1-6 ここって恐ろしい場所なの?
【カイル】
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気がつくと——
いつの間にか馬車の音はなくなり、
あの時よりも、ふかふかの布団に寝かされていた。
気持ちいい。
……僕は目を覚ました。
だけど、目は開けない。
なぜなら、横に人がいるからだ。しかも三人。
何だこれ。
上の世界では、起こしに来るのは小妖精だけだったのに。
三人に見守られながら寝るって、拷問じゃん。
……話し声が聞こえる。
「この方を丁重に扱って下さい。
私の命の恩人です」
「……分かっております。
心配なのは分かりますが、何回目ですか?」
「し、心配するのは当然です」
「姫様、そろそろ戻って頂かないと」
「……分かったわ。くれぐれもよろしくね」
二人がこの部屋から出て行く。
良かった。少し気持ちがらく……なっ!
残った一人から、凄い殺気が放たれてくる。
何で? 僕が何したの……ここって、どんな場所なの?
起きてるのに、起きられない苦痛を初めて味わう。
寝たいって頑張った日が懐かしく感じるほど、今の状況は真逆で辛い。
仕方ないので、僕は睡眠を自分に掛けようとしたら、
殺気を飛ばした人が話しかけて来た。
「起きてらっしゃる様なのでお伝えします。
お食事の用意がしてありますが、如何しますか?」
……バレてらっしゃる。
お股を確認したが、漏らしてはいなかった。
何で分かったの?
しかも、怒気も強いし。
勇気を出して、薄目を開けて見る。
黒髪の女性が、鋭い目でこちらを見据えているので、すぐ目を閉じた。
………怖いんですけど。
「無視するのは構わないのですが、
私にも仕事があります。
出来れば、どうしたいかおっしゃって頂けませんか?」
言っていることは分かりますが、圧が。
……頑張れ、僕。
なけなしの勇気を搾り出す。
「こ、ここから出てって」
……言えた。良かった。
「無理です」
終わった。
この世に、こんなに怖い人がいるんだなぁと思いながら、
僕は布団を目深に被り、もうこれ以上何も言えず、ただ時間が過ぎて行った。
——
どれくらい経ったろう。
いつまでいるの。仕事はいいの?
誰か助けて……圧で死んじゃう。
トントン
ドアを叩く音だ。
状況が、やっと動いた。
「私です」
ガチャ
「アン、彼は起きましたか?」
「はい、起きていらっしゃいます」
「……え、寝てますよ?」
「嘘寝です」
「嘘寝? なぜですか」
「分かりません。
何度か話しかけましたが、
出てってくれと言われたので、無理ですと」
……ん?
気配が一人。
トコトコ、近づいて来る。
ツンツン
布団をつつかれる。
「……起きているなら、
目を開けて欲しいです」
観念して、そっと目を開けるが、アンが視界に入るので——
「う、後ろの人、後ろを向かせて欲しい」
小声で伝えたら、王女が目を閉じた。
「アン」
一言発すると、アンは後ろを向いてくれた。
良かった……これで少しは大丈夫だ。
「ごめん、あの子は僕が嫌いみたいで」
「……アン、そうなのですか?」
後ろを向いたままのアンに、王女が聞いた。
「いえ、そんな事はございません」
……嘘だ。
あの殺気を感じた僕は、騙されないぞ。
「……凄い殺気を飛ばされた」
正直に伝えた僕を見て、
なぜか二人してハッとしていた。
「その事は、私の方から謝ります。
ごめんなさい」
王女が謝りだす。どう言う事だろう。
「私を心配しての事だと思います。
貴方に落ち度はありません。
完全にこちらの責任です」
何の事かは分からないが、
アンと言われた彼女の圧は、完全に消えていた。
「そ、そうなんだ」
楽にはなったので、良かった。
パンッ
突然、王女が手を叩く。
「それでは、お食事の用意が出来てますので、行きましょう」
「あ、大丈夫です」
悲しそうにする王女。
背中を向けたままのアンから、突然殺気が放たれる。
「行きます」
ここ、怖い。
起きたいのに起きられないのも苦痛ですね
シーン切り替えの為、少し短めになります。
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