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放課後想唄  作者: 羅々
5/6

まだ

少年、海江田雄夜かいえだゆうや

少年は名を「雄夜」(ゆうや)と言った。特に、名前を聞いたわけでもなく、ただ自己紹介のつもりなんだろう。

粟音はそれを望んだわけではない。


「君の名は何て言うの?」


唐突に聞かれ、何秒か粟音は、ただ口を開けて呆然としていた。

正気に戻ったのか小さいながらも、自分の名を述べた。


「粟音。」


ただ一言だけの、その呆気なさに雄夜と言う少年は、ただ頷くだけだった。

粟音は正直、一人で居たい、と思う人間で、あっちに行って欲しいとつつに願っていた。


「シュートはしないの?」


少年は聞いた。


「私下手だから、やっても無駄だと思う。」


粟音は返した。

粟音らしいと言うか、少年は聞いて、不可解そうな顔をする。


「俺が教えようか?」


粟音は、きっとこの手の人が、嫌いだ。

これは推測に過ぎないが、現に粟音の顔を見れば分かる事だ。

蝉が代わり、返すように鳴き続ける。粟音は少年から目をそらした。


「ちょっとそのボール貸してみ?」


少年雄夜はそう言って、粟音に手を差し出した。

粟音は仕方なしにボールをバウンドさせて少年側に投げる。

少年は依然として粟音の顔を見たまま、キャッチした。

足が構えられ、そしてスナップをきかせ走った。

わずか5メートルと言うリンクとの差が、疾走によって埋められた。一瞬の事のようだった。

少年の右手が、ボールを押し出すように、ネットへとシュートする。

わずか数秒。ボールはネットをすり抜けた。


「凄いね。」


粟音はまるで、興味がなさそうにそう呟いた。少年に、聞こえたかどうか、それさえも分からなかった。


「ほいよ」


少年は両手の人差し指でボールを押し、粟音へとパスした。

粟音は無関心にボールを受け取り、少年を見た。

少年雄夜は何も言わなかったが、その瞳に、「やってみな?」の文字が浮かんだような気がする。

粟音は少年の肩に目をやり、しばらくしてリンクの方を見た。


「決まるよ。シュート。」


倒置法の言葉を投げかけた少年の声は、確かに粟音が受け取った。

背の低い粟音は、ネットへと一心に飛び跳ねた。


「決めるよ。」


そう言って、粟音はボールを飛ばした。



ボールはリングを回り、そしてネットへと入った。



「入った!」



粟音にとって、これがバスケでの初めての喜びだった。


「やったじゃん!」


少年は拍手しながらそう一緒に喜んでくれた。

粟音が地を見て、喜び、少年の方へ顔を向けた。

だが、少年の姿はなく、あるのは蝉の声と、生ぬるい風だった。

ベンチへと駆け寄った。さっきまで少年が座っていた。

だが温もりなどは無く、ただ残り香、と、水浸しの缶ジュースがあるだけだった。

蝉が唄う。










すいません下手で(´д`;)

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