タヴィ18
ヤゴ族の人々は、その少女を「エベル」と呼んだ。「エベル」とは、生きる希望を意味する。
その夜、「エベル」はダリが一人で石を磨いているのを目にした。不思議に思った彼女は、そっと近づいていく。ダリは顔を上げて彼女を一瞥したが、何も言わず再び石を磨き続けた。
「エベル」はダリの隣に腰を下ろした。ダリは彼女を見つめ、ゆっくりとその手へ手を伸ばした。そして、そっと彼女の手を握った。「エベル」は手を引こうとはせず、黙ってそれを受け入れた。
その時、エルーナが二人のもとへやって来た。「Ifret... ah, sy m-k ḥna.k, Dari. Sy pr.n m ḥwt n sḫr. Nn mdw, nn rḫ. Rdi.n.s ib.i šmm wr.(『エベル』……ああ、ダリ。あなたと一緒にいたのね。何も言わずに小屋を出て行ったから、本当に心配したわ……)」「In ntk ii r in.s sw r st.s?(彼女を連れ戻しに来たのか?)」ダリの表情に、わずかな寂しさが浮かんだ。「Iw grḥ. Nn ḥmt.k pw. Nn šsp tn ḥms m pr wa.(もちろんよ。まだ彼女はあなたの妻ではないのだから、同じ小屋で暮らすことはできないわ。)」ダリは名残惜しそうに「エベル」を見送り、彼女をエルーナに託した。
参考文献
Emmerich, R. (2008) 10,000 BC(=『紀元前一万年』).
Allen, J. P. (2014) Middle Egyptian: An Introduction to the Language and Culture of Hieroglyphs(=『中エジプト語:ヒエログリフ言語と文化への入門』).
Lévi-Strauss, C. (1962) La pensée sauvage(=『野生の思考』).
Propp, V. (1968) Morphology of the Folktale(=『昔話の形態学』).
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