バスケットリンク
木のベンチが湿った。缶の周りはビショビショだった。
フェンスで区切られた道路とバスケットリンク。至ってシンプルな構造の子供の遊び場。そこに粟音がいた。
見ると、ノースリーブでボールをドリブルしていた。
少しリングから離れた所に粟音がいて、足を構えていた。蝉の声が応援してる様に、その大きさを増す。暑さもまた、蝉の声に比例して・・・。粟音は足を構えつつも、依然として進もうとしない。まるで何かをためらっている様だ。
「バスケ???」
粟音は背に誰かの声を感じ、性格通り、ゆっくりと振り返る。粟音には蝉の声のせいで聞き取れていない様だ。
粟音の背に届いた声の持ち主は、粟音と同じくらい幼い顔をした少年だった。
少年は、半袖シャツに、半ズボンと、安易な格好でそこにいた。
粟音の表情から、少年は、自身の声が聞こえてなかったと悟った。空気が波動を起こし、少年の口から大きい声が出た。
「バスケしてんの?」
粟音の耳は蝉の声をかき分けて、少年の声を拾う。
問いただされ、返すのが言葉であり、それ故粟音は少年に言う。
「うん。」目線は少年の顔の、僅か横に行っている。
「バスケ好き?」
異性からの言葉として、
「好き」
という単語に過剰反応してしまい、動揺する。
「いや、別に。」
動揺しながらも、粟音は返答する。
少年は聞いて、何度か頷いて、ベンチに座った。少年の横には、粟音の缶ジュースがある。