4-11 顕聖祭 4
【カイル】
──────────
なんか、僕の身体を依代にした人が来た。
結局はコクマーさん達、失敗したのか。
自分たちで解決出来ないことをやらないで欲しい……
今回、僕はこの国に入るにあたって、一つの身体を作った。
名を『アバター』とした。
これの利点は嫌な事があったらいつでも身体を捨てて逃げられることだ!
一見、完璧なこの力もヒアには効果がない。
僕がアバターを発動する時に頭に居られるとどうやってもバレる。
なので、ヒアだけには伝える事にした。
僕の新しい力の実験に付き合ってと、嘘ではなくこれは事実だ。
ヒアを仲間に加えた事で嬉しい誤算が出来た。
なんと、ヒアが僕のアバターを動かせたのだ!
これにより、完全にアバターを捨て去る理由がなくなり、嫌になったらヒアと交代した。
今思うと、捕まるまでほぼヒアに任せていた気もするが。
ヒアも楽しんで僕を使っていたので、その間はこのセフィロトの木に群がる精霊と戯れていたくらいだ。
——突然ヒアが目の前の身体の事を聞いて来たので「捨てたよ」と伝えた。
そう、コクマーさんにはビックリだよ。
あれだけ少数がいい! コクマーさんだけにして! って言ったのに、祭壇の周りに何人か人を連れてくるなんてさ……
約束を破られ。
知らない人に囲まれ。
儀式だけはやろうとするコクマーさんに僕はさすがに怒りました。
依代体験とか解析とかしたかったのに本当に残念だった。
まぁ、人も呼んで準備はしていた様だし僕は要らないと思い、身体を譲り本体に戻ったら、まさかここにアバターが来るなんてね。
さて、アバター君と向き合うか。
「私は『バチカル』願いはないのか? 何でもよいぞ」
願いを叶えてくれるらしい、いい奴?
見た目も僕だから不快感はない。
願いか、特にないんだよなぁ。
大抵やろうと思ったらなんとか自分で考えた……方が——
あ、そうか! 僕にも無理な事をこの『バチカル』さんに出来るとは思えないけど。
一応頼んでみようと思い『コミュ症』治して! と言ってみた。
さて、どうなるか楽しみだ。
【アメリア】
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黒い球体から溢れ出す敵の数が多い、これじゃ街の人にも被害が出る。
なんとか……そういえば、黒い球体は『セフィロトの大樹』の方には行かない。
もしかすると……ぐぅ——考えるな!
感覚であそこが安全な気がする!
理屈はいらない!
『根原宮』! あそこにみんなを避難させれば。
「エル!『根原宮』に街の人を誘導する。手伝って!」
少し遅れて「わかった」と反応があった。
よし、これで目標が定まった。
わたしは大声で呼びかけた——
「みなさーん! 危ないので『根原宮』の中に逃げて下さーい!」
わたしの声に驚くエルフの人たち、なぜか動かない……なんで? このままじゃ本当に命が。
「無理です。あそこに入れるのは選ばれた人だけ」
一人がわたしに悲痛な表情で話しかけてきた。
この人たちはこんな状況になってもくだらない規則に囚われているの?
それが、命より大事なの?
「私がやる」
声のする方を見るとエルが居た。
なんで、ここは危ないのになんで来たの? と思ったけどエルの表情は今までに見た事のない覚悟を持っていた——
「分かった、何をすれば良い?」
「守って」
単純で分かりやすい注文だ。
(ティア!)
(任せるのじゃ)
きっとエルならやってくれる。
後はそれまで全力で守るだけ!
——来い!
【エルトゥア】
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私がエルフを助ける事になるなんて……
皮肉以外何があるだろう。
でも、もう決めた事。
カイルを助ける為に集めた精霊をもってすれば必ず行ける!
(精霊よ、集まれ……集まれ)
時間は掛かるがアメリアが守ってくれる。
私はそれを信じるだけ!
精霊たちが一つになって行く。
前にカイルとの模擬戦の時に使った物とは意味が違う。全属性を一纏め(ひとまとめ)にする。
(もっと……集まれ……集まれ)
力の関係か弱い精霊が強い精霊に飲み込まれて行く……(ごめん)属性を混ぜるのはやはりこうなる、でも必要な事。
精霊たちも(続けて、私たちも頑張るから)と私を勇気づけてくれる。
「な、何だあれは!」
エルフたちにも見えるくらい大きく、そして金色の天使の様に形作られたそれが『根原宮』の前に現れた。
「天使様!?」
まだ、まだ足らない……もっと大きく。
神々しく輝いて! 精霊たちだけに負担はかけない(私の全てをかける!)
既に天使として形作られたそれは更にはっきりと誰にでも見える形で現れた。
それは、今まで精霊を見た事のないアメリアにも見えるほどに——
「我が名は『アビス』エルの呼び声に答えた」
喋った。
その場にいる誰もが思っただろう……
私でさえ驚いてるくらいだ。
「さあ、我が許す。子供達よ」
閉まっていた『根原宮』の扉が開かれる。
気がついた人達が次々に入って行く。
『アビス』はそれを見ながら大きく光り輝いて周りの闇を一斉に祓った。
「き、奇跡だ……」
限界に来ている私に感謝を言いながらどんどん『根原宮』の門を通り抜けて行く人達。
(エルよ……また会える事を願います)
『アビス』の言葉がエルに届くと、アビスから精霊が離れ出し光と共に消えて行った。
「っ……」
(さすがに無茶をしすぎた)
私が思い描いた以上の結果が出た。
エルフの考え方は『響鳴の理』上位の言葉には盲目的に従う。
上手くいって良かった——
倒れそうな私に、アメリアが肩を貸してくれる。
「エル、凄いよ! これで安心して戦える」
まだ、戦いは終わっていなかった。
空に黒い球体がまた、ポツンポツンと現れだす。
「私も」
まだまだ、精霊は戦える。
私も頑張らないと。
あれ?
急激に体の力が抜け落ちる。
瞼が落ちてくる……
そんな、駄目。
唇を噛む。
痛みでも無理……
眠い——
【アメリア】
──────────
おやすみ、エル。
「誰か! エルをお願いします」
逃げてくる人が当たり前かの様に力を貸してくれた。
良かった。これからはわたしの戦いだ!
もう見える範囲の人は『根原宮』に入った。
後ろを見ると、やっぱり黒いのはあそこを避けている。よし!
後は、逃げ遅れた人を少しでも見つけないと。
「まさか、貴方が私たちを助けてくださるとはね」
まさかのコクマー!
他にも数人同じ様な人が後ろに……
今は会いたくなかった。
顔を見た瞬間、切り裂きたくなる。
「わたしじゃない! エルよ」
これが、わたし一人でやった事なら切っていたかも知れない。
でも、ここでそれをしたらエルに顔向け出来ない……せめて終わるまでは堪える。
「あの『簒奪者』が?」
何も知らないくせに、もういい。
時間がもったいない……
わたしはコクマーを無視して逃げ遅れた人を探す為に走り出した。
【カイル】
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下が騒がしくなって来た……
もう無理そうだね。
こっちも時間がもったいない。
結局『コミュ症』は難しいみたいだ。
予想通りだけど、新しい視点とかもらいたかった。
僕はバチカルに向き合い、話しかけた。
「——顕現した人でしょ?」
そして、頭を掴む。
せっかくだ、目の前に来てくれたのなら解析しよう。
僕の身体を依代にしているから接続が簡単だ!
もしかしたら悪じゃない可能性——
(真っ黒じゃん!)
ってバチカルから何か出て来た。
丁度いい、僕を閉じ込めていたあの結界。
解析出来たので再現してみよう。
『封印紋』見えない術式がバチカルの後ろから出て来た魔物に貼り付く。
これで、多分大丈夫!
『封印紋』の経過も見れるし、実験にはいいかも。
さて、コイツが下の騒ぎの原因じゃん。
アメリアたちのお祭りの邪魔までしてヘラヘラ僕に願いをとか、ふざけてる。
しかも、自分は何もしていないとか自覚もないのも更にムカつく。
少し力を込めて無理矢理でも見つけてやる……これだ!あの騒ぎの元をまずは切ろう。
これで、下は大丈夫な筈だ。
あとは『クリフォト』ねぇ。
覗くと禍々しい木が見えた。
このバチカルはその木の一部なのか……無神論。
なるほど、コクマーさんはこれを。
あー! 名前に見覚えあると思ったらコクマーさんを除いた時に『バチカル』って出ていた。
色々繋がったけど、今となってはもう意味がないや。特に興味の引くのも、もう無いし。
散々荒らしちゃったからそろそろ『バチカル』も限界みたいだし解析も終わりだ。
「んー、少しがっかりだ」
中身のない僕の身体は回収しておこう。
そして、ちょっと気になるさっき捕まえたコイツ、何々……名は『サタン』か。
顔だけ『封印紋』を消す。
「話して」
大人しく僕を見るサタン。
何だろ……特に余計な事をしなければ何もしないのに。
「殺れ。我はどの道、抗えん」
話せるね。
ちょっと聞きたいことがあるからちゃんと言葉が通じて良かった。
「君の強さってどのくらいなの?」
僕はサタンの言葉を聞いて確信した。
この世界に来て弱くなっている事に気づいたが、人が怖すぎて忘れていた。
何度か魔物と戦ったけど、どう考えても無双すぎた。
今回の事で、もしかしたらと思ったけど……
僕は異常なんですね、そうですか!
分かって良かった。
元々力を無駄に振るう気は無いけど、知ってると知らないじゃ大違いだ。
弱くなったのにこの世界では強い部類って意味が分からないけど、どれだけ強くても僕は探究心を怠ることはしない!
成長するのは楽しい。
どんどん行こう。
「ありがとう、謎は解けたよ。君はこれからどうしたい?」
「あ? 俺は助かるのか?」
まずいのかな?
聞くと、助かったらまた同じ様に人に負をもたらすらしい。
そういう存在みたいだ。
んー、でも、面白い事を思いついてしまった。
少し試したい……
もし駄目だったらその時考えよう。
僕はサタンに近づいて、顔を鷲掴みにし、身体に侵入した。
「な、何を……結局、俺も同じではないかぁぁーっ」
ボンッ
我ながら上手くいった。
サタンを球体に押し込めた。
(何だこれは)
(あ、ヒアこれはみんなに内緒ね)
(はーい)
(さて、君は僕の左眼に入ってもらうよ)
(いいのか?……コクマーを見たんだろ? 内から食い破るぞ?)
(出来たら、まぁ……やってみなよ)
(面白い、後悔しても知らんぞ)
(良かった。後会話は最小限で、あんまり頭の中でヒアとお前に喋られるのは嫌だし)
球体のサタンを見えなかった左眼に押し込む。
何度か解析して試したけど、他にやる事が多すぎでどうしても後回しになっていた左眼。
サタンを見た瞬間閃いた。
特性に『闇』と出ていた、これに『呪い』を混ぜるとどうなるか……楽しみでしょうがない。
僕の予想だと、ロイの呪いと闇のサタンが合わさる事で、サタンに呪いが移るはず。
うまく行けばサタンを通して見える様になる……はずだ!
ゆっくり左眼を開く。
「見えた……けど、何だこれ」
変なフィルターが掛かっているのか?
(ねぇ、サタンの見える世界ってどんななの?)
聞いてみたが、駄目だなよく分からない。
まぁ、今のところ紫色に見えるくらいだし——
全然よくないよ。
駄目だ……僕は左目を閉じた。
(ねぇ、サタンって仲間になるの?)
(ん? まぁ、ヒアは嫌なの?)
(ううん、仲間になるなら、私が先輩ね!)
(は? ふざけるなよ、妖精族の分際で)
(は? 目玉の分際で何言ってんのよ!)
(おい……言ったよね? 二人で頭の中で喋るなって!)
(だってー)
(仲間になった覚えはないし、後輩になった覚えは——)
(黙れ!)
(ごめんなさい……)
(ふ、ふん……)
はぁ……まぁ、何とかなるかな?
さて、微妙だけどこれで準備は出来た。
コクマーさんに報酬をもらいに行こうか。
【レイア】
──────────
カイルを見るのは思った以上に面白かった。
ロイが執着したのも分かる。
そして、今回我はとうとう見つけた。
「これだ!」
カイル。
お前は、面白いものを見せてくれた。
あれを使えば世界に侵入できるかも知れない。
少し時間がかかるが必ず会いに行く。
——もう、止まらないレイアだった。
面白かったら評価よろしくお願いします(´ー`)




