神の国
神の国に行ったことのあるって言う男がいて、ソイツを銃で撃った。おきにいりのコルトガバメント。艶消しの黒。ソイツは真っ赤な花を派手に咲かせながら、ぶっ倒れた。火薬の匂いがして、ボクはいきそうになった。冬だったかな。まだ雪は降ってなくって、マフラーを巻こうか迷っていたっけ、その朝に。クリスマスはまだまだ先で、だからソイツを撃ったんだ。鉄の匂いがして、僕は笑った。
本当は僕は神の国に行ったことがある。だからソイツが、神の国は真っ白い大理石の壁と真っ白いシルクの服と真っ白い心の天使達が真っ白いスープを飲んで真っ白いパンを食べる。なんて言ったもんだから、さぁ。解るだろ?ボクがソイツを撃った訳が。解るだろ?艶消しの黒のコルトガバメントで撃った理由が。
神の国は真っ白い空と真っ白い人と真っ白い歯と真っ白いシーツがゆらゆら揺れている真っ白いキャデラックが真っ白い煙を吐きながら真っ白いパンティーを履いた真っ白い女が真っ白い液を真っ白い口からだらだらこぼすんだ。だろ?アイツの言った物なんて何一つも無いだろ。だって真っ白いんだぜ、真っ白。見える物なんて何も無いんだ。神の国なんて真っ白だ。ちょうど雪に包まれて昼間、光が雪を通ってきて、全部真っ白。そんな感じ。真っ白くって全部が見えるってわけさ。見えすぎちゃって見えないんだ。それが神の国だ。でも、そこでも、この艶消しの黒のコルトガバメントは見えるんだ。だから、僕はこの艶消しの黒のコルトガバメントを持って歩く。いつでも神の国に行けるように。再訪してもいいように。
教会で祈った。トイレで祈った。バスルームで祈った。宇宙で祈りたい。それは叶わない?大気圏の向こうにも神はいるのかな?真っ黒い世界。だから光がよく見える。神の国では光は見えない。すべてが光。真っ白。だからボクは艶消しの黒のコルトガバメントが好きさ。
ある日ボクは学校の帰り道。お気に入りの場所、白い花がたくさん咲いてる廃工場の中。寝ころんでた。そんとき天使が降りてきてボクのベアーの半袖シャツの左裾を引っ張るんだ。ボクはそこで目が覚める。天使は言った。
「遊びましょ」
ボクは言った
「嫌だね。君みたいな知り合いはいないし、君みたいなちっちゃな子と遊べないよ、ボクは飛べもしないし」
天使は言った
「つまらないな、全然つまらない。君って何?勇気が無いのかな。遊ぼうよ、ここから神の国に行ってさ。楽しいかもしれないし、きっと楽しんでしまうよ」
笑った。真っ赤な歯だった。鉄の匂いがした。つられてボクは泣き出した。大げさに、おおっぴらに、素早く。花が揺れていてボクは気が付いた。この世界は真っ白じゃ無い。真っ黒じゃ無い。カマキリがいてミドリ色してた。寒くもない暑くもない午後。
天使は泣き出した。ここにはあるはずの物が無いって。心が叫んで、張り裂けそうだって。君がそこから飛んで、ボクは塊になって、朝日が照らしてる。そんな気分でボクは言った
「飲み込んでしまえばいいのに」
天使は笑った。
「さぁ行こうよ」
神の国は真っ白で全てが見える。
すべてのものが見える。
天使がいて、ボクに笑いかける。そんときは真っ白だった。
艶消しの黒のコルトガバメントを家に忘れてた。
放課後夕焼けにはまだ早いころに早足で歩く。友達は黒いシャツで夜になったら車に轢かれてた。気分は最悪。丸いがらくたを蹴って歩く。それが空き缶だとはさっき知ったんだ。夢みたい。幸せの時間がやってくるよ。ね。ほら、そこ。キミの足下。右足の。そこ。白い花。その中で眠ってれば良い。そのまま神の国へ行けるさ。




