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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
5章 エルの故郷編

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5-2 エルの故郷1



【カイル】

──────────


 後少しで村らしい所に着く……

 僕は数時間で着くであろう村の近くにあった広場に止まっていた。


「さて、どうしますかな……」

「起こさないの?」


 ヒア、いつの間にか起きてたのか。

 おはようの挨拶をして、すぐに僕が気づく。


「あれ? ヒアよりカラフルな妖精がいるよ!」


 え? どれどれと、フードから飛び出して探しているがヒアには見えていないようだ……おかしいな、僕にはって、サタンの目の方で見えてるのかこれ……


 サタンの入った左眼はサタンの献身的な配慮により紫のフィルターが取り除かれて今はクリアーだ。しかし、目の色は紫で側から見るとちょい目立つ。

 みんなに心配もされたけど、大丈夫とは言ってある。


 (サタンさ、フィルター消えても効果はあるならそう言いなよ)

 (なぜ、全部説明しないとダメなんだ?)


 なるほど……そういう考えなら仕方がない。

 この見知らぬ妖精はどうしようかな。


——手を振ってみよう。


「カイル様、何やってるの?」


 あ、行っちゃった。


「いや、妖精がいたからさ」


 あれこれ説明しても見えないヒアは全く信じてくれなかった。

 別にいいけどさ。


「ヒア、僕は覚悟を決めたよ!」


 急にどうしたって顔をしているが、みんなが成長を遂げる中、僕は御者るだけの存在……いい加減、コミュ症を克服するべきだと思うようになった。

 きっとさっきの妖精もそう思って励ましに現れてくれたんだ!


パシンッ

 打つ力も強くなる。


ヒヒーン


「あ、ごめん」

 痛かった様だ。


ガラガラ


 馬車が街道に戻り進み出す。

 もう後戻りは出来ないぞ! 僕は覚悟を決めた。


 逃げちゃだめだ!

 いつかはやらなきゃいけないんだ!

 それをエルの故郷の村から始めてみよう……


——本当に今なのだろうか?

 このまま無謀に突っ込んだら死ぬかもしれない……怖くなって来た。

 少し練習がてら村を見てみよう。


 ……恐る恐る心の目を開いてみる。

 あれ? 誰もいないぞ、なーんだ焦って損したよ。


 …………何度見ても本当に誰もいない。

 意識体で家々を隈なく探すと今まで人がいた形跡があった。

 え? 鍋から湯気がでてる?

 物凄く不思議な状態だが、どの家の中も今まさに食事をしようとしていた時に消えたみたいに見えた。


「何だこれ?」


「どうしたの?」

 

 ヒアに説明するが、全く理解する気がない様でめんどくさくなる。申し訳ないがエルを起こそうと一旦馬車を止めた。

 道に停めてもそもそも誰ともすれ違った事がないし大丈夫でしょ。


——結局アメリアも起きてしまい、みんなに状況を説明する事になった。


「謎」


「どう言う事でしょうか?」


「妾も説明だけではわからんぞ?」


 結局、現場に行かないと進展しない様だ。

 僕たちは無人と化したエルの故郷へと足を踏み入れた——




「師匠! 本当に何処のお家もいきなり居なくなったみたいになってます」


 アメリアがさも当たり前の様に自ら動き出して全部の家を回って状況を説明してくれた。


(これは、おかしい。精霊達も原因がわからないと言っている)

 エルは生で喋るのが大変だからと念話を要求して来たので全員に繋いである。


「この状況に思い当たる人いる?」


 僕が知らないだけで、誰かは思い当たる事があるかも知れない。

 しーんとしてますね。

 せっかくのエルの故郷なのに……仕方ない、見つけても保護までは僕には無理だが、エルの為だ協力しよう。


「エル、絶対にみんなを見つけよう」


 悲しんでいるはずのエルの力になろうと決めたが返って来た言葉が思っていたのと違った。


「え?」


 え?って何……続く言葉に唖然とした。

(墓所行かないの?)


 おーぅ……このままでいいの?

 故郷ってそういうものなのかな?

 僕は自分の故郷を思い出す……そこは神の塔、社畜の人生……うん。僕の故郷も正直どうでもいいや。


「本当にいいんですか?」


 ここにきて、一番良心的なアメリアが促した。

 どうなる?


「うん」


 即答だった。身も蓋もないね。

 ティアもヒアもそれなら墓所に行こうと言い出したので、僕もいいなら良いやになり、結局、村は放置で墓所に向かう事になった。


「あの、エル……『ダアト』の責任は?」


 と、思ったらアメリアが何か重大な事をぶち込んだみたいだ。


「あ」

 あって……あれか、英雄とかセフィラ十一賢の話か。

 外からこの国を守るとかのあれね。一応触りだけ聞いたよ。エル、忘れていたのかな? 恐ろしい子だね。


(私がみんなを守らなきゃ……協力して!)

 嘘くさいわ!


 ここまで、台無しすぎる言葉を聞いたの生まれて初めてだよ。


「お主それでも、お偉いさんか?」


 ティアがまともな事を言ってるし……

 ヒアは何の話? と、まぁ、ヒアだな。

 

 これは探す方向でいいんだよね?


「さて、墓所に行く前にエルの故郷の人探しだけど……」


 何の手がかりもないんだよね? 家は十二軒あり、そのどれもが昼食を食べている、もしくは作っている最中に居なくなった形跡がある。

 

 アメリアやエルが言う限り座っていた椅子すら動いていないからその場から急に消えたとみて間違いない。


 わからないな。僕なら転移出来るから、人が近づく気配があれば食事中だろうが飛んで同じ状況を……


「転移できますか?」


「無理」


 即斬だね。まぁ、わかってはいたけどさ。なら何だろう……キィィ、家の中に入ってみる。

 美味しそうな匂いが鼻に届く。スープの匂いかな? お腹は減ってないが食欲は湧くね。


 みんな僕の後に続くのは良いけど……何もないよ? っと、また妖精が窓の外で飛んでる。

 そういえば、エルは分かるのかな?


「エル、妖精は見えないって言ってたけど、理由は?」


 少し悩んで答えてくれた。


(妖精は気配を希薄に出来るらしい、膨大な年月採取され続けた歴史がそうさせたって話もあるくらい、それは今じゃ無意識に出来るレベルまで本能的に持って産まれてくるみたい)


 なるほど、防衛本能みたいなものか、僕も無意識にボイドしちゃうけど、それと同じだね。

(仲良くなれそう)

 なるほどなぁ、ならチョチョイと認識を弄ると——


「うおっ!」


「師匠? どうしたんですか?」


 サタンの目も当てにできないね。目を通して見えたのが全部だと思っていたけど、認識のフィルターを取ったら妖精が増えたよ。

 こんなに居たのか……家の中に居る妖精だけで四体いた。


「いや、妖精がたくさん居ました」


 僕の声が届いてるみたいで、見られた事に気づいた妖精たちは一目散に散って行く。

 壁とか関係なしに通り抜けられるのか……ヒアも見習ってほしい。


「え!? どこですか? 見たいです」


 アメリアがキョロキョロしますけど見えるわけもなく。エルは興味なさげだったのに居ると分かるとアメリアと同じ様に探し始めた。


「どこ?」


「カイル様だけずるくない? 見たいんですけど」


 ヒアもまぁ、同族? だし見たいのはわかるけど……

 んー、僕の見ている映像を僕の背中に触れる事で共有は出来そうなんだよね。


「ちょい外に出て、座るから目を閉じて背中に触れてみてよ」


 みんなで、一度外に出て説明と同じ状況になる。現在、外には妖精が結構いるので、すぐ結果が……


(おおーーーーーっ!?)


 まさかの、ビックリシンクロ!

 初めて見るものは大抵リアクションおんなじなのかな?


(凄いです! 初めて見ました)

 ヒアが悲しむよ?


(同じ、見たことなかった)

 だからヒアが……


(私も初めてみたーー)

 鏡見ろよ。


(妾はいいんじゃどうせ……)


 若干、剣が可哀想になるが、アメリアとの共有は無理なの? アメリアに剣を借りる。


(おおーーーーっ!?)

 結局、最初のリアクションは同じかよ。その後のティアの反応も目新しさはなかった。

 

 まぁ、妖精が見えたところで何だって話だけど、もしかするとこれだけ普段見えてないだけで近くにいるなら、会話できれば何か知っているかも知れない。


 直接話しかけでも逃げるだろうしここは『糸念話』してみよう。いっぺんに話しかけたら、逃げちゃうかも知れないので、まずは僕だけで話しかけてみる。


——接続


(あ、あ、あ、妖精さん聞こえますか?)


(!? ▷○……△……)

 終わった……途切れ途切れでよくわからない、違う言葉あるのかな?

 何度か試したが全然会話にならなかった。妖精も必死で訴えて来てるみたいだが……

 

——あ、念話は技術がいるのを忘れてた。


 

 当たり前になると忘れてしまうよね、今更だけどアメリアやサタンって凄いんだね。


 んー、時間かかりそうだなぁ。

 そっか、こっちの声は届くから呼ぼう。


(突然ごめんね、下の者だけど少し話したいから降りて来てほしい)


 上で驚いてるね。何か言ってるけど全く聞き取れないや。

(ダメかな?)


 みんな、僕がやっている事をわかっているかの様に固唾を飲んで見守っていてくれている。

 おや、何故か他の妖精に話しかけて、その妖精が飛び立っていった。

 ジェスチャーで何やら少し待っていてって言っているようだ。僕の勝手な想像だけどね。


(わかったよ)


 想像で返事をしておいた。

 やがて、妖精にしては出来る感じの偉そうなオーラをまとった方が我に繋ぐのだ! みたいな感じで空から上から目線で要求してきた。


 ……結局、降りてこないのか。


(繋ぎました。どうですか?)


(あ、あ……聞こえますよっ)


 驚くほど高い声だった。 

 鼻の上の方から声が出ているかの如く、見た目に反して声のギャップが凄かった。

(それで、私たちになんのようでしょう?)


 色んなギャップ、妖精で態度は偉そうで声が高すぎて普通に会話してる……

 それにしても、念話をスムーズに使えるなんて偉いだけあるね。偉いよね?


(突然すいません。この村の出身の子がいるんですが、村人がおらず心配しています。原因がわかりませんか?)


 なるべく丁寧に話してみた。

 そのくらい僕でもできるさ!


(……ここの人たちはさっき突然いなくなりました。ちなみに、ここの出身の方はそこのエルフですか?)


 言い回しが少しおかしいけど、本人に聞いてからにしようか。

 エルに説明して聞いてみた。


(うん、私が話す)


 なるほど、それが良いかもね。

 妖精さんに聞いてみたら心良く受けてくれたので、三人での会話になった。


(私がこの村の出身者、聞いてどうする?)


(いえいえ、少し困り事がでてしまうだけですよっ)

 

 ん? 何か不思議な会話だね。

 何故か妖精が大量に集まってきた。

 みんな僕を通じてみているわけだが、これはどういう趣向だろう?


 僕たちが、黙って見ていると、妖精たちが手を取り合って何かしら唱え出す。

(ついでなので、みなさんの所に送って差し上げます——)


 高い声と共に真っ白い光に包まれた——



(まって……突然人の多い所とかやだよ!)



 僕の不安とは裏腹に次の瞬間——

 …………?……真っ暗だった。


「師匠! いますか、師匠!」

 アメリアの声が後ろから聞こえる。


「いるよ」


「私も」

「妾ももちろんおるぞ」

「はーい!」

 まぁ、ヒアは頭に乗っているから分かるけど、みんな無事なようだ。

 

 そして、僕たち以外には人の気配がしないどころか魔物だよね? これ。危険だから見やすくしよう。


「明るくするから気をつけてね」


 少し待ってから指を鳴らす。


パチンッ


 まぁ、この辺は明かりを照らすだけだからお手のものだね。

 光が広がり僕たちのいる場所を照らし出す。


——そこは、メルヘンだった。


「な、なんですかここ?」


 全員が驚いている、僕も驚きを隠せない……完全にお菓子の世界だ。

 この世界で何度か見たクッキーやらケーキやらがそのままでっかくなってあちらこちらに存在している。

 この状況に黙っていない奴が一人いた。


「わーい!」


 凄いスピードでヒアがでっかいクッキーに飛び込み食べ始める。

 あれかな?危機感とかないのかな?よく食べられるよ……ちなみにどんどん魔物の気配が近いて来ているがみんなは気づいていないのかな?


「ヒアはいいとして、魔物が迫っているよ。気をつけて」


 僕の声で臨戦体制をとるが、誰も気配を感じていない……これは変だな。

 ちょい、『念糸』で網を貼っておこう。


シュルルル——

 蜘蛛の巣の様に張り巡らせた念糸、一応こうすれば網に引っかかるでしょ。


「あの、師匠。魔物がわかりません」


「嘘つき」


 アメリアは不甲斐ない自分に凹む……エルの言葉は真逆で刺さるね!別に嘘はついてないんだけどなぁ、少し待っていれば結果は自ずと——


 何かが網に引っかかった。

 そのまま自らもがいて繭みたいになっていく。

 さて、張り直しておこう。


「これで、何かがいるってわかったかな?」


「凄いです、師匠。これは斬っていいですか?」

「おお!やっと妾の活躍が見せられる!」


 確かに放置するよりは良いのかも知れないけど……アメリアは斬りたがりだし、ティアもやる気だし。

 あれ?エルを見ると物凄く青ざめている……


「エル、どうしたの?」


「せ、精霊がいない……」


 ああ、確かに。これは変だね、飛ばされてから全く見なくなった……エルが落ち込むのも分かる。


「これは、会話が普通にできる?」


 エルがよく分からない事を言い出す。

 落ち込んでない……のかな?

 むしろ喜んでいる感じもする……というか、精霊いないと不安じゃないのかな?


「エル、不安じゃない?」


「不安すぎる、怖すぎる、辛すぎる。ただ、声を出しての会話は今しかできない!きっとカイルが居れば解決できる。なら今は会話を楽しもうと思う」


 今までにないくらいの長文!

 辛かったんだね……まぁ何年もあの状態を貫けるのは凄いと思う。でもさ、あまりにもぶっちゃけたね。僕が逃げ出した時みたいだよ。


「わたしは、やれと言われても言葉を少なくするのは難しいと思います!」


 そりゃそうだね。それにしても、ここどこかとかさ……みんな考えた方がよくない?

 脱線が凄いよ。


 

——まぁ、ある程度わかったけどね。

 これ、凄いね……みんなに言ったら驚くだろうなぁ。



 


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