母親の料理
魚と貝の丸焼き、魚スープと山菜の温野菜。
どれも好物だ。
最初、お父さんは「本当に大丈夫なのか、どこか痛いところはないか?」
と、何度も心配していたが何度も「大丈夫だよ」と言ってようやく宥めることができた。
(早くしないとご飯が冷めちゃうよ)
内心ではそう思っていた、本当にどれだけ腹が減っているのか。
(まずは、魚の丸焼き、美味い、絶妙な火加減で、口いっぱいに蛋白で磯の香りがする。
貝はホタテのような貝でこれまた美味い。貝柱が肉厚でジュウシーで
美味かった。次に魚スープ。
塩加減が絶妙で、魚の出し汁が具の魚肉と絡み合って
物凄く美味かった!!
今まで魚介類がこんなに美味いなんて思ったことがなかった。
いや、なにも魚が嫌いだったわけじゃない。
むしろ好きだ、しかし、ここまで美味い魚料理は食ったことがない。
例えリザードマンの味覚が魚を好んでいる可能性があったとしても、それを抜きにしても美味い、そして、山菜の温野菜も普通に美味い)
そして、もうがっついた。
気が付いたら目の前には空っぽの皿しかなかった。
お父さんの皿も。
「いや~やっぱりセルフィーユの作る料理は絶品だ」
「もう~そんなこと言って~もう恥ずかしいよう~」
「恥ずかしがっている君も好きだ」
「も~あなたったら~ありがとう」
「セルフィーユ」
「バジル」
(あ~もう他所でやってほしいよう~恥ずかしくて見てられないよう~)
「バジル」
「セルフィーユ」
我が子の気持ちに気づかずまだ名前を呼び合う夫婦。
その気持ちに気が付き恥ずかしながらやめたのは、それから2分くらいしてからだった。