北欧23
フレイが唯一嫌悪しなかったアース神族はテュールだった。フェンリルの前に身を挺した彼の姿を見て以来、フレイはテュールを、アース神族の中では異質な、心に愛を宿す神だと感じていた。
「オーディン……どうして堂々と姿を現さないのですか。それとも、賢者アルヴィスとでも名乗るつもりですか。あるいは、高貴なハーヴェイとでも?」
テュールは、クババの眠りを解く手がかりはこの黒い森にあると確信していた。そこは神々の権威が直接及ばない領域であり、それゆえに自らの直感が正しいと信じていたのだ。
オーディンがそう簡単に答えへ辿り着かせるはずはない。ならば、すでにこの森のどこかで自分を見ている可能性が高い——テュールはそう考えていた。「クババ……」彼は手がかりを求め、闇に沈む森の中をさまよい続けた。
ニャルラトホテプはテュールに対し、何もする必要はないと言った。しかしテュールはその言葉を受け入れることができず、胸の奥に沈んだ不満を拭い去れなかった。また同時に、その言葉を全面的に信じ切ることもできずにいた。
「テュールさん」クババの声が、再び彼の意識の奥で反響した。それは耳鳴りにも似た感覚であり、かつて彼を完全に虜にした、甘く痺れるような記憶の残響だった。「やめろ……頼む、やめてくれ……!」テュールは剣を振り乱しながら、荒く息を吐いた。「もう耐えられない。二度と、あの感覚には戻りたくない……」そう呟くと同時に、彼は剣を地面へと突き立てた。
参考文献
小説家になろう (2004)『軍神の剣』.
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