序章
初めての投稿です。
幼女とおっさんの話になる予定。
お付き合いいただければ幸いです。
午後の9時。
理香は残業がきりのいいところで終われて、ご機嫌だった。
いつもであれば、日が変わるか変わらないかの所までかかるのだが、運のいいことに今日はとんとん拍子に仕事が片付いたのである。
この職業について5年も経つのだ。
日々の雑用は楽にこなせるようになったが、後輩達の尻拭いは未だになれないし、面倒くさい。
こんな日々を送る女に彼氏なぞいるはずも無く、今日も悲しく一人で晩酌だ。
近くのコンビニでちょっとリッチに高級なビールとおつまみを購入し、足取りも軽く我が家へと向かうのだった。
理香が住んでいるのは職場から徒歩10分という好立地に建つアパートだ。
壁は薄いし、あちこちガタはきてるし、あまり良い物件ではないのだが、理香の安月給ではこのアパートが限界である。
中は外見ほど酷くはないのでなんとかなっているのだが。
ようやくアパートにたどり着き階段を登れば、パンプスが耳障りな金属音を奏でる。
この時間では近所迷惑であろうとそっと登っているつもりなのだが、どうしても音が出てしまうのだ。
それもある意味、防犯に一役買っているのかもしれない。
「それにしても…いい加減この手すりくらい修理してもいいんじゃないかしらねぇ。」
そう言って理香は横の手すりを見た。
錆びの浮いた手すりは、根元の部分が老朽化が進み、理香が体重を掛ければ今にも崩れそうなほどである。
管理人にそれとなく話してはいるのだが、直る様子は無い。
その時、理香の視界が一瞬ぶれた。
足を階段から踏み外したのだと頭で理解したときにはもう遅い。
とっさに手すりに掴まるが、それは理香の体重を支えきれずに鈍い音を立てて歪んだせいで、ずるりと手が滑っていく。
ああ、死んだな。
理香は真っ暗な空を見ながら思った。