5-8 空想上の世界2
【アメリア】
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師匠と楽しく戦っていたら突然世界が変わった……
戦っている最中に外に出られたのは分かったが、またお菓子の世界に逆戻り?
って、周りを見る。
師匠がいない……誰もいない……
「誰かいませんかーーー! 師匠ーーー!」
「これは、どう言う事じゃ?」
ティアも理解ができてないらしい。
パパーン!パパパパ・パパーン!
ジャーン!
シャラララン……
急に空から音楽が鳴り出した。
(なに……このファンファーレみたいな音楽は)
これから、壮大な物語が始まるみたいな。
「さぁー、みんな! 準備はいいかな! ようこそ『ワンダーワールド』へ」
さらに突然のアナウンスが流れてきた。
ワンダーワールド?
「おや? 君は反応が悪いねー。『勇者』に選ばれたっていうのに! もっと喜んで!」
「あれ、もう時間が、それじゃ。最後まで楽しんで行ってね!」
聞いてもいないのに話がどんどん進んで行って終わった。
なんだったんだ……『勇者』?
——貴方の冒険が今始まる。
淡々とした声が流れたと思ったら、周りの景色が瞬時に切り替わり暗転した。
「え?」
突然、目の前が晴れ玉座に座った王様が現れた。
周りを見ると兵士が複数人……ここは玉座の間? お城なの?
「おおー、この世界に現れた『魔王』を倒す救世主、『勇者』アメリアよ——」
王様の長い話が始まった。
わたしが勇者で魔王を倒す旅に出ないといけないらしい……まずは、この国の『姫』が二人捕らわれてしまったので助けて欲しく、最初の目的は西にある『儀式の塔』で滅びの儀式の生贄にされる前に姫をなんとか……
「——助けてはくれぬか、勇者よ」
ピロンッ
——あなたは姫を助けるための旅にでますか?
『はい』
『いいえ』
から選んでください。
な、何これ……
(ティア、どうしたらいい?)
(……ティア?)
「!?」
うそ……いつの間にか剣がない……
いつ無くなった? ここに飛んでから? 完全に何かに巻き込まれているけど、全くわからない……この選択『いいえ』を選んでいいの?
『⇨はい』
——あなたは『はい』を選びました。
「おおー。行ってくれるか! それでは、目の前の宝箱を開けて旅立つのだ! 勇者よ」
ボンッ
目の前に宝箱が現れた。
何処までもよくわからないが、仕方ないので宝箱を開けた。
——『ひ▷き△ぼ◁(ティア)』とお金100ゴールドを手に入れた。
(主人! またおかしな事になったのじゃ……怖かったのじゃ)
(ティア!? なんで宝箱から……)
(知らんのじゃ、急に真っ暗になったと思ったら……)
でも、良かった。ティアに会えて——
って、急にみんな黙ってしまった……ここからどうすれば良いの? もう、行っていいのかな?
「あの、もう行っても良いですか?」
ピロンッ
——王様に話しかけますか?
『はなす』
選ぶの? 話すを選んでみると王様が突然話し始めた。
「さぁ、勇者の旅立ちの時だ! 先ずは西の儀式の塔を目指すのだ」
(どうやら、変なルールがあるみたいじゃな。思考も少し誘導されとる気がするぞ、主人の師匠大好きオーラが弱いのもそのためじゃな)
(ひぁっ! な、な、な、急に何を言っているの? 馬鹿なの? 剣のくせに!)
(酷いのぅ……今更じゃがな、妾には思考誘導は効かぬが主人は難しいのかのぅ)
(……今ので気づいたけど、ティア。剣じゃなく棒になってる)
(!? なんじゃと! 嘘じゃ……妾の美が! 美がぁぁぁああ、鏡を所望する!)
うるさいので探したら鏡が近くにあったのでティアを鏡に向けた。
(わ、妾が……ぼ、ぼ、棒切れになっとるぅぅぅーーーーっ!!!)
はぁ……まだ騒いでるけど、もう、棒でいいよ。
何も話さない人形の様な王様たちを後に外に出てみたけど。
この世界は何処までも恐ろしかった。
とりあえず話しかけないと人々は話さない。その度に『話す』を選ばないと話せない。
とりあえず目の前の人に話す。
「武器や防具は装備しないとダメだぜ!」
……装備? 手に持った棒を見つめていると『装備しますか?』と出てきたので『はい』を選んだら『装備しました』
『攻撃力が250増えた』
なんの事がわからないと思ったらすんなり理解できる……
(ティア……多分貴方だけはこの世界では異質みたいね。普通は3とかよ、きっと)
(ふふふ、さすが妾じゃ! 大切にするのじゃぞ)
(もう、姿が棒なのはいいの?)
(……言わんでくれ。見ない事にしたのじゃ)
そう。気になったので、もう一度同じ人に話しかけた。
「武器や防具は装備しないとダメだぜ!」
何となく予想はできた……人みたいな人形か何かなのかな?
改めて周りを見渡すと、街並みは城下町だけど、お菓子なのは相変わらずだ、これは意味があるの?
食べると草が生えるのも同じかな?
まぁ……やる事もないので外に移動しようとしたが……ちょこちょこ目端に入る物体が気になる。
「何故だか、道端のツボや樽をみると覗きたくなるんだけど……」
(主人……一応王女じゃろ?)
(一応って何よ……ダメだ!)
ちょっとだけ——
ツボを触ると……
『しらべる』と出てきた。
また選択だ……すかさず選んでみる。
『何も見つからなかった』
「…………ムカッ」
怒りが収まらないので我を忘れてその辺のを手当たり次第調べまくった。
『2ゴールドを手に入れた』
『やくそうを手に入れた』
『どくけしそうを手に入れた』
おおー! 誰がツボや樽に入れたのかは知らないけど、計十五個探して三箇所も入っていたよ!
(すごいよ。ティア!)
(なんか、色々失ったと思うが黙っておくのじゃ)
(そう思うのなら、聞かせないで!)
……今度は家を見ていたらムズムズしてきた……我慢できない!
——ガチャ
(急に人の家に入ってどうしたのじゃ?)
『タンスを調べた』
『布の服を手に入れた』
(ふぅ……)
(おい、主人よ……さすがに泥棒ではないのか?)
(おかしいのよ……疼くの! なんか調べないといけないと思って疼くの!)
——わたしはこの後、本能の赴くままに城の中と街中のありとあらゆる所を漁り尽くした。
溢れたアイテムはいつの間にか持っていた『ふくろ』に入れたらいくらでも入っていった。
「さぁ、出発ね!」
(主人の行動は、呪いか? どうしたものかのぅ……)
——フィールドに出ます。
ザッザッザッザッ
変な音と共に、あ、暗転したよ? 何これ……
明るくなるとそこは広大な草原だった。
ジャーン、ジャジャンジャーン!
ジャージャンジャンジャンジャン……
ジャーン!
なんか、また空から音楽が流れ出してきた……
耳に入ってきたとたん、広大な草原を歩き出さないとという衝動に駆られる。
そのまま歩き続けたが、なんだが凄く気分が上がってくるのが分かった。
「それにしても、良い曲ね」
「確かにな! 何故か冒険が始まった様な感じじゃな」
軽快に街道を進みながらこのまま西に向かおう!
(主人わかっとるか? 多分あれは敵じゃぞ)
ティアに言われて見てみると、青っぽい半透明の物体が五、六匹いる。
(こいつらは、何?)
急に暗転して音楽が変わる。
トゥルーン、トゥルン、トゥルーン、トゥルーン
『スライム×6が現れた』
ターン、ターン、ターン、タララララーン。
激しい音楽が鳴り響きながら、空に、吹き出しが出てきたんですが!
『たたかう』
『まもる』
『とくぎ』
『にげる』
……めんどくさいんですけど!
(無視して攻撃しようとしたけど、動かない!)
(これも定められておるな……)
なんなの? 意味がわからない……
仕方がないので『たたかう』を選んでみた。
『アメリアの攻撃——』
「でやー!」
スライムをティアで叩き潰した。
バシュ
ベチャ
何度目かの死闘を繰り返し、敵が全滅して消えていく。
それと共に音が響き渡る。
ドルルルールン
『スライムを倒した。——アメリアは48の経験値を手に入れた』
パカパカパーパーパパーン
『アメリアはレベルが上がった——』
(レベルと共にステータスが上がってるんですけど……何、このお手軽に強くなれる感じ)
(強くなれるなら、良いのではないか?)
(いきなり、レベルが4になった……ってわたし1レベルだったのね)
(敵も初めて見る敵だった。弱くて良かったけど、交互に攻撃はわたしの利点がない……)
(まぁ、妾がいるから大丈夫じゃろ)
『12ゴールドを手に入れた』
魔物を倒すと、お金も手に入るのね……換金しなくて良いのは便利だ。
さっきの街の宿屋が八ゴールドだったから、宿代は問題ない。
こんなので一日の宿代に……楽だ。
(忘れとると思うが、師匠はよいのか?)
(!? そうだ! わたしは何をやっているんだ……師匠はどこに行ったの?)
(主人……この世界に毒されとるなぁ、人の家のタンスまで、調べるとは……)
(それは、もうどうしようもないのよ……定めね)
と、とにかくここから西に向かうしかないわね。先ずはお姫様を助けに行かないと……
【アルテル】
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気がつくと、変な音楽と共に
「さぁー、みんな! 準備はいいかな! ようこそ『ワンダーワールド』へ」
と、言う言葉が聞こえてきた……
どう思う?
(ふふ、相性の悪い私が存在していて不思議なのですがこんな事ができるのは十中八九『魔道具』で間違いないでしょう)
これが魔道具? こんな事もできるのね。
でも、貴方がいて良かったわ。
こうなると分かっていたら無理矢理にでもカイル様に飛びついておけば良かった……
優先順位を間違えたわ。
(……さすがに、笑えませんよ?)
ふふ……さて、現状を。
「あれ? 君たちは余り動じないんだね。『魔王』だというのにさ!」
上からまた声が聞こえてきた。
「!? 貴方は誰なのです、そんな一方的に話さないでお名前を教えてはくれませんか?」
「君は……んー、難しいのかな? まぁいいや、僕はイスカだよ。今度出会う時は、どうなっているか楽しみだね!」
「それじゃ、世界を壊すの頑張ってねー」と言ったっきり声が聞こえなくなった。
「私は『魔王』みたいですね」
「ふふ、お似合いですよ」
そうかしら? まぁ国のトップも大して変わらないでしょうね。そもそもが……城の外を見てみると普通に魔王の民たちが生活している。
「あれを見たら、結局は自分の国を守るための戦いなのでしょうね」
そういう世界か……建物などがお菓子な事以外おかしな所はないわね。
(ぶっ——お菓子と……ぷぷ……おかし……ぶっ——)
あの、ツアド? ボケてないわよ?
(いえ……わか、ぶっ——……)
ドンッ!
「魔王様! 御命令通り、姫を捉えてきました!」
突然の部下! 姫って人間のかな? 私そんな命令だしてたの? と、言うことはこの戦いは私が悪なのは初めから決まってたのね。
「よくやった。褒美は弾むが、先ずは捉えた姫を此処に」
「はは! 連れてこい!」
部下が『姫』を連れて入って来た。
「!? 私の椅子にその姫を丁重に座らせなさい!」
「は、はい?」
「早くしなさい!」
部下たちは私の命令通りに姫を椅子に座らせた。
「ありがとう。褒美は宰相? 四天王? なんかいるんでしょ? その辺りに貰って。貴方たち全員此処から出ていって!」
私の言葉に、理解が追いつかないのか、もたつく部下たち。
「全員、出ていって!」
私の声に驚いて急いで部屋から出ていく部下たちを見送り、誰もいなくなったのを確認して椅子に座った姫に抱きつく。
「カイル様!」
(……貴方、恐ろしいわよ)
ツアドが引きまくっているけど、そんな事知らないわ。
これは、天から与えられた運命ね!
「でも、おかしいわね。
眠っているのかしら……動かない」
(言いづらいのだけど……死んでますね)
そんな事では驚かないわ。死んだくらいじゃ死なないのよカイル様は。
(何でしょう……その不気味な生き物は)
言い方が悪かったわね。息が……いえ、心臓が止まっていても生きているのよカイル様は。
(私の意見は今の説明でも全く変わらないわね)
そう。まぁ、ツアドはカイル様との付き合いは全くないですしね! 仕方ないわ。
さて! 俄然『魔王』のやる気が出て来ました。カイル様は誰にも渡しません!
(……アンは心配ではないの?)
アンはきっと……大丈夫よ!
強く生きているわ。
きっとね。
【イスカ(魔道具)】
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それにしても、空想上の世界がここまでの魔道具だったとはね。
お菓子の思想はきっとぼくと長く居たせいだなぁ……プルパピレーネの世界観と少し被ってしまったけど、問題はないね。
それにしても、配役が決まる前に『勇者』と『魔王』に声かけできて良かった!
全体の配役はこんな感じかー。
使用者の利点なのか、それとも魔道具に写した人格の効果なのか、巻き込まれた人たちのデータが見れてある程度全体が見えたのは大きい。ほぼ、ぼくの望んだ通りになったね。
願わくば、ぼくが『勇者』になりたかったけど、姉妹対決なんて今後を考えると想像以上に胸熱だね。
ただ、一番は間違いなく白いのを無力化出来た事だね。
この『魔道具』の強制力はどんな者にも覆せない、だからこその不良品。だって使用者が制御出来ない道具なんて、道具じゃないしね。
でも、今回のケースで言えば最強じゃないかな? まともに戦っても勝てない奴の役が囚われの姫じゃ、戦いに参加できないもんね!
そう、白いのがどんなに頑張っても声をかけるくらいしか出来ない。
力を振るおうものなら確実に弾かれる。
なんせ、ぼくも配役が決まってから自由に出来なくなっちゃったし……ほんと不良品だよ。
……まぁ、この立ち位置を満喫しようかな。でも、早く来ないかな。
このままは辛いよ。
何故かRPGに……音楽は自分なりに軽く寄せてはいますが各々が自由に脳内再生して下さい。




