九話
一年以上ぶりですね
「久しぶり。高都君。」
私が高都くんと再開した場所は、意外にも体育館だった。
高都くんはジャージを上下に着ている。
なんというか…とても似合う。
「え、宮野さん一人?」
「…高都くんもそうじゃない」
それに、私は忘れ物を取りに来ただけだ。
今日はこの体育館で部活があったのだ。
体育館に居るのを不思議に思ったらしい高都君が聞く。
「そういえば、宮野さんは部活なに入ってるんだ?文化系?」
「えーっと…」
私は答えにつまる。私がそんなに運動音痴に見えるか。
「卓球…かな。」
高津君が今借りたであろうラケットを持って素振りをする真似をしてみせた。
それにしても1人でどうするつもりだったんだろう。
卓球は一人でする競技ではない。…一応。
しばらくラケットを眺めていた高津君が
「…面白い?」
と、呟いた。
その問いに私は笑顔で頷いた。
「…高都くんもやってみるといいよ!」
私がそう元気に高都くんに薦める。自分の好きなスポーツに、少しでも関心を持ってくれるのは、やっぱ嬉しい。
「じゃあ、いまちょっと教えて?」
高都君は首をかしげる。
あざとい!イケメンもあいまって、一般的女子なら恋に落ちるに違いない。狙ってやっているのか、この子は。
「んー、いいけど…見かけよりは難しいよ?」
高都君はうん、と頷いた。
数十分後。
「つっかれた」
「思ってたより動くんだね」
「…真面目にやれば、そりゃあね」
一息つく。話題がない。
高都君は、なにかを思い出したかのように私のほうへ向き直った。
「そう言えば、どうなったの?想い人さんとは。何か進展した??」
高都くんは私に聞く。
「……ううん」
と私は首を振る。
特に、なにもない。
「うーん…いっそ告白してみたら?」
「…玉砕しそうだよね…」
吉野くんには恋人がいる。
時々、私の後ろになにか見ているようで。
私と誰かを重ねて、優しくしてくれたりはする。
それでも、私に可能性は万に一つもない。
どうして、わたしは。
彼を好きになんてなっちゃったんだろう。
涙が溢れてくる。
「泣くなよ…アンタが泣くと、俺も悲しいから。だから泣かないで」
…吉野くんを好きになって、高都君と出会って。
高都君の前で私は泣いてばかりな気がする。
こんな私にどうして、高都君は優しくしてくれるの?
…そんな疑問は口に出せず、ただただ嗚咽が漏れた。