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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
5章 エルの故郷編

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5-7 空想上の世界(ワンダーワールド)1



【アルテル】

──────────


「ツアド、ありがとう」


 アンの機転のおかげで、情報が手に入った。

 森へ手がかりを探しに行ったアンはすぐに見えない妖精に攻撃されている事を知ると、目的を妖精を捕えるという方向に変えて、それをこの中で唯一妖精が見えるツアドに託した。


 予想通り、すぐにツアドは妖精を一網打尽にして、捕えることができた。


「アン、やっぱり貴方は凄かったのね」


 最近、私の作戦をことごとく潰されて足枷にしかなっていなかったけれど……さすがの護衛なのね。


「いえ、うまく行って良かったです」


 これしかなかったって感じの成果よ。

 闇雲に探すより、知っていそうな方に聞くのが一番、そしてそれに当てはまるのは『敵』

 今もどこにその妖精が居るのかはわからないが、ツアドが捕まえたと言うなら捕まえたのでしょうし、すでに行方不明者がどこに囚われたのかも聞いたみたい……これで、カイル様に会える。


 (ふふ、貴方もちゃんと活躍していますよ)


 心の深いところまで読まないでっ!

 (貴方が居るからみんな動くのです)


 もういい! 案内して。


「アン。場所がわかったみたいだから向かうわよ」


 何だか、話を聞くと妖精たちは弱みを握られて無理矢理やらされているらしいから、解放した所でまた襲ってくるみたいなので、このまま放置になった。


「えっと、後で助けに来ようとは思いますが、忘れたらごめんなさい」


 聞こえるかどうかはわからないが、いるらしい方向に取り敢えず伝えて、出発した。

 (ふふ、今の言う必要あったの?)

 何となくよ……

 (そう)


——あれから結構歩かされた。

 私の体力では中々に限界でした……でもやっと目的の場所に着いた。


「こ、これなの?」


「ピンク色ですね……」


 それは、岩にベッタリと張り付いたピンク色の小さな球体だった。

 しかも、見えるだけで三つある。

 この中にいるの? どう見ても人が入れる大きさじゃないのだけれど。


 (正に『プルパピレーネ』の特徴ですね)


 ツアドはケセド様にある程度情報を貰っていたらしい、それによると、元々のプルパピレーネは捕まえた養分を小分けにして繭の様なものを茎などに幾つか作り、保管する習性があると言う。


「つまり、これがその習性?」


「そのようです」


「でも、茎がないじゃない……」


 その答えは簡単だった。

 地面の下らしい……

 つまり、本体が地中に根を張り養分の保管庫を幾つかこんな感じでどこかに作っていると。


「ここじゃない場合もあるの?」


「可能性はありますが、ここが一番有力でしょう」


「なぜ?」


「一つ見つかれば、辿るのも簡単なのですが、他は大分離れています。つまり、どう運ぶにしても村に一番近いここが有力かと」


 ぱっと、ツアドがここの根から辿ったら他の繭はかなり離れていたらしい。

 カイル様たちの馬車は村にあった。

 時間からほぼ、村で消えたと見て間違いない。

 なら、一番近いここの繭のどれかに……


「カイル様がいるわけですね!」


「アルテル様。間違っても無闇に触らないでくださいね」


 私が繭にゆっくり近づいているのを察してアンが強めに止めてきた。


「す、するわけないでしょ!」


 アンは、ジト目だ……し、信じなさいよ。

 (私にはわかりますよ……ふふふ)


「で、ここからはどうすれば?」


「簡単です。この手の物は中からは強固ですが、外からは弱いので刃物なので切れば大丈夫かと」


 え? そんなのでいいのね。

 何か大変な戦いでも始まるのかと思ったけど良かった。


「なら、アン! 任せて良いかしら」


「はっ!」


 と、安心してアンに任せようとした時、一つの繭が恐ろしく膨らみ出した。


「あの……これは逃げるべきですか?」


「そうですね」


「——姫様!」


 アンが私を抱えて走りだす。

 私はアンに抱えられながら膨らむピンク色の繭をただひたすら眺めていた。


 これは何か、中で起こってますね。

 (……カイル様の仕業ですか、面白い方なのですね)

 だから、読まないでよ……たぶんね。


ドックン


ドックン



【アメリア】

──────────


 師匠が壊れた。

 私たちがバカな事をしたせいだ。


「ガハハハ——これはいい! 何処までも力をふるえるぞ!」


 色々、溜め込んでたのかな?

 大ケセドが蘇っては消し飛び、蘇っては消し飛びと……今までが嘘の様に悲惨な状態だ。

 小ケセドはなんか、泣いている様にも見える。


ドゴーーーーーーン


ズババババーーーン


 そこかしこで、聞いた事ない爆音が鳴り。

 爆風と共にお菓子が飛んでくる。


「カイル、楽しそう」


「確かにねー! カイル様があんなに笑っているの初めて見た」


 二人は受け入れている。


ベチャ


 顔に飛んできたクリームが付いた、このくらいでは体から花は出てこないらしい。

 (ティア、わたしはどうすれば?)

 (まぁ、これはもう時間の問題じゃな)


 確かになぁ……

 


 私たちが馬鹿をやって師匠が怒った瞬間、シールドが割れ、私たちは師匠に後方に投げ飛ばされ、師匠だけが潰された。


 わたしはこの事態に驚き師匠が潰れたと思い叫んだが。


 次の瞬間、大ケセドが足元から爆散した。

 その後からだ、師匠が笑いだし無茶苦茶しだしたのは。

 

 この時わたしは、この人は世界で一番怒らせちゃ駄目だと知りました。




——目の前では、お菓子で出来た街がケセドと共に絶賛吹っ飛んでいた。


「アッハハハハーーーーーッ!!」


ズガーーーン


 何回目だかの蘇った大ケセドが消し飛んだ——

 (いつまで続くんだろう……)

 (そろそろ、じゃろな。ほれ、周りを見てみい)


 ティアに言われて周りを見回すと、景色が崩れ出してきているのに気づいた。

 とうとう世界が耐えられなくなったみたいだ。わたしでも分かる、いずれこうなる気がした。どんな物だって限界はある。

 いくら何でも、一生復活し続けることはないだろうとは思っていた。


「ヤ……ヤメロ……」


 ここにきて、倒れて朽ち果てた大ケセドが悲痛の叫びをあげだした……


 (なんか、可哀想になってきた……)

 (主人は植物にも感情移入できるのじゃな)

 (違う、そうじゃない。ただ、たまに師匠じゃないみたいで)

 (うむ……暴れている主人と大差ないぞ?)

 (!? わ、わたしはいいの!)

 


ブチャ


 そんな満身創痍の大ケセドの頭を問答無用で踏み潰す師匠。


「足らん……弱すぎて足らん」


 何故かこっちを睨みつけてくる師匠がとんでもない事を口走る。


「弟子よ、少し手ほどきしてやるから掛かってこい」


 突然の言葉に思考が止まる。


「えーなんでよ! アメリアとカイル様が戦うの?」


「アメリア、がんば!」


 エルに背中を叩かれる。

 (おい、どうするのじゃ主人……まさか、その笑みは——)


 そう、わたしは無意識に笑っていた。

 目の前にこの世界で一番強い人がいる……私の師匠、戦うなんて思いもしなかったがそれが師匠の言葉で崩れる。

 (やるのじゃな?)

 (うん、やる)


「本気で行きます……師匠」

 (ティア、全力だすよ)

 (りょ……了解じゃ)


「来い!」



【アルテル】

──────────


 ピンク色の繭が膨らみ続けてもう最初の何十倍も膨らんでいるが爆発まではしていない状況を私たちはただ見守るしかなかった。


「いつまで待つべきでしょうか?」


「ここからもっと離れるべきだと思います」


「アン、ほぼ確実にあの中にカイル様が居るのですよ?」


「その根拠は?」


「感です」


「……はぁ」


 (ふふ、素晴らしい感ですね)

 う、うるさいわね。でも、確実よ!

 (私もそう思いますよ。ただ、貴方の言うカイル様像とは少し……いえ、かなり違う感じがしますが)

 (中が見えるの?)

 (ふふ、見えなくても分かるわよ。悪意を感じるから)

 (悪意?)

 (待って、限界が来たようよ)


ギュギュギュギュ……

 ツアドの言葉通り限界が来た様だ。

 ピンク色の繭が光だし、膨張しすぎた端々から漏れ出た——

 

バシャーーーーーン


 弾け飛んだ瞬間に私たちの周りに気持ちの悪い甘い匂いが届く。


ビチャ


ビチャビチャ


 クリームだとか、植物だとか、色々降ってきたが、それすらも気にならない光景に目が釘付けになった。


「フハハハハハーー! その程度か!」


「でぇりぁぁああーーー!!」


ガキーンッ


バリバリバリ


「カイル様! ……と、アメリア?」


 なんで、二人が戦っているのよ!


「ふぅ、出られた」


「あれ? アメリアのおねいさんじゃない」


 エルトゥア様と妖精さん? 見えてる……なぜ?

 (これは、驚きました。同じ妖精でも、理が違う様です)

 (どう言う事ですか?)

 (……そうですね、妖精では無いと言う事です)


 んー、何となく理解しておく。妖精さんは一旦置いておいて、エルトゥア様に挨拶がてら状況を聞いてみたら。

 修行していると言われた……なんで敵のお腹の中で修行しているの?


ドゴーンッ


「これは、ダアト様。お会い出来て嬉しく思います」


 私の疑問などお構いなしにツアドがエルトゥア様に挨拶を始めた。


ガキン


「誰? よろしく」


 仕方がないので紹介する?


「こちらは、ツアドです。 ケセド様がお造りに」


ガガガガガーー


「そう」


「あー! 私も、ヒアだよ! よろしく」


「これは、ヒア様。よろしくお願いします」


 随分、感情に正直な妖精さんですね。『様』って言われた事に喜びすぎて「えー、そんな私は偉くないよー」って言いながら上昇して行ってしまいました。


ズガーーーン


 さっきから爆風が凄いですね……

 もう、二人は修行みたいなので、良しとして、一番気になっている事を聞いてみよう。


——私は、事の経緯をエルトゥア様とヒア様に聞いてみたけど……エルトゥア様は言葉が短すぎてよくわからず、ヒア様に至っては説明してくれる気が全くなく、よほど私の丁寧な言葉を気に入ったのか今ではふんぞり返ってしまいました。


 どうしましょう……カイル様のパーティーで会話の成立しない二人が残ってしまいました。

 終わるまで待つしかないのでしょうか……ケセド様の安否も気になる所だったのですが。


 せっかくカイル様に出会えたのに待つ事になった。



【イスカ(魔道具)】

──────────


 なんでだ……

 あそこまでお膳立てしたのに、完全に失敗している。何なんだよ、あの白いの!


 『十賢の身体』を苗床にまでした、考える中では最高傑作にまで昇華した『プルパピレーネ』だぞ!

 なのに、なのに……手も足も出ないなんてありなの?

 

 無敵のはずの『ケセド』が許容量を超えて破壊し続けられて、今じゃ閉じ込めた一つのドームが崩壊してその中に居た養分たちが表に出てきちゃった。


 あー、嫌になる。


 人間を養分にどころか、たった一人に潰されるなんて、“理不尽”……ぼくの一番嫌いな言葉だ。

 あの白い奴の力は異常だ、このぼくが本気で挑んでも勝てない。

 だけど、一つだけ方法がある……

 出来れば使いたくなかったけど。


(はぁ……もう、いいや。ぼくがやるよ……魔道具『空想上の世界ワンダーワールド』で)


 (ここら辺一体を呑み込んでやる)


コロンッ



——本物の夢の世界へご招待!


 プルパピレーネ(本体)の横に居たイスカが丸い球体になる。

 球体が震えだすと一気に世界が広がって行った。


 それは、カイルの周りに居た全員を包み込むほどの巨大な領域を作り出す。


(ははは、我ながら凄いね)


 『空想上の世界ワンダーワールド』は一度限りの魔道具だ。鑑定の結果、効果が酷かったからか梟の目で使い手が見つからなかった不良品。


 何故なら、入ったが最後決められた目標を達成しないと出られない。

 達成者以外は死ぬ可能性が高い。


 その目標も発動しないとわからない、さらに使った本人も含まれたため、組織内ではゴミとされた。


 それを、覆したのがぼくの本体のイスカだった。

 イスカの『侵食の権化アルター・エゴ』の効果『人格を作る』、で『空想上の世界ワンダーワールド』に自分の人格をコピーして移したのがぼくの正体。


 空想上の国は魔道具としては異質で、魔道具の近くだと発動しなくても表にも影響を与える事ができた。

 分かった所であまり使い道のない効果だったが、侵食の権化の効果と合わさる事でぼくが誕生するのをイスカが見つけた。


 それにより、副次効果で実質魔道具と言う名のイスカと同等の頭脳を持った助手が誕生した為、本体の追放の時にぼくが研究を引き継ぐ事になったのだ。


 その為か、ぼく自身もいつの間にか、本体に与えられた任務だけをこなす存在に満足していたが……アイツらのせいで全て台無しにされた。


 発動した以上、ぼくは終わりだ。

 ぼくの全てをかけてお前たちを未来永劫閉じ込めてやる。力で勝てなくてもやり方は無数にあるのさ、この魔道具の理不尽な目標に苦しむがいいよ。


 発動した瞬間からぼくの中に魔道具のイメージが流れ込んできた。

 へぇ……少し時間はあるね! なら——


「あ、あ、あー」


「ごほんっ」

 ぼくも楽しまなきゃね。


「さぁ——」

 




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