葉月さんとわんこ
えーと。
連載中の更新でなくてごめんなさい…。
浮気しました(笑)
・登場人物に同性愛者がでてきます
・発言が少々、かなり?下品できわどいです
それでも良ければ読んでやってください。
「いー天気っ」
こんな日は中庭のベンチで日光浴にかぎるね。待ちに待ってた新刊もゲットしたし、カフェオレでも飲みながらのんびりしようっと。
申し遅れました。私、鈴原葉月と申します。只今大学二年生の一番楽しい時期を謳歌してる。
ふふ〜ん。ささやかでもちょっとした嬉しいことがあれば気分もあがるってもんだ。こういう自分のための時間を過ごすのは優越感に浸れる。我ながらさみしいけど。
「今日はもう講義ないし。ゆっくり読んで日が落ちる前に買い物でも行こうかな」
「・・・・!!!」
「・・・・?」
?
なんかうるさいな、何だろ?
「おいっ!何とかいえよ!!」
「だからさーもう別れよって言ってんジャン?」
なんだ、別れ話の喧嘩ってところか。何もこんなところでやらなくても。
んん?なんかおかしい気がするぞ?
「なんでだよっ!!」
「本当にわかんないわけ?馬鹿だね」
「なんだとっ!!!」
どっちも声が低い。そして長身の姿。
あー男同士のカップルってやつでしたか…。しかしこんな大学構内でおおっぴらに喧嘩しなくたっていいのに。昔に比べてそういったものに対してだいぶ寛容になったとはいえ、偏見差別はあるだろうに。
ちなみに私は兄貴が『そう』いう人なのでとくに偏見とかないけど。しかも兄貴が規格外だからなー。
「俺、彼女できたんだよね」
「な」
ナルホド、両刀でしたか。
「お前、美形だし。どんな感じかなと思ってさ」
しかも最低、遊びか。たまにいるよね、基本はノーマルだけどどっちもいけるって奴。
「いろいろイイ経験させてもらったよ、じゃあな」
「っ」
ホント最低野郎だな。虫唾がはしる。ゲイでもレズでもなんでもお互いが好きって気持ちは変わらないのに。
ふられた方の男はしばらく立ち尽くした後、一つため息を吐くと私が座ってるベンチに一つ席を空けて座った。
ふむ、なかなかの美形だな。美少年わんこ系。
しみじみと観察していたら、まっすぐ前を見ていたはずの男がこっちをみた。
やべ。
「変なもん見せてごめんね?」
「いえ」
「あーやっと別れ話までいったよ」
ふられたのは、目の前の男だよね?なんでこんな晴れ晴れとした顔をしてるのか。
「あいつ無駄にプライド高くてさ。こっちからフると面倒くさそうだったから、あいつに気がある女子を近づかせたりして…」
「うわ」
こっちも最低だった。しかも結構な腹黒だ。
「だってさーあいつ、ベッドの中でも横暴なんだぜ?まったくもってヨくない」
こっちもまったくもって良くない。別に聞きたくない。
「で、君の名前は?」
「は」
「俺はね、経済学部経済学科の京谷正輝。ちなみに三年な」
「文学部日文、鈴原葉月。二年」
「後輩かー」
だから、俺のこと知らないのかとかぶつぶつなんか言ってるけどなんなんだ?
てかもうせっかくののんびりタイムが台なしだ。カフェでも行こうかな。
「えと、じゃあ失礼します」
「あ、また来る?」
「?」
「ここに」
「さぁ?気が向けばですね」
嘘だ。基本的に空いた時間があればここにいる。寒い日雨の日はいないけど。でもここはこう返しておいたほうが無難だろう。
「そっか」
「では」
なんだろうか、興味を持たれたようだ。でもあんまり関わりたくない面倒くさそうだ。なんせ美形…。
「またね、葉月ちゃん」
後ろから何やら聞こえたがそのまま去ることにした。
***********************
まあ、もう関わることがないと思っていたのですがね。学部違うし。学年違うし。あれーおかしいな。
「おはよ、となり座るね」
確かに、確かにこの授業は教養科目だ。学部学科関係なくとれる。しかし、あえて問う。なぜこの男がいるのだ。
しかも座っていいか、ではなく座るね、だ。
「葉月ちゃんもこれ取ってたんだ」
「まぁ」
「ていうか葉月ちゃん、鈴原さんの妹だったんだね」
「…兄をご存じで?」
「そりゃあね、有名だし。いろいろお世話になったし」
「さようでございますか」
まあそうだね。そっちの道の人なら知ってておかしくない。だからか?この人が私に絡むのって。
考え込んでる私に何を勘違いしたのかは知らないけど、焦ったように口を開く京谷氏。
「あ、でも俺にとっても兄貴みたいな感じだよ。そういう関係じゃないからね」
「ぷくくくく…わかってますよ。兄は結構おせっかい焼きなんです。ちなみに兄のタイプは昨日の別れ話をしていた彼のようなガテン系なんで」
なるほど、そっちに勘違いしたのね。べつに兄の恋人なんて見慣れてるしかまいやしない。それに今の彼氏とはかなり長いし、人前でいちゃつくのはホント勘弁してほしい。
「…葉月ちゃんとお友達になりたいんだけど」
「いいですけど?」
「メアド、番号教えて」
「はぁ」
なにやら真面目な顔つきになったと思えば、なんだ。
「というか、別に私とわざわざ友達にならなくても、兄と会えるようにしてあげますけど」
「は」
「違うんですか?」
あれ?外したのかな。兄の知り合いで私とコンタクトを取りたい人ってだいだいそうだから。
「違う。葉月ちゃんだから、俺は友達になりたいと思ったんだ。確かに鈴原さんにはお礼も言いたいけど、あの人には会いたいと思えば会える」
久しぶりに、言われたかも。『私』だからって人。兄のことは嫌いではないけれど、男女ともに人気のある兄にコンプレックスはやっぱりあった。
「だから、教えて?」
「はい」
だから、かな。すごくうれしい気持ちでいっぱいになった。
ちょっと照れくささをごまかすようにさっさと携帯を取り出した。
「連絡する」
「よろしくお願いします」
こうして京谷氏とは奇妙なお友達関係が始まった。
「なぁなぁはーちゃん」
「なんでしょう」
「これ見に行きたい」
「ふむ、かまいません。あ、ここ行きたいんですけど」
「はーちゃんて、なかなかに渋いよね。盆栽展って…」
「いーんですよ。行きたくなければそれで。一人でも行こうと思ってたのでっ」
「はいはい拗ねないの。行かないとは言ってないでしょうに」
「む」
とはいえ、はたから見たカップルだよなこれ。あれから京谷氏とはちょくちょく大学のカフェで話すようになった。何かあれば遊びにも行くし。京谷氏は私のことをはーちゃんと呼ぶようになった。(ちなみに私は変わらず京谷さんと呼んでる)
意外にも京谷氏とは、空気が合った。学部の友達とも兄とも違う空気。とても心地よい。
だからこそ気になった。
「じゃ今週の土曜でいいかな」
「はい。あ、あの」
「んー」
「恋人はいいんでしょうか?」
「あれ?俺今フリーだけど」
それはほぼ毎週のように遊んでいるのでわかる。私が言いたいのはそういうことではない。
うまく説明できそうになくてまごまごしていると、頭を軽くたたかれた。
「まったく優しいねはーちゃんは。今はいいんだ別に。好きな人ができたらちゃんというから」
「はぁ」
「おれよりはーちゃんはどうなのよ」
「どうでしょう?」
「ふーん。そういうこというんだー」
なにやら不穏な空気!?なぜっ。
「や、だってよくわからないですし。そういうの」
「くくく。ま、相談にならのるからね」
「はい」
今はまだ。このまま。この空気の中にいたいなと思う。
************************
それは約束してた盆栽展に行ってきた帰りだった。小腹がすいたということでふたりでお店を探しているときだ。
前からなにやら見覚えのある男が近づいてきた。
「よ~う。正輝ジャン」
あれ?この人、京谷氏と別れ話してた男の人だ。兄のタイプっぽいと思ったので覚えていた。
「彼女連れ?なーんだお前も女イケたんだ」
しかし、やたらむかつく言い方だな。
京谷氏は私をかばうように前に出た。
「何の用だ?」
「べつに~最近お前がさ、女とよくいるって聞いてさ」
そんなに噂にでもなっているのだろうか?確かに京谷氏は美形だから、大学でも有名だろうしね。
「こいつさ、ゲイだって知ってた?気を付けたほうがいいよ?男に取られちゃうから」
しかしまぁ、こいつは馬鹿なのか?あきれて言葉が出ない。
「ホント、ありえねぇよな。君もそんなにかわいいんだからこんなヘンタイ野郎とじゃなくてもっといいやつと付き合えるよ?」
だめだ。
どこか遠くのほうで何かが切れた音が、した。
「あのね…」
たっぷり息を吸って一気に吐き出してやる。
「分かってる?べつに、ゲイ=たらしとか変態っていう意味じゃあないんですよ?ゲイにだってタイプがある。当ったり前!!ま、たとえ私が男でゲイだったとしても、アンタだけはお断り!!そもそも男女だって男女二人ってだけですぐカップルができたら、婚活だのなんだのいってないっつーの!っだいたいねっ、たらしやら変態やらっつーのは貴様のような男でも女でも自分の欲を満たそうとする下半身ゆるゆるのヤツを言うんだよっ!!!覚えとけ!」
っあ゛ー!!!すっきりしたっ!てか結構な言葉遣いをしたよな気がするけど気になんかしない、してやるもんか。
ちなみに目の前のバカは青い顔を通り越して白くなってる。けっいい気味だっ!!
「いーい?次に性癖なんかくだらないことででバカになんかしたら、あんたも男がイケるってこと大学にばらして、股の間に付いてるモノ、ちょんぎってやるから!!」
「ちっのアマ!!おぼえとけよ!」
まさに脱兎、という名にふさわしい逃げっぷりである。しかも典型的すぎる。
「ふんっよわっちいヤツめ」
そして私はまさに悪役、の捨て台詞だ。
後ろから視線をびしばしと感じる。てか、いたのわりと忘れてた。
「………………なんですか」
「い、いや………なんでも?」
まったくもってなんでもなくない顔。顔はひくひくしてるし、なんか口元を押さえて我慢してるし。ったく。
「………笑うなら笑ってください」
「じゃ、じゃあ遠慮なく………っぷくっはははははは!!!まさかまさか、あそこまで言うなんて…っくくく。し、しかもちょんぎる、とか…もうおかしすぎるっ…確かにあそこまで言われたら、しばらく使い物にならないかもっ…ははは!!!!」
仕方なく許可を出せば、馬鹿笑いに引き笑いに大笑い、笑いのオンパレードだ。まったく、今にも床をたたきながら笑いそうだ。そのまま呼吸困難になってしまえっ。
「あー笑った…。久々にこんなに笑ったよ…」
「…よーございました」
そんなに満足そうな顔をされちゃあ何も言えない。
「拗ねないでよ。とっても嬉しかったんだから」
「?」
「ゲイだってカミングアウトしてから、いなくなったダチも残ったダチもいる。それでもやっぱり男のダチは『構える』んだよなぁ」
なんでもない顔をしていってるけど寂しかったんだろうな。っていうかカミングアウトしてたんですね。
私は、まぁ育った環境が環境だから『普通』だったけど。
「だから、ちゃんと分かってくれる人がいてくれてホント嬉しい。ありがとう」
「べ、別に…私がただムカついただけで」
「照れてる?かわいー!」
コイツっ、調子にのってやがる!!
「べつに京谷さんじゃなくてもおんなじこと言ったと思うし……」
実際、誰であっても同じことを私は言っただろう。ただ今回は京谷氏だったってだけで。
「ふーん?」
なのになんで空気の温度が下がったのかな……?さっきまで馬鹿笑いしてた京谷氏の顔がエセ笑顔になってるのはナゼっ!!
「ななななんでしょうっ」
「いや〜はーちゃんはやさしいなぁと思って」
「そうですね。私は京谷さんよりは優しいかもですね」
「そーだよね、そんな優しいはーちゃんだったら、俺のささやかな頼みごとも聞いてくれるよね??」
「…」
非常にやな予感しかしない。
「初めて女の子好きになれそうなんだけど協力、してくれる?」
えー女の子好きになれそうでよかったですね。
てかさてかさ、それはそれとして近くないですかい!京谷さんよ!
「今まで絶対無理だと思ってたんだけどね〜。ただの友達じゃあ、俺ちょっと我慢できなさそう」
「な」
また一歩ずつ近づいてくる奴に後ずさりする私。
え!我慢て何!不穏な響きを感じるのは私だけかなっ!
「うんうん、そういう顔もいいね………ソソられる」
「〜〜〜☆◎◇□○△★!?!?!?」
「俺って両刀だったんだな。自分でもびっくりだ」
「!?」
「うんだから、さ」
えーと、この流れで好きになれそうな女の子って・・・まさかまさか!?
「覚悟しとけ?」
美少年わんこ系だと思ってた京谷氏は、腹黒狼でした。
さてどーする!?私!!
ラストのシーンを書きたいがために書きました。
続き、は書くかもしれません。
京谷氏、結構すきなんです……
とりあえず短編で。
ではお読みいただきましてありがとうございましたっ!!!