表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
5章 エルの故郷編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/76

5-5 エルの故郷4



【アルテル】

──────────


 ケセド様が『プルパピレーネ』と普通の木を判別して少しずつ消去していく。

 木が消える度に種になっていくけど……


「その種は大丈夫なのでしょうか?」


「え? あぁ……もちろん大丈夫よ」


 『プルパピレーネ』は本来こんな巨大ではなく虫など害虫を食べてひっそりと暮らす魔物らしく、子供に聞かせる話などで恐ろしく表現するのはお菓子の様な甘い香りがするので下手に口にするとお腹を壊したり身体が痒くなったりと辛い症状が出るためと言われた。


「なるほど、私の国でも夜に窓を開けたまま寝ると怖い暗闇に連れて行かれるという子供に聞かせる話がありました」


 当たり前だけど、人攫いね。

 子供時代は夜の窓が怖すぎて戸締りを全部アンに任せていたわね……


「では、今回のは異常事態では?」


「そ、その通りね……」


 反応がおかしいわね……何か知っている、若しくはこの事態に心当たりができた?

 鎌を掛けてみる? いや、今はまだ信頼関係を築いておくべきかな……


 (ふふ、飽きないわね)

 いつか覚えておきなさい!


 この間にもケセド様は木を種にしているけど、時間がかかり過ぎている……

 (大丈夫。そろそろよ——)

 え?


「見つけた」


 ケセド様は、事が終われば木を消さなければ行けないから待っている間に少しでも減らしていただけらしい。

 ケセド様の精霊たちが本体を見つけたとの知らせが来たので、私たちは馬車を置いて歩いて向かう事になった。



【ケセド】

──────────


 どうしようか、伝えるべきなんでしょうね。


 大昔の九賢者時代……十席を巡って二人が対立した事があった。

 その時、敗れた方の思想は人間をこの世から消すべきだとそれはもう恐ろしい程歪んだものだった。

 私たちがされた仕打ちを考えると無理もないのだが、何も人間だけがそうだったわけではない。なのにあの子は憎悪を掲げて同じ思想の同胞を集めて研究をし始めた。

 それが今回の『プルパピレーネ』


 完成していたのね……


 そういえば……あの子、この村の出身なのよね。

 ダアトもここの出身か、ハイエルフの墓所が規格外を生むのかしらね。


 まぁ、それはいい。話を戻すと、当時の私は何度か止めようとこの村の研究所に行った事がある……その時は楽しそうに語っていたわね、恐ろしい植物の話を。


 まさにそこが本体の場所だったので、すぐに見つける事ができたわけだけど。


 何でこんな立て続けに問題が起こるのだろう……しかも人間が訪ねて来たこんな時に限って。

 仲良く出来るのならそれに越したことはない。

 でも、私たちには身に染みている、一番相容れない理由は寿命の違いだ。


 数千年の歴史の中で今回の様に上手く行った時代もあった……でも長くても百年くらいだった。

 彼らは世代が変わると思想も変わる……しかも真逆に。

 昨日まで笑顔だった隣人にいきなり刺されるのがどれだけ恐ろしいか……私たちはみんな理解している。


 それがあったからこそ、今回は上手くいくのもわかった。

 なのにこのタイミングで行方不明事件が起こりその元凶が元は我々の同胞……なんの弁明も出来ませんね。


 何としても、アルテル様の妹を助けないといけない……最悪、命を落としても。



——それにしても、おかしいわね。

 あの子との話だと、寄生された村人か人質を取られた人たちが私たちを捕える為に襲いにくるはずなんだけど、木が多くなるだけで特に何も起きない……


「すいません、私のペースに合わせてもらって」


 アルテル様が、申し訳なさそうにしているけど、気にしなくていいのに。

 そもそも、こんな沢山密集した木の中を奥に行かないと行けないんだから、森に慣れたエルフでさえ大変なのによくついて来れてるくらいね。


 しかも、お付きの『アン』って子は更に無表情で淡々とアルテル様をサポートしながらついて来ているし、なんだかんだ只者じゃないのね。


「気にしないで、無理せずに着いてきてね」



——私たちは木々をかき分け、やっとある程度広い場所に出れた。

 精霊のおかげで、目的の場所はわかるがやっぱり変だ……研究所に行くにつれ今度は木が減って来ている。

 近づかせない為に木で遮るなら理解も出来たが近くにつれて減り始めたら本末転倒では?


 一度広い所に出たら、後は特に障害もなく目的の場所が見えてきた。


「着いたわね。あそこよ」


 そこは、昔と変わらず上半分が折れた巨大な大木を使って作った研究所が佇んでいた。


「よく、いまだに残っていたわね……」


「来た事があるんですか?」


 しまった……小声で呟いたつもりだったが、聞かれてしまった。


「え、ええ。昔ね……とても、古い昔にね……」


 言い訳をしようとしたけれど、なんだか正直に言葉が出てしまったわ……それよりもここからが本番ね、ここまで何も無かったのなら中は相当危ないはず。


「ごめんなさい、会話は最小限で。中は多分危険だから」


 精霊を行かせたのだけど、暗闇で何も分からなかった……明かりで照らすと、こちらの存在を教える様なものなので、まだ、ばれてないであろうこの機会を有効に使わせてもらいましょう。


「この扉を開けたら、地下へ続く階段があります。灯は最小限にしますので、気をつけて着いて来て下さい」


「わかりました」


 さて、行きますか。

 軽く扉を押してみる……開いてる——


キィィィ



【アルテル】

──────────


 ケセド様の後に続き研究所の中へと入っていく……


 ツアド様にこんな事聞くのはおかしいかもしれませんが、貴方はケセド様と私の命令はどちらを優先しますか?

 (ふふ……心が読めるのだから、そのまま伝えます。貴方を守りますので安心してね)


 くぅぅ……駆け引きも何もないわね。

 でも、これで少しは安心できた。


 灯も最小限なので、本当に注意しないと……部屋の中は外の明るさなど無意味な程に暗かった。


 ぱっと見える範囲だと普通のお家ね……生活に必要な物が置いてある。

 上は寝泊まりする場所なのね、ここだけ見ると研究所だとは誰も思わない。


 私が部屋の状況を把握するまもなく、ケセド様が知っているかの様に地下へ続く秘密の階段への道を開く。

 ただ、本当にバレない様に慎重にしている様子を見るとどっちなのか分からない。

 (ふふ……聞けばいいのに)


 聞ければどんなに楽か……もう自ら探るのが癖になっているのでしょうね。

 (我慢ができないから、言っておきますね)


 え? 教えてくれるの?

 (様は入りませんよ!)


 そっちっ!?


「足元、気をつけてね」


 ケセド様が心配してくれている。こんな人を疑いたくはないが、色々とおかしい……危険が全くなく中まで侵入できてる時点で罠の可能性の方が高くなってしまう。


 私にとって一番の問題は、全てが虚言でカイル様たちがそもそもここには居ない場合だ。

 そうなると私とアンとツアド様で対処しないと行けなくなり当初より危険度が跳ね上がる。


 (貴方はやはり、カイル様の事になるとポンコツになるのは自覚しているのね。後、様は要らないわよ……ふふ)

 

 初めて勝った気がした……素がポンコツなのよ! 立場の重さでどれだけ……どれだけ……

 私が苦渋を——

 (わ、わかったわ……自分で言って恥ずかしくはないの?)


 心の中まで責任で押しつぶされたくないですから。聞かれたくはないですけどね。

 (ふふ、それは無理)

 く、もう知らない。


 程なくして階段が終わり、通路を歩き始める。暗いっていうのは不安を煽りますね……余計な事を考えてしまう。


「もうすぐです」


 やっぱり知っているのですね……


カサッ


 !? 植物? 急に手や足に草や花の感触が……更に甘い香りが鼻にまとわりつき始めた。


「う……ケセド様、これは一体」


 気持ち悪い……少しなら甘い良い香りかも知れないけど強すぎる香水みたいだ。


「ツアド、ちゃんと守りなさい。アルテル様、行きますよ」


 今までにない強い口調で奥に進んで行ったケセド様に少し圧倒されて、立ち止まる。


 とくに、なんの反応もない……

 (行かない方がいいわね)


「ここから出ましょう」

 

 アンも知らずにツアドに同調しているわね……何かを感じ取ったのかしら? 私には全く分からない、ただこの場所の匂いは不快感しかない。

 ツアド、ケセド様が行った場所は見れる?


 (ええ、見て来ました。あれが『プルパピレーネ』なんでしょうね、今は何故か停止しています。ケセド様は自ら内部に入って消えました)


「アン、下がりましょう」


 ツアドの答えにすぐにこれからを決める。ケセド様は私たちには言えない何かがやはりあったのですね……言ってくれなかった以上ここからは別行動です。


 意図はどうであれ、やっぱりこれは罠みたいなものね。私たちはまんまと敵のど真ん中に取り残されてしまいました。

 階段を上がりながら考える。


「アンはどのくらい、出来ます?」


「はい、人間ならある程度は。魔物はBクラス一、二体程度ならアルテル様を守りながらでも」


 んー、聞いといてどのくらいなのかわからない。

 ツアドから見てどう? 私から離れて周りを見られそう?

 (無理ね、そもそも人間……いえ、殆どの物がここでは部が悪い)


 なぜ?

 (妖精……見えないでしょ? 私がここに来るまでどのくらいの数を潰したか分からないはず)


 殺したの?

 (まさか……見ただけで、自らの意思で動いていない妖精など、殺すまでもない)


 よく分からない、言い回しだ。

 弱いから気絶させられるのに命まで奪う必要がないでいいのかな?

 (ふふ、ありがと)


「妖精が敵でしかも見えないみたいよ。アンはどう?」


「!? ……見えません」


 それが悪いことの様に噛み締めるアンだけど、普段もっと噛み締めて欲しい事が多々ある気がします。

 妖精は見えないだけで弱いらしい……ツアドが言うにはだけど、見えない時点で強さは関係なさそうだけど、そもそも、精霊も見えない私たちにはどうする事もできない。


 ツアド、守ってくれてありがとう。

 でも、よく会話しながら撃退できましたね!

 少し皮肉。

 (それはもう……ふふ)


 では、足で探すしかないわね……

 ちょっと、アンにも姿見せて。

 会議よ!


——ツアドの姿が現れる


「心当たりはない? なんかこう、精霊特有の索敵能力とか!」


「あったらいいわね!」


「私がこのあたりを調べて来ても良いでしょうか?」


 アンの突然の提案……それは危険なのでは? いつも側にいるけど、見えない相手はどうなのだろう……

 (そこまで、心配する事はないと思いますよ)


 ツアド……そうね、アンが自分から離れる事を提案する事なんて今までなかった。

 信じてみよう。


「分かったわ。必ず帰って来て」


「はい!」


 そう言って、アンは消えた——


「消えたっ!?」


 どう言う事? 

 (あの子、相当やるわね)


 やるわねって……一体なんなの? 



【アン】

──────────


 見えない敵……妖精族。

 なら、一番は的を絞らせない。

 出来る限り、全力で怪しそうな所を探しましょう。


 森の中だと死角が多い反面、バレにくそうですが、ここはバレても上から探します。


ガサッ


タン、タン、タン


 木が密集しているので、結構簡単に上まで行けますね。

 そこから、なるべく怪しそうな所を——


「!?」


ヒュン


 何かが飛んできた?

 (まさか、見えない妖精?)

 もうバレた? 最初から見張られていた?


 (なら……)


ガサッ


 すぐに下に降りて、草の多い所をわざと通って走る。

 そして、急停止して耳を澄ます。


ササッ……ガササ


 (微かだけど、私が通った場所から何かが追って来ている)

 足音がないって事は飛んでいますね……妖精。


 屈んで音に集中する。

 (後少し……)


ガサ——そこっ!


 音と場所を感で回し蹴りを入れてみる。

ブンッ


「きゃっ!」


 外したけど、確定ね。声のした場所にもう一発!


ブンッ——

 

 ……やっぱり、もう居ないわね。


ヒュンッ


「!?」

 また、何か飛んできた。

 思いっきり後方に飛ぶと、私の居た所に変な現象が起きる。


 (これは、間違いなく何らかの攻撃ですね)

 当たったら確実に危ない。


 上より、下を音を探りながら移動した方がいいか。


——よしっ


 まさか、私が一番の足手纏いになってしまうなんて、アルテル様の護衛を任された身としては悲しい問題です……でも、これはこれで違う方法でお役に立てるなら嬉しいですね。


 また、立ち止まる。

 ガササ、ガサ……何体かいますね。

 仮に攻撃が、投げ物だけなら油断しなければ大丈夫そうです。


——走りながら探していますが……


 特に目ぼしいのは見当たらない、アルテル様がいた所を中心にぐるっと回っていますが、これは、私が探すよりも……追ってくる妖精を意識する。


 (良い事を思いつきました。少し危険があるかも知れませんが多分、大丈夫でしょう)


 何度か妖精の攻撃を交わしながら、森の中を走る。

 (もう少し——)

 目的の場所に近づいて来たので、速度を意図的に落とし……音が近づいて来たのを確認して、もう一度速度を上げて走り出し、叫ぶ。


「ツアド様!? 後は任せます!」


 アルテル様が居た広場に出た瞬間、ツアド様に一言残してすぐにアルテル様を抱えて離れる。


「情報をお願いします」


「ちょっと、アン! 何? 待ってーー」


「アルテル様、すいません。少し我慢を」


 後ろが少し騒がしいが、後はどうとでもなるでしょう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ