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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
5章 エルの故郷編

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5-4 エルの故郷3



【カイル】

──────────


 周りがお菓子の家に森に地面もよく見たらお菓子だ……何の意味があるのか分からない世界をひたすらエルの故郷の住民を助ける為に歩く。




 僕が居れば安心なんて思わなければ良かった……また調子に乗った事をすぐ後悔する出来事が起こる。


 初めはただのみんなには見えない魔物だったから糸でぐるぐる巻きにして、アメリアに切ってもらったけど……ここの主も考えているのかな。


——つまり、僕はピンチです!


「こ、この、お花の人達は……なに?」


「し、師匠!切って良いですか?」


「駄目、この人たちは私の村の人たちだと思う」


「結局今回も妾の活躍はないのじゃな!」


 無理だ……見た目は綺麗に咲いているが人だ。上で飛んでる妖精の花はまぁ、『封印紋』で巻き巻きにしたら落ちてきたが。


 目の前には花エルフが沢山いる……身体が震えてすでに逃げたい。

 でも、人数的にはこれで村の人たち全員なのかな? 子供もいる、子供だけは巻いておこう。


「エル、アメリア……一旦逃げよう」


 こうなったら、持久戦だ一人ずつ誘き寄せて簀巻きにしてやろう!


 エルによると、村人の数は三十人くらいだと分かった……なんとか、アメリアに一人ずつ引っ張ってもらって六人巻き巻きした所で、敵さんが一人には絶対にならなくなった。


 頭良すぎませんか!


 そして、糸で包んではあるけど……六体もそこに人がいると意識しなくても気持ち悪くなってきた。泣きそうだ……


(ほら、サタン。僕の顔を見なよ……歪んでるだろ?)

(わかりやすい弱点を持っていたんだな……顔は見えないがな)

(笑ってもいいが……出来れば助けてください!)

(嫌に決まってるだろう)


 頼みの綱に断られたよ……今の状況は、アメリアしか戦力にならないけど、斬っちゃうしなぁ。


 久しぶりに詰んでるよ。


 この状況でジリ貧になるくらいなら、試したかった事を試してから諦めよう。


(君にも影響出たらごめんね)


 ……先に好奇心を満たさないと死にきれない——


(まさか! お前……やめろおおおぉーーー)



【アルテル】

──────────


ガラガラ


 私たち三人はみんなを助ける為にエルの故郷のすぐ近くまで、馬車を進めていた。

 道中、まさかアンから第二のカイル様からのプレゼントを渡されるとは思わなかった……


——「あの、アルテル様。渡しそびれてしまったので、今渡します」


 これですもの、問い詰めたらカイル様が去り際に私にと『精霊石』を……初めて見ました。

 これにはケセド様やツアド様までびっくりして、「あの、これは国際問題になりかねないので返してもらう訳には?」などと言われたので「安心してください、これはお墓まで持って行きます」と笑顔で掴み取りました。


 全員が苦笑いしていましたが知りません。

 お父様にも譲るわけがありません。

——ツアド様、私の心が読めるなら分かって下さいますよね!

 (そこまでですか……恐ろしくも、面白いですね)


 え? 普通ですよ……ね?

 (ふふ……)


「ごめんなさいね、貴方たちを巻き込んでしまって」


 と、突然ケセド様が話し始めたため、話が戻る。

——私は当然ある程度は理解してついて来ましたが、改めて聞くとやはり、自国優先だと思い知ります。


 もしこれで私まで帰る事ができない事態に陥った場合……最悪我が国は終わりを迎える可能性も出て来る。

 父はまだ四十代なので、存続の可能性が高いが……国内は内乱、国外に知られようものなら最悪戦争、そこまでの問題になり得ますね。


 それを踏まえて『ツアド』様と引き合わせてくれたのでしょうが、普通なら断る案件でしょう。

 断れば、行方不明が国際問題になりエルフの国は我々の国に立つ瀬がなくなり私たちには有利に外交が進むのでしょうね。


 それを全て承知で私はここにいます。


 なぜなら、カイル様がいるから!

 初めて出会った時から、お城に戻るまで……命の危機しかなかったけど、本当に楽しかったのだと思います。私の立場では同じ事はもう無理でしょうがチャンスがあるなら飛び込みますよ。

 (ふふ……貴方の思考は本当に面白い)


 ……この子いらないっ!


「全て含めて、私はここにいます。少なくともケセド様は命懸けで私をお守りくださいね」


 なぜか、ツアド様から受けた傷をケセド様に返してしまった。

 そんなケセド様は少し微笑んで


「ええ、貴方を守れない時は私の命もないわね」


 重い! 


 そこまでなのですね。ピクニック気分な私は少し申し訳なく思ったが、問題の村にもうそろそろという所でケセド様が急に声を荒げた。


「止まって!」


 御者が声に驚き馬車を止める。馬のヒヒーンと言う声に私もただ事ではないと気を引き締めた。


「おかしい……木が多い」


「木が多い?」


 ケセド様が言うには、この数時間でエルの村付近の木々が倍以上に増えたと言う……それは異常な事なのね?(そうですね……)


 ケセド様が木に触れて確かめ始めたので、その間、私はツアドに相談していよう——


 ツアド様、少し周りの様子は確かめられるの?

 (出来ますが、行きませんよ。私は貴方を守るのが役目なので)

 なるほど、私が周りを把握するのは無理そうだけど……今少し会話をしていた時間だけで目に見えて木々が増えている事に気づく。


「これ、現在進行形で増えていますね」


「これは逃げた方がいいのでは?」


 いつも冷静なアンが一番最初に気持ちが折れている。アンは先に帰ってもいいと促したが私を置いては行けないと、言うのでツアド様にアンの事も頼んだ。

 (……貴方の次にならいいですよ)


 そんな会話をしているうちに、ケセド様が状況を掴んだらしく話し始めた。


「そんな事が……『プルパピレーネ』って知ってる?」


「なんでしょう……その可愛らしい名前は」


「存じ上げません」


 突然出て来た可愛らしい名前の正体は植物の魔物らしい。それが今回の集団行方不明の原因……その魔物は人を捕獲して養分にし根を張り大きくなる、正に今の現象に近いわけだがケセド様はお伽話の事で現実にこんな状況など見た事がないと。


 すぐにケセド様は精霊を飛ばして本体を探し始めた。


 私にはこの異常がどのレベルかまでは分からないが凄い速さで木々が増えているのだけは分かる。


 さっきまで馬車が通れた街道が今は木々で塞がり森になっている。


 カイル様……



【アメリア】

──────────


 な、なんでこんな事に……


「カ、カイル様の頭から花が咲き乱れた!?」


 突然、周りのお菓子の家を食べ出したと思ったら「大丈夫、ちょっと我慢できなくて」と言って、食べ続けた。


 最近あまり食事を取らないと思っていたらここに来て爆発?

 私はいきなりの事で思考が止まってしまいヒアちゃんの事を思い出した頃には……


「頭がぁぁぁーーーーっ」


 と師匠が叫び出し、頭から何本も花がポンポン生えて来て今に至る。


「ど、ど、ど、どうしよう」

「お、お、お、落ち着くのじゃ」


「引っこ抜く?」


 なんか、エルがいつもの感じに戻ってきてる。


「エル、いつも通りになってない?」


「もう、話すのも飽きた……」


 本末転倒ね……

 ……そ、それよりも確かに引っこ抜いてみよう。


「師匠、ごめんなさい!」


 師匠に飛びつき頭の花を引っ張った。


——ぬぬぬ……抜けない!

 そんな中でもどんどん生えていき、生える場所がなくなったら今度は伸びはじめて纏って一つの木の様に育っていったので……慌ててティアで切った。


ザシュ

 根本から一刀両断された花の束はそのまま下に落ちた。


ドゴーンッ


「よ、よかった。さすがティアね」

「と、当然じゃ」


「……あ、ありがとう」


「カイル、何をしてるの?」


「……いや……お菓子を食べれば元凶と繋がれると思ってさ」


 なるほど、さすが師匠……いやいや、なんか恐ろしすぎますよ……さすがにないですよ。


「馬鹿?」


 エル……思っても言っちゃダメだと思う。

(わたしは思ってませんが!)

(なんの説得力もない弁解を心で言ってもな)

(ティア、うっさい!)


「ふふふ、エル。君の気持ちもわかるが結果を見てからにしてもらおうか!」


 師匠は地面に手を置き何かをしだした。



【プルパピレーネ】

──────────

 

(ナンダコレハ……)

 急に力が逆流していく——

 誰だ……意識を辿る。


(オ、オ前カ……)

(あ、君が元凶だね。捕らえた人たちを戻してくれないかな?)


 我の力を奪う奴は呑気に話しかけて来た。


(フザケルナ……キサマタチハ、我ノ養分デシカナイ)

 誰だか知らぬが養分がずに乗るな!

 その力、取り込んでやる。


(おぉ……ほら、サタンやるなら頑張って! 負けたらお願い聞いてもらうからね)

(くそっ……力の抜ける声をかけるな!)


 何だコイツらは……何故こんなに余裕があるのだ我は必死だというのに、ぐぐぐ


(押されてるよ? ダメだなぁ……代わる?)

(うるさい! お前の力などいらん)


(サタンはいいかも知れないけどさ、毛穴が疼いてるよ?)

(だぁぁー! 見ていろ! ぐぁぁぁああ)


 急に力が強く……


 ひ、引っ張られる——


(グググ……セッカク後少シデ、花ガ咲クトイウ時二何故)

 我が張った根から木々が無理矢理生えていく。

 力がどんどん奪われていく……制御が効かぬ……


(妖精ドモニ……ドウニカ……原因ヲォォ……)

 

 間に合わない……抵抗するより、切り離すしかない。せっかく育ったが仕方がない……


(覚エテオケ……)


プチンッ——



【カイル】

──────────


 いい感じで、乗っ取られてみたけど……これは新しい感覚だった。

 口から入ったお菓子みたいな物には植物の親玉の因子がドップリと入っていた……味はなぜか美味しかったけどね。


 途中サタンが物凄い剣幕で文句を言って来たけどそんな事を言われても、君が協力しないからじゃん! って言ったら黙って入って来た因子と戦い始めたが、なんの意味もなく体内ですぐに根を張り出した。


 その根が体の臓器、主に心臓に付着してそこからエネルギーを摂り身体中の毛穴から植物が生えてくる。

 なので、頭の毛穴以外を閉じて頭に生えるようにしてみたら纏って大木のようになりました。

 どこまで伸びるのか最大を見たかったけどその前にアメリアに対処されたんでそこはもういいとして。


 人間のままより一度植物にする方が養分を取りやすいみたいだね。僕の頭から生えた木が地面に付いた瞬間、僕から取った養分が地面に流れていくのを見逃しませんでした。


 分かりやすいくらいに元凶の元に流れていったので、辿るのは楽だった。


 後は綱引きの要領で僕の養分を返してもらうついでに元凶の養分を根こそぎもらってやろうと、地面に手を置いて思いっきり引っ張ろうとしたら、サタンがもう一度頑張りたいと言うので任せてみたけど、僕の応援のおかげで何とか勝てたね! サタンは否定しているけどさ。


 綱引きに勝って、僕の中に敵の養分が入ってきた瞬間、甘すぎるチョコレートクリームが大量に流れ込んでくる感覚に襲われ、気持ち悪くなって敵の根の部分から無理矢理外に押し出した。


 あれは気持ち悪かった……甘すぎるのは毒だね。

 外がどうなっているのかは分からないが、途中急に養分の供給が不自然に途切れたので元凶はまだ生きてるだろうと予想する。


 取り込んでみて分かったけど、寄生虫のような物だった。精神というより物理的なので僕の領分とは少し違う……いや、説明が難しいな。寄生されると、本体と一方的に繋がるらしく結局精神汚染もくらうのか……嫌な敵だね。


 現在は本体との接続は切れたので、精神汚染はない様だからもう襲われる心配もないだろう。


 取り除く場合は攻撃と回復を同時に行えばいけると思うけど……エルの村人たちは僕には治してあげられそうにない。


 先ずはともあれ自分で試す。

 体内の根を全て同時に焼き切る……(難しいな)……余計な細胞も余分に燃えてしまった。

 仕方ないか……そして治癒——ふぅ、自分の中ならゆっくりやっても大丈夫だけど、他者はほぼ同時じゃないと危なそうだね。


「師匠! 今のは……?」


 ああ、側から見た時の自分の状況を考えてなかった。ちゃんとみんなに説明した。


 ——驚いてはいたがちゃんと理解してくれたみたいだ。


「私はやらないけど、とりあえず教えて!」


 エルはとにかく知りたがりだね。話からすると知識としてほしいってことかな? 時間ができたらね。


「さて、次はヒアだね」


 目の前のお花のヒアに手を置き、体内に根を張った因子をいっぺんに焼き切ると同時に回復させる——


「ふぅ……中々厄介だね」


「お、お疲れ様です」


「口から煙がでるのが何とも恐ろしいのぅ」


 仕方ないじゃん……今思いつくやり方はこれしか無い。このやり方だと外からは繊細すぎて直接触らないと無理。なので、エルフたちを助けるのは不可能だ。


(サタンが協力してくれれば、いけるけどね)

(知るか!)


 駄目みたいだ。

 今なら、サタンが協力さえしてくれれば、寄生されたエルフたちを助けるのは容易いんだけどなぁ……あ、妖精族はいけるな。

 ただ、アメリアには目視は無理なので糸で包むか


——届く範囲にいる寄生された妖精を包む。


 現在元凶は本体以外を切り離してほぼ制御権を失っている様なので、見た目だけアレな物体がその辺に転がっている。

 僕にはお花のエルフたちが止まっているだけでも有難い。


「アメリア。その辺に糸で包んだ妖精の繭があるから拾って来て」


 すぐにアメリアが行動する。優秀だ!

 一体だけ糸で引っ張って目の前に持って来た。


 ヒアと同じ方法で元に戻してみる——


「いけたね」


 妖精族はいいね。恐怖を全く感じない……神の世界でも見慣れているのはあるんだろうなぁ。

 

「私の村の人たちは?」


 エルが当然の疑問を投げてくる……

 期待させるのは良く無いので無理だと正直に伝えよう。


「ごめんね、今の僕には無理」


「そう……仕方ない」


 ほんとごめん。(サタンがなぁ)

 (やらんぞ)……役立たずだ。


 さて、できる範囲で妖精さんたちを戻すか——





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