妄想スケッチ
みなさん。おはようございますこんにちは。そしてこんばんは。
作者の代弁者の紫乃宮綺羅々でぇ~す!
元気してた?
もうおなじみだけど、ここは前書きでっす!
本編を読みたい人はサクッと、下まで飛ばしてね。
さて、第二話です。
間宮冬弥にしては早いペースでの投稿だね。
この調子で第三話も早く投稿できるといいね!
では、第三話をお楽しみください! ではっ!
「ふえぇ~……ホ、ホントなの……これ?」
部活が終わった放課後。
妻沼パルモ『ゴッデス』店内。わたしは今、店内で
驚きを隠せないでいる。
「これが普通よ」
「でもでも、こんな小さいチョコが五百円だよ! ありえないよ!」
「凪紗。ここではこれは安い方だよ。ほらこっちのチョコを見てみなよ」
「ふ、ふぇえぇえええぇえ~~~~~~~~~~!」
奈留ちゃんの言葉を聞いてわたしは驚きを隠せないよ。
だってこんな小さいチョコが……ボノボルより小さいチョコが三個五百円なんて信じられないよ!
「や、やっぱり金銭的にボノボルでいいと思うんだけどな……わたしは」
ポケットに忍ばせていたボノボルをひとつ取り出し三人に見せる。
「だめ」
「だめだめ」
「だめだよ」
と、三人に否定されるわたし……ううっ……おいしいのに
ボノボルは最高においしいのに……コスパ最高なのにぃ。
「まったく、凪紗はボノボルを過大評価しすぎよ」
「えっ?、ああっ!」
アイリーンはそんな事を言いながらさりげなく、わたしの手のひらに乗っているボノボルを
ひょいっと取り上げ、包装を手慣れた感じではぎ取り、ぱくっとボノボルを
口に放りおいしそうにペロっとむさぼる。
「ううっ……なんで食べるのぉ……楽しみに取っておいたのに……」
「あとで楽しみなさい。今は神夜さんにあげるチョコを買いなさい」
「ナギっち、これなんてどう? 値段も手頃だし、かわいいよ」
「ううっ……どれどれ~」
と、軽いショックから立ち直れないわたしに翠ちゃんが見せてくれたのは
一口サイズで小さな丸いチョコが六個入ったモノだった。
フレーバーはミルクチョコとモカチョコ、ブラックチョコがそれらが
それぞれ二個づつ入った、チョコレートボックスだ。
「お、なんかいい感じだね」
うん、これなら刹那くん、よろこんでくれそうな感じ。フレーバーも極端に甘いものもないし。
刹那くんって甘いものをあまり食べないんだよね。コーヒーもブラックだし。
それに一緒に行った初詣でもチョコバナナ食べなかったし。食べたのはたい焼きくらいだったなぁ~~
でも……来年はふたりっきりで行きたいなぁ~~妹さんを抜きにして。なんてね!
と、思い出にふけながらじっくりとチョコボックスを見ていると
翠ちゃんが『ちなみに値段は千五百円ね』と続けて言ってきた。
「えっ? 千五百円なのこれ?」
「そうだよ。バレンタイン価格ってやつかな?」
「おふぅ……意外とするなぁ……バレンタイン価格……まぁ六個入りだし……わからないでもないし……」
侮れないな……恐るべしバレンタイン価格!
「じゃあ、これにする?」
「う~ん……もう少し甘くない方がいいかなぁ……」
と、アイリーンの言葉に答えつつ商品棚を見渡す。どうせなら刹那くんに
合わせて甘くないチョコの方がいいし。
「……でもさ、甘くないチョコなんてあるの?」
そんなとても深い疑問を投げかけた翠ちゃんだった。
◆
「これで千五百円かぁ……そこのリオンとかミーカドーとかでもっと安くていいチョコがあったんじゃないかな?
いまだったらバレンタインコーナーとかできてそうだし」
わたしは買ったチョコの箱を手より、一回り大きいチョコの箱を見て値段高さにあらためて驚く。
「いいじゃない。本命チョコなんだから。スーパーなんかで買うより専門店の方がいいわよ。
それに本命なんだからそれくらいは当然」
アイリーンはそう言うけど……少ないお小遣いと今月のバイト代がまだでてない
今の時期は結構キツいんだよねぇ……
「でもさぁ~値段より気持ちだよ思うんだよねわたしは。気持ちさえこもっていれば
値段なんて関係ないと思うんだよねぇ~~」
チョコをゴッデスの紙袋にしまいアイリーンに語る。
「凪紗……あんたなかなか鋭くて良いことこと言うわね。えらいわぁ。でもそれじゃあダメ」
「ダメ? そうかな?」
アイリーンは何を感心したのかわからないけど、わたしを誉めてくる。ん?
誉めてるのか? 最終的には否定されたような気が。
「じゃあ、いまさらだけど手作りチョコにでもする?」
「いまからじゃ……遅いと思うけど?」
と、奈留ちゃんと翠ちゃんが話してるけど……うん、今からじゃ遅い。だって一週間もないし。
その後、四人でパルモの銀印良品に行ったり、雑貨屋をのぞいたりして
ウインドウショッピングを楽しんで帰った。
◆
「バレンタイン……かぁ」
午前十二時三十分。わたしはベッドに仰向けになって今日、買ってきた
チョコの箱に二月十四日のバレンタインに思いを募らせていく。
「刹那くん……喜んでくれるかなぁ……」
不安と期待を思ってチョコを胸に引き寄せ両手を添える。
「どうしよう……なんだかすごいキンチョ~してきた」
胸の鼓動がドキドキと鳴ってる……緊張しているのが自分でもはっきりとわかる。
「まだ、少し先なんだけどぁ……」
と、言っても五日後なんだよなぁ……ううっ~どうしようキンチョ~するなぁ……
「今でさえこんな感じじゃ……前日は眠れるのかなぁ……」
チョコを机の上に戻して、ベッドに戻る。
「ばなっしーどうしよう?」
ベッドに置いてあるばなっしーのぬいぐるみに語りかける。もちろん、わかっていたけど……
ばなっしーは答えてくれない。からいい顔でこっちを見ている。まぁ、そうだよね。
「はぁ……」
バレンタイン前日の事を考えつつ瞼を落とす。ベッドのぬくもりと
エアコンの暖かさでほどよくして襲ってくる睡魔には、対抗できずに眠りの底に落ちていったのだった。
◆
そんなこんなでいろいろと過ごして、今日は2月13日。
「おっふぅ……」
どうしよう、心臓がドキドキして……まったく落ち着かないよ……
「で、この式はこの公式を使って解いていきます。この公式はどこかの試験で必ず出しますので覚えておいてね」
そんな重要な事をさらって言っている久川先生。ノートの必死に書くわたし。だけど……
正直、自分が今、何に書いて何を書いているのかもさっぱりなほど緊張している。
「あ……」
そう。今書いているこのノートは『現代文のノート』だったからだ。
「おふぅ……」
放課後。今日はずっと緊張しっぱなしで授業の内容はほどんど頭には入っていない。
明日の事で頭がいっぱいで真っ白。
「もう、放課後か……」
教室には帰る人と部活の用意をするひと。そしてイスに座ってぼぉ~っとしているわたしがいる。
「部活に行かないと……」
もう、あと数十時間後には……わたしは……刹那くんに……
「おふぅ……ううっ、キンチョ~するなぁ」
明日の事を考えでるだけで……胸が締め付けられる思いだよ……もうこの時でも
ドキドキしてるのにもっとドキドキしちゃう……明日、どうなっちゃうんだろう……
「あ、いたいたねぇ凪紗。今日何時に部活終わる?」
「うん」
アイリーンが何か話してる。
「帰りに一緒にビハードパパでバナナミルククッキーシュー買っていかない?
今月末で販売終わりらしいから」
「うん」
アイリーンが何か話してる。
「……消しゴム食べる?」
「うん」
アイリーンが何か話してる。
「凪紗! あのさ聞いてるっ!?」
「えっ? あ、えっと……ごめん、聞いてなかった……」
「もう、どした? なんか今日はずっと、うわの空って感じで心ここにあらずって雰囲気だよ?」
「うん、ほら。明日ってアレじゃん?」
「明日? ああ、アレね」
「うん。アレの日だからさ」
アレとはもちろんバレンタインの事だ。間違えようのない大事な事。
大事な事だからこそ、緊張している。
「落ち着きなさいよ。今でもそんなにソワソワしてたら明日は超ソワソワしてるわよ。あんた」
「わたしもそう思うよ……」
アイリーンは腕を組み、あきれた顔でわたしを見おろす。
「そのままの状態じゃ明日、神夜さんに変な子だって思われるわよ?」
「えっ? い、いやだよぉ! 刹那くんに変な子だって
思われたくないよぉ~! アイル~ウィ~ン! いやだよぉ!」
イスから立ち上がりアイリーンの腕を左右からガシっと掴み前後に大きくユサユサと揺らす。
「ううっ、変な子だなんて……思われたくないよぉ!」
「お、おふぅ……ちょっ、と……」
力強く宣言し、さらに激しくアイリーンを前後に揺らす。揺れる度にアイリーンの頭が
グイングインと前後に大きく揺れるのがはっきりとわかる。
でも、とめられない! だって、刹那くんに変な子だって思われたくない!
「お、落ち着きなさいって……」
「でもぉ!」
グイングインと揺さぶられるアイリーンの頭。
「あれれ? どったの?」
と、そこへ翠ちゃんの声。
「アイリーンが刹那くんに変な子だって思われるって……言うんだよぉ~~~!」
さらにグイングインとアイリーンの身体を揺さぶる。と同じくグイングインとアイリーンの
頭もガクンガクンと前後に揺れる。
「う~ん、なぎっち。とりあえず落ち着こうか? そのまま瀬尾さんを
グイングインしたら吐いちゃうから」
「でもぉ~!」
「まあまあ、いいから、いいから」
翠ちゃんはわたしの腕を握る。
「はいストップね。大丈夫だって。神夜さんはなぎっちの事を嫌いになんてならないから」
「ううっ……ほんと?」
どうしよう……わたし泣きそう。
「ほんとほんと。だからそんな泣きそうな顔しないでって」
落ち着きを取り戻しアイリーンから腕を離す。
「アイリーンごめん」
「ううっ、気持ち悪っ……まぁいいって。まったくあんたって
泣きそうな顔してるのに神夜さんの事になると見境ないわね」
「うんうん、恋は盲目だしね」
と、そこへ突然現れた奈留ちゃん。
「なるほど。言い得て妙。それは重傷だわ」
と、アイリーンはひとりでうんうんと数回頷く。
「おっ、奈留~~~どうだった、出た? 大きいのでちゃった!?」
「やめなさい。顔触るわよ?」
「おおぅっ! 汚っ!」
ふたりは……たぶんトイレネタの話しをしてるんだろうけど……気になるなぁ……気になる。
「ねぇ、奈留ちゃん」
「何?」
「トイレットペーパーあった?」
まじめな顔で不真面目な事を尋ねる。
「は?」
そんな質問をしたわたしを奈留ちゃんはすごく冷たい視線で戻した。
「やめなさい」
そんな、アイリーンのツッコミでこの会話は終了を迎えたのだった。
◆
「恋は盲目?」
「そ、今の凪紗の状態の事。好きな人の事を思うと
周りが見えなくなって正常な判断ができなくなる状態」
「へぇ~」
話しを戻して、奈留ちゃんの話しを聞く。『恋は盲目』かぁ~
「確かにそれはあるかもね。普段ならあんなに私をグイングインしないしね」
「う~ん、そうなのかなぁ」
「あ、この前、神夜さん見かけたけど、女の人と一緒に歩いてたよ」
「えっ……」
ちょっ……えっ? 女の人って……えっ……
「うっわ~」
「うっわ~」
「うっわ~」
今の話しホントなのかなぁ……ホントならどうしよう……ううっ……泣きそう……彼女なのかなぁ……
彼女なら……どうしよう……ううっ……刹那くん……ホントなの?
でも、ホントに彼女だったらどうしよう……
ううっ……違ってほしい! むしろ違って!
「凪紗……あんたの顔……地球が終わったって顔してるわよ」
「うん。そんな感じ」
「今にでも死にそうな顔してるよ」
「……」
どうしよう……どうしよう……聞いてみようかなぁ……
でも、何て聞こう……彼女いますかって? 聞くのかなぁ……
ううっ……真っ白でなにも思いつかない……
「だめね。聞こえてない」
「うん、これは聞こえてない」
「聞こえてないわね」
「あ、ちなみに今の話し、ウソだから」
「えっ!?」
翠ちゃんの声に顔を勢いよく向ける。
「ホントに!? よかったぁ~~まったく翠ちゃんは冗談が好きだなぁ~~
このこのぉ~~~お騒がせガールめ!」
翠ちゃんに軽く肘を当てる。
ふぅ~~~~~~ホントによかった~~~まったく、冗談にもほどがあるよぉ~
「……すごい満身の笑顔……これは本格的な重傷だわ」
「うん。落差が激しい……重傷だこれ」
「重傷の上にウザい」
「バレンタイン……うまくいくかなぁ~うまくいくといいなぁ~~」
笑顔でうきうき気分な私は胸の前で祈るように両の手のひらを合わせ指を絡める。
「うまくいったら……えへへ……えへへ……」
どうしよう。顔がニヤけちゃうよぉ~~
「ねぇ……今度はすごいニヤけ面だけど?……」
「あれはきっとバレンタインがうまくいった時の妄想にふけってる顔よ」
「お~さすが瀬尾さん。親友だからわかるってヤツ?」
「イヤイヤ誰だってあんなニヤけ顔を見れば、よからぬ事を考えてるってわかるでしょ?」
「う~んそうかなぁ……あ、でも私は奈留だったらわかるかな」
「ちょっ、なによそれ。私がそんな変な事を考えてると思ってるの?」
「イヤイヤわからないよぉ~あ、今度はすごい悲しい顔してるけど?」
「あれはきっと失敗したときの事を考えて絶望してる顔よ」
「う~ん……なんだか、いろんな意味で忙しいね。なぎっちって」
「う~ん……いやだよぉ……」
ううっ……どうしよう。失敗したらどうしよう……ううっ……なんだか悲しくなってきたなぁ……
ピッロロン
「あうう……」
胸のスマホが着信音と同時にバイブする。コネクトのメッセージが届いたのかも……
不安で心配の中、スマホを取り出しコネクトのメッセージを見る。
「……やっばぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁ~~~~い!!!」
わたしはメッセージを見た瞬間、駆け出し廊下を走りだした。
「ちょ、凪紗ぁ~~~?!」
「ごめん、部活行ってくる!!!!」
後ろから聞こえるアイリーンの声の大声で答え、走る。
「やばい! やばい! これはやばいですよぉ!」
とにかくやばい! いち早く騎士道部に行かないと……火燐センパイの『おしおき』を受ける羽目になる!
そう、さっきのコネクトのメッセージは火燐センパイから。メッセージは
『どうしましたか? みなさんもう集まっています。五分以内に来てください。来ないと個別特訓です』と
書かれていた。優しい文章だけど、要約すると『おしおき』だ!
「時間よ止まってぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇえええぇ~~~!」
駆けながら無理な願いを叫ぶ。
「止まるのはお前だ! 止まれそこのチビポニテ!」
後方から聞こえる女性生徒の大声で緊急停止。
「チビポニテ……」
ううっ……これは100パーセントわたしのことだよね……チビポニテ……
そして恐る恐る振り返る。
「『校則で廊下は走らない』と決まっているのは知っているな?
イヤ知らないはずはない? お前は必ず知っている」
「はぁ……まぁ……」
ぶっきらぼうに整えてられてないショートカット。でもそれでも似合ってると思わせる綺麗な顔立ち。
そして、髪型とは対照的にしっかりと整えられた身だしなみ。清潔感が漂う制服の着用。
でも……はっきりとわかるお怒りの顔。それは言葉にもにじみ出ている。
そして腕には『風紀委員』と書かれた腕章。
あれ? このひとって……たしかこの前の全校朝礼で新しく風紀委員長になった
同じ学年の川澄さんだったかな?自分から『わたしは風紀王だ』って言ったすこしイタいひとだよね?
「えっと……すいません」
ううっ……部活、もう間に合わないかも……
「ん? もしかしてD組の雪見凪紗?」
「えっと……そうです……あの急いでいるんでお話は後でもいいですか?」
「ダメだ」
ううっ……ダメなのぉ……即否定しないで少し考えて欲しいなぁ……
「まったく、就任早々よもや『白い雪のプリンセス』の二つ名を持つ
あの雪見凪紗を指導する事になるとは……因果なものだ」
「はぁ……」
改めて他人から『白い雪のプリンセス』って聞くと……なんか恥ずかしい。
そしてチラっと廊下の時計を見る。時間は15時50分……ううっ……早く終わらないかなぁ……
「いいか、雪見さん。廊下を走るって事は……」
その後、川澄さんから校則の重要性や廊下を走ることの危険性を教えられ……
解放されたのは16時ちょうど。
「また10分かぁ……」
ここまで10分に縁があると、なんだか10分に愛されている気にもなってくる。
そして、わたしは限りなく駆け足か早足かの絶妙な速度で廊下を『歩いた』のだった。
「麻子、私はあなたに好意を抱いているわ」
「キモいんだけど……私、帰っていいよね?」
昇降口を通って騎士道部の部室に向かう途中で聞こえてきた会話。
……正直……あまり聞きたくないし関わりたくないんだよね……あのふたりには……
「ダメよ。私が帰宅するときが麻子の帰宅の時よ」
「……頭おかしいんじゃないの?」
「そうよ麻子。もっと私を糾弾しなさい。麻子だけが私を糾弾してくれる。
麻子がいるから私は常に正しい判断ができるの」
「なんなの? アホなの? あんたはアホの子なの?」
「そうよそれでいいわ。そのままの麻子でいてくれたなら、私は私でいられる」
「怖いんだけど? ねぇ校門を出て左に大きい病院あるからお願いだから行ってきてくれない?」
「麻子。ずっと私のそばにいて欲しい。麻子がいれば私は、いつまでも正しくいられる」
「キモっ!」
バレないように細心の注意を払ってふたりの視界外からこっそりと通ろうとしたときに
『あら、雪見さんじゃない』と新生徒会長から声をかけられてしまった……
「あ、どうも~~失礼しまぁ~す」
軽く会釈して立ち去ろうしたとき『せつなくんはお元気かしら?』と新生徒会長である斉藤さんが声を投げる。
「刹那くん……」
どうして……どうして……
歩みをとめて、胸で腕を組んで、凛とした表情の斉藤さんに視線を向ける。
「どうして、斉藤さんが……『刹那くん』って呼ぶんですか……?」
なんだろう……胸がモヤモヤする……なんだかイライラしてる……
「あら、頬を膨れさせてどうしたのかしら? もしかして怒らせてしまったかしら?」
「怒ってなんていませんけど?」
「そう? 私には怒っているとしか思えなし見えないけど?」
「そうですか。じゃあそう思っていていいですよ」
「もったいないわね。せっかくの童顔で可愛らしい顔が台無しよ。
目が座っていて、眼も眉毛もつり上がっている。そんな可愛らしくていて怖い顔で『怒っていない』と
主張するのね。雪見さんは。プリンセスの名が泣いているわよ」
「質問に答えてください」
「質問? ああ、どうして私が『せつなくん』と呼ぶという事かしら?」
「そうです」
「そうね。だって私はせつなくんの名字を知らないわ。知っていたら『さん』づけするのだけど?
雪見さん。教えてくれるかしら? 彼の名字を」
また……刹那くんって……イラつく。すごく気分が悪い……
彼? どうして斉藤さんが刹那くんの事を彼って呼ぶの?
「神夜刹那です。二度とその口で……その声で『刹那くん』と呼ばないでください」
「あら怖い物言いね。だいぶ怒っているのね。それは、その感情は嫉妬かしら? 嫉妬は醜いわよ。
『刹那くん』と呼んでいいのは自分だけって事かしら」
まただ……わざとなの……でも、嫉妬? 嫉妬なのかな……
このモヤモヤした感情は……イラつくざわついた感情は……
「刹那……あ、失礼。神夜さんも大変ね。雪見さん。あなた独占欲が強い傾向があるかもしれないわね」
「あ、えっと……すいません。その少し言葉がキツかったですね……」
独占欲……刹那くんをわたしだけの……
「いいわよ気にしないで。恋は盲目。好きな男性を恋人にしたいと言う欲求は恋する乙女の特権よ」
「こ、こ、恋人っ!?」
刹那くんがわたしのこ、恋人……
「えへへ……」
「どうしたの顔が赤くなっているわよ? ああ、それとごめんなさいね。
『刹那くん』と呼んでしまって。名字を知ったから今後は『神夜さん』と呼ぶわ。
ではこれで失礼させていただくわ。生徒会室で会議があるので」
「えっ、あ、はい……」
「では行きましょう麻子。ってあら? いない?」
「……さっき、向こうに歩いていきましたけど?」
わたしがそう言うと『そう。ありがとう』と言い残しブレザーの胸ポケから
スマホを取り出し、耳に当てる。
「……麻子ね。いまどこ。……そう。ならそこに居なさい。すぐに行くから」
「失礼しま~す」
「待ちなさい」
「へっ?」
斉藤さんに一礼し、走っているようで走っていない、微妙な歩きの速度で
騎士道部へと急ごうとしたら斉藤さんに呼び止められ、振り返る。
「な、何ですか……」
「申請書類。提出はいつになるのかしら?」
「あっ……」
そっか、そろそろ出さないといけないんだ。
「えっと……今週中までには……」
「わかったわ。今週中ね。では金曜日までよ」
「へっ? 金曜?」
「へ? じゃないわ。今週中でしょ? 今週って事は金曜日までで土曜日は休み。
だから提出できるのは金曜日までよ」
「あ! えっとぉ……そのぉ……」
「……何かしら」
「で、できればその……いまちょっと、まだ、もしかしたら書けない状態でして、あはは、
えっとぉ来週中に、と訂正を……したいなぁ~~なんて、あはは……」
しどろもどろになって必死に斉藤さんに訴えるわたし。
「自分の発言に責任をもてない者は言葉を発する資格はないわ」
「あはは……」
その後、斉藤にお願いして何とか提出期限を来週までにしてもらったのだった。
「16時10分……」
斉藤さんと別れて少しあるいた所で立ち止まりスマホを見る。
液晶画面の時計は『16時10分』を表示していた。
……やっぱり……10分って時間に呪われているな……わたしって。
第二話 妄想スケッチ 終
こんばんは、間宮冬弥です。
まずは、この稚拙な作品を最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
約一週間で第二話を投稿しました。次回の第三話ですが、正直未定です。
とりあえず執筆していますが、再来週かもっと先になるかも知れません。
申し訳ございませんが、投稿するまで期待しないでお待ちください。
それでは、短いですがこれで失礼します。