」
「ひとりも?」
「えっと……ふたり知っているひとがいることはいるんですが……参考にならなそうって言うか……」
「でも、その知り合いに話をきいてもらったら? 部長同士なにかアドバイスをもらえるかもよ」
「はい……」
田村さんと杉田くんって……独特っていうか……近より堅いっていうか……雰囲気があまりなじめないんだよなぁ……
「あ、生徒会長とかはいいんじゃない? どう?」
「絶対にイヤです!」
かなり力強く断ってしまった。刹那くんの口から『お、おふぅ……』と単語が漏れたのがちょっとおかしかった。
「じゃあ、凪紗ちゃんのクラス委員長とかはどう?」
「あ!」
そうだ、アイリーンがそうだった! いるじゃん! ひとを束ねる立場にいるひとが! まったくもう、言ってよアイリーン!
「います! クラス委員長の知り合いひとりめっちゃいます!」
「お、ならそのひとに色々と聞いたほうがいいね。あ、でもクラス委員長と部長じゃあひとをまとめるとか指揮ってのは違うのかな?」
「あ……そうかも、でも話をしてみます」
「うん。あ、それと、しっかりと勉強もがんばらないとダメだよ。部長が補習授業で部活に遅れるなんて事になったら部活の士気や指揮に関わるからね。テストは常に上位か最低でも赤点ギリギリで補習を免れるくらいじゃないとね」
「お、おふぅ……」
今度はわたしがその単語を発してしまったのだった。
◆
「ありがとうございます。わたしやります。がんばります」
「うん、がんばって。何かあったらまたいつでも相談して」
「はい。ありがとうございます」
「じゃあ、俺行くね」
「うん。じゃあまたね。バイバイ刹那くん」
「うん。またね」
刹那くんを駅で見送ったあと、わたしはコネクトでアイリーンに電話をかける
「あ、アイリーン。あのね今から会える?」
◆
月曜日。
放課後になりわたしとアイリーンは教室に残って対面に座っている。
「昨日はごめん用事で行けなくて。それで電話での話でいいのよね?」
アイリーンが切り出す。
「うん」
しっかりとアイリーンと向き合い首を縦に振った。
「じゃあ、まずは言っておくけど、クラス委員長と部活の部長とではひとをまとめる思考がまったく違うって事を覚えておきなさい。これは文化系と体育会系とでも同じ。いい」
相変わらずアイリーンは厳しいな……いきなり軽い否定から入るなんて。
◆
「ありがとうアイリーン。やってみるね」
「私の話が参考になったかわからないけど、がんばって」
「ううん、とても参考になったよ」
「顔に緊張が出てるわよ。落ち着きなさいって」
「緊張してるからしようがないよ」
「これからもっと大きな重圧があるんだから、今から緊張したって仕方がないわよ?」
「……そうだね」
大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせる。……なんか、前に刹那くんに深呼吸して落ち着くんですかって聞いたことを思い出した。
「じゃあ、行ってくるね」
「凪紗」
席を立ち引き戸に手をかけたときにアイリーンからの声かけ。その声にアイリーンの方に顔を向ける。
「まだ不安に思ってる事があったら私に相談しなさい。いつでも話にのっってあげるから」
「うん。そうする」
「それと、しまい込むのはよくないわよ。そんな顔でいられたらこっちも心配になるから。そんなに抱え込むなら神夜さんに相談するよもっと早くに私に相談しなさい。今後はそうすること」
「うん、ありがとう」
「それだけ。いってらっしゃい」
「いってくるね」
部室に向かうでも、緊張で視界がなんか定まらない。頭の中が真っ白になってなにも考えられない。不安と心配。それと恐怖で潰されそう。それになんか足が震えてる……
これじゃあ……これじゃあ……ダメだ!
「……よし!」
階段の踊り場で立ち止まり、両頬をきつめ叩く。
そして大きくて全身が映る姿見の鏡に両手の平をいバンと思いっきり叩きつけた。
「しっかりしてよ雪見凪紗! そんな顔しないで……騎士長なんだよ! もう騎士長なんだから!」
鏡の中の自分に大きな声で怒鳴りつける。
「決めたんだ! やるって決めたんだ! アイリーンにも刹那くんにもやるって言ったんだ! 言葉に責任を持ってよ!」
思いっきり鏡に頭を打ち付ける……ことはしない。思いとどまる。ホントはしたいけど学校で血を流したりしたら大変なことになりそうだから。
「……」
鏡に背を向けて、わたしは騎士道部へと向かう。緊張と不安。どうなるかわからない不安。でも……刹那くんとアイリーンと話して……気持ちは
軽くなっている。少なくとも今は。
◆
「えっと……あの、遅くなりましたけど、今日から騎士長を任される運びとなりました、その、雪見凪紗です!」
火燐先輩から新騎士長として紹介されてみんなの前で『よろしくお願いします!』と、続ける。
校庭では他の部が活動している。一瞬わたしの大声で数人の多部員の生徒がこっちに振り向くがすぐに視線をはずしそれぞれの部活に戻っていく。
「その、至らないところがあると思いますが精一杯努めさせていただきますので、その、お、お願いします!」
もう一度頭を下げて、挨拶のシメを行った。騎士道部員から拍手がパラパラと耳に響く。……歓迎されていると思っていいよね……?
「えっと……じゃあ、今日はですね……練習はしないでその、なんていうかその……」
わたしの緊張を感じたのか部員から『がんばれ!』って声が投げ込まれる。
「あ、ありがとうございます。その、今日はその、みなさんの実力を計るっていうかその、今後のために確かめるっていうかその、そんな感じで今日の時間いっぱいまでわたしと一対一で模擬戦をしてもらいたいな〜って思ってます」
外野から『えっ!』と、どよめきが漏れ出す。騎士道部員は三年生を抜いて今は十人。決して多い数じゃない。でもひとりひとりが全国を狙えるだけの実力は持っているはず。だって……火燐先輩が見定めて育てたんだから! そしてこれからはわたしが受け継がなくてはいけないんだ。
「その、みんなの練習とか見てるからだいたいわかってるんだけどね。その、わたしは火燐先輩みたいに、見ただけで力量がわかる『眼』はもっていないからその、わたしってバカだから正確に計るには模擬戦一番かなって……だからその……ダメ?」
わたしの問いかけに部員全員が『いいよ』って言ってくれて頷いてくれた。『あ、ありがとう!』と精一杯の思いを込めて頭を下げた。
「でも、もうひとつだけわがままいいかな?」
『もうひとつ?』と同学年の部員から声が返ってくる。
「うん、ごめんね。最初にどうしてもやらないといけない事があるんだ」
そう前置きして、ひとつ落ち着くために眼をつむり息を吸い込み、吐いた。
「本渡花奈流さん。わたしは最初に本渡さんと対戦したいんだけど、いいかな?」
一学年下で、後輩の本渡さんに声をかける。
本渡さんはきょとんとした顔で、『わ、私ですか……?』と返ってきた。それはそうだ。突然だもん。でもね。もう決めていたんだもん。最初の超全力の相手は……本渡さんしかいないって。
この一戦から……わたしの騎士長としての一年が始まるんだ。
一ヶ月と半月後。
「いや〜ここに来るのもひさしぶりやな!」
妻沼駅にひとりの少女が降り立つ。十代としては高いほう。茶色の髪は長く後ろで結わいている。服装は整っていて、おしゃれなティーンズ誌に載っていてもおかしくないコーディネイトの服装だ。
「凪紗びっくりするやろな。いきなりきて」
午後の日差しが暖かい妻沼で少女はスマホを取り出し、メッセージを打ち始める。
「春休みやし、なんなら凪紗の家に一泊させてもらおうかな? あ、あのイケメンさんでもええかな?」
そんな思いを馳せつつ少女は熱心にメッセージを打ち込む指は止まらない。
そして、肩に掛けているギターケースの位置を直し、再びスマホに目を落とすのであった。
◆
同時刻、妻沼駅
「着いた! 妻沼!」
青髪のロングヘアーで背の低い少女が両手をあげハイテンションに声を上げる。
「静かにしなさい、いのる。周りのひとに迷惑になるじゃないですか」
対照的に緑色の髪の背の高い少女が背の低い少女をなだめる。
「だって、だってここにあの『プリンセス』がいるんだよ! テンションも高くなるよぉ!」
「そのハイテンションは声に出すものではありませんよ」
「もう、綾葉ちゃんはテンション低いな! そんな事じゃ『勝てない』よ!」
「そんな事はありません。勝ちますよ」
「そうだよねぇ! あ〜早くブチ倒したいな『プリンセス』を!」
「そうですね。では、どこにいるか見当を付けないといけませんが……」
「あれ? もしかして付いてないの?」
「ええ、まったく」
「マジで……」
そんな会話をしている二人の服装は同じ学校のセーラータイプ制服。黒を基調にしているのかストライプは白でスカーフは赤色だ。
「どうするの! プリンセスを倒せないじゃん!」
「まあ、落ち着きなさい。プリンセスはこの駅周辺を調べれば……おや?」
何かに目を付けた綾葉はとなりにいる、いのるには目を向けずに口火を開いた。
「早くも目星が付きそうですよ。いのる」
「マジで!」
ふたりは持っている竹刀袋を肩に掛け、熱心にスマホでメールかなにかを打っている少女の元へと歩みを進めた。
○おまけ/ちょっとだけ続きの物語 終
こんばんは、間宮冬弥です。
まずは、この稚拙な作品を最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
今回でこのお話は最後となります。
次回作ですが、終焉の世界樹~がまだ書きかけなのでそれを仕上げるかもしれません。
……もしかしたらまた凪紗ちゃんの話を書くかもしれないですが……終わり方がアレなんで。
形はどうあれ、次回作が出来上がったら、またお付き合いしていただければ、幸いです。
それでは、短いですがこれで失礼します。