人間76
アグたちが去った後、背後からいくつもの黒い影が現れ、まっすぐ聖なる炎へと駆けてきた。
聖なる炎を守る役目を担っていたアグの兄弟は、とっさに異変に気づき、槍を構えた。だが、その瞬間、木の棍棒が容赦なく彼の後頭部に叩きつけられた。彼はくぐもったうめき声を漏らし、そのまま地面へと叩き伏せられた。そして、襲撃者たちは聖なる炎を抱え上げると、踵を返し、闇の中へと駆け去っていった。
「早く戻れ! 聖なる炎を奪われた!」兄弟の叫び声を聞いたアグは、敵の罠だと悟り、慌てて引き返した。だが、そこにあったのは地面に倒れ伏した兄弟と、空になった火皿だけだった。「聖なる炎……!」その瞬間、彼の顔からさっと血の気が引いた。アグは怒号を上げると、すぐさま駆け出した。しかし、森の中にはすでに敵の姿はどこにもなかった。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Frazer, J. G. (1920) The Golden Bough: A Study in Magic and Religion(=『金枝篇―呪術と宗教の研究』).
Campbell, J. (1949) The Hero with a Thousand Faces(=『千の顔をもつ英雄』).
Burkert, W. (1985) Greek Religion(=『ギリシア宗教』).
推定総盗用率:およそ5~15%




