0-5 梟の目のボス
【イヒト】
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僕達はメインの梟の目のアジトで久しぶりに出会った。もう二年くらいになるかな?
ボスの待つ部屋に続く長い通路を歩きながら考える。
まさか、失敗が立て続けに起こって三人が並んで怒られる日がくるとはね。
並んで歩いてるけど、誰も喋らないから僕から話そう——
「久しぶりだね、アオバにイスカ」
緑の髪の毛を掻きむしりながら反応するアオバ。
「あぁ、だるい……憂鬱でしかねぇ」
ただ、立ち竦んで今後を受け止めたイスカ。
「ぼくは、こうなる事は覚悟を決めていたさ」
そう言いながら小走りで僕たちに追いついてくる。
あれ? 久しぶりなのに、挨拶に返してはくれないんだね、へぇーそうなんだ。ひどいね。
アオバは子供にエルフの国への潜入を台無しにされ、イスカは『ユダ』を見破られ長年の補給源の消滅だっけ?
一番の失態はイスカだね……それに比べたら僕のアジト一つが無くなった事くらい大目に見てほしいよ。
「イスカのとばっちりだね、これは」
反応が気に入らなくて、嫌味を言ってみた。
ただの暇つぶしだけど、思いの外乗って来た。
「へぇ、僕に喧嘩を売るとはね。君の人格、一つ増やしてあげようか?」
「君の魔道具はさ、直接的には相性悪いじゃん? 勝てると思ってるの?」
この無駄なやり取り、良い暇つぶしだ。
イスカの言葉に少し殺気が混ざる。
「ぼくがこれだけに頼っていると思ってるの? これは、ボスの命令で見せてあげてるのにさ」
ふふ、気が付いてないのかな? 手札を一つ見せてる事に。他にも何かしらの力を持っているんだね。
「あ! そういえば、アオバ! せっかくエルフの国の中に入れてあげたのに何勝手に逃げ帰ってんの?」
「……いやさぁ、面白い奴が居たんだよ。そいつ俺たちの組織に入らないかなぁ」
「答えになってないんだけど……何の話?」
「あ? 何の話ってイヒトと戦うんだろ?」
「アオバさぁ……話がとっ散らかってるよ?」
「ん? しらねぇよ……また会えるかなぁ」
「駄目だ、話にならない」
面白い方向に火種が飛んだね。
退屈な一本道が、二人のおかげでいい暇つぶしになったけど——
一応ここまでかな? ボスの部屋までもうすぐだ。
「ごめんごめん。戦いになったら僕は逃げさせてもらうよ」
「君たちは相手するだけ無駄だって、思い出したよ……」
「腹減ったなぁ」
イスカはまだまだ子供だね、年上だけど。
アオバは相変わらず掴めないなぁ。
何考えているのかわからない。
「さて、ボス部屋に着いたよ」
「ボス部屋とか言われると、俺たち勇者みたいじゃね?」
「アオバは死にたがりだねー」
「アホだ。冗談でもぼくは無関係だからね」
バカ話をしながら扉の前で待っていると、重くてデカい扉が勝手に開き出す。
どうやっているのか知らないけど、毎回こんな感じだ。
ボスの力なのかな?
ガガガガガッ
ガシャン
いつ聞いても凄い音だねー。
「入っていいよー」
……今日は若いね。
ボスの名は『アミミ』
アミアミと呼ばないと怒る。
少女の姿をした彼女は、ボスの人格の中でも特に危険はないが、一番話が通じない。
毎回めんどくさいなぁ、その時で対応を変えないといけないなんて。
部屋の中はどでかい大広間だ。奥の玉座まで綺麗に絨毯が敷いてありその道筋に、梟の目の組員がズラッと玉座まで並んでいる……毎度、この人たちは何か意味があるのかな?
進んでいくと、少し高い位置にある玉座にアミミが座って偉そうにふんぞり返っていた。
さて、普通は膝を付くんだけど、アミミなら——
「やっほー、アミアミ!」
僕が砕けた挨拶をすると、彼女はふんぞり返っていた玉座から身を乗り出して喜んだ。
「やっほー!」
ほらね。
「アミアミ。久しぶりだな」
「アミアミちゃんで良かったよ」
それぞれ、名前だけは間違えない様に必死だ。
アミミで登場って事は怒られないのかな?
これは、運がいい。
「来てくれて、ありがとね。でも、何しに来たの?」
……アミミの対応で一番困るのはこれだ、本人に悪気はないが他の人格の事を一番覚えていない。正直に言うべきなんだろうけど、他の二人に任せるか。
「アミアミよぉ、そっちが呼んどいてそりゃないぜ」
アオバが突撃をかます。どうなるかな?
「へ? アミちゃんが呼んだの? なんで?」
なんでと来たよ……聞いたアオバは考え込んで重くなった口を開いた。
「いや、まぁ……何だ……イスカに任せる」
苦しかったかぁ……アオバが引っ込んだ。
僕たちの命運はイスカに託されたね。
何故か僕のところに歩いて来て、背中を二度叩かれた。
少しは会話をしなよ……バトンは僕になった。
もう、どうなっても僕のせいにしないでよ。
仕方ないね——
「大事なのはアミアミがどうしたいかだよ!」
僕はバトンをアミミに委ねる方法をとった。
何でって? 面白そうだし、何より自分で考えるのめんどくさいじゃん?
……考え込んでるね。
このまま、食事でもしてお開きにならないかなぁ。
「うーん。アミちゃんには、難しいから他に任せて良い?」
やばい……一番最悪な方向に進んでいる。
他が出て来た時点で一番良くて『罰』だ。
次に『罰』が来て最悪『罰』になる。
全部言葉は同じだが辛さが段違いだ……
横の二人を見る——
(目を逸らしたね……)
他の二人も理解しているからだけど、僕に任せて責任まで取らせるとか、一つ貸しだね。
「あ、アミアミ。遊ぶのはどうかな?」
最終手段を取るしかなかった。
これを言っておけば取り敢えずはこの場は治まる。
だが、この後の遊びで『かくれんぼ』が来たら終わりだ、せめて『鬼ごっこ』にしなければ!
「ほんと!、じゃあかくれんぼやろう!」
「アミ——」
終わったーーー。
僕が提案する前にかくれんぼになってしまった……
僕は膝をついた……ボスの決めた事は例えアミミの言葉でも覆らない。
しかも、言い出しっぺの僕が鬼をやらなきゃいけない。
「んじゃ、イヒトが鬼ね。みんな隠れるよー」
と、言ってアジト中の全員にアミミの声が届いた。玉座の間に居た組員が一斉に散りだす。
僕はこれから総勢数百人の人を探さなきゃいけなくなる……
横の二人が僕の背中を叩いて「ドンマイ」と言って隠れる為に走り出した。
「ちゃんと、三万数えてから探してね」
と、言ってアミミは消えていく。
三万って……どっから来た数字だろう。
だいぶ前にやった時は二十三だったじゃん!
僕は一度天を仰いで。
投げやり気味に大声で数え出した。
「いーち! にーい! さーん!」
途方もない戦いの始まりだ……
これから始まる『かくれんぼ』の為に。
——ちなみに。
三万数えるだけで半日かかった。
これで、終わらないし、本気でみんな隠れているから恐ろしい……組織が立ち行かなくなる前に探さないと。
本当に辛い——
梟の目のボス。
結構情報を出していますがおまけです。
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




