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第八話

 馬車の窓から外の景色を眺めていると、城壁が見えてきた。

 さすが軍事国家というべきか、岩で出てきた城壁は高く頑丈そうだった。

 城門に近づくと検問が行われているらしく、人と馬車の行列が出来ていた。

 私達の馬車も通行の許可を貰うべく列に並んだ。

 待つ間、もっと周りを見たくなった私は窓から顔を出して声を上げた。


「アモーン、私も御者台に移っていい?」


「モチロン、良いですよ」


 あっさり許可を貰って御者台に移った。

 アモンの隣に腰かけた私はあることに気付く。


「あれ?アモン、なんか顔変わってない?」


 銀髪、青系の瞳、白皙の美貌とアモンを表す特徴は一致するのだけど、やっぱり何かが違う。

 一番違うところは頬の刺青が綺麗に消えていることだ。


「これがレイヴァン・ベルフェノルの顔なんですよ、カナ様」


「へ〜、器用だね。微妙に違うけどアモンにすごく似てるよ」


「レイヴァンとはまだ小さい頃にすり変わりましたからねぇ。成長する過程でボクの姿に似るよう修正しましたから」


 アモンは自分と多少似た容姿の人間を「喰べる」らしいのだけど、レイヴァンはまだ五歳だったから周りに怪しまれずにより自分に似せることが出来たんだとか。

 本当、無駄に器用だねぇ。


「アモン、さっきから気になっていたんだけど、アレ何?」


 私が指差した場所には、城壁にへばりつくようにして建てられた小屋が、いや小屋と呼ぶのもはばかれるほどそれはお粗末な代物だったけど、とにかく小屋がたくさんあった。

 人もまばらに見えるが皆一様にボロきれを着ていて、なかには許可待ちの馬車に物乞いをしている子供の姿もあった。


「ああ、スラム街ですよ。奴隷の」


「・・・城壁の外にあるんだ?」


「主のいない奴隷は王都に住めない決まりですからね。居住は出来ないけど、出入りは出来るからああやって外にスラム街を形成して、物乞いや平民でさえやりたがらない汚れ仕事をして生活してるんですよ」


「ふうん。サーナが言っていた通り、奴隷が多いんだね」


「ええ。植民地にした国の人間を労働力として連れて来たのはいいんですけどねぇ。貴族が所有出来る奴隷の数にも限度がありますから。しかも、人間はほっとくとドンドン繁殖するしで今じゃあ奴隷の命の価値は家畜より安い」


 同族をここまで貶める生き物は人間ぐらいですよねぇ、とアモンは楽しそうに言った。

 確かに、そうだ。

 私が元いた世界でも奴隷制度はあったし、自分よりも劣った人間がいると安心する生き物なのだ、人間は。

 もちろん、そうでない人間もいるのだろうけど。


 まだまだ絶対王政が根強い時代だから、奴隷制度が完全になくなるのはずっと先の話だろうな。

 物乞いをする子供達を眺めながらそんな事を考えていると、前方の人波が割れて騒がしくなった。


「レイヴァン様!」


 鎧をつけた兵士らしき人達が私達の馬車に向かって全力疾走して来た。


 え、何事?


「レイヴァン様!何故このような所にっ、申し訳ありません、すぐに道を開けさせますのでっ」


「イイよ、イイよ。わざと貴族用の門じゃなくてこっちに来たんだし。ボク達の事は気にしないで職務に戻ってヨ」


「し、しかし」


 困惑する兵士さん達。

 そりゃそうだ、レイヴァンの生家、ベルフェノル家は帝国でも五本の指に入る公爵家なのだそうで、そんな大貴族の跡取り息子を一般人と並ばせるわけにはいかないと思っているのだろう。

 ていうか、貴族専用の門なんてあったんだ。

 多分、アモンは私がゆっくり行きたいと言ったから、その門には行かなかったんだろうけど。

 オロオロする兵士さん達をほっといて、アモンは私に話かける。


「興味があるならスラム街も見学しに行きましょうか?臭いし、汚いしであんまり観光にはオススメしませんがねぇ」


「う、う〜ん。やめとく」


 アモンがスラム街に行きましょうかと言った途端、ギョッとなった兵士さん達の顔を見て私は遠慮した。


 スラム街はあとで行くことにしよう。


 ついでに、周りの人達の注目が集まりだしたので、貴族専用出入口を利用しようとアモンに提案した私なのでした。




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