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元社畜神様はコミュ症すぎて異世界でも逃げ出したい  作者: 片白
5章 エルの故郷編

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5-1 プロローグ



【カイル】

──────────


 あれから、二日。

 コクマーさんが「必要な事なんです。どうかお願いします」とエルを主役にしたお披露目のお祭りが開催される事になり、僕は宿に缶詰になりました。


 しっかりこの国の英雄になり、セフィラ十一席の『ダアト』にもなり、その上で世界を旅すると国民に伝え、快く受け入れられた様です。


 ほんと……良かったよ。


 その間にアルテルの方も進展があり、なんやかんややってアンを連れてくる事になり、情報の伝達をスムーズに運び、ある程度形だけはまとめたらしい。


 この二日、とくにアンが来てからのアルテルは死に物狂いで業務をこなしていたみたいだ……まさにこの時代の社畜の如く。

 だんだんよく分からないテンションになって行く彼女は昔の僕を見ている様で、辛かった。


 そんな彼女が今、目の前で力尽きようとしていた。


「ふふふ……カイル様、やり遂げ——」


バサッ


 朝だと言うのに、布団に倒れ寝てしまったアルテル。

 力になってあげたいが、すでにアンの監視下だ。僕には無理です。


 立派だったよ。

 さて、僕しか居ないのでアンに向き合わなきゃいけないな……


「ほ、ほんとに……良いんだね?」


「はい、後は私が上手くやりますので、行ってらっしゃいませ」


 アンってアルテル嫌いなのかな? これだけ墓所に行くために努力したのに、昨日わざわざ僕の所に来て「明日、多分お倒れになるので、置いて行って下さい」と、深々と頼まれた。


 怖くて、何も言わなかったら「よろしくお願いします」と出て行ったけど、本当に倒れるなんてさ……恐ろしいアンだよ。

 

 一応みんなと話し合ったけど、僕以外はアルテル反対派しかいなかったので、もう仕方ないよね。


「こ、これアルテルに渡して……行ってきます」


 精霊と恐ろしいほど仲良くなったので『精霊石』が望んでもいないのに手に入った。

 その一つを綺麗なんでアルテルにあげる事にした。

 少しは報われてほしいね。


 さて、アンにぎこちない挨拶をして、僕はみんなの待つ街道に飛んだ——



——場所はエルフの街道。

 すでに二人が馬車を用意して待ってくれているはず……僕が目線を動かす前に声がした。


「師匠ーーっ!」


 アメリアがぶんぶん手を振っている。

 数日会わなかっただけなのに、恐ろしく従順になっている気がするんだが……


 正直、この二日の間にエルを見に行きましょう!とか言われると思ってビクビクしていたら


「師匠はゆっくり休んでいて下さい!」

「全てわたしに任せて下さい!」

「何がほしいですか?」


 と完全にお世話されまくってました。

 どうせ、外なんて無理なんでありがたかったが、また、いろんなものを失ったね。


 何にも持ってないけどさ。


「うん、僕が御者ろうか?」


 アメリアが凄いやる気出しているけどこればっかりは僕がやるよ、これしか出来ないしさ。


 

「さて、みんな乗ったね。じゃあ行こうか」


「はい!」

「うん」

「よっしゃー!」

「妾にはどうせ聞いてないのじゃ」


 若干一名、卑屈だがいいや。


パシンッ


ガラガラ


 はぁ、長い様で短かったエルフの首都ともお別れだね。

 あんまり思い出ないけど、セフィロトの大樹は凄かったね。

 因みに仲良くなりすぎた精霊がやっと言う事を聞いてくれる様になったので離れてもらっています。

 呼ぶと集まりすぎて肉眼で何にも見えなくなるのでね。


 困ったものだよ。


(あの……今更なんだけど、なんで墓所に行くんだっけ?)


 そうなんだよね……なんでだっけ?

 全員に呆れられたけど、今一度目的を思い出させてほしい。

 

——簡単に言えば、僕とそっくりなハイエルフの情報がそこにあるかも知れないと、僕自身が興味を持ったのがきっかけらしい。

 僕発信なのに新鮮だ!


 ここから、馬車で半日で着くエルの故郷、そこから森を歩いて半日くらい行くと辿り着ける墓所。

 エルは場所は知っているが入った事はないので、行ってみてからの判断になる。

 探索とか探検とか出来るといいなぁ。


 今回は何も起きないことを祈りながらのんびり行こう。


ガラガラ



【レイア】

──────────


 我は何を間違えたのだ。


 飛べない! 

 疲れる!

 腹が減る!

 眠い!


 何だ、この身体は……こんなの聞いてないぞ。

 そういえば、今思えばカイルは寝ていた。


 ただ、噂で我らの世界でもカイルだけ寝ていたからそんなものだと思っていた。


 もう丸一日は森の中を歩いてる……

 我はここまでの様だ、頑張った!

 

——戻ろう。


 ……!?


「あれ?」


 ジャンプしてみる。


ピョン


ピョン


「え?」


 まさか、戻ることも出来ない?


「なんで……」


 入る事ばっかり考えて、精神の戻し方わかんない……急に心細くなる。

 不安がよぎる。


 目から涙が溢れ出した。


「戻れないよーーーーっ!!」

 

 感情も全部溢れ出した。


「お腹すいたよーーー!」

「死んじゃうよーーーー!」

「助けてよーーーーーぉぉぉ!」


 …………ぐすっ——


「うわぁぁぁぁぁああーー」


ガササッ


「ひぃー」


 我はここで終わるのか?

 嫌だ……最後まで戦ってやる!


「来い!」


「お、やはり子供がいたか」


 何だこの真っ黒い大男は……


 ——怖くないぞ!

 思いっきり殴ってやるっ!


「でやぁぁーっ!」


 我の渾身の一撃は軽く大男の右手に収まった。


パシッ


「おっと、良い攻撃だ」


 そんなあっさりと……

 終わった……こんな場所で大男に食べられてしまうのか——



【アレク】

──────────


 子供の鳴き声がすると思って来てみたら。

 カイルと同じ様な真っ白な子供が殴りかかって来た。

 なかなかに元気があって良かったが。


 さて、このままではどうしようもない、事情を聞いてみるか……


「チビ、何でこんな山奥にいるんだ?」


 少女の拳を掴みながらしゃがんで目線を合わせたが、まだ怖がっているのか、キッとこっちを睨みつけて子供の方から話しかけてきた。


「怪物め! た、食べるなら一思いに……食べるがいい」


 何か勘違いしてるな、まぁ、無理もないか。

 威勢はいいが……面と向かって言われるとショックだな。

 俺は必死で食べない事を伝えたが、言えば言うほど恐ろしい化け物にされていく……流石に傷つくが、俺もいい加減仕事で来ている。


 このままでは、どうしようもないのでここで大人しくしていろと伝え、行こうとすると少女が神妙な面持ちでやっと自分の事を明かしてくれた。


「こ、ここから帰れなくなったのだ」


 なるほど……迷子か。

 普通、こんな所で人間のしかも子供が迷子なんてありえないんだがな。

 

——俺が今、居るところは魔族領の山奥。

 ある人間の依頼で行方不明者を探しに来たんだが……もちろん目の前の子供じゃない。

 どうするべきか、行方不明になったのが二日前、このままこの子を連れて帰ると、生存の可能性が減る……こっちも急がなければいけない。


 連れて探すしかないか。


「チビ、少し怖い思いをするかも知れないが、一緒に来い」


 子供の扱いは苦手なんだが、仕方ない。


「ふ、ふざけるな!誰がチビだ、我にはレイアと言う名があるのだぞ!」


 だいぶ、ませた子供だな。

 「我はお前より大人だぞ!」とまで言ってくる。

 何の冗談だ?


 しかし急がないと行方不明者の安否も危ない、悪いが問答をしている暇がない無理矢理行くぞ。


「悪いが、急ぐ。口は閉じていろ」


 俺はレイアを抱えるとそのまま行方不明者を探すために走り出した——


 脇の下で騒いでいるな……口は閉じていろと言ったのに、やはり苦手だ。


——さて、走りながら探すしかないが……時間が無いのに手当たり次第はキツイものがある。


 魔物はいるが俺の威圧で寄ってこない、頭のいい魔物達だ……しかし、この森の中を人探しはやはり無理があったか? 何とか探してやりたいが。


「おい、左の方から気配があるぞ」


 いつの間にか静かになっていたと思ったら、こいつは……何故わかった?


 迷っているのは無駄か、よし。

 手がかりもないなら乗るしかない。


「そのまま、その気配を追ってくれ」


 レイアの案内で洞穴が見つかり、中には探していた者と背格好の似ている男を発見できた。

 怪我はなかったが意識はないようだ。


 そのまま、二人を両手で抱えて、俺は魔族領から一番近い依頼者の居る人間の街まで戻った。


——男を依頼者の元へ連れて行き、報酬を貰った帰り道。


「レイアには、助けられちまったな。

 何か欲しいものはないか?」


 俺の横をちょこちょこ付いてくるレイア……少しは慣れてくれたか? 事情はわからんが、どうするべきか。


「いらん、我も助かった。貸し借りはこれでなしだ」


 ほんと、口調は大人びているな……遠慮する事ないのによ。


ぐーーーーっ


「何だ、腹が減っているなら早く言えよ」


 顔を真っ赤にしてお腹を抑えながら弁解し始めるレイア。子供は素直が一番なんだがな。


「わ、我じゃ無いぞ! お主だろうが!」


「ははは、確かにな。

 悪かった、なら俺の夕飯に付き合ってくれ」


 腹と俺を交互に見ながら小声で了承した。


「……そ、それなら付き合ってやる」


 さて、飯だ。

 俺もここに来て一日、知ってる店なんて一つしかないが、何でもあるからいつものここでいいだろ。


——ここは……名前は聞いたが忘れた。料理は、値段の割に量が多い、ここに来てから常にここで飯を食っている。

 単純に静かでいいし、俺を恐れず受け入れてくれたいい店だ。

 そんな店で俺と同じ物を頼み「うま、うま」言いながらがっつくレイアは清々しい程に微笑ましく思えた。


 飯もある程度落ち着いた所で、事情を聞いてみた。


「ほう、気がついたらいきなり森の中にいたのか」


 レイヤの話は何とも要領を得ない……人に会うために『飛び込んだ』ら魔族領の山奥に居て、帰ることも出来ずに途方に暮れていたねぇ……


「飛び込んだって言うのは、どう言う意味だ?」


 長い沈黙の後、「それは言えん」と返してきた。

 待ち合わせの人を聞いてもダメだった。

 なるほどな……全く分からないが、関わっちまった以上、置いて行くわけには行かないよなぁ。


 依頼も丁度、終わったし……


「なぁ、どっか行きたい所はあるのか?」


「エルフの国!」


 即答だな……何も言えないのにそこは決まっているのか。

 しかしエルフの国か、この世界にはいろんな種族がいるみたいだが一番俺を受け入れてはくれなそうな国に行かねばならないとは。


「行けば、後は一人で大丈夫か?」


 そこまで行きたい以上、そこにお目当ての人がいるのだろう。

 魔族領とエルフの国じゃ離れすぎてるぞ?

 経緯がわからんな……


 行くのはいいが、一人ならまだしも子供と一緒となると長い旅になるなぁ……

 

 今後を悩んでいると、レイアは腕を組んでニヤついていた。


「ふふ、問題ない!」


 不安しかないな……

 口の周りがソースだらけだ。


 やっぱり子供だな。


 因みに寝るところもないそうだ。

 

「安宿だが一晩は辛抱してくれ」


 食べるほうに夢中か……


「ムグッ……構わぬよ」


 面白い子供だ。


 

【カイル】

──────────


「ふわぁーー」


 なんか、欠伸がでた。

 眠いわけでもないのに、この世界に来てからというもの、当初感動的だったものも慣れると普通になって行く。


 最近はご飯や寝るよりも新しい事を探る方が楽しい……

 むしろ空腹や睡眠が邪魔な時もあるしまつ。

 

——あれ? おかしいなぁ……これじゃ逃げた意味が……いやいや、逃げたからこそわかったのか?


 なるほど、なら今後はこの世界の未知を解析するのも悪くないよね。


 この世界に来て色々出来るようになったし、何気に仲間もできて……僕は幸せなんだと思う。


ガラガラ


 ほんとに、なーんにも起きないので暇だ。

 みんなは寝てるし。


 ちょっと暇なので精神世界でサタンと話してこよう。

 あ、あれが使えるな。せっかくなので使い所のなかった『御者の極意』を使ってみよう。


——さて。


(ねぇ、サタン……いい加減乗っ取るのやめたら?)

(無理だな、絶対にやってやる)

(それこそ無理だよ。僕にも勝てない君にはね)


(その余裕が命取りになるぞ?)

(どうだろうね。因みにさ、君に移った呪いはどう?)

(今更か、呪いに呑まれていたら俺は消えていたな)

(なるほど、良かったね)


(……お前のほうがよっぽど悪魔だよ)

(価値観の問題だよ。僕にとって君に何の思い入れもなかったからね)


(ここまで無力だと清々しいな……)

(無力? 今の君は僕にとって重要だよ?)

(どう言う意味だ)

(わからない? 僕の代わりさ)

(やはり、無力だ——)


 サタンほど、使いやすい存在はない。

 だけど、中々快く僕の代わりになってはくれない。

 『契約』……が出来れば一番手っ取り早いんだけど、きっと契約は出来なさそう。


 試してみるか……


(サタンさ、契約しよ。じゃんけんで勝ったほうが命を奪われるでどう?)

(は? ……じゃんけんとはなんだ?)

(あー、そこからか……)


——じゃんけんを説明した。

 じゃんけんほど、誰でもできる簡単な、勝負方法はない。サタンは理解すると難色を示したが確実に君が勝てる方法を提案した。


(大丈夫、僕はパーを出しているので君はグーを出せばいい)

(……イカれているのか?)


 まぁ、そうだろうなぁ。

 でもこの世界での僕の立ち位置がわかった時点で、後はどのくらいまで大丈夫かを試すのにこの勝負は都合がいい。


 そして、僕たちは『契約』を結んだ。


(じゃあ、行くよ!)


(じゃーんけーん、ぽん)


 僕はパー、サタンはグー。


 さて、どうなるかな?

 …………んー『契約』は実行されたね。

 何かしらはあると思ったけど、まさか何にも起こらないとは。


(サタン。君がいくら頑張ろうと僕には契約すら無駄なようだよ?)


(……その為だけに命をかけたのか?)

(僕にとっては、僕の命はその程度なんだよ)


 この世界に初めて来た時は弱くなった事実から僕に消滅の危機もあったけど蓋を開けてみたら違う事がわかった。

 そして、今回命のやり取りですら何も起こらなかった、となると。


(やっぱり、僕は強いみたいだ)

(そ、そうか……お前の顔が歪むところを見るのが楽しみだ)


 そんな事ないだ……ろ……あぁ、あった。

 近いうちに見せる事になるね、僕の歪んだ顔。


 なんで忘れるかな……

 わざわざ、言わないけど。


(あ、この話は内緒ね)

(……知らんな)


 まぁ、言ったら言ったでいいけどさ。

 さて、終わりかな。


 目を開けてみると、馬車は綺麗に道を進んでいた。

 『御者の極意』すご!



ガラガラ



「最上神」

──────────


 レイアもか……

 全く、この場にいなくても何故かカイルに惹かれて行くな。


 レイアの世界にも誰か代わりを——


 目線は少し前に問題を起こした使徒に移る。


 ロイか……


 ロイは人格を一から再構成した。

 これで二度と同じ事は起きないだろう。


 ビブリナはまだ戻らない。

 ロイに任せるか。


「ロイよ」


「はい」


「ビブリナの世界の管理を任せる」


「わかりました」


 ふむ、後は大妖精を付けておこう。

 ——これでいい。

 




5章開幕です。


正直、思ってない展開に向かって行ってしまいました(;´д`)

お楽しみは頂けると思いますので、先が気になったら評価などよろしくお願いします。

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