人間74
「ちくしょう、本当に何もかもうまくいかない!」アグたちはもう限界だった。ここ数日、食料は減り続け、彼の兄弟たちの顔にも疲労の色が濃くなっている。追っ手から逃げ続ける生活にも、誰もが耐えられなくなっていた。「どうしてあいつらは自然の火を使わないんだ? なんでそこまで聖火にこだわるんだ?」アグが苛立ちを隠せない声で言った。「……じゃあ、俺たちはなぜ聖火を奪おうとしてるんだ? 俺たちだって必要だからじゃないのか? 聖火は消えないし、普通の火よりずっと長く燃え続けるんだ。だから、みんなあの火を欲しがるんだよ……」その言葉が終わると、周囲は静まり返った。誰も反論できなかった。アグは、自分の言葉が身勝手なものだと分かっていた。それでも、生き残るためには聖火が必要なのだった。
参考文献
Boex, J. H. H. (1911) La Guerre du feu(=『火の戦い』).
Gowlett, J. A. J. (2016) The discovery of fire by humans: A long and convoluted process(=「人類による火の発見―長く複雑な過程」).
Diamond, J. (1997) Guns, Germs, and Steel: The Fates of Human Societies『銃・病原菌・鉄――一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』).
Trivers, R. L. (1971) The Evolution of Reciprocal Altruism(『互恵的利他主義の進化』).
Hobbes, T. (1651) Leviathan(『リヴァイアサン』).
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